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[PR]本のベストセラー

カソウケン(家庭科学総合研究所)へようこそ [自然科学]

著者は東京大学で化学を専攻、博士課程で中退して、専業主婦になった。
日常生活を科学の目でみることで毎日を楽しくしようと思い立ち、その過程をHPにした。
そのことが縁でほぼ日刊イトイ新聞で連載をするようになったそうだ。
この本はHPの記事をまとめたもの。

自宅を家庭科学総合研究所=カソウケンとよんで、
夫が所長、自分を研究員A、長男を研究員B、次男を研究員Cとよんでいる。
シャレで研究員募集とか、実験結果を論文にして学術誌「nature"n"(ネーチャン)」に投稿したといして、
英語でタイトルつけた論文がはいったりしていた。
イラストやギャク漫画がはいっているので、ボリュームの割に読みやすい。


カソウケンの1週間として、曜日ごとに4-6個のトピックをとりあげていた。

○シミ抜き・・・極性の大原則
 プラスチックの下敷きをこすって帯電させた状態で水に近づけると水が曲がる。これは電気の力がはたらいているから。
 液体には電気の力の影響をうけやすいものと受けにくいものがある。
 受けやすいもの=極性が大きいという=水
 中間のもの=アルコールなど
 受けないもの=無極性=油
 という風に分類できて、極性の大原則として、極性の近いもの同士は溶けやすいということがある。
 簡単位いうと、醤油やコーヒーの汚れは水溶性だから水でいいし、
 ファンデーションやチョコレートは油性なんで、無色のオイルがよい。
 赤ワインの場合は白ワインがよいということになる。

○寝かせる科学・・・一晩寝かせたあの旨さ
 香辛料の熟成効果・・・ブレンドしたばかりだと風味が荒くばらばらに感じるのが、時間がたつと風味がまろやかな方に変化する。ただし新鮮さは失われる。
 さめるときに味がしみる・・・一度うまみが煮汁にとけだし、冷ますとうま味と調味料が材料にしみこむ。浸透圧の原理。
 ただし、加熱中でも浸透圧の原理は働くはずなのに、なぜ溶け出すのか?これははっきりわからなかったが
 研究員Aの予想として、細胞壁がこわれているから、単純な浸透圧で説明できない。加熱されて分子の熱運動が活発になっている、あたりではないかと予測していた。
 ただし、魚の煮つけは再加熱すると、色が黒く、味も香りもなくなり、身もしまってまずくなるそうです。
 
○色の変わる科・・・おうちでお手軽実験
 光の色は光の波長。
 ハーブティーのマローブルーはアントシアニンという色素がはいっていて、酸性なら赤、中性は紫、アルカリは青になる。
 pHが変わると分子構造に4つのバリエーションがあって、それぞれ違う色の光を吸収する。
 だから、いろんなものを入れると色が変わってカメレオン実験ができる。

○マヨネーズ・・・コロイドの科学
 極性の法則で混じらない水と油。
 液体にはみな表面張力(界面張力)があって、表面になりたがらず、仲間とくっつきたがる。
 2種類の液体をいれたとき2層にわかれるのはこのため。
 表面張力を弱くしてくれるのが界面活性剤。
 さらに油の周りに膜をつくって水の中に安定していられるようにしてくれる。
 構造としては一方の手が親水基で水とくっつき、他方の手は親油基で油とくっつくようになっている。
 マヨネーズの場合は卵黄がカギになる。

○エントロピー増大の法則
 エントロピー増大の法則は熱力学第二法則ともよばれる。ざっくりいうと宇宙の乱雑さは絶えず増大しているということ。
 だから、散らかっている→片付くがひとりでにおきることは絶対にありえない。
 他にコーヒー+砂糖→甘いコーヒーはあるけど、逆の甘いコーヒー→コーヒーと砂糖にならないのは、
 コーヒー&砂糖のエントロピーが、甘いコーヒーのエントロピーより小さいからと説明していた。

○漂白剤・・・あの活性酸素が大活躍
 普通の汚れは生地の繊維にからんでいるだけなので、洗剤=界面活性剤で落とすことができる。
 時間の経過などで「化学的に結合」してしまうと洗剤をつかっても落とせない汚れ=シミになる。
 漂白剤はこの汚れ物質そのものを分解する。(洗剤は分解しない)
 家庭でよく使われる酸化型漂白剤は活性酸素で汚れを分解する。
 酸化型にも塩素系と酸素系がある。
 塩素系に活性酸素は次亜塩素酸ナトリウム、脱色するちからが強く、色柄ものに使えない。除菌・防臭効果がある。使っているとき塩素が発生しているので換気に注意。
 酸素系で過炭酸ナトリウム、水の中で過酸化水素という活性酸素になるが、これはオキシドールと同じもの。
 この過酸化水素の状態でうられているものあり、それは液体状態。弱酸性なのでタンパク質である毛や絹にも使えます。

○コロイド・・・ニセモノ溶液を探せ!
 エマルジョン・・・マヨネーズのように水分の中に油分が分散した状態
  これらもエマルジョン・・・牛乳・生クリーム
 エマルジョンができる過程を乳化という。だからこの目的で使われる界面活性剤のことを乳化剤と呼ぶ。
 コロイド・・・何かの中に何かが分散して溶けたように見える状態
  溶液は分子が一つ一つばらばらになっている(砂糖水や食塩水)・・・透明
  コロイドはいくつかの分子が一塊になって分散した状態・・・不透明
  コロイドは溶けているフリをしているニセモノ溶液。
  気体の中に液体が分散→霧、個体の中に気体が分散・・・小麦粉、 液体の中に個体が分散→味噌汁、液体の中に気体が分散→ビールの泡

○砂糖・・・お菓子作りの立役者
 グラニュー糖、上白糖、三温糖は原料と製法は同じだが、精製度が違う。
 糖液を結晶させるとき最初に結晶させたものがグラニュー糖、次が上白糖、最後が三温糖。
 砂糖の主成分は「ショ糖」=ブドウ糖+果糖が一つずつ結合した状態。さっぱりした甘みを感じる。
 ショ糖が多いほど精製度が高いといわれる。
 上白糖には結晶にしたあとに転化糖(ブドウ糖と果糖がばらばらになった構造をしている)を点かしている。
 転化糖は濃厚な甘みを感じる。
 ケーキやクッキーの焼き上がりにできるこんがりしたキツネ色はメイラード反応で、糖とアミノ酸の反応でできる。
 メイラード反応がおきやすいのは転化糖。
 カラメルをつくる場合はショ糖を使う。
 砂糖は保水性が高い=砂糖が水分を惹きつけて離さない。
 食品の中に自由に動き回る自由水を少なくして、腐敗菌が水分を使えないようにする。
 他にもお菓子の乾燥を防いでしっとりさせたり、ゼリーの離水を防いだり、メレンゲの泡を安定させたり働き者。
 単に甘みを加えるだけではないのだ。

○とろみの科学・・・水溶き小麦粉であんかけを作る!?
 とろみのつく現象はデンプンのα化(糊化)という。
 デンプンに水を加えて加熱すると、水を吸収して糊のような液体になること。
 とろみをつけることとご飯を炊くことはどちらもデンプンのα化。
 台所でよく使われる3種類のデンプンの特徴
 ■ジャガイモデンプン(片栗粉)
  粘度がよくでるので、とろみをつけるのにつかわれる。
  デンプンのαかは酸・塩分・糖分によって粘度が影響されやすいデリケートなもの。
  でも水を吸って膨れたデンプン粒子は少々のことでは動じない。
  よって水溶き片栗粉は先につくって十分水分をすわせたほうがいい。
 ■こむぎデンプン(小麦粉)
  とろってしてほしいけど、粘ってほしくないホワイトソースやカレールーに使われる。
  最初に小麦をバターでいためるのはデンプンを油で覆って、ミスとの接触をさまたげることで、必要以上に粘らないようにしたり、加熱しすぎで粘りがうしなわれる=ブレークダウンを防ぐため。小麦粉は粒子が細かくてダマになりやすいのだが、油でおおうことでダマになりにくくなる。
 ■とうもろこしデンプン(コーンスターチ)
  ブラマンジェやカスタードクリームにつかわれる。
  とうもろこしデンプンはアミロースというデンプンが多い。
  冷えた時アミロースの年度は高くなる。
 と、いうわけで小麦粉はあんかけになりません。(研究員Aの失敗を科学してみたのでした)

○水の不思議1・・・水って異常だったの!
 周期表を発見したのはメンデレーエフ。化学の教科書を執筆しようとカードに元素をかいて、原子量順にならべたら、法則性があったらしい。当時発見されていない元素をいれてしまったのが、彼の凄いところ。
 周期表に建てに並んだ元素同氏はよく似た性質を持つ。
 これに従うと、水=H2Oは硫化水素=H2S(温泉のにおい)と似た性質をなるはずだが、匂いも常温で液体と気体になるところも違う。
 さらに周期表に従えば、水の沸点と凝固点は-80度と-100度のはずが、100度で沸騰、0度で凍る。
 常温にまたがる幅広い温度帯で液体になる水は扱いやすい。

○水の不思議2・・・その正体は水素結合
 1のような不思議な性質は水素結合によるもの。
 水素結合の力は大きいので、水分子を動き回らせるにはたくさんのパワーが必要になる。
 氷を圧縮すると氷がとける→スキーやスケートの原理=水は氷ると膨張する。これも水素結合のため。
 氷が水に浮くのもこのためで、他のものはなかなかそうならない。
 もし氷がしずむと夏になっても海の底で解けなくなって地球は寒くなってしまう。
 水は気化熱=液体が蒸発するときに必要な熱量が大きいので、気温があがったとき生物の温度が上がるのを防ぐ働きをする。
 比熱=液体が1度上昇するのに必要な熱量が大きいので、周りの温度が上昇しても水温が変かしにくく、生物の体温をたもつことができる。

○塩もみの科学・・・ナメクジに塩と同じ
 一つの水溶液の中で場所によって濃度に差があると、溶液内に全体を同じ濃度にしようとする変化が起こる。
 これはエントロピー増大の法則と同じ。
 きゅうりの表面に塩を振ると表面と内側の濃度を同じにしようと水分がでてくる。
 炒め物に先に塩を振ると同じ原理で水っぽくなってしまう。
 豆を煮るときに砂糖を少しずつ加えるもの同じ、水分が一気に抜けるとシワになってしまうから。

○ご飯の科学・・・主食はさすがの高機能
 デンプンは水を加えて加熱するとα化しておいしく食べやすくなる。
 放置するとβ化してカチカチパサパサで保存しやすくなる。
 β化したデンプンを加熱するとα化する。ご飯を炊くことはデンプンをβ化からα化させること。
 デンプンの老化温度は0度布巾で最大になるので冷蔵庫よりも冷凍庫がよい。パンも同じ。
 水分がないときのαデンプンはなかなかβデンプンに戻らないという性質を利用したのが熱湯を注ぐインスタント食品。
 水分を減らすとデンプンの老化をおさえることができるので、すし飯はこの原理で砂糖の保水力をつかって覚めてもおいしくしている。

○小麦粉の科学・・・グルテンを操ってお料理上手!
 主食となる食物は主成分が「デンプン」だが、小麦粉はタンパク質「グルテン」が一定量含まれている。
 この量が多い順に強力粉、中力粉、薄力粉になる。
 グルテンは、小麦粉に水を加えてよくこねるとできる。(そのままではない)
 グルテンを活かすには、よくこねること→パン・うどん、食塩は粘りをまし、かん水は延びをよくする。
 グルテンを殺すには、さっとまぜる、低温にする、短時間にする、砂糖で水分を奪う、油脂で水とグルテンの間を邪魔する、アルコールもグルテンの生成を妨げる→天ぷらやお菓子。
 
○肉の赤身の科学・・・色でわかる鮮度
 肉の色が赤いのは「赤い色素=ミオグロビン」が入っているから。これは酸素を蓄える役割をする。
 白身魚はあまり運動をしないのでミオグロビンをあまり必要としない。
 鶏も飛ばないので普通の鳥よりミオグロビンが少ない。
 筋肉だと速筋より遅筋の方がミオグロビンを必要とする。
 クジラはミオグロビンがダントツ多いので、あんなに長時間潜っていられる。
 ミオグロビンの形はポルフィリンと呼ばれるわっか上の化合物の真ん中に金属である鉄がすぽっと入っている形。
 ヘモグロビンも似た構造をしている。ポルフィリン・ファミリーの解説。へもしア人やクロロフィル。
 ミオグロビンは空気に触れて赤くなるので、変色した肉でも空気にふれさせておくと赤くなるはず、
 でも戻らなかったら水と結合して腐っているのでダメです。

○洗剤・・・天然素材で汚れ落とし
 洗剤の基本石けんは界面活性剤。
 汚れ落としは、水にぬれやすくする→汚れを包み込む(この構造をミセルという)→汚れを水の中に分解(乳化)
 他にも天然の石けんとして、パスタの茹で汁=サポニン(シャボンの語源で界面活性剤)、レモンやオレンジの皮のリモネン(油)、コメのとぎ汁(アルカリ、重層と仕組みは同じ)

○膨らむ科学・・・お菓子作りは実験なり
 膨らむには、物理的、化学的、生物的がある。
 ■物理的・・・水分や空気が膨らんだもの、そのものは変わらず状態が変化した。→スポンジやシフォンは泡立てた気泡で膨らむ。シュークリームの記事は水分の蒸発で、パイ生地も水分の蒸発で膨らむ。
 ■化学的・・・化学反応が関係する膨張、重そうは加熱すると炭酸ガスがでて膨らむが、色がついたり、匂いと味が悪くなる。そこで重そうに酸性剤を加えたベーキングパウダーを使う。
 ■生物的・・・酵母などを使ってパンを焼く。ベーキングパウダーでも作れるが味わい深くないパンができる。
    酵母からは炭酸ガスだkでなく、アルコールを含めいろんな成分ができるので、奥の深い味ができる。
    酵母は砂糖が好物。酵母によってすきの度合いが違うので、フランスパンなど砂糖のないパンと砂糖の多いパンでは使う酵母を変える。

○メイラード反応・・・おいしい匂いの源
 おいしい匂いの源メイラード反応とは、アミの化合物と糖(カルボニル化合物)が過熱されるとおこる反応。
 炭水化物も糖がならんでいるのでカルボニル化合物。
 タンパク質や炭水化物はそのままでは巨大な分子で風味はないが、加熱で文かいしてアミノ酸や糖になりメイラード反応して匂いを生む分子になる。
 メイラード反応は焦げ色も生む。
 照り焼きも砂糖と醤油のメイラード反応。
 他に、小麦粉と卵でクッキーに焼き色をつける
 醤油そのもの

○焦げの科学・・・二つの鉄則を攻略
 ちょうどよい焦げはメイラード反応が生み出す歓迎すべきもの。
 焦げ付きはタンパク質と金属の化学反応。対策は間に膜をひくこと。
 フライパンに油をひいたり、クッキングシートをひく、バターを塗って小麦粉をはたくなど。
 フッ素樹脂はタンパク質と反応しない上にくっつきにくく、熱に強く、酸やアルカリでも溶けないプラスチックの一種。
 空焚きするとフッ素樹脂が熱分解されて有害物質ができるので注意。
 はがれたフッ素樹脂が体内位入っても、消化されず排出されるので大丈夫。
 タンパク質を別物にする方法→魚を空くアミを加熱しておくと、乗せた時一気にタンパク質が別タンパクにかわって焦げ付きにくい。タンパク質に酢をぬって表面のたんぱくを別物にする方法もある。

○重曹・・・マルチな働き者
ナチュラルクリーニング・・・重曹やお酢(クエン酸)など口に入れてもそれほど害のない材料でお掃除すること。
 酸性の汚れにはアルカリ性の重曹、アルカリ性の汚れには酸性のクエン酸を使う。
 重曹は炭酸水素ナトリウム=HaHCO3のことで弱アルカリ性。胃薬から料理まで昔からよく使われている。
 ガス台の油にふりかけておいくと、するすると汚れがおちるのは、脂とアルカリ性の水酸化ナトリウムが反応して石けんをなっているから。コメのとぎ汁の汚れ落としも原理は同じ。ちなみに小麦粉も油は吸い取るが石けんの反応はないので、するするとはとれなかったそうです。研究員Aが実験済み。
 重曹は加熱すると炭酸ガスと炭酸ナトリウムになる。炭酸ナトリウムは重曹よりも少し強いアルカリ性の物質で、炭酸ガスが浮かびあがらせた汚れと反応して石けんをつくっている(のではないか)と思われます。そして焦げ付きと鍋の間に水が入りやすくなり、焦げ付きが落ちやすくなります。お鍋を焦がしたら重曹をいれて加熱してしばらくおきましょう。さっと落ちますよ。
 他にも消臭剤やふくらし粉としても役立つ働き者です。
 
○ダシ・・・おいしさの決め手の科学物質
 ダシは旨みそのもので、発見者は旧東京帝大教授、池田菊苗博士。湯豆腐にヒントを得て、夫人が買ってきた昆布から発見した。
 国際的には味覚は「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」の4種類とされてきたが、1980年代にいろいろ説明つかないことが多くなり、「旨み」が5種類目の味覚として認定された。学術用語としてもUMAMIである。
 西洋・中華のだしは野菜や鳥をいれて長時間煮込むものが多いが、日本のだしは短時間で引き上げるのが特徴。
 旨みのいろいろ
 アミノ酸系はグルタミン酸、最初に発見されたのはこれ、昆布、チーズ、しょうゆ、みそ、トマト、白菜に含まれる
 核酸系はイノシン酸とグアニル酸、イノシン酸は煮干し、鰹節、畜肉類、魚肉類、イカ・タコに含まれる。
 グアニル酸は干しシイタケ、マツタケ、えのきだけに含まれる。
 アミノ酸系と核酸系を混合すると単独で感じる旨みの数十倍になる。1+1=たくさんが旨みの方程式。
 和食ならカツオと昆布ですが、中華なら鶏と長ネギ、イタリアンならイカとトマトなどがそう。
 旨みが美味しく感じるのは生きる為に必要な物質だからという説がある。
 酸味と苦みは毒物の危険信号なので一般的に嫌われるということになる。
 人間の母乳にはしきい値(旨みを感じるギリギリの量)の2倍のグルタミン酸が含まれていて、糖分もある。「旨み」+「甘味」なのだ。
 
○分子の利き手・・・右と左でその差は大違い
 分子を模式化したときに、鏡で映したように逆の構造になるものがある。似ているけど回転させても決して同じにならない、このような関係の分子のことを光学異性体と呼ぶ。一方をR体、もう片方をL体と呼ぶが、著者はわかりやすく、右利き左利きと呼ぶ。
 リモネンという物質は片方はオレンジの香りだが、光学異性体はレモンの香り。
 カルボンという分子は、片方はミント、片方はキャラウェイ
 鎮静剤サリドマイドの悲劇もこの原理でおこった、右利きなら鎮静剤だが、左利きは妊婦が服用すると胎児が奇形になったのである。
 通常光学異性体を人工的に合成しようとすると右利きと左利きがまざってしまう。しかしほしい利き手だけ選んで合成する方法を野依良治博士が発明しノーベル化学賞をうけている。
 人体に含まれるアミノ酸はすべて左利き。グルタミン酸も旨みを感じるのは左利きだけ。
 糖はほとんどが右利き、糖は両方甘みを感じるので、人工甘味料が人体に吸収されないのはこれを使っているから。
 どうして片方なのかはまだわかっていない。

○脂肪・・・主婦の敵を攻略する
 油・・・室温で液体
 脂・・・室温で固体
 でもどちらも脂肪であることには変わりなく、その構造は、グリセリンに脂肪酸という酸が三つつながった形をしている。
 このくっついている酸が長いと分子間力が大きくなって常温で固体になる。
 長さの他に酸のつなぎ目が二重結合を含むかも大きい。
 二重結合が入るとまがるので、分子同士がぎっしり寄り集まるのは難しくなる。→固体になりにくい。
 二重結合がある脂肪酸を不飽和脂肪酸、一つもないものが飽和脂肪酸という、
 常温で固体の牛脂やチョコは飽和脂肪酸が多い、 植物油などは不飽和脂肪酸が多い、でもこれはあくまで傾向だという。
 不飽和脂肪酸のように二重結合があると酸素と結合しやすいので臭くなりやすい。魚の脂がくさいのはこのせい。
 マーガリンは二重結合を減らすため水素を添加して常温で固体の油にしている。
 
○ドライアイス・・・これぞ優秀実験材料
 ドライアイスの不思議さは「固体が直接気体になること」消えてなくなってしまう感。
 煙の正体は二酸化炭素ではない。二酸化炭素は無色。
 白く見えるのは空気中の水蒸気を一気に凍らせるから。つまり雲のしくみといっしょ。
 二酸化炭素は重いので、白いモクモクは下に流れていく、気体の重さが観察できる。
 ドライアイスを溶かした水は弱い酸性のピリピリした味になる。
 気体は圧力をかけるほど、液体にとけるので、密閉した容器で溶かすとたくさんとけるけど、二酸化炭素は気化すると容積が700倍から1000倍になり破裂する危険な実験なのでおこなわないでね。
 
○キッチン・・・熱まわりの科学
 熱伝導度・・・熱の伝わりやすさ、大きいと伝わりやすい(金属など)、小さいと伝わりにくい(陶器など)、伝えるスピード
 熱容量・・・その物質を1度上げるのに必要な熱量のこと、豆腐は熱容量が大きいので、たくさん熱を与えないといけないが、さめにくい。抱える熱の量。
 ちなみになめると身の回りの熱伝導が手で触るより精度よくわかります。
 単位体積当たりの熱容量を比熱という。重いものほど熱容量は大きい。比熱×重さ=熱容量
 水は比熱が大きい、油の倍。
 油は小さいのですぐあたたまるが、温度管理はしにくい。
 たっぷりお湯を使ってゆでるのは温度が低下しないようにするため。
 180度のオーブンに手をいれてもなんとかすぐにだせば大丈夫でも、100度のお湯にてをつっこんだら大やけど。
 同じ35度でも気温とお風呂の温度では違う。これは空気と水の比熱の違いになるもの。
 体温より低い大量の水は大量の熱を身体かうばってしまうのです。


○鍋の科学・・・カガク的調理のために
 さっと熱が伝わるという熱伝導度の高さは金属の特徴。
 これを生み出しているのが自由電子。
 金属でないものは原子のなかでひとつの電子は決まった場所におさまっているのに、金属には特定の位置に収まらない自由電子がある。
 アルミニウムは原子番号13番(番号が小さいほど軽い)。金属の中でも熱伝導度が高い。ただしアルカリに弱いのと、強度がないので、へこむことがある。アルツハイマー病との関係は現在否定されている。
 銅は、原子番号29番で重い。熱伝導度が金属の中でも群をぬいて高い。手入れをきちんとしないと緑青と呼ばれる緑の錆ができる。ただし無害であることが研究でわかっている。
 鉄は原子番号26、銅ほどではないが重い。湿気があると簡単に錆びる。しかし、融点が高いので高温調理ができる、強火で一気に調理したいときに便利。ほとんどが純鉄でなく炭素をふくむ、純鉄はもろいので、炭素量の少ないのを鋼、多いのを鋳鉄という。銅やアルミに比べると熱伝導は小さいが、熱容量はおおきいので鋳鉄の熱いフライパンはあたたまりやすく冷めにくいなべになる。これは土鍋と同じ。ホーローは鋳鉄にエナメル質の表面仕上げをしたもの。茹で者にはむかない。
 ステンレスは合金(鉄にクロム、ニッケル、銅などをまぜる)。一般的に合金は熱伝導は悪くなるが、固さは増す。使い勝手がいまいちなので、間にアルミを挟んだ多層鍋というものがあって、熱伝導のよさと、丈夫さ保温性をかねそなえている。ただし重くて高い。

○カガク語の謎・・・柱)声は控えめに
 化学反応は物質の間でメンバー交代すること。
 AB+CD→AC+BD
 化学反応は一段階のものもあれば2段階のものもある、このときどちらかにかかる時間が一方より極端に短い場合は無視できる。全体の中で時間を支配している反応を律速段階という。
 というわけで、パスタをつくるときにはお湯をわかしてパスタをゆでるが律速なんです。
 全体の中の一部なのに全体を支配してしまうんですねえ。
 反応がX→Yと進むのを正反応、X←Yを逆反応と呼ぶ。
 どちらの方向にも進むのを可逆反応、片方にしか変化しないのを不可逆反応という。
 厳密にいうと、わずかながらでも「逆反応」は発生しているので、不可逆反応はないけど、逆反応のスピードが正反応に比べて無視できるくらい遅いと「不可逆反応」に見える。
 これを研究員B・C(息子たち)が部屋を散らかすを正反応、研究員Aが部屋を片付けるを逆反応とすると、一見不可逆反応に見えるといっていた。
 もし研究員Aの片付ける速度をあげて、何もおきていないようにみえたら、それは科学平衡になったということ。
 でも、散らかるのはエントロピー増大の法則のせいなの。
 さらには片付けるやる気について、反応には活性化状態があって、この状態になるために必要な活性化エネルギーが研究員Aの場合は大きい、そこで活性化エネルギーを小さくする「触媒」として掃除機ミーレを投入。でもミーレは思いから負触媒になるかも・・・・

○マイナスイオン・・・エセか?科学か?
 マイナスイオンは科学用語ではない。
 イオンについて、電気の力→原子のしくみ→イオンで説明。
 電気の力は重力と比較にならないくらい大きい。そして重力と違うのは+とマイナスがあること。
 プラスの最小単位は陽子、マイナスの最小単位は電子。
 原子は中心に陽子が固まった核、まわりを電子がまわっている構造をしている。
 原子の中の電気のものすごいちからはプラスとマイナスのバランスをとっている状態。→中性
 電子の居場所には定員がきまっている。原子は電子の数を定員ピッタリにしたがる。
 中性の状態で電子の定員が多いと、追い出す、するとプラスの力が勝つので陽イオンになる。
 陰イオンはこの逆。
 普通気体の中ではイオンは存在しない。気体の中では中性でいたほうが楽だから。
 何かのエネルギーが加わると、ある程度の正の電荷と負の電荷を帯びた分子に分かれる→電離
 つまり「無理なこと」をしないと電離はおきないし、その量はわずか。
 この電離した分子が微粒子や水分子の集団(クラスター)などと結合したものをマイナスイオンとかプラスイオンとか呼んでいるらしい。
 マイナスイオンの実態についても、メーカーのいうことはまちまち。
 製造方法は水破方式(滝壺のまわりにマイナスイオンが多い、しかし水が病原菌におかされるとそれもふりまいてしまう)、コロナ放電式(不達の導体の間に高電圧をかけるとマイナスイオンとオゾンが発生する)、放射線式(繊維に放射物質を織り込んでいるマイナスイオン発生させる服)などが提唱されているが、どれもちょっと危ないような・・・
 トルマリンを使ってマイナスイオンを発生させるのはインチキなのがわかったようだ。
 そもそもマイナスイオンは測定法も確率されていない。
 ただマイナスイオンでストレス抑制などの研究結果はあって、でもどのようにきいているか不明なんだって。
 
○永久機関・・・夫とエネルギーは大切に!
 熱力学第一法則・・・自然界におけるエネルギーの総量は一定不変に保たれる。
 永久機関(第一種永久機関)は外部からエネルギーを与えられないから、最初に与えられたエネルギーで仕事をしたらとまってしまう。
 夫に燃料を補給しないで家事や育児をおしつけたら倒れるとたとえていた。
 第二種永久機関・・・エネルギー源である熱を「すべて」仕事に変える機関。熱力学第一法則を満たしているから間違いを見抜くのは難しい。
 どんなにがんばっても7割の効率が理論上の限界といわれている。


カソウケンの1年として、季節にひとつのトピックをとりあげていた。

○宝石の美しさ
 結晶・・・ひおつひとうの原子などが規則正しくならんでいるもの。金属や食塩も結晶。宝石も大部分は結晶。
 多結晶体・・・ひとかたまりが多くの結晶粒があつまってできている。粒の間の不純物で光が散乱。不透明にみえる。
 単結晶・・・全部が一つの結晶からできている。光がまっすぐに進んで透明にみえる。宝石はこちら。
 ダイヤモンドは炭素でできているが共有結合しているので硬い、なめらかな表面をつくるこおtができる、でも燃えやすい。
 また、屈折率が高いので広い範囲の光をとりこんで、内部で反射してより多くの光を再び外にはなつことができる。分散率が高いので光を七色にわけて外に出す。ただしカットしていないとダメですよ。
 ルビーとサファイアは主成分は同じ酸化アルミニウム(Al2O3)、ここに不純物がふくまれて色がつくのだが、酸化クロムが入るとルビー、酸化鉄と酸化チタンが入るとサファイアになる。
 酸化アルミニウムということは錆びたアルミニウム。すでに錆びているのでそれ以上変質しないで安定している。
 ちなみに真珠の成分は卵の殻といっしょ。
 
○遷移・・・分子にだって機嫌はある
 分子たちがご機嫌になる条件はエネルギー。
 光だったり熱だったり、電気だったりする。
 分子たちはエネルギーをうけるとテンションあがるけど、さめやすいのですぐもとに戻る。このとき受けたエネルギーを返す→緩和過程。
 光を光で返す分子(少数派)、蛍光分子は光を吸収して、光を放出しているので光っているように見える、蛍光ペンやバスクリンがこのしくみ。蛍光灯も。
 光を熱で返す分子(多数派)は、光で温まるものが多いのでわかる。
 夜店のリングは2種類の液体の化学反応で光る。蛍も同じ。

○高分子・・・手をつなぐと大変身
 分子はいくつかの原子の組み合わせて作られている(塩=Na+Cl)
 組み合わせる分子が多いのを高分子=ポリマーという。プラスチックや化学繊維は一つの分子の中にたくさんの原子がある巨大分子。基本ユニット(低分子)がくみあわさっている。
 低分子ではアリ状態だったのが、くみあわさって、針金になるといろんな形がつくれるようなものです。
 一本のまっすぐな状態の場合は引っ張る方向に強く自由に曲がれるので繊維。
 枝分かれして上下左右に伸びている場合は形がかえられないプラスチック。
 くみあわさって高分子は個性を発揮している。
 成熟ホルモン、エチレンガスのエチレンは高分子になるとポリエチレン。
 高分子にはポリがつく。家の中で探してみよう。
 天然の高分子、絹や綿、麻。体の中の高分子アミノ酸、DNAの核酸、デンプンも糖がたくさんつながった高分子。
 ちなみに消化酵素はこの高分子を切る役目をしています。
 こうしたいろいろな個性を発揮できることから、分解できるプラスチックの開発などが行われている。

○泡立て・・・これでもう失敗しらず?
 泡立ての条件は、泡を立てることと、泡を持続すること。
 泡をたてるためには液体のなかに空気を抱え込むコロイドにすること。
 液体の表面張力をおさえる界面活性剤が活躍。
 泡を持続させるには粘性が必要。
 生クリームの場合、乳脂肪を拡販すると衝突して集合して粘性が発生する。これが網目構造をとって安定する。
 メレンゲの場合は卵白中のたんぱく質の持つ気泡性と空気変性で泡立つ。
 卵白には表面張力を小さくするたんぱくが含まれているので気泡性がある。
 卵白のなかには空気にふれると変性をおこして膜状に固くなる成分があるので、気泡が安定する。
 メレンゲの場合油分はタンパク質の膜をこわしてしまうので厳禁。
 卵はアルカリ性なので酸性であるレモンを少しいれると中性になって安定する。
 クレーム・タータという添加物もこれと同じ作用をする。
 砂糖をいれると水をひきつけるので気泡の安定性をたかめてくれる。ただ、卵白が空気変性を起こすのを妨げる性質があるので、途中から少しずついれる。ハンドミキサーは撹拌する力が強いので、きにしなくていい。

カソウケンの研究レポート

01 つわり つわりは胎児による胎児のための防御反応?
 つわりの原因ははっきりしていないが、
 ・つわりの時期は胎児の手足、内臓、神経の形成期と重なる
 ・妊婦が吐き気を覚える食べ物は胎児の発育を妨げる可能性が高いといわれている。
 ・つわりがあったほうが流産しにくい。
 などが研究として報告されている。
 また、妊娠中の食生活が胎児に伝わるという説もあり、研究員Aも、子どもの好物を見てそう思うそうだ。

02 母乳 母乳のメカニズムは超高機能
 母乳じゃなきゃダメというつもりはないと前置きしていた。
 母乳は妊娠末期に準備され、胎盤を排出するのがゴーサインとなる。そして胎児がすうことでホルモン(プロラクチン、オキシトシン)が分泌されてでてくる。
 量も赤ちゃんが吸う頻度で調節される(数日かかる)、味や成分も出始めとしばらくたってからでかえている(お腹が空いている場合は腹持ちのよい成分がのめる)、成長に合わせて成分がかわる。完全オーダーメードなのだ。
 授乳中はオキシントンがでるので海馬の記憶力があがるという研究がある。
 授乳中は記憶力が悪くなるという説もあるがこちらは根拠がみつからなかったそうだ。
 プロラクチン・オキシントンは保護本能と関係しているという研究がある。
 オキシントンは赤ちゃんが吸うという刺激で分泌されるので生みの母でなくても分泌される。
 世話をしたり、触ったりでもオキシントンは分泌される。

03 「触る」の効用 スキンシップでキレない子が育つ!?
 生まれてすぐの子ネズミを母ネズミから引き離して接触させないと成長ホルモンの分泌がさがり、注射で補っても死んでしまうという。接触はそこまで大切。
 触るに関係する脳の部位は大きい。
 タッチケアでもマッサージでも、触るはいいことなんじゃないかな。

04 臨界期 教育にタイムリミットはあるのか?
 臨界期(最近は感受性期)は視覚や聴覚にはあるが、学習についてはよくわからない。
 むしろ脳の可塑性がわかっており、いくつになっても学習は可能ではないかといわれはじめている。
 あまり早期教育に踊らされる必要はないのでは?
 楽しんでかかわるならアリだけど。

05 バイリンガル教育 バイリンガル教育にはワナがある
 言語を習得するとき感受性期は10代はじめといわれているが、仮説である。
 それよりも、考えるときに使う言語が未熟なままの状態になる方が怖い。
 外国語が上達する人は母語の能力が高い人。
 音の聞きわけは幼児の方がいいのは確かだが、大人になっても思考力が低い方が問題なのでは。
 もっとも思考力に影響するほど英語を与えるには、相当英語漬けにしないといけないので、週1回のレッスンくらいなら毒にも薬にもならないといわれているらしい。

06 神経細胞の数 教育は出産前が勝負?
 脳が働く仕組みは、神経細胞ニューロンが軸索と樹状突起で周りのニューロンとやりとりすること。
 神経細胞自体はうまれた時がピークなのだが、使えるかどうかはニューロンのつながり多さできまるので、
 出産前教育の根拠はないんじゃないかな。
 コミュニケーションとして楽しむならいいけど、
 ちなみにネットワークをつくるのは30歳までといわれ、以降はネットワークを密にする時期にはいるという説がある。
 
07 刺激と脳の発達 刺激が多いほど脳が発達する?
 この根拠となっているのは、刺激があったラットの方が脳が発達したから。
 しかし「シナプスの過形成と刈込み」が発見されてからは、一概にそうとはいえなくなった。
 過形成とは必要以上につくること。シナプスはニューロンのつなぎ目で生後2-8か月で増え続け、以降無駄なものは削られて3歳ごろには成人と同じくらいになるというもの。過剰な刺激はこの刈込がうまくいかない、混線した脳になるのではないかという指摘がある。
 勉強だけが脳への刺激ではなく、あらゆる経験がすべて立派な脳への刺激。
 つまり普通にしていればいいんじゃない。
  
08 頭でっかち=天才か? 6歳以降の教育はムダ?
 研究員Cが転んで頭を研究員Aの足にぶつけたら足の小指にひびがはいってしまった。
 幼児の頭は5歳までに大人と同じおおきさになってしまうので頭が多き野は普通のこと。
 生まれたときは400gの脳が半年で2倍になるのです。
 ところで脳が重い方が頭が良いという証明はありません。
 赤ちゃんの脳が重くなるのは細胞数よりもネットワークができるせい。あと神経細胞の髄鞘化のせい。
 神経細胞の髄鞘化はニューロンの軸索が髄鞘というさやで覆われること。
 これができて初めて配線ができた状態になる。髄鞘はいわば絶縁体、ショートしたり漏電したりするのをふせぎ、伝達速度を高速化する。これは3歳ごろ8割が完成するという。
 髄鞘化の時期は脳の場所によって違い、運動(1歳ごろまで)→感覚→思考(10歳でも完了しない)の部位で進む。
 配線の済んでいない脳に学習の効率がいいのかも。

09 赤ちゃんは「学習」できる 記憶の工場、3歳までは未完成
 幼児記憶喪失・・・4-5歳ころまでの記憶はほとんどない。
 海馬と前頭前野が4-5歳までは十分に育っていないためと思われる。
 無意識の記憶をつくる扁桃体は生まれた時から機能がほぼととのっているが、海馬ほどディテールのあることを系統だてて覚えられない。幼児期の感情を伴った記憶はここで記憶され、しかも一度記憶されると消すことができないトラウマnなると考えられている。
 海馬は記憶するべきか判断し長期記憶にうつす場所だが、ここが完成するのは5-6歳。それ以前に正確な知識を定着させようとしても無理があるらしい。
 
10 男女の脳 男の子の発達が遅いのはなぜ?
 人体の初期設定は女性、Y染色体をもっていると、妊娠2か月ごろ男性ホルモンを出すよう指令がでて、それを浴びることで男の子の身体と脳になる。脳の場合は真っ二つになっていなくて、男性ホルモンをたくさん浴びたかで男女割合が決まる。
 一人の脳に男っぽさと女っぽさが同居しているのだ。
 男の子の場合は女の子より左脳の発達が少し遅れる。それで女の子の方が言葉が早い。
 男の子はその分右脳が発達するチャンスが多く、空間認知や図形処理は優れていることが多い。
 男女の脳でもう一つ大きく違うのは脳梁とう左右脳をつなぐ神経の束。女性の方が太い。
 このため女性の脳はバランスがとりやすく、男性の脳は特殊能力が高くなる可能性が高い。
 男女の脳はそれぞれ特色があるのだ。
 また、女性でも男性型の脳をしているひともいるし、逆もいる。
 脳の特徴として、どこかの発達がおさえられると別のところが発達するということがいえる。

11 学習障害 「できない」ことは「できる」ことのメッセージ
 アインシュタインとレオナルド・ダ・ヴィンチは脳の障害があり、そのために天才になったという説がある。
 アインシュタインの脳は頭頂部に障害があったことがわかっており、ここはワーキングメモリになっており、音を一時的に覚える音韻ループ、画像を一時的に覚える視空間メモがある。
 アインシュタインは「暗記できない」「言葉の発達が遅い」「自分で口にしたことを繰り返しつぶやく」などから、音韻ループに障害があったと思われ、ダ・ヴィンチも方言程度の外国語もしゃべれるようにならなかったということから同じ障害があったと思われる。そしてふたりとも暗算が出来なかった。
 しかし音韻ループがきのうしなかったからこそ、視空間メモが異常に発達し、相対性理論や写実的デッサンを残せたのだと思われる。
 せこせこ計算しても相対性理論にはたどりつきそうもないもんね。
 最近話題の学習障害は文部科学省の定義によると「基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す様々な障害をさす」とされる。
 「能力があるのにテストや勉強ができない」 「読み書きが苦手」「落ち着きがない」「注意力が低い」などがあてはまるといわれている。
 本人や育て方の問題ではなく、脳を含めた中枢神経系に何らかの問題があると考えられている。
 この場合、障害がある箇所以外が発達している可能性が極めて高くなる。
 思考方法にはざっくり「言語的思考」と「非言語的思考」があり、ほとんどの人は言語的に音声で考えます。
 しかし学習障害のあるひとは非言語的思考が得意なことが多いそう。
 学校教育では言語的思考で評価されるので知能が低いとされかねず、もったいないこと。
 研究員Aの好きな物理学者ファインマンもこの傾向があったらしく、いきなり図をかいて、この公式で計算すると答えがわかっている場合には、常にそれが正しくでてくる」とかいっていて、でもどうしてその公式になるかはわからなかったらしい。方程式の答えが見えるけど、途中の過程がわからないというタイプだったみたいです。


カソウケン(家庭科学総合研究所)へようこそ (KS一般書)

カソウケン(家庭科学総合研究所)へようこそ (KS一般書)

  • 作者: 内田 麻理香
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/01/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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ミステリーな算数 (パラドックス事件簿) [自然科学]

数学・統計学を教える大学講師が小学生向けに書いた算数パラドックスの本
「キサラギ」「ヤヨイ」「シモツキ」の小学生3人と全能博士がパラドックス探偵団となり、
学校新聞友の会ホームページやメールで来る依頼を解き明かす話。
あとがきで解説がしてある。

第1話 なぞのテレポート現象

N町では<謎のテレポート現象><見えないどろぼう><奇獣がでたぞ>という事件がおきている。
博士と三人はさっそく町にむかって話をきく
<謎のテレポート現象>ある山を登っていると、山頂あたりつくときりがでてきて気が付くと麓にいるという現象がおこる。
 探偵団は山に登ってみる、4キロの道のりを2時間で山頂についた。
 ここで博士が平均時速を求めされせると時速2キロとなる。
 では、くだりは平均時速が早くなるだろうから、平均時速6キロでおりるとしよう。
 すると登と下りの時速の平均は時速4キロになる。
 時速4キロで上り下りの距離8キロ(4キロ×2)を歩くと、2時間になり、上りの時間で麓までおりたことになってしまう。
 これがテレポート現象。

<見えないどろうぼう>
 隣り合う2件のせんべい店がいっしょに商売をすることにした。
 1軒は2枚で50円でせんべいを売り、他方は3枚で50円で売っていた。
 いっしょになったので、くみあわせて、5枚で100円で商売をしていたが、売り上げが減っているのだという。
 両方とも一日30枚売り上げたとすると、その合計は30÷2×50+30÷3×50=1250円。
 でも一緒に60枚売り上げると、60÷5×100=1200円
 これがみえないどろうぼう

<奇獣>
 頭が豚で体が牛で長くひろがった羽根のしっぽをもっている。
 動物の平均だと奇獣になるよね。

この町の事件は「まちがった平均の使い方」にある。


第2話 砂の本
 友達が読んでいたらいなくなってしまったという「砂の本」がパラドックス探偵団におくられてくる。
 どうやらいなくなったマイちゃんは本のなかにいるらしい、キサラギが一人で本をよんで本のなかに入って助けようとする。
 本の中では悪魔がでてきて、「先攻のお前が10より小さい数をいう、そのあと後攻の自分が10より小さくて、おまのいった数とちがう数をいう、そして大きい数をいったほうが勝ち、勝ったら返してやる」という。
 キサラギはどんな数をいっても、相手が(その数+10)÷2をいったら、相手の勝ちという後攻必勝ゲームだと気が付く。
 するとキサラギのポケベルに博士から「9.9999・・・」というメッセージが届く。
 キサラギが「9.9999・・・ずっと9のぞろ目」というと、悪魔はキサラギと同じ数しかいえないので、キサラギが勝利する。


第3話 いそがしい人々
ホームページを見ていた探偵団はJ町でおきている事件をしり、調査に向かう。
その最中シモツキの時計をヤヨイが破壊してヒビをいれるという事件が発生。
駅前で博士と一旦別れた3人は博士からお金をもらってレストランで食事をする。
3000円だったので、一人1000円ずつだして店を出ようとすると、
ウェイトレスがやってきて、勘定が間違っていたと100円ずつ返してくれる。
博士に100円ずつ返すと、博士がいうにはレジ係は2500円だったのに気が付いて500円返したが、
ウェイトレスは500円では3人でわけれないと、自分が200円とって、100円ずつ返したのだと教えてくれる。
一人900円ずつはらったので2700円+ウェイトレスの200円で2900円。100円足りない。
実は3人が払った2700円=レストランがもらったお金(2500)+ウェイトレスがもらったお金(200)が正解。

<勉強の時間がない>
 町の子どもによると、他の町の子どもと変わらない生活をしているのに、勉強する時間がなくて学力がおちているという。
 話をきいた博士の計算は、
  1日8時間寝るので、121日は寝ている。
  日曜は学校にいかないので52日とりのぞく
  土曜は半日だから26日なくなる
 と計算していくと、345日なくなってしまう計算に。レストランと同じ足し算の仕組みのパラドックス。

<町に商品があふれる、驚異の好景気>
 博士の説明によると100万円あって、パンを買うとする。
 パン屋はその100万円で魚を買った。
 魚屋はその100万円で家具を買った。
 家具屋は音楽家に100万円払った。それが博士だった。
 すると同じ100万円なのに売り上げの合計は400万円。
 ぐるぐるを繰り返すと売り上げの合計はどんどん大きくなるという仕組みで好景気になると説明。


第4話 永久の町
シモツキが海でおぼれかけてみた夢の話。

見知らぬ町をさまよっていると、みな仕事をしていない。
聞くとなんでも無料でもらえるので働く必要がないという。
工場は永久に回転する機械(台の斜面に左側は4個、右側は3個の重りがあるのでいつまでも玉は左に回転するという)で動いている。
バスは前方が斜面になっていて床下に水銀(重い液体)がはいっており、後ろの壁にかかる平均圧力は弱く、前方の圧力は強いので前進するという仕組みで動いているので運賃はただ。
ジュースの自販機もただ、電気を使わずにジュースを温めたり冷やしたりしている。中をあけると悪魔が空気の冷たい部分と温かい部分をよりわけている。そしてその悪魔が人々の魂を食べているといわれたところで目がさめた。

あとがきで、ものを動かす力の実体は、もとになる力を動く方向とそれと直角をなす方向に分解して見出さなければならないと解説していた。


第5話 ひねくれた理屈
クラスに屁理屈をいって、授業を妨害するやつがいて困っているというメールを受け取った探偵団はさっそくその学校に向かう。
妨害していたのはタケシという男の子で勉強もできるらしく、分数の割り算なんてひっくり返してかければいいだけだけど、
それが何かの役にたつのかと先生を困らせているところだった。
そこで博士が特別授業をすると教壇にたった。
「次の2時間目から6時間目の間に必ずテストをする。何時間目にテストがあるか君たちには予測不可能だ」という。
休み時間になるとタケシが、「6時間目だとすると、5時間目が終わった時に予測できる、だから6時間目じゃない」
そして「5時間目なら4時間目が終わったときわかるので、5時間目じゃない」と推理して、
「テストできる時間はない」と結論づける。
しかし博士は2時間目にテストをするといいだし、抗議するタケシに、「予測できなかったろう」という。
そして、教室の子ども達がタケシをバカにしようとしたのを止めると、頭の良さは、人を困らすより、喜ばせるために使うようにと諭す。


第6話 とどかないボール
M町にある学校で、投げたボールが相手に届かないという事態が発生しているという。
さっそく探偵団が現場に向かう。
ついてみると野球チームがキャッチボールをしているが、球は進んでいるのに、いつまでも相手に届かない。
話をきくと、1か月くらい前からときどきおきているという。
ヤヨイが観察するとボールはよくみえているときと、みえていないときがある。
博士によると、相手に届く半分の距離までよくみえて、そのあと見えなくなり、その後半分の半分まで進むと見えるという風になっているという。
シモツキが「ボールは無限回半分の切り替わり地点を通るので、いつまでも最終地点に届かないのだ」と気が付く
しかしキサラギは「無限回の切り替わりがあっても、着かないという結論にはならない、なぜなら問題にしているのは回数ではなく時間だから」と気が付く。
博士が時間を主役にして計算すると、半分まで行く時間を1秒とすると
T(届くまでの時間)=1+1/2+1/4+1/8+・・・・
この結果Tを2倍すると、2T=2+1+1/2+1/4+1/8・・・・・となる。
1+1/2+1/4+1/8・・・・=Tなので、2T=2+Tつまり、無限の足し算でも答えは2秒になる。
しかし、到着するときよく見えているか、それともいないのかはわからない。
博士は目標をキャッチボールする相手までの距離の2倍にすると、とりあえず練習できると教えていた。


第7話 仲の悪い町(前篇)
L町の小学生からメールが届き「となり町と仲が悪く、今にも乱闘さわぎがおきそうなので、原因をつきとめてほしい」という。
探偵団はさっそく町にむかった。
小学生によると「L町とK町は前からいがみあっていて、武器を揃えてケンカの訓練をしている。だれにもとまられない。仲良くした方が得なはずなのに」という。
全能博士は両方の町の町長を読んで話をきくことにした。
両方とも、こっちが武装をやめると、相手が得してこちらは大損だという。
ここで博士が、両方の町は「仲良し作戦」と「けんか」作戦をとれる、
両方が「仲良し」なら利益はそれぞれ8、「けんか」ならそれぞれ3、片方が「仲良し」片方が「けんか」だと、
「けんか」は11、「仲良し」は利益0とするという。
これをヤヨイが表にする、すると両方の利益が最大になるのは8+8=16で両方が「仲良し」のときだとわかる。
ここでキサラギが、相手がどちらの作戦できても、自分の町の利益をおおきくするのなら「けんか」がよいのだと気が付く。
だから両方の町ともに自分の利益を考えて「けんか」作戦をとっているのだと気が付く。
しかし、双方が「けんか」だと両方に利益が少ないということになる。


第8話 仲の悪い町(後編)
博士は、みんなの利益のために「仲良し」作戦をとってはどうかと両方の町長にいうが、両方ともに相手が信用できないという。
そこで、表の利益はそのままで、無限回対戦すると仮定してみた。
さらに先ででる利益は割り引いて考えることにする。すると
両方が仲良しを出し続けた利益は8+8/2+8/4+8/8・・・・=8+8(1/2+1/4+1/8・・・・)=16(届かないボール事件から)
もしどちらかが裏切って「けんか」をだすと、1度だけ利益は11になるが、以降は利益は3以下になるので
11+3/2+3/4+3/8・・・・=11+3(1/2+1/4+1/8・・・・)=14
つまり仲良しをしているほうが利益が多いことになると説明。
両方の町長は納得して仲直りした。

ゲーム理論の囚人のジレンマと同じ理屈。終わりがないと後帰納法が使えないので、ジレンマからの脱出ができる。



ミステリーな算数 (パラドックス事件簿)

ミステリーな算数 (パラドックス事件簿)

  • 作者: 小島 寛之
  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 1999/08
  • メディア: 単行本



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恋するコンピュータ (ちくま文庫) [自然科学]

1998年に刊行されたものを、十年後に加筆して出版したもの。
著者は奈良女子大学で物理学を学び、バブル華やかなころにコンピュータメーカに就職。
AIの開発に携わる中で、人間の感性をコンピュータに乗せることに興味をもったようだ。
特に言葉=語感について研究を深め、現在は会社をたちあげている。

この本では「恋するコンピュータ」すなわち、人間を感じて、応答できるコンピュータ(ロボット)について
著者の考察や、活動をつづったもの。
この本がでたとき6歳だった長男のエピソードもたくさん登場する。
赤ん坊幼児の知識獲得の過程は多くのインスピレーションになったようだ。

かなり前のものなので、2008年加筆した段階でも、あわなくなっているところはあるが、
あえて、そのままの記述にしているという。
例えば、あいまいな表現での検索などは、現在は実現している。


コンピューターは定型のプログラムされたことしかできない。
渡された情報を馬鹿正直に記録して、言われたとおりの答えしかださない。
これでは私たちは本当に欲しいデータにあうことは、なかなかできないのだ。


著者は自分をナレッジ・エンジニアであるといっている。
ものごとの有り様と成り立ちを見つめ、それを知識として扱うための枠組みを設計するのが仕事。
システムはコンピュータだけでなく、何かの流れがマニュアル化されていて、
人に直感的にわかるように表現できていて、明文化されていれば一連の系をシステムとできる。
生態系・・・いのちの流れの明文化
優秀な営業マンがいたとして、彼の営業センスを分析しシステム化するのがナレッジ・エンジニア。
さまざまなプロフェッショナルの認識と思考回路を見つけ続けているうちに、基本的な枠組みがあることに気付いた。
目の前にある事象を認識し、これまでの現在の自分の経験に照らして咀嚼して、今以降の自分の糧とする力=よりよく活きよ

うとする力
に優れている。貪欲に上のサイクルをまわす。


脳を知識獲得エンジンとみなすと、案外単純でシンプルなのかもしれない。それならコンピュータにのるかもしれない。
息子が知識を獲得していく過程を、言語学や発達心理学に照らして潜在的メカニズムを探ったり、
実験的に働きかけて解釈の確認をしたりした。
哲学をやっていた同僚中山淳浩が理学療法士の資格をとって、生体システムの仕組み(脳と感覚)についてヒントをくれた。
ヴィオラ奏者平野真敏(音が見えるそうだ)の音楽を組み立てる独自のメカニズムも同様。
そしてこの二人とともに研究ユニット「花音」をつくり(特に組織にしたりしていなかったようだ)活動していた。


人間の脳は形に音を感じる能力がある。
文字列をみると聴覚野が活性化する。
観ることと、聴くことは実はそう遠い感覚ではない。

大和田洋一郎氏の研究によると、漢字の起源はインド・ヨーロッパ祖語までさかのぼれる。
祖先は同じだが、西洋と東洋にわかれた言葉たちだが、東西で基語として確認できる言葉があるという。
例「論」とleg
これらの語が300個ほどみつかったところで、頭打ちになっているという。
著者は8割2割の法則で380個ほどあるのではないかと推測していた。
英語で一般的に使われている基語は400でだいたい一致するそうだ。
これらを「形」から「音」を「音」から「形」を感じる能力のため、同じことばが東と西にいきついてもそのままになっているのではない

かといっていた。
ただし、400というのは基本ユニットしては大きいのではないか、原子数が100を超えた時、もっと小さな単位が予感されたように

、言葉の最小ユニットももっと小さいかもといっていた。
音が脳に刺激を与えるが、これも人類共通である可能性がある。

モノはそのモノらしい音と形をもっている。
人間の脳は初めてのモノにであっても、かたちからある程度予測ができる。
また、聴くことができない音も感じるので、アナログからデジタル音源にかわったとき、笙の奏者がそのことに気がついたという。
笙はナマだともっともアルファ波を引き出す超音波がでているそうだ。
原子・分子は振動しているのだから、自分も音を発しているはずである。
すべての存在に音がある。

何か名前は、実はそれが出す音にふさわしい音を意味している。人間はいのちの音を聴きふさわしい名前をつける。
例 lily と ユリ roseとバラ

共通言語(東西で残っている)comは「共」に通じる
computerはデータや情報を共有するものという意味なのに、日本では計算機と訳されてしまった。
だから本来の用途でなく、ひたすら計算につかわれちゃったのかも。
ただ、日本人は言葉の奥になにかを隠し、それを感じ合うことにたぐいまれな才能をもっている。
それは言葉に複数の音をもっているから。(音と訓) 言霊という考えもある。
母国語の特性は技術者の方向にもでていて、アメリカは最先端にまっすぐ進むのに対して、日本人はエッセンスを横展開する

のがうまいといっていた。
インドは階級制度のため言語が複雑なので、コンピュータ言語は簡単に思えて、プログラミング技術にすぐれているのかも。
花音ではcomputerの「共有」のような言葉の奥に潜む裏情報をコンピュータのテキスト検索の技術に応用しているといっていた



同い年の画像技術の技術者にあったときの「言葉をいくら積み上げても画像の情報量にはかなわない。」といわれた
その時「青い風」という言葉がうかび、それはなんだかわからないけれど、言われたら好意をもってくれたと思う言葉で、つまり脳が

何かメッセージをうけとったのだということ。どんなに画像や音の技術があっても、最後には音とかたちをつなぐ部分=言葉にもどる

のではという考えにいたり、それは同意してもらったといっていた。

自分たちの世代を「鉄腕アトム」「鉄人28号」にあこがれた純粋な科学信奉主義者とは違い、
科学万能主義へのアンチテーゼを抱えた世代といっていた。

「青い風」をキーワードに、私たちが「考える」ときに、意味を意識するが、その裏で潜在的にかたちと音に影響されて、言葉を感

じていると解説。
また青をセイとよむことで広がるイメージ、部首で広がるイメージ。
静止したイメージから、青い山と青い風の対比、私たちの脳が対称性を好むのは脳が対称性でできあがているからと解説。

優秀な表現者は脳の対称性を好む嗜好性を利用している。
平野さんは「ヴィオラに弓をのせるとき、寄せる弓に対しては必ず返す意識をのせる」
競技ダンスでも一つのターンに二人の脳がのり、ターンのきっかけを作る男性の方が少し強めに意識を返し、女性は返す意識を

心持おくらせると、男性のまわりに優雅な花のラインができるとあった。
人間の脳は単独で完結しない、感じ合う脳の関係性の上にしか快感は図れない。
コンピュータは閉じているから心地よくないのかも。


大人は自分のイメージを正確に伝える為に熱中してしまいがち、しかし会話における言葉は相手のイメージを喚起させる鍵。
ケンカするとき何を不満に思っているか理詰めで丁寧に説明するより「さみしい」の方が共感を呼ぶ。
情報交換に夢中になるより、言葉が感応の核であることを思い出そう。
子どもは感応する天才。余分な語彙がないので心をうつ。
言葉が豊富だというのは語彙が多いのではなく、言葉によって喚起されるイメージが豊富であるということ。
言葉は暗記や詰め込みではなく快感(情動)を伴う経験として増えていかないと意味がない。
「頭が良い」脳は、感じ合う脳とのバランスをうまくとれる、相手のイメージングに対する想像力に長けている脳。

コミュニケーションの場で使われる言葉は聞き手の脳にイメージの広がりを与える鍵
認識の場で使わる言葉は、イメージの広がりに境界線を与える。
言葉は目の前の事象を認識するためのツール。扱いやすい量の情報を切りだして効率よく脳に認識させるための道具。
そしてその言葉でイメージを呼び戻す。言葉で仮想の再体験、追体験をする。
脳の才能は、イメージを言葉に凍結する、言葉を芳醇に解凍するという二つの方向がある。
イメージの広がりは言葉のくくりで阻害されるが、言葉にしなければ知識として使えないというジレンマがある。
中間色になんとかブルーとつくと青にしか見えないという体験をあげていた。

5歳の息子が「日常よくある不安」という言葉を使った。
日常よくある不安をコンピュータにいれる(コンピュータにふと不安になってもらう)には、これを捉えないといけないと分析
・現状を維持するための不安
 不安は将来のビジョンなしには感じられない。人の場合は死があるので、生存本能に根差した不安があるが、コンピュータに

はない。コンピュータに何を「あなたの幸せ」と教えるか?
・新たな何かを生み出すための不安
 新しい情報がはいってこない不安と他の誰かと打ち解けて理解しあえる交流がないときの不安。
 息子が映画「カーネギーホール」の二倍速に夢中になったときのエピソード。目の前の事象を認識したのち、追体験を繰り返

し、他者の同意を得て、知識の枠組みを確かなものにしていく仕組みとしてあげていた。

人は知識の獲得に貪欲であり、それが不安の源でもある。=知識獲得エンジン
子どもの認識は共通部分のくくりだしからはじまる。そして差分の大きさにきがつくと脳が活性化する。
類似事象がないか探し、なければ想像し、拮抗している類似事象またはその上位概念がみつかったら新事象をつけくわえて新

たな上位の概念が作り出せないか試みる。このとき既存の知識のほうに修正がくわえられることもある。このとき外界に正しいか

ためしてみたくなるらしい。そしてこれらの関係性のベクトルで脳に分類整理される。また生存本能に照らして快不快を判断す

る。

 脳をこのような、目の前の事象を認識して、脳内の知識マップを書き換え、結果が正か悪か判断するエンジンととらえ、不安

はこのシステムの重要な拠点で感じるセンサーアラームとしてとらえる
 1 差分がばらつくので、脳の分類マップに欠陥があるのではという不安。
 2 外界の反応が思わしくなく、生成された知識が正しくないのではという不安。
 3 認識結果が正あるいは真でないことへの不安

 不安センサーは外界とのかかわりがないと入らない。人間は人間の中でしか生きられない。
 コンピュータも外界とのかかわりがなければ知的には働けない。マシンが人間に絶対の答えをだすことはありえない。
 人工知能はシンプルで、外界の共感をうまくとりこんで成長し続けることが必要で、何が幸福かの判断は人間がすることという

原則を忘れないこと。


コンピュータには生命の色合いに基づいたベーシックな意思は存在しない。だから自己完結の知性にはなりえない。
新生児の強い意志をみたときそう思ったそうである。
新生児の世話をしてみて快感と不快感の間をゆれうごき、鳴き声で訴えるのをみて、コンピュータが成長しないのは快感がない

からと思った。
世界中のどこに生まれても言語が獲得できるということは、この世の事象からほとんど同じ量と質の認識ユニットを切りだせるとい

うこと。そしてそれに記号をつけられる。
これはコンピュータにやらせると難しい。どれが類似事象で、省く基準は?そして名前は?これをプログラミングしなければいけな

いのに、脳はもともともっているのだ。
花音では、言語獲得のために脳内に用意されているプレインストール・エンジンを誕生前言語フレームとよぶ、これを動かすエン

ジンは生存本能、オイルは快感。

認識は自分と対象との関係性の上に生じる。
だから、誕生前言語フレームを得るには五感のうちいくつかが必要になる。
恋するコンピュータ構想では、完璧な五感はめざさないで、視覚、聴覚センサーどまりにして、ユーザの使う言葉を広いあつめて

言語関係性データベースをつくり、ユーザの快不快情報を重ね合わせ、知識を表現するものにするという。

人の記憶は丸めることができる。
ある認識ユニットに名称をつけたら、次に出会う類似の認識ユニットは、この言葉のもとに丸められてしまう。
こうして人は認識を言葉で丸めて本当に小さな量の記憶に圧縮することができる。
人の顔認識なども、こうした圧縮できる。
そして記憶は思いだしやすい1次メモリと検索に時間がかかる二次メモリに階層化されていく。このいれかわりは日常おこなわれ

ている。
会話のときには相手のいいそうなことを一次メモリにいれておき、状況が変わるごとに書き換えている。そのためかなり不明瞭な

言葉でも聞き取れる。
そして、1 相手の言葉をききとる 2次に自分がいう言葉を紡ぎだす 3さらに相手の言葉を予想する という行為をある程度

並列でやっている。

人は相手の言葉を認識しながら全体の文脈を予測解析する部分が大きい。
この記憶のために痛みの記憶も増幅できる。記憶された痛みを呼び出して再体験することで、陣痛の痛みが何倍にもなること

からわかったという。
脳が感じるのが痛みなので、脳で逃がしてやることもできる。
妊娠中や授乳中にでるホルモンはワーキングメモリのスタック能力を下げるので、認識のための集中力が下がる。
著者はこれを仕事や育児や人間関係のストレスに応用して、それらをすたっキングしないようにしているという。

忘却もコンピュータにはありません。
人間もふとしたことで記憶がよみがえったりするので、本当の忘却はなくて思い出せないだけかも。でも人間は完全な忘却=死

があります。
古い記憶がこう着して新しい認識を受け入れられなくなる前に死を迎え、命をつないでいったん脳をクリアにするというは画期的

方法。
コンピュータもデータが溜まりすぎないように、基本的なものと、よく使うものから新しいコンピュータにうつして、一定期間すぎたら

古い方は廃棄すればいいじゃないか。
ただし、基本てきなもの=基本の概念枠がなにかが問題。

息子に生まれる前にどこにいるかきいた(一度しか聞けないような気がしていたので、タイミングを計って呼吸をあわせて慎重に)
「木の上に咲いていた」が答え。三歳のときだそうだ。
イメージのまま三年間脳内で保持されていたものが、完全な言語体系をもたない(知識を言語で獲得するようになっていない)

子どもによって表現された言葉として感動したそうだ。
大人は知識を言葉で獲得する、五感によって感じ取ったイメージも言葉による説明文をつけられて頭の中に整理されていく。

思い出すときも言葉(記号)がたよりとなる。
しかし、本当は言葉にならないたくさんのイメージをそのまま脳裏にやきつけていて、インスピレーションという形で表層にだしてい

るのかも。
コンピュータには教えられたことを教えられたままに呑みこむことしかできず、インスピレーションは生まれない。
子どもに言葉を教えるのなら、その言葉が喚起するイメージの広がりを伝えなければ意味がない。

認識はさまざまな具象のモノが配置され、時系列でおきるのを、有用な単位にきりわけてその骨子をとりだすこと。
呼吸を深く長くすることで、酸素が多く供給されて、生理的な機能や根気、集中力が高まる。
さらに脳の認識ユニットが長くなり、認識が深くなるので、思慮深さや包容力という知性の領域まで影響は及ぶ。
平野さんの演奏のための表現ユニット(リラックスポイントといっているそうだが)からヒントを得ていた。
また息の浅い子供は根気がなく、少ないバッテリーで脳というノートパソコンをフル稼働している、かわいそうな状態にみえるそうだ



呼吸は生命維持に必要だけど、それ以外ににも知性を誘発するもので、生物の温かい気配の源でもある。
呼吸のように無意識のうちに脳に刺激を送り続けるアイテムが、私たちの内外にはたくさんある。
育児疲れで考えたのは、「頑固でしつこい人」という実体はこの世に存在しない。そういう指向性のある脳が一過性のものとして

ここにあるだけ。そしてその脳は私の脳との関係性において成熟しようとしている。と考えたそうだ。
理想の恋人は互いの脳に情動を起こせる人、関係性のいごこちよさで相手を探すと時がたてば、相手は必ず理想の人になる

もの。脳は形状でさえコントロールしてしまうから。

脳科学がブームになっているのは、永遠で絶対の真理が存在することを信じて、走り続けてきた科学が、
関係性を解く科学へと生まれ変わろうとしているのかも。
女性が母性という名のもとに綿々と培ってきた資質が科学のステージに登場してくる。来世紀(21世紀)の科学は今世紀より人

を幸せにしてくれるかも。

あとがきとして
「恋するコンピュータ」は会社にいたころ21世紀型コンピュータ開発の研究コンセプトとして提唱したテーマ。
「開発者が恋するような気持ちでつくる、ユーザに恋するコンピュータたい。恋するひとと達がそっと交換しあうような、そんな洗練さ

れたアイテムになりますように」という気持ちをこめたという。
機能は、ひたすらユーザを見つめ、理解しようとすること、ユーザに何らかの情動を起こすシステムという二つだけを決めた。
実は、恋するをつきつめるのは大変なので、思考の遊び場のように自分たちの情動をときあかし、それを少しでもコンピュータにの

せればいいと思っていたという。


恋するコンピュータ10年後
息子は高校2年生で、剣道とバイクに夢中な好奇心旺盛で勉強はあまりすきではないという男の子に成長。どうやら物理に興

味がありそう。
恋するコンピュータは携帯電話の「分身」として登場。名前を入力すると語感からビジュアルな人型として登場し予測される性

格で電子空間で生きる存在だそうです。分身同士で相性を診断したりもするそう。
昔の文を読むと、見つめて寄り添うが前面にでているが、今は自立した有能で愉快なパートナーでありたいといっていた。
互いの中に刺激的情動を感じながら、それぞれ別の人生の使命をいきている。好奇心の方向はにていて、ある程度意識を共

有できるが、異なる気づきによって客観性を担保できる関係でいることが大切といっていた。
「あの人なら」と思われはじめて人間の存在価値はうまれるのかもしれない。他人の中に自分にしか見えない美点をみつけだす

ことで、自己の存在価値はあがっていく。
自分の大切な人のそういう存在になってあげればいい、それが2008年の恋するコンピュータだそうだ。

語感のはなし。
音が与える不思議な力
スズキ・シュンスケには機敏でスピード感があるイメージ
ゴウトクジ・マナブには歴史に詳しく、何かコレクションでもしていそうなイメージ
など、音から受ける力の解説。
名前は生まれた子供から感じるものを音にするということもあるし、
呼ばれることで音の力をうけるということもあるという。
ことばと存在は不可分といっていた。

語感の正体
ロボットに言葉をしゃべらせる研究をしていて、言葉の語感を科学的に分析することを思いついた。
発音体感をつかうことを思いつき、ことばの感性がわかるようになったという。
現在は事業のコアにして会社を一つもっているそうだ。
このとき統計学で処理しようとしていたら、研究は袋小路にはいっていただろう。物理学をまなんだため、発音体感を物理現象

として主観の外に持ち出せたと分析していた。
学校の勉強はものの考え方を学ぶもの。著者も物理の時間に、宙にういたボールの重力が消えた(実際には糸でつっている)と

いわれたとき、ものの見方が変わる瞬間を体験したという。

はじめて本をかくとき、「書きたいことはレポート用紙一枚に箇条書きでできてしまうので本にならない」といったら
「一番近道で結論にいくのではなく、ツアーコンダクターのようにいろんなところをみせてください」といわれ納得したという。



恋するコンピュータ (ちくま文庫)

恋するコンピュータ (ちくま文庫)

  • 作者: 黒川 伊保子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/08/06
  • メディア: 文庫



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