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アルジャーノンに花束を [小説]

小説は主人公チャーリィの書いた経過観察報告書で語られる。
最初はつづりまちがいだらけで、句読点がなく、稚拙でよみにくい報告が次第に読みやすくなり内容も高度になっていき、また最初のような文章に戻ることで彼の状態がわかるようになっている。

主人公は精神遅滞の青年チャーリィ。彼は利口になりたいと願っている。
周りの人たちのように利口になれば、もっとみんなに愛されると。
そしてそれは読み書き=知性をみにつけること。
彼はその願いを読み書きを習いたいといって通っているセンターの縁である知性を高める実験=外科手術と心理カウンセリングの併用の実験体になる。

アルジャーノンは研究室のネズミで、知性を高め、しかもそれを長期間維持している最初の個体。
チャーリィは彼と迷路を通り抜ける競争をさせられる。
手術しても最初はまったく勝てなかったが、やがて勝てるようになり、それどころか数か月で複数の外国語を覚え、本からあらゆる知識を吸収し、それを検討できるレベルに達してしまう。

その過程で、過去の出来事が想起され、精神遅滞のときにはわからなかった、からかいや憎しみ、人間の残酷さに気づいていく。
いままで、自分たちより下で、人間以下と思っていたチャーリィが、自分たちより優秀な知性を示し始めると、職場の人間や彼を実験体に選んだマーニー教授らのなかには彼を憎むようになるものたちがでてくる。
チャーリィも知的成長と、情緒的成長のバランスがとれず、主に母親に起因するトラウマから、好きになった女性とうまくいかない。

チャーリィの事例は、華々しく学会で発表されるが、自分が人間として扱われいないことに築いて怒りを覚えて、その発表中にチャーリィはアルジャーノンを折からだして会場を混乱に陥れているスキに逃亡。
自由な時間をもって高くなった知性を駆使して、自分の問題について取り組むことを決意する。一緒に逃亡したアルジャーノンは急激に知性を失いつつあった。そのことはチャーリィも同じ結末を迎えることを意味していたのだ。

かつて自分を実験体として扱った研究室で、チャーリィは研究するようになる。
アルジャーノンは急速に知性を失って亡くなり、チャーリィは彼の遺体を引き取ってアパートの裏庭に埋めて花を供えるようになる。
研究の結果、自分の知性が、急速に発達したように、急速に衰えること、それは避けようがないことを証明する論文をかきあげるころ、彼の知性は衰え始める。

センターで彼の先生であり、チャーリィと愛し合うようになったものの、彼の急速な知性の発達についていけず、疎遠になったアリスがやってきて、しばらく彼と暮らすが、チャーリィは彼女の助言をしだいにうとましく思うようになり、追い出してしまう。

やがて何もできなくなったチャーリィのところへ、実験で手術を受け持ったストラウス博士らがやってきて世話をしようとするが、チャーリィは受け入れない。彼らは大家に金を与えてチャーリィの世話をしてやってほしいとたのんでいく。

チャーリィはかつて精神遅滞の彼を受け入れてくれていたパン屋に戻って働く、彼が知性を示したときは、彼を憎み排除しようとした仲間たちが、快くかれを迎え、彼を友達として扱ってくれる。

ある日彼は、自分におきたことをすっかり忘れて、以前通っていたセンターに行ってしまう。アリスは彼をみて泣き出し、彼はようやく自分に起きたことをすっかり忘れていたことを思います。そして以前から決めていたように彼のような精神遅滞のための養護学校にいくことにする。実験の取り組みで、彼の知性が失われたら、そこに引き受けてもらうことが決まっており、費用は研究のスポンサーがもつことになっていた。知性のある間に彼はそれを知り、見学にいき、準備していたのだ。

チャーリィはアリスやストラウス博士にさよならの手紙を書く。
アルジャーノンのお墓に花を添えてほしいと。

知性のあるときに、彼はマーニー教授に訴える。
「愛情を与えたり、受け入れたりする能力がなければ、知性というものは精神的道徳的崩壊をもたらし、神経症ないしは精神病すら引き起こすものである。自己中心的な目的でそれ自体に吸収されてそれ自体に関与するだけの心、人間関係の排除へ向かう心というものは、暴力と苦痛にしかつながらない」


アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を

  • 作者: ダニエル キイス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 単行本



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人間なんて知らないよ [小説]

1972年から母の友に連載されたものに手を加えたもの。挿絵は長新太さん。
動物からみた人間たちの、ばかばかしさ?をかいたものなんじゃないかなあ。(主観)

第1話 ナマケモノ
ナマケモノは南アメリカのジャングルにいる。
ナマケモノは目も耳もあまりきかず、わかるのは臭いくらい。
生きているのか死んでいるのか自分でもわからない。

人間はナマケモノを観察しようとしても、あまりに動かないので我慢できない。
ようやく木の枝の中からみわけても、ほとんど動かない。
捕まえようと木から落として、1匹を動物園に連れていく。
川に落ちたり、傷ついたりしたのは見捨ててきた。

落ちたナマケモノは長い時間をかけて木に戻る。
動物園のナマケモノはいままでどおりに木にぶら下がってくらす。

人間たちは速すぎて彼らには見えない。
彼らは今日も上機嫌で緑色の夢のなかにいるのだ。


第2話 リョコウバト
あなたのおじいさんが小さな男の子だったころ、北アメリカの動物園のすみっこに一羽のハトが大事そうに折におさめられていた。
「マーサ」と名付けられた、そのハトは、最後のリョコウバトだった。
100年ばかり前に、40億いたリョウコウバトの最後の一羽だという。

インディアンのおじいさんによると、リョコウバトが木になっていて、空をとぶと絨毯のようだった。
だから食べ物に不自由したことがなかった。
木にとまりきないハトが押しつぶされて死んだのをインディアンたちは食べたが、ハトは一向にへらなかった。
木はすっぱだかになったが、森もゆとりがあって、なくなることはなかった。

ある男が懐中時計でハトが飛んでいる下をかけぬける時間を測った数を数えようとしたが、日が暮れるまでやってもハトの絨毯はおわらなかった。

海を渡ってやってきた白い人間がインディアンを追い払い、ハトを食べ始めた。
自分たちが食べ飽きると、召使いや奴隷、さらにブタに食べさせた。
銃で殺すのももったいなくなり、木に火をつけてハトを殺してとるようになった。
やがて森は焼き尽くされ、ハトたちはヒナをかえせなくなって、絨毯はみるみるうちにほころんで、気が付けば、たった7羽になっていた。
7羽は大事に動物園に収められた。

マーサは1914年9月1日に死んだが、世の中の人は第一次世界大戦がはじまったのを気をとられていた。
はく製にされたマーサおばさんは博物館で、ガラスの目で「人間なんて知らないよ」と見物人を眺めている。
あれから、もう一つ大戦があったが死んだ人間の数は40億には及ばない。


第3話 シャミセンガイ
飲み屋でシャミセンガイを食べながら、3人の男が話している。
一人は爺さんで、シャミセンガイは海岸にいっぱいいたが、埋め立てでいなくなったという。
一人はとうさんで、じいさんの話を「そうですか」と聞いている。
一人はシャミセンガイは、貝じゃなく、腕足類の職種動物リングラ科の生き物で、5億年前からほとんど姿は変わっていないという。

シャミセンガイは、三味線ににている。
砂の中で、大陸からいろんな動物がきたり、船がきたり、人間が海を汚すのを、ただ見てきた。
5億年の歴史を持つかれらにしたら、人間は若すぎる生き物で、意識もされていないに違いない。


第4話 コロティス
コロティスはアフリカの珍しい蝶の名前。

京都にすむ、腕のよい歯医者さんである高岡さん50歳、蝶の採集が趣味だ。
休みをとってアフリカのサバンナまで蝶を取りに来るほどだ。

毒蛇の危険をおかして、バナナの罠をかけたりして苦労して蝶を集める。
そうしてとった蝶は何十もの桐箱に収められる。
深夜になると高岡さんはそれを楽しんでいた。

ある日、高岡さんは交通事故で死んでしまった。
桐箱は忘れられていたが、ある日奥さんが思い出して桐箱をあけてみると、ピンだけになり、蝶は粉ばかりになっていた。
熱さにまどを開けると、その粉さえも飛んで行ってしまった。


第5話 ホタテクラゲ
みちよは、おばあさんとおじいさんにお話をおねだりする。
二人が別々に話してくれたのは、どちらもホタテクラゲのことだった。

おばあさんの話
湖のほとりで魚をとって暮らしていたじいさんが女の子を拾ってきた。
女の子が年頃になったので、婿をとろうとしたが、だれもきてくれないので月夜に湖に現れるホタテクラゲの群れにたのんだら、婿がもらえた。
娘は湖を離れて暮らしたが、婿が外国にいっているとき、一度だけ湖に戻ってホタテクラゲに願い事をした。

おじいさんの話
兵隊としてニューギニアに送られ、アメリカ軍に追い詰められ、死ぬのを待つばかりになった。
負傷したので本土に戻ることになったが、迎えの船はいつもアメリカ軍に沈められている。
あきらめて海岸で船を待つと、なんと来たのは潜水艦だった。
島を離れたものの、空気をいれかえるため浮上するときは危険が伴う。
潜水艦が浮上すると海面に一面のホタテクラゲだった。
敵の飛行機が来た時も、ホタテクラゲの下に隠れてみつからず、日本に帰ることができた。
でも、だれも信じてくれない。

みちよの感想は「やさしいクラゲさんだったのね」


第6話 インドリ
400年前に、マダカスカル島には海賊がいた。
林のなかから、おかしなこだまのような声がして、それを聞くと海賊たちは気がめいったり、おびえたりする。
村のひとたちはマンボマナラ=森の犬だから、捕まえられないというが、義足の海賊のボスは賞金をかけて捕まえようとする。
そして自分で出かけて行って帰ってこなかった。
それでも、あとから新しい海賊たちがやってくる。人間に似た姿のインドリ(多分マンボマナラのこと)は彼らをじっとみている。あきると仲間のところに帰って木の葉をゆっくり、楽しんで食べる。
いつか、海賊はこなくなった。

しばらくするとソラネート先生がやってきた。熱心に珍獣(インドリたちのこと)を探したが、みつからない。
面白がったインドリの一人が姿をみせてもみつけられず、土地の人に教えてもらう始末。
先生は国にかえってインドリのことを報告したが、幸いたいした関心はもたれなかった。

土地の人は、インドリはご先祖様の一人で、働くより考える方がすきで森にはいった人くらいに考えている、探そうとも思わない。

ある日、ニッポンのだんなたちが木をきりだそうとやってきた。土地のものが止めるのもきかず、インドリたちの木を切ろうとして森からでられなくなった。案内人も戻れなかった。
一人だけ戻れたニッポンの旦那は、インドリを天狗といった、天狗が13人いたと。
土地の長老は、マンボマナラが嵐をおこして、ニッポンの旦那を追い払ったとうれしそうだ、若い者は半信半疑だが。

インドリたちはお気に入りの森のすみで、今日も楽しく暮らしている。白人が彼らをみつけるのにあ1500年かかった。できれば捕まえるのに1500年かかるといいが。


第7話 イルカ
中学2年のプラ・モデルきちがいの明君は、生まれて初めての空想科学小説を書いていた。

それによると人間は5年前に水中発射長距離ミサイルを誤発射したのが原因でミサイルのおとしあいで、北極の氷山がとけ、ほろんだらしい。
イルカたちは以前から高い知能をもっていたが、それを人間に悟られないように巧妙にたちまわっていた。
一部のイルカは人間と仲良くして、彼らの言語や文化を仲間に伝えた。
イルカたちの間では、人間が核爆弾の実験をしてからは、彼らの文明があまり長くないとみられており、人間がほろんだあとは彼らの文明に学んで、新しいイルカ語も開発され、アトランティスやムーといった遺跡から学び、エサの魚群を養殖し、地球の支配者になっていた。
学校ではイルカの子どもたちが、イルカと人間の歴史を学び、必要以上に人間にやさしくするのは危険だと教えている。

そんな小説を書き終ると、妹の恭子ちゃんが、今日の晩御飯はクジラの焼肉がどっさりだと教えに来る。


第8話 ナマズ
小学5年生のヒロシの家は共働きです。
家に帰っても誰もいなくて、テレビをみていると、麦わら帽子の男の子がナマズを釣ろうとしています。
ヒロシはつまらなくなってチャンネルを回しますが、でてくるのは中学生や小学生の歌手ばかり、笑顔で悲しい歌をうたっています。
おやつを食べてしまったヒロシは公園に向かいます。公園では映画のロケをしていて、なかなかいられる場所がありません。撮影がはじめり女の子と男の子が演技あいますが、ヒロシは学芸会より下手だなとおもっています。そして学芸会では長谷川先生が面倒見てくれただけだけど、ここでは大勢の大人がうごきまわっているなと思います。
と、男の子のほうが滑り台からすべりおちて休憩になりました。
男の子と女の子は、ステージ・パパとママに話しかけています。

ヒロシは散髪屋に行くようにいわれていたのを思い出してそこを離れます。
散髪屋で雑誌をみながら、彼らは中学生なのに周りの大人を食べさせていると思うのでした。
「子どもを食べている大人」という言葉をおもいつきます。

帰っても、まだ誰もいませんでしたテレビをみるとナマズの父さんが、子どもを外敵から守るために口にいれること、でも食いしん坊なので、やがて子供を食べてしまいたくなることをやっています。みているとナマズの父さんは、子どもたちを口にいれる代わりに追い払い、食べないように急いで去っていくのでした。
ヒロシはテレビをつけっぱなしにして家をでます。

帰ってきた母さんは心配して、自分もテレビをつけっぱなしにして探しに行きます。
やっとみつけたヒロシは父さんとのんきにナマズの話をして「ナマズのようにいこうよ、父さん」なんていっています。
母さんは二人を驚かすと、3人で家に帰ります。

ヒロシは「ふたりともちゃんと働いてくれて、いいなあ」と思うのでした。


第9話 ユキコボシ
図工の時間にあきこは、モザイクタイルで花をつくってみようとします。
しかし、丁寧にタイルを砕きすぎてしまい、タイルが細かくなって貼り付けが大変になり、はかどりません。
家にもって帰って夢中になってやっていると、いつもは遊んでくれる姉を取られたと思った弟がタイルを盗んでしまい、花は完成しませんでした。でもかえって、白い小さな花が無数に咲いているように見えてきれいになりました。

この作品をみた先生が、故郷のユキコボシの話をしてくれました。
兄たちに連れられて山奥にはいったとき、偶然みたこと。もって帰ろうとしるとかれてしまうことを兄からきいたこと。
その兄も戦争にいって帰らなかったこと。
自分が大きくなってから、もう一度いってみたら、ユキコボシは咲いていたけど、持って帰るとやはり枯れてしまったこと。
山に道路ができて森がなくなってしまったこと。

先生はあきこに、「自分なら見つけられると思っているかもしれないけど、いまじゃ、もっとダメ」と話す。
あきこは家で図鑑を探してみたが、そんな花はみつからず、目をつぶって心の中にユキコボシの風景を思い描くだけだった。


第10話 オキアンコウ
かなえちゃんとのぶくんは幼馴染です。でも最近はかなえちゃんの方が大きくなってしまいました。のぶくんはかなえちゃんがまぶしくて声がかけられません。でも二人とも相手と遊びたいんです。
4年生の女の子が花いちもんめをして遊んでいると、バレーボールが飛んできます。
ボールを追いかけて現れた太田君が謝らないので女の子たちはいじわるしてボールを返そうとしません。
太田君は怒って行ってしまい、女の子たちも、けちがついたとどこかへいってしまいます。
一人残ったみどりちゃんは、太田君の家にボールを届けてあげて、あとから戻った太田君は態度はつっけんどんでもボールを大切そうにもって部屋へ戻るのでした。
暗い神社に男の人と女の人がいます、やがて女の人が立ち去り、だいぶたってから男の人が反対方向へでていきました。

石川先生はシダの分類が仕事ですが、今は翻訳をやっています。
昔は貧乏で、奥さんは出ていってしまいました。
そのあと、頼まれた翻訳があたってお金持ちになりましたが、一緒に使いたい相手がいなくなって、使い道もなく、シダの本を出すのに使ってしまいました。
それからは翻訳の仕事が続き、意地のように専門外の翻訳をしているのです。

先生が訳したのは1500mの深海で暮らすオキアンコウのことでした。
わかれたら同じ仲間に再開できるのが難しい彼らは、まだ子供のうちに相手をみつけます。
男の子が女の子をしっかりとくわえ続け、いつか女の子のおなかにすっぽりくるまって自分の形をなくしてしまいます。
こうして一体となって生きていき、自分たちが父さん母さんになったときは、子どもたちが同じことをするのです。

先生は光のない世界にも、こうした出会いの暖かいぬくもりのようなことがあるものだといいます。
オキアンコウは自分たちのことを翻訳している人間がいるなんて知りもせず、ましてオキアンコウと自分の人生をひきくらべているなんて思いもせず、今日も暗闇を生きているのです。


第11話 フクロムシ
かっちゃんたちは、潮溜まりでカニを捕まえて、カニ相撲をとらせて遊ぶのが好きだった。
ある日、かっちゃんは強いカニを捕まえて「横綱」と名付け、連れて帰る。
それを見たじいちゃが、横綱の腹の模様から「フクロムシ」という虫がついていると教えてくれる。
かっちゃんは、あまりいい気はしなかった。
1週間後に横綱は死んで、かっちゃんは潮溜まりに返してやった。
次のに見に行くと腹の模様が消えていて、じいちゃは新しい体を探しにいったかなといった。

そのころ、町工場が村へやってきた。
ビニールをつくる化学工場だった、漁師ばかりだった村の人たちのなかから工場へ勤めにでるものが増えていく。
その年の夏は村長さんの家に大きなこいのぼりを建てるのを手伝い、浜でカニ相撲もできた。
しかし冬には町工場の親工場がくることになり、大きなトラックがたくさんくるようになった。
あみもとの何件かと村長さんの家が遠くへ引越し、村の半分が工場になり、かっちゃんたちは浜に近づけなくなった。
かっちゃんの兄も工場へ行くようになった。
じいちゃととうちゃは次第に不機嫌になっていく。
それでもカニはかっちゃんの家まであがってきてくれた。

工場の煙突の色をみて、かっちゃんは横綱のまわしのフクロムシを思いついた。
そして工場を「とんだ、フクロムシだな」といって「おれ、しらねえぞ」と心でうそぶいて、小さなカニのように歩き出した。


最終話 アカンボウ
ぼくちゃんは、おとなしい赤ん坊でした。
生まれたときもほとんど泣かなくて、お医者さんはぶら下げたりしてやった産声をあげさせたのです。
家に帰っても寝てばかりいるので、お父さんは起きているがみたいといい、お母さんも楽だけどだんだん物足りなくなってきました。
そんなとき、お父さんは事故で亡くなりました。
お母さんのくれるミルクはだんだん薄くなり、ある日家から連れ出され、冷たくて暗いところいれられました。

コインロッカーで赤ん坊を見つけたおばあさんは、戦争で亡くした息子の生まれ変わりだといって、ぼくちゃんを家に連れて帰り、おじいさんと育てました。100年以上たっている古い家でした。
みんなには、親が死んだので親戚の子をもらったといいました。
ノブという名前(死んだ息子の名前です)をもらったぼくちゃんは、幸せに大きくなりました。

ノブくんの4つの誕生祝にじいちゃんはアヒルをくれました。
それが卵を産みました。ひとつだけ孵らなかったので、ノブ君が見守っているとヒナが生まれましたが、ノブ君のことを親だと刷り込んでしまったみたいです。それをきいたノブ君は、「いいよ」というのでした。

人気のない村でおじいさんとおばあさんと暮らすノブ君はとても幸せでした。


おしまいに
ロンドン動物園の出口には大きな丸鏡が立ててあって、そこに「世界一の猛獣」と札がついているそうです。
大人もこどもも、その札と自分の姿をみて、苦笑いして出ていくそうです。



タグ:今江祥智
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シャーロック=ホームズの事件簿 下 シャーロック=ホームズ全集 (14) [小説]

BBCのドラマ「SHERLOCK」を見たら、すっごくおもしろかったので、原作を読んでみました。
ドラマの元ネタをひろいながら、あらすじを書いていくので、ネタバレしたくない人は特に後半は読まないでね。


6個の短編からなっている。









1 三破風館
 ワトスンが久しぶりにホームズを訪ねていたとき、派手な服装の黒人が乗り込んできて、事件から手を引けといってくる。(この冒頭マザリンの宝石とかに似ているなあ)
 ホームズは落ち着き払ってしらうと、男は「バーニィの兄貴に頼まれた」といって逃げ帰ってしまう。
 内容はハーロウの一件から手を引けというもので、ホームズはかえってやる気になってしまう。
 事件は、ハーロウ・ウィールドの三破風館に住む老婦人が、「家を買いたい」ともちかけられたが、内容がおかしくて、「ほとんどのものを持ち出してはいけない」という厳格な内容だというのだ。それで、ホームズに相談にのってほしいという。
 出かけてみると、老婦人の息子はホームズの知り合いでダグラス=メーバリ氏だった。しかしローマの大使館に勤めていたが先月肺炎で亡くなったという。
 話の最中にも女中が立ち聞きをしているのをホームズが捕まえたり、何者かがこの家にあるなにかを狙っていることはまちがいない。
 冒頭の黒人も家の周囲をうろついていた。しかし、なにが狙われているかがわからない。
 とりあえず老婦人の弁護士に家に泊まってもらい警戒するようにといいおいてホームズはロンドンに戻る。
 翌日老婦人の家に泥棒がはいったとの知らせが届く、老婦人は警告を守らず、弁護士に泊まってもらっていなかった。犯人ともみあいになって、犯人が盗もうとしていた息子の書いた小説の最後のあたりのページをむしり取っていた。
 ロンドンでのダグラスの身辺の捜査と、その事実から、ホームズは犯人はダグラスが求婚していたイサドラ=クラインだとみぬく。
 イサドラは近く若いローモンド公爵と結婚して貴族の仲間入りをする。それで昔のボーイフレンドとのいざこざが表にでると困るのだ。ダグラスは本気でイサドラを愛していたが、相手は金持ちでないダグラスを嫌って、人を使って暴力でダグラスを遠ざけた。ダグラスはローマでその顛末を小説にして出版しようとしていたのだ。
 ダグラスは死んだが、小説の原稿は遺品として母親の老婦人に届けられていたので、なんとか手にいれようとしていたのである。
 ホームズがかけつけたとき、小説はすでに燃やされていたが、ホームズは殴られた老婦人のために、イサドラから世界旅行できる金額の小切手をてにいれるたのだった。

 
2 白面の兵士
 この小説は、ホームズがワトスンの小説の批判をするので、自分で書いてみろといわれて書いてみたことになっている。そしてワトスンは先回りして結論をださず、常に驚きの目でなりゆきをみてくれるので理想的な協力者といっている。
 ボーア戦争が終わったばかりのころ、ジェームズという体格のよい男がホームズを訪ねてくる。例によってホームズが所属連帯まであてて、相談者をびっくりさせるくだりが挿入される。
 南アフリカの国防騎兵隊で知り合いになった友人と6か月も音信不通で、家族は1年間旅行にいったといっているが、信じられず、実家を訪ねたが、事情があって話せないといわれた。あきらめきれず一晩止まったが、執事の様子からも友人ゴドフリーは生きていて、実家にいるらしいのだ。そして夜中に死人のような白い顔をしたゴドフリーが窓に顔を押し付けているのを見たというのだ。翌日調べると離れ屋があって、山高帽をかぶった男がカギをかけているのを見たという。夜中にもう一度そこにいくとゴドフリーの父親に見つかって追い返されたのだと。しかし山高帽の男とゴドフリーが離れ屋にいるのは確認したという。
 ホームズはすぐにゴドフリーの実家に向かおうといい、途中で友人だという紳士も同行した。
 紳士を馬車に待たせてジェームズとホームズが屋敷にむかうが、ゴドフリーの父が怒り出し、警察を呼ぶという。ホームズが紙に何か書いて差し出すと、「どうしてわかったのか」と態度をかえてきた。
 実は、ゴドフリーは南アフリカで負傷したとき、らい病患者の病院に迷い込んだ。実家に帰ってかららい病の症状があらわれたので、実家にひきこもり、ひっそりと医者(山高帽の男)にかかっていたのだ。
 ホームズは馬車で連れてきた紳士にきてもらう。実は皮膚科の名医だった。
 名医の診察でゴドフリーは「らい病」ではなく鱗癬症の一種で伝染性もなく、治るものであると診断。
 喜びのあまりゴドフリーの母親は気絶した。


3 ライオンのたてがみ
 ホームズがサセックスに引退した後、向うから飛び込んできた話。ワトスンとは離れていたので自分でペンをとったとしている。
 近所には職業訓練所「ザ・ゲーブルズ」があって、20人ばかりの若者と教師が住んでいた。そこの所長スタクハーストはホームズの友人であった。
 ある朝、ホームズは泳ぎに行くスタクハーストに会った。そこに浜から訓練所の物理教師マクファスンがあがってくる。そして倒れてしまう。彼は「ライオンのたてがみ」と言い残して死んでしまう。服装から泳いでいたが、大急ぎで逃げてきた風で、背中には何本もの赤黒いみみずばれがついていた。
 そこに数学の教師マードックがあらわれる。気難しくてあまり人と付き合わない人物で、マクファスンの犬がうるさいと窓にたたきつけてトラブルになったことがある。
 マードックはホームズの指示で警察に知らせにいく。
 ホームズは事件の現場となったと思われる浜を調べるが、人間のいた痕跡はなかった。
 マクファスンの持ち物からは逢引の手紙が見つかったが、日時はわからない。
 相手はモーディという貸ボート屋の娘であるとわかったが、娘の親は、交際をよくおもっていなかった。理由は結婚を申し込まずに交際を続けているからという。しかし、娘によると相続の問題があるので、結婚はできない状況だったが、かたがつけば、正式に結婚を申し込んでくれる予定だったという。また、マードックも一時モーディと結婚したいと考えているようだったが、マクファスンと付き合うようになってからは、そんなそぶりはみせなくなったという。
 証拠はなかったが、状況からなんらかの手を使ってマードックがマクファスンを殺害したのではないかとの疑いから警察はマードックを逮捕しようとして、ホームズに相談にやってくる。
 ホームズはマクファスンの犬が同じ浜で死んだとのことから、インスピレーションをうけて、本を調べる。
 そこにマードックがマクファスンと同じ傷をうけてスタクハーストに担ぎ込まれてくる。
 実は浜の海水がたまっているところにサイアネクラゲがいて、マクファスンはそのショックでなくなったのだった。
 ホームズとスタクハーストは石でクラゲを殺した。普段はいないクラゲなのだが暴風雨でふきよせられたらしい。
 このクラゲは黄茶色の幕をひろげ、ライオンのたてがみのように見えるのだ。
 マードックを疑っていた所長も謝り、事件は解決した。

4 引退した絵具師
 警察からホームズのところへまわされたとして、引退した絵具師ジョサイア=アンバリがやってくる。
 彼は有名な絵具会社の共同経営者だったが、引退して20歳も若い妻と結婚していた。
 しかし近所のチェス仲間と妻が駆け落ちして、彼の財産も持ち出してしまったというのだ。
 ホームズに頼まれたワトスンがアンバリのところに出かけてみると、アンバリはさかんにペンキ塗りをしていた。そして、事件の夜妻と二人で劇場に行く予定だったが、妻が頭がいたいといって出かけなかったので一人で行ったのだと切符をみせる。ワトスンはその番号を覚えてきた。さらにお金をいれておくためのシャッター付の金庫などを見せられてという。妻は金庫のカギをもっていて、夫が劇場へ行っている間に金庫をあけて、男と逃げたというわけだ。ワトスンは他にも背の高い浅黒い男につけられたことも話した。
 話を聞いたホームズはワトスンが肝心な近所の人の評判をきいていないと指摘する。そして自分が電話と警視庁の助力で自分が収集しておいたという。
 アンバリの評判は乱暴で厳格、そしてけちん坊というものだった。
 これらの情報から、ホームズはニセの電報でアンバリを遠くの村に呼び出して、その間にアンバリの家を調べる。このとき背の高い浅黒い男と出会い、友人でライバルのバーカー氏であることが分かった。
 二人は協力し、アンバリを呼び出すと「二人の死体をどうしました?」と質問。アンバリは自殺を図るがホームズに止められる。
 ホームズは、嫉妬深いアンバリ氏が二人が浮気しているという妄想にとりつかれ、金庫室に閉じ込めガスで殺害。真相をかくすため、金庫のなかのものをどこかに隠して、警察に届け出たと真相を暴露。
 ワトスンが覚えてきた席番号から、アンバリ氏も当日劇場にいっていないことがわかり、ペンキ塗りはガスの匂いを消すためだったのである。
 ホームズは死体のありそうな場所を指摘したあと、すべての手柄を地元警察にゆずり、いつか真相を書いてくれとワトスンにいう。


5 覆面の下宿人
 ワトスンが、ホームズが関係者の名誉を重んじていて、悪用することはない、しかし、これらの記録を不正に手に入れようとした人がいて、その人物には警告していた。
 そして、ホームズが活躍するチャンスがないまま終わってしまった事件としてこの事件をあげていた。
 ロンダ夫人という人物がホームズに会いたいといっているという。夫人は7年間メリロウ夫人の下宿にいながら、1度しか覆面の下の顔をみせたことがない。その顔はえぐりとられたような恐ろしい顔だったという。
 ロンダ夫人の夫はサーカスの興行師で人気があったが、大変な大酒のみで人気は下降気味だった。二人はなついていたライオンのエサやりの最中に襲われて夫は死亡。夫人は重傷を負ったのだ。夫人は「ひきょうよ」と言いながら運ばれたという。
 会ってみると、ロンダ夫人は、親しい人のために真相を隠してきたというが、すでに亡くなったという。そして真実を暴き立てて新聞で騒がれるのは嫌だが、真実をだれかに話しておきたいというのだ。
 ロンダ夫人は10歳でサーカスに売られ、長じるとロンダの目にとまって結婚させられた。嫉妬深く、サーカスの他の人と話すのも禁じられていた。暴力もふるっていた。
 百人力の芸をするレオナルドが同情してくれて、夫人は心惹かれる。レオナルドはライオンの爪にみえるように釘をつけた棍棒でロンダを打ち殺して、一緒になる計画をたてた。しかし、血の匂いに凶暴になったライオンは本当に襲い掛かってきて、夫人は重傷を負った。レオナルドは逃げ出した。
 一部始終をきいたホームズは最大限の同情をみせる。そして夫人の言動から自殺を思いとどまるように諭す。
 数日後ホームズのところに夫人から薬の瓶が送られてくる。夫人はホームズの忠告に従ったのである。


6 ショスコム荘
 サー・ロバート=ノーバトンは、むこうみずな騎手で、ボクサーで体操選手。トラブルの相手を殺しそうになったこともある。ショスコム荘というところに有名な種馬飼育場と調教場をもっていて、ショスコム・プリンスという名馬ももっている。しかし女好きと賭け事でおおきな借金をもっている。ショスコム壮は実は彼の妹が夫から相続したもので、彼女が亡くなると、夫の弟が相続することになっているという。ホームズがワトスンから聞き出した情報である。
 ホームズはショスコム壮の主任調教師ジョン=メイスンから相談の手紙をうけとっていたのだ。本人がやってきていうには、ロバートは借金を返すために、ショスコム・プリンスを次のレースで優勝させて、しかもかけ率を上げるために、外にでるときは兄弟馬にのって、ショスコム・プリンスがたいしたことない馬のようにみせかけている。それだけでも十分変なのに、仲良くしていた妹とケンカしたのかまったく交流がなく、妹のベアトリス=フォーダはまったく人前に姿をみせなくなってしまった。ベアトリスの女中はロバートと通じているのであまり信用ならないという。さらにはロバートが夜中に古い教会の地下室に行くのをみて気味悪がっていた。メイスンはベアトリスの心配をしていたのである。
 ホームズもベアトリスが殺されたのではないかと推理、ショスコム壮の近くの宿にワトスンと釣り客を装って泊まり、ベアトリスの飼っていた犬を近づけて反応をみたりした。そして、家に引きこもっているのはベアトリスの偽物と断定。
 ロバートが行っていた古い教会の地下にいってみると、そこでロバートと鉢合わせした。
 追い詰められたロバートがすべてを告白。莫大な借金を返すためのレースが間近なのに、妹が病死してしまった。するとショスコム壮は取り上げられ、自分は債権者に追い詰められる。それで悪いとは思ったが妹の死を伏せて影武者をたてていた。妹の犬も遠ざけていた。地下の先祖の棺のひとつをあけて死体はそこに置いておいたのだ。
 結局、サー・ロバートは賭けに勝ち。債権者にお金を返して、財産を築くことができた。妹の死因も病死と判定され、届がおそくなったのをとがめられたにとどまったという。



シャーロック=ホームズの事件簿 下  シャーロック=ホームズ全集 (14)

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