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浮雲 (1951年) (新潮文庫〈第279〉) [小説]

原作は明治19年に二葉亭四迷が坪内逍遥にであったころにかかれた。間をあけて第3篇まで書かれているが未完。
その当時の人たちのしゃべりのままにかかれているので、最初なれない。漢字とカタカナがまじって、知らない用語も多い。

主人公、内海文三は、静岡の藩士の子どもだった。父親をなくし、母親が苦労して学問させた。叔父をたよって東京で学費免除の学校に通い、公務員になる。身を固めて(なんとなく、下宿先の娘・お勢と結婚話がまとまりそうな雰囲気だった)母親を呼ぼうとしている矢先に、リストラされてしまうところから話が始まる。

叔父さんは、維新のあと、苦労して商売をはじめ、茶店を営業していて、それほど裕福でもないが、まずまずの暮らしをしている。

叔父さんの妻・お政は、如才のない抜け目のない婦人。文三が居候だったときはつらくあたったりすることもあったが、夫の係累だからと面倒をみてきた。子どもは、お勢ともう一人男の子がいて、男の子は学校があって寄宿している。子どもたちのわがままをきいてあげる優しい母である。

お勢は、小さいころから、父親は学問、母親は芸事をやらせていたが、どちらもなかなかのもの。隣の家の学問ができる娘にかぶれて私塾に通い、今では母親を「学問のない人は」などといって、いうことをきかない面も。
文三が学問ができる人と認識されていて、英語を習うなど仲良くしている。

文三の同僚本田昇は、生まれもそれほどではなく、学問も文三ほどできないが、如才がないタイプで、常に課長へのおべんちゃらを忘れない。盆暮の付け届けはもちろん、休日でもご用はないかとうかがうようなタイプ。リストラはされなかった。

物語は、本田が文三のいる叔父の家に出入りして、お勢にちょっかいだして、文三がやきもきするとか。
お政は本田の如才のなさをほめるが、文三は卑屈な奴と思う、でも、自分がリストラされてしまったことから、母親のためにも本田のように生きるべきではと思ったり。
文三はお勢が自分のことを好きだと思い込んで、心変わりを責めたら、かえって怒りをかったり。
文三の就職活動がまったくうまくいなかい話とか、お政にイヤミをいわれて突発的に下宿を探したりするが、かといって、いろいろ理由をつけては実行に移せない様子とか。

日常生活を追いながら、文三の心中を中心に話がすすんでいく感じです。
基本的に文三とお勢の恋愛というか、関係というか、そういう話なんじゃないかな。
そういう視点でかくと、文三とお勢は、お勢が文三を学問があると尊敬する、文三は学問のわかる娘としてお勢を扱う。そうして仲がよい二人をみて、お勢の両親も嫁にやってもいいかなと思っていた。お勢はわからないけど。
けれど、リストラがあって、話はチャラというか、はっきりとしていなかったのですべてお蔵入りになり、疎ましがられるくらいになった。
そこに本田がやってきて、お政は本田のことろに嫁にやろうと思う。本田の女性の扱いがうまいので、お勢も嫌がっているようにはみえないが、今度も本当の気持ちはわからない。
文三はお勢が心変わりしたと責めるが、お勢にしてみたら恋人になった覚えはないし、無実の罪を責められた気分で文三を無視する。
文三は怒って出て行こうとするが、お勢をまっとうな道にもどせるのはじぶんだとかいって、結局出て行かないことにする。
お勢は、新しく編み物を習い始め、本田には冷たくするようになる。
文三は、お勢ともう一度話してみてから、うまくいかなかったら叔父の家をでようと考える。(再就職はできていない)

そして、唐突にここで話は終了。


浮雲 (1951年) (新潮文庫〈第279〉)

浮雲 (1951年) (新潮文庫〈第279〉)

  • 作者: 二葉亭 四迷
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1951
  • メディア: 文庫



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もうひとつのMONSTER―The investigative report (Big comics special) [小説]

浦沢直樹の漫画MONSTERをまだ読んでいない人はネタバレなので読まないでください。
MONSTER 完全版(ビッグコミックススペシャル) 全9巻セット

MONSTERで登場した怪物「ヨハン・リーベルト」と同じ教育を受けて、同じ能力をもつ人物がいて、それをジャーナリストヴェルナー・ヴェーバーが追うという筋書きである。浦沢直樹は訳者ということになっており、最後は失踪したウェーバー氏を気遣うというストーリーになっている。

取材の過程でヨハンについてもさらに掘り下げており、彼の祖先についても詳細に取材する設定になっている。

内容は事件のあらましと、関係者へのインタビュー形式になっている。

事件は、2000年11月14日、当直の医師と受付、看護師の3人が斧で殺害されたというもの。犯人は斧でカップルを襲って7名を殺して逃亡中の連続殺人犯で、警官の前で「使命は果たした」といって自殺した。
実は殺された3人は、もう一人の怪物がけがをして病院に来た時にあったために殺害されたのではないかというのがウェーバー氏の推理であり。怪物がけがをしていたのは、旧チェコスロヴァキア政府で裏の仕事をしていた人物を事故にみせかけて殺害してきたためだったのだ。
怪物の能力をもつものは、快楽殺人犯を使って人を殺すことができる。
怪物たちは人の名前を奪って精神を崩壊させたり、心に入り込んて、その人にとって唯一の理解者になり思いのままに操ったりする能力をもつ。

それはチェコスロヴァキアで一人の天才ドイツ系チェコ人が開発したもので、政府が後押しをして開発をしていた。しかし天才は一人の女性に恋して、彼女の双子の子どもを逃がした。それが、MONSTERのヨハンとアンナ(リナ)である。彼らの世話をしてくれた大人たちが次々と死んでいく理由がヨハンにあるとわかったアンナが兄を殺そうとしたが、日本人天才外科医テンマによって奇跡的に救われ、そのごテンマは自分のしたことを後悔してヨハンを殺そうとするというのがMONSTERの内容だ。

この本ではテンマが日本で後妻の子どもとして生まれ、兄に気をつかいながら生きてきたことなども掘り下げられる。彼はいつもタイミングが悪いのだ。

全体に人物のほりさげと、背景の厚みについて、掘り下げる内容になっている。
特にチェコの歴史とドイツに近いズデーデン地方の話。チェコのドイツ系の人々の話が細かくかたられていた。ここではナチスに頼ってドイツの一部になろうとしてチェコ人が追い出されたがヒトラーの敗北によって、今度はドイツ系の人々が追い出された。残ったドイツ系の人々は苦しい道を歩くことなるという背景が語られていた。
ドイツ系のチェコ人というのがキーワードになっていた。

インタビューした人たち、あるいは周辺の人たちから話をきいた人たち。浦沢直樹のイラスト入り。
ケンゾー・テンマ (周辺の人)天才外科医
エヴァ・ハイネマン(本人)テンマの婚約者・父親はテンマの恩師でヨハンに殺された。
ハインリッヒ・ルンゲ(本人) ドイツ連邦捜査局警部。鉄壁の記憶力をもち。最初はテンマが多重人格で犯人と思っていた。
511キンダーハイム(アンナの指導教官)
ルーディ・ギーレン(本人) テンマの学友で心理学者
カール・シューバルト(本人) シューバルト財団の総帥の一人息子。ヨハンに利用された。
ロッテ・フランク(本人) カールの友達。ヨハンの行動をしっていた。
ユーリウス・ライヒワイン(本人) 心理療法センターの医師。偶然ヨハンにかかわり殺されそうなところをテンマに助けられた。ニナやエヴァの主治医でもある。

ヤン・スーク(本人) チェコの警察官。ヨハンの警察官殺害に事件にまきこまれ、グリマー氏に助けられる。
カレル・ランケ(本人) 元秘密警察の大佐。秘密警察時代に天才心理学者を知っていた。
赤いバラの屋敷(周辺の人) 天才心理学者が絵本作家をしていたときの担当編集者。
双子の母親アンナ(周辺の人) 旧秘密警察の悪事を暴き追及する闘士ハウセロヴァー女史。
ソボトカ(本人) 元朗読会メンバー。笑い方を研究している。
ヤロミール・リプスキー(本人) 天才心理学者の息子。
フリッツ・ヴァーデマン(本人)冤罪はらしの達人といわれる弁護士。テンマの弁護をひきうけた。はじめて父親がスパイだったことをメディアに告白。
マルティン(エヴァのメール)エヴァと一時的に行動をともにした殺し屋。銃撃戦で死亡。
ペトル・チャペック(周辺の人)チェコからの亡命者。天才心理学者の助手。彼を狙った暗殺者ミランを知る人アメフット・ムスタファ氏にインタビュー。トルコ人街焼き討ちのときの人。
グリマーノート グリマー氏が調べたことを書き残したノートのコピー。天才心理学者が絵本作家として出した本の調査。
ヘルマン・フェアー(周辺の人) 絵本作家。天才心理学者と似ているが別の人物と思われる。担当編集者にインタビュー。フォスの電話番号は誰もでない。
ベンヤミン・ヴァイスバッハ(本人)テンマが最初にヨハン事件にかかわったときの担当刑事。ヨハンと快楽殺人者の連絡方法をしっていた。ニナにであったあとヨハンの崩壊が始まる。
ルーエンハイム(天才心理学者が隠れ住む町、ヨハン事件の最後の舞台)での顛末。
ニナ・フォルトナーあるいはアンナ・リーベルト(本人のインタビューは断られ続けていたので他の人の話から)
「超人シュタイナー」の最終話について原作者にインタビュー。シュタイナーの最終回は二つあり、人格が融合した最終回のみがヨーロッパで放送された。アメリカでは最初の最終回の内容があまりに絶望的だったので、作り直している間にまにあわなかった。
アンナ(ヨハンの母親)下宿先の経営者、クラブで歌手のバイトしていたときの同僚の女性、ブルの大学の職員。プラハで短医官一緒に暮らした女性。
クラウス・ホッペ(天才心理学者の父親)故郷の共産党幹部だった老人から話をきく。どうやら息子の名前を奪う実験に使われて亡くなったらしい。
フランツ・ボナパルタ(天才心理学者)取材からわかったのは、もしかしてヨハンの父親は天才心理学者の異母兄弟かもしれない。ということ。 

終章は、ルンゲ警部が、一番最初に取材していた、斧による殺人の犯人が好きだと言っていた「闇のルドン」の挿絵がフランツ・ボナパルタに似ていると指摘。この「闇のルドン」はヨハンの好きだといっていた本。ただし連載はボナパルタが筆を折ってから始まっているので、ボナパルタではない。ルンゲ警部は「闇のルドン」の作者が怪物だと指摘。

その後、怪物本人からホテルの部屋に電話がかかり、「これから新作をもっていく」という。今隣の部屋にいるからと。
その後ウェーバー氏は行方不明。電話を録音したテープだけが落ちていた。

巻末には部屋に残されていた、怪物の新作と思われる「めざめるかいぶつ」がのっている。



もうひとつのMONSTER―The investigative report (Big comics special)

もうひとつのMONSTER―The investigative report (Big comics special)

  • 作者: ヴェルナー・ヴェーバー
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: コミック



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犬と私の10の約束 [小説]

北海道函館市に住む主人公の女の子は12歳のときに母親をなくす。
父親は仕事人間でほとんど家にいない、母と娘はとても仲良く楽しく暮らしていた。しかし、母親はガンで突然なくなった。
だまっていれば美人だけど、ドジで明るくて、マドンナとシンディ・ローパーが好きな明るいお母さん。

主人公あかりは、犬が飼いたかった。母親が入院直前に、近所のコンビニから犬をもらってくれていた。一度はいなくなったが、家に戻ってきたところをあかりがみつけて飼うことになった。あかりは、あとでその経緯を知る。

犬は足が白いのでソックスと名付けられる。母親があかりに話した犬を飼うときの10の約束が。

・私と気長につきあってください。
・私を信じてください。それだけで私は幸せです。
・私にも心があることを忘れないでください。
・言うことをきかないときは理由があります。
・私にたくさん話しかけてください。人のことばは話せないけど、わかっています。
・私をたたかないで、本気になったら私の方が強いことを忘れないで。
・私がとしを取っても仲良くしてください。
・私は10年くらいしか生きられません。だから私と一緒にいてください。
・あなたには学校もあるし友達もいます。でも私にはあなたしかいません。
・私が死ぬとき、お願いです、そばにいてください、どうかずっと覚えていてください、私がずっとあなたを愛していたことを。

病室でこの話をきいた12歳のあかりは、深く考えず「守る」と約束した。
のちに、これはソックスを譲ってくれたコンビニの店長からもらったものだとわかる。
10年後にソックスはなくなるが、あかりはこの約束が全部思い出せなくなっていた時期があった。父親がもっていた紙にかいてあってのをみて、初めて母親のオリジナルではないことや、ソックスをもらってくれたのは母親だと知ることになる。

母親を亡くし、仕事人間の父親は娘を気遣いながらも、仕事をあきらめることはできない。あかりはコンビニを頼りに、ほぼ一人で過ごすことになる。そんなときソックスはそばにいてくれた。あかりは泣くことなく母親の死を乗り越えたかにみえた。

あかりは中学でギターのうまい同級生星くんと仲良くなる。素直な星くんは、ギター教室を経営する両親からギターの才能を期待され、フランスに留学することになる。

あかりの父は札幌の病院に転勤になり、宿舎ではソックスは飼えないと、星くんにあずかってもらうことになっていたが、星くんが留学することになり、あかりは父親の運転する車で見送りとソックスを引き取りに空港に向かう。しかし、父の携帯に病院から連絡が入り、途中からタクシーを使うことになり、見送りに遅れてしまう。
しかし、病院からの連絡は「難しい手術」ではなく「政治的要人の絡んだ手術」だったことを知った父は、退職して函館に戻り開業する。

あかりは空港から星くんの家に向かうが、星くんの母親はあかりによい感情をもっていないので、冷たい対応をうける。ちょうどソックスが家を逃げ出し、あかりは必死で探す。なんとかみつけてびしょ濡れで星くんの家に戻り、助けてもらう。父親が迎えにきて病院をやめるという。
あかりが渡した連絡先は、星くんの母親がかくしてしまい、二人は音信不通になる。
星くんの家は引っ越してしまい、連絡手段もなくなる。

あかりは高校から短大にすすみ、進路を模索する。そんなとき偶然星くんの出るコンサートをみつけ二人は再会。自然とつきあうようになる。

あかりは獣医になりたいという夢をもち、動物園でバイトをしながら勉強を開始。星くんとの付き合いもあり、ソックスのことは次第に気にかけなくなる。それどころか、短大の卒業式の晴れ着を汚されたと怒ったりする。

ある日星くんが待ち合わせ場所にやってこなかった。連絡もとれない。札幌に越した星ギター教室にいくと、事故にあって今まで通りにはギターが弾けなくなったという。
あかりは、ソックスが父の開業した医院で、セラピードックのようなことをしていたことから、星くんの家につけれくる。星くんは元気を取り戻し、作曲家になるといって音大に入り直す。

あかりは山口の大学に入り、最初はソックスと暮らす家を探したりもしたが、次第に忙しくなってそのままに。ソックスは寝てばかりいるようになり、あかりが二年生のとき亡くなった。父が連絡してくれたので、あかりはソックスが死ぬまでに間に合った。そして、母親が亡くなったときも流さなかった涙を流す。

獣医になって東京で動物園に勤めるようになったあかりと、音大を卒業した星くんは結婚することになる。結婚式のシーンで話は終わる。

深刻なシーンが多いのにさわやかで、そして主人公が約束を覚えていないことがとてもリアルに感じるお話しでした。


犬と私の10の約束

犬と私の10の約束

  • 作者: 川口 晴
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/07/28
  • メディア: 単行本



タグ:川口 晴
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