カソウケン(家庭科学総合研究所)へようこそ [自然科学]
著者は東京大学で化学を専攻、博士課程で中退して、専業主婦になった。
日常生活を科学の目でみることで毎日を楽しくしようと思い立ち、その過程をHPにした。
そのことが縁でほぼ日刊イトイ新聞で連載をするようになったそうだ。
この本はHPの記事をまとめたもの。
自宅を家庭科学総合研究所=カソウケンとよんで、
夫が所長、自分を研究員A、長男を研究員B、次男を研究員Cとよんでいる。
シャレで研究員募集とか、実験結果を論文にして学術誌「nature"n"(ネーチャン)」に投稿したといして、
英語でタイトルつけた論文がはいったりしていた。
イラストやギャク漫画がはいっているので、ボリュームの割に読みやすい。
カソウケンの1週間として、曜日ごとに4-6個のトピックをとりあげていた。
○シミ抜き・・・極性の大原則
プラスチックの下敷きをこすって帯電させた状態で水に近づけると水が曲がる。これは電気の力がはたらいているから。
液体には電気の力の影響をうけやすいものと受けにくいものがある。
受けやすいもの=極性が大きいという=水
中間のもの=アルコールなど
受けないもの=無極性=油
という風に分類できて、極性の大原則として、極性の近いもの同士は溶けやすいということがある。
簡単位いうと、醤油やコーヒーの汚れは水溶性だから水でいいし、
ファンデーションやチョコレートは油性なんで、無色のオイルがよい。
赤ワインの場合は白ワインがよいということになる。
○寝かせる科学・・・一晩寝かせたあの旨さ
香辛料の熟成効果・・・ブレンドしたばかりだと風味が荒くばらばらに感じるのが、時間がたつと風味がまろやかな方に変化する。ただし新鮮さは失われる。
さめるときに味がしみる・・・一度うまみが煮汁にとけだし、冷ますとうま味と調味料が材料にしみこむ。浸透圧の原理。
ただし、加熱中でも浸透圧の原理は働くはずなのに、なぜ溶け出すのか?これははっきりわからなかったが
研究員Aの予想として、細胞壁がこわれているから、単純な浸透圧で説明できない。加熱されて分子の熱運動が活発になっている、あたりではないかと予測していた。
ただし、魚の煮つけは再加熱すると、色が黒く、味も香りもなくなり、身もしまってまずくなるそうです。
○色の変わる科・・・おうちでお手軽実験
光の色は光の波長。
ハーブティーのマローブルーはアントシアニンという色素がはいっていて、酸性なら赤、中性は紫、アルカリは青になる。
pHが変わると分子構造に4つのバリエーションがあって、それぞれ違う色の光を吸収する。
だから、いろんなものを入れると色が変わってカメレオン実験ができる。
○マヨネーズ・・・コロイドの科学
極性の法則で混じらない水と油。
液体にはみな表面張力(界面張力)があって、表面になりたがらず、仲間とくっつきたがる。
2種類の液体をいれたとき2層にわかれるのはこのため。
表面張力を弱くしてくれるのが界面活性剤。
さらに油の周りに膜をつくって水の中に安定していられるようにしてくれる。
構造としては一方の手が親水基で水とくっつき、他方の手は親油基で油とくっつくようになっている。
マヨネーズの場合は卵黄がカギになる。
○エントロピー増大の法則
エントロピー増大の法則は熱力学第二法則ともよばれる。ざっくりいうと宇宙の乱雑さは絶えず増大しているということ。
だから、散らかっている→片付くがひとりでにおきることは絶対にありえない。
他にコーヒー+砂糖→甘いコーヒーはあるけど、逆の甘いコーヒー→コーヒーと砂糖にならないのは、
コーヒー&砂糖のエントロピーが、甘いコーヒーのエントロピーより小さいからと説明していた。
○漂白剤・・・あの活性酸素が大活躍
普通の汚れは生地の繊維にからんでいるだけなので、洗剤=界面活性剤で落とすことができる。
時間の経過などで「化学的に結合」してしまうと洗剤をつかっても落とせない汚れ=シミになる。
漂白剤はこの汚れ物質そのものを分解する。(洗剤は分解しない)
家庭でよく使われる酸化型漂白剤は活性酸素で汚れを分解する。
酸化型にも塩素系と酸素系がある。
塩素系に活性酸素は次亜塩素酸ナトリウム、脱色するちからが強く、色柄ものに使えない。除菌・防臭効果がある。使っているとき塩素が発生しているので換気に注意。
酸素系で過炭酸ナトリウム、水の中で過酸化水素という活性酸素になるが、これはオキシドールと同じもの。
この過酸化水素の状態でうられているものあり、それは液体状態。弱酸性なのでタンパク質である毛や絹にも使えます。
○コロイド・・・ニセモノ溶液を探せ!
エマルジョン・・・マヨネーズのように水分の中に油分が分散した状態
これらもエマルジョン・・・牛乳・生クリーム
エマルジョンができる過程を乳化という。だからこの目的で使われる界面活性剤のことを乳化剤と呼ぶ。
コロイド・・・何かの中に何かが分散して溶けたように見える状態
溶液は分子が一つ一つばらばらになっている(砂糖水や食塩水)・・・透明
コロイドはいくつかの分子が一塊になって分散した状態・・・不透明
コロイドは溶けているフリをしているニセモノ溶液。
気体の中に液体が分散→霧、個体の中に気体が分散・・・小麦粉、 液体の中に個体が分散→味噌汁、液体の中に気体が分散→ビールの泡
○砂糖・・・お菓子作りの立役者
グラニュー糖、上白糖、三温糖は原料と製法は同じだが、精製度が違う。
糖液を結晶させるとき最初に結晶させたものがグラニュー糖、次が上白糖、最後が三温糖。
砂糖の主成分は「ショ糖」=ブドウ糖+果糖が一つずつ結合した状態。さっぱりした甘みを感じる。
ショ糖が多いほど精製度が高いといわれる。
上白糖には結晶にしたあとに転化糖(ブドウ糖と果糖がばらばらになった構造をしている)を点かしている。
転化糖は濃厚な甘みを感じる。
ケーキやクッキーの焼き上がりにできるこんがりしたキツネ色はメイラード反応で、糖とアミノ酸の反応でできる。
メイラード反応がおきやすいのは転化糖。
カラメルをつくる場合はショ糖を使う。
砂糖は保水性が高い=砂糖が水分を惹きつけて離さない。
食品の中に自由に動き回る自由水を少なくして、腐敗菌が水分を使えないようにする。
他にもお菓子の乾燥を防いでしっとりさせたり、ゼリーの離水を防いだり、メレンゲの泡を安定させたり働き者。
単に甘みを加えるだけではないのだ。
○とろみの科学・・・水溶き小麦粉であんかけを作る!?
とろみのつく現象はデンプンのα化(糊化)という。
デンプンに水を加えて加熱すると、水を吸収して糊のような液体になること。
とろみをつけることとご飯を炊くことはどちらもデンプンのα化。
台所でよく使われる3種類のデンプンの特徴
■ジャガイモデンプン(片栗粉)
粘度がよくでるので、とろみをつけるのにつかわれる。
デンプンのαかは酸・塩分・糖分によって粘度が影響されやすいデリケートなもの。
でも水を吸って膨れたデンプン粒子は少々のことでは動じない。
よって水溶き片栗粉は先につくって十分水分をすわせたほうがいい。
■こむぎデンプン(小麦粉)
とろってしてほしいけど、粘ってほしくないホワイトソースやカレールーに使われる。
最初に小麦をバターでいためるのはデンプンを油で覆って、ミスとの接触をさまたげることで、必要以上に粘らないようにしたり、加熱しすぎで粘りがうしなわれる=ブレークダウンを防ぐため。小麦粉は粒子が細かくてダマになりやすいのだが、油でおおうことでダマになりにくくなる。
■とうもろこしデンプン(コーンスターチ)
ブラマンジェやカスタードクリームにつかわれる。
とうもろこしデンプンはアミロースというデンプンが多い。
冷えた時アミロースの年度は高くなる。
と、いうわけで小麦粉はあんかけになりません。(研究員Aの失敗を科学してみたのでした)
○水の不思議1・・・水って異常だったの!
周期表を発見したのはメンデレーエフ。化学の教科書を執筆しようとカードに元素をかいて、原子量順にならべたら、法則性があったらしい。当時発見されていない元素をいれてしまったのが、彼の凄いところ。
周期表に建てに並んだ元素同氏はよく似た性質を持つ。
これに従うと、水=H2Oは硫化水素=H2S(温泉のにおい)と似た性質をなるはずだが、匂いも常温で液体と気体になるところも違う。
さらに周期表に従えば、水の沸点と凝固点は-80度と-100度のはずが、100度で沸騰、0度で凍る。
常温にまたがる幅広い温度帯で液体になる水は扱いやすい。
○水の不思議2・・・その正体は水素結合
1のような不思議な性質は水素結合によるもの。
水素結合の力は大きいので、水分子を動き回らせるにはたくさんのパワーが必要になる。
氷を圧縮すると氷がとける→スキーやスケートの原理=水は氷ると膨張する。これも水素結合のため。
氷が水に浮くのもこのためで、他のものはなかなかそうならない。
もし氷がしずむと夏になっても海の底で解けなくなって地球は寒くなってしまう。
水は気化熱=液体が蒸発するときに必要な熱量が大きいので、気温があがったとき生物の温度が上がるのを防ぐ働きをする。
比熱=液体が1度上昇するのに必要な熱量が大きいので、周りの温度が上昇しても水温が変かしにくく、生物の体温をたもつことができる。
○塩もみの科学・・・ナメクジに塩と同じ
一つの水溶液の中で場所によって濃度に差があると、溶液内に全体を同じ濃度にしようとする変化が起こる。
これはエントロピー増大の法則と同じ。
きゅうりの表面に塩を振ると表面と内側の濃度を同じにしようと水分がでてくる。
炒め物に先に塩を振ると同じ原理で水っぽくなってしまう。
豆を煮るときに砂糖を少しずつ加えるもの同じ、水分が一気に抜けるとシワになってしまうから。
○ご飯の科学・・・主食はさすがの高機能
デンプンは水を加えて加熱するとα化しておいしく食べやすくなる。
放置するとβ化してカチカチパサパサで保存しやすくなる。
β化したデンプンを加熱するとα化する。ご飯を炊くことはデンプンをβ化からα化させること。
デンプンの老化温度は0度布巾で最大になるので冷蔵庫よりも冷凍庫がよい。パンも同じ。
水分がないときのαデンプンはなかなかβデンプンに戻らないという性質を利用したのが熱湯を注ぐインスタント食品。
水分を減らすとデンプンの老化をおさえることができるので、すし飯はこの原理で砂糖の保水力をつかって覚めてもおいしくしている。
○小麦粉の科学・・・グルテンを操ってお料理上手!
主食となる食物は主成分が「デンプン」だが、小麦粉はタンパク質「グルテン」が一定量含まれている。
この量が多い順に強力粉、中力粉、薄力粉になる。
グルテンは、小麦粉に水を加えてよくこねるとできる。(そのままではない)
グルテンを活かすには、よくこねること→パン・うどん、食塩は粘りをまし、かん水は延びをよくする。
グルテンを殺すには、さっとまぜる、低温にする、短時間にする、砂糖で水分を奪う、油脂で水とグルテンの間を邪魔する、アルコールもグルテンの生成を妨げる→天ぷらやお菓子。
○肉の赤身の科学・・・色でわかる鮮度
肉の色が赤いのは「赤い色素=ミオグロビン」が入っているから。これは酸素を蓄える役割をする。
白身魚はあまり運動をしないのでミオグロビンをあまり必要としない。
鶏も飛ばないので普通の鳥よりミオグロビンが少ない。
筋肉だと速筋より遅筋の方がミオグロビンを必要とする。
クジラはミオグロビンがダントツ多いので、あんなに長時間潜っていられる。
ミオグロビンの形はポルフィリンと呼ばれるわっか上の化合物の真ん中に金属である鉄がすぽっと入っている形。
ヘモグロビンも似た構造をしている。ポルフィリン・ファミリーの解説。へもしア人やクロロフィル。
ミオグロビンは空気に触れて赤くなるので、変色した肉でも空気にふれさせておくと赤くなるはず、
でも戻らなかったら水と結合して腐っているのでダメです。
○洗剤・・・天然素材で汚れ落とし
洗剤の基本石けんは界面活性剤。
汚れ落としは、水にぬれやすくする→汚れを包み込む(この構造をミセルという)→汚れを水の中に分解(乳化)
他にも天然の石けんとして、パスタの茹で汁=サポニン(シャボンの語源で界面活性剤)、レモンやオレンジの皮のリモネン(油)、コメのとぎ汁(アルカリ、重層と仕組みは同じ)
○膨らむ科学・・・お菓子作りは実験なり
膨らむには、物理的、化学的、生物的がある。
■物理的・・・水分や空気が膨らんだもの、そのものは変わらず状態が変化した。→スポンジやシフォンは泡立てた気泡で膨らむ。シュークリームの記事は水分の蒸発で、パイ生地も水分の蒸発で膨らむ。
■化学的・・・化学反応が関係する膨張、重そうは加熱すると炭酸ガスがでて膨らむが、色がついたり、匂いと味が悪くなる。そこで重そうに酸性剤を加えたベーキングパウダーを使う。
■生物的・・・酵母などを使ってパンを焼く。ベーキングパウダーでも作れるが味わい深くないパンができる。
酵母からは炭酸ガスだkでなく、アルコールを含めいろんな成分ができるので、奥の深い味ができる。
酵母は砂糖が好物。酵母によってすきの度合いが違うので、フランスパンなど砂糖のないパンと砂糖の多いパンでは使う酵母を変える。
○メイラード反応・・・おいしい匂いの源
おいしい匂いの源メイラード反応とは、アミの化合物と糖(カルボニル化合物)が過熱されるとおこる反応。
炭水化物も糖がならんでいるのでカルボニル化合物。
タンパク質や炭水化物はそのままでは巨大な分子で風味はないが、加熱で文かいしてアミノ酸や糖になりメイラード反応して匂いを生む分子になる。
メイラード反応は焦げ色も生む。
照り焼きも砂糖と醤油のメイラード反応。
他に、小麦粉と卵でクッキーに焼き色をつける
醤油そのもの
○焦げの科学・・・二つの鉄則を攻略
ちょうどよい焦げはメイラード反応が生み出す歓迎すべきもの。
焦げ付きはタンパク質と金属の化学反応。対策は間に膜をひくこと。
フライパンに油をひいたり、クッキングシートをひく、バターを塗って小麦粉をはたくなど。
フッ素樹脂はタンパク質と反応しない上にくっつきにくく、熱に強く、酸やアルカリでも溶けないプラスチックの一種。
空焚きするとフッ素樹脂が熱分解されて有害物質ができるので注意。
はがれたフッ素樹脂が体内位入っても、消化されず排出されるので大丈夫。
タンパク質を別物にする方法→魚を空くアミを加熱しておくと、乗せた時一気にタンパク質が別タンパクにかわって焦げ付きにくい。タンパク質に酢をぬって表面のたんぱくを別物にする方法もある。
○重曹・・・マルチな働き者
ナチュラルクリーニング・・・重曹やお酢(クエン酸)など口に入れてもそれほど害のない材料でお掃除すること。
酸性の汚れにはアルカリ性の重曹、アルカリ性の汚れには酸性のクエン酸を使う。
重曹は炭酸水素ナトリウム=HaHCO3のことで弱アルカリ性。胃薬から料理まで昔からよく使われている。
ガス台の油にふりかけておいくと、するすると汚れがおちるのは、脂とアルカリ性の水酸化ナトリウムが反応して石けんをなっているから。コメのとぎ汁の汚れ落としも原理は同じ。ちなみに小麦粉も油は吸い取るが石けんの反応はないので、するするとはとれなかったそうです。研究員Aが実験済み。
重曹は加熱すると炭酸ガスと炭酸ナトリウムになる。炭酸ナトリウムは重曹よりも少し強いアルカリ性の物質で、炭酸ガスが浮かびあがらせた汚れと反応して石けんをつくっている(のではないか)と思われます。そして焦げ付きと鍋の間に水が入りやすくなり、焦げ付きが落ちやすくなります。お鍋を焦がしたら重曹をいれて加熱してしばらくおきましょう。さっと落ちますよ。
他にも消臭剤やふくらし粉としても役立つ働き者です。
○ダシ・・・おいしさの決め手の科学物質
ダシは旨みそのもので、発見者は旧東京帝大教授、池田菊苗博士。湯豆腐にヒントを得て、夫人が買ってきた昆布から発見した。
国際的には味覚は「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」の4種類とされてきたが、1980年代にいろいろ説明つかないことが多くなり、「旨み」が5種類目の味覚として認定された。学術用語としてもUMAMIである。
西洋・中華のだしは野菜や鳥をいれて長時間煮込むものが多いが、日本のだしは短時間で引き上げるのが特徴。
旨みのいろいろ
アミノ酸系はグルタミン酸、最初に発見されたのはこれ、昆布、チーズ、しょうゆ、みそ、トマト、白菜に含まれる
核酸系はイノシン酸とグアニル酸、イノシン酸は煮干し、鰹節、畜肉類、魚肉類、イカ・タコに含まれる。
グアニル酸は干しシイタケ、マツタケ、えのきだけに含まれる。
アミノ酸系と核酸系を混合すると単独で感じる旨みの数十倍になる。1+1=たくさんが旨みの方程式。
和食ならカツオと昆布ですが、中華なら鶏と長ネギ、イタリアンならイカとトマトなどがそう。
旨みが美味しく感じるのは生きる為に必要な物質だからという説がある。
酸味と苦みは毒物の危険信号なので一般的に嫌われるということになる。
人間の母乳にはしきい値(旨みを感じるギリギリの量)の2倍のグルタミン酸が含まれていて、糖分もある。「旨み」+「甘味」なのだ。
○分子の利き手・・・右と左でその差は大違い
分子を模式化したときに、鏡で映したように逆の構造になるものがある。似ているけど回転させても決して同じにならない、このような関係の分子のことを光学異性体と呼ぶ。一方をR体、もう片方をL体と呼ぶが、著者はわかりやすく、右利き左利きと呼ぶ。
リモネンという物質は片方はオレンジの香りだが、光学異性体はレモンの香り。
カルボンという分子は、片方はミント、片方はキャラウェイ
鎮静剤サリドマイドの悲劇もこの原理でおこった、右利きなら鎮静剤だが、左利きは妊婦が服用すると胎児が奇形になったのである。
通常光学異性体を人工的に合成しようとすると右利きと左利きがまざってしまう。しかしほしい利き手だけ選んで合成する方法を野依良治博士が発明しノーベル化学賞をうけている。
人体に含まれるアミノ酸はすべて左利き。グルタミン酸も旨みを感じるのは左利きだけ。
糖はほとんどが右利き、糖は両方甘みを感じるので、人工甘味料が人体に吸収されないのはこれを使っているから。
どうして片方なのかはまだわかっていない。
○脂肪・・・主婦の敵を攻略する
油・・・室温で液体
脂・・・室温で固体
でもどちらも脂肪であることには変わりなく、その構造は、グリセリンに脂肪酸という酸が三つつながった形をしている。
このくっついている酸が長いと分子間力が大きくなって常温で固体になる。
長さの他に酸のつなぎ目が二重結合を含むかも大きい。
二重結合が入るとまがるので、分子同士がぎっしり寄り集まるのは難しくなる。→固体になりにくい。
二重結合がある脂肪酸を不飽和脂肪酸、一つもないものが飽和脂肪酸という、
常温で固体の牛脂やチョコは飽和脂肪酸が多い、 植物油などは不飽和脂肪酸が多い、でもこれはあくまで傾向だという。
不飽和脂肪酸のように二重結合があると酸素と結合しやすいので臭くなりやすい。魚の脂がくさいのはこのせい。
マーガリンは二重結合を減らすため水素を添加して常温で固体の油にしている。
○ドライアイス・・・これぞ優秀実験材料
ドライアイスの不思議さは「固体が直接気体になること」消えてなくなってしまう感。
煙の正体は二酸化炭素ではない。二酸化炭素は無色。
白く見えるのは空気中の水蒸気を一気に凍らせるから。つまり雲のしくみといっしょ。
二酸化炭素は重いので、白いモクモクは下に流れていく、気体の重さが観察できる。
ドライアイスを溶かした水は弱い酸性のピリピリした味になる。
気体は圧力をかけるほど、液体にとけるので、密閉した容器で溶かすとたくさんとけるけど、二酸化炭素は気化すると容積が700倍から1000倍になり破裂する危険な実験なのでおこなわないでね。
○キッチン・・・熱まわりの科学
熱伝導度・・・熱の伝わりやすさ、大きいと伝わりやすい(金属など)、小さいと伝わりにくい(陶器など)、伝えるスピード
熱容量・・・その物質を1度上げるのに必要な熱量のこと、豆腐は熱容量が大きいので、たくさん熱を与えないといけないが、さめにくい。抱える熱の量。
ちなみになめると身の回りの熱伝導が手で触るより精度よくわかります。
単位体積当たりの熱容量を比熱という。重いものほど熱容量は大きい。比熱×重さ=熱容量
水は比熱が大きい、油の倍。
油は小さいのですぐあたたまるが、温度管理はしにくい。
たっぷりお湯を使ってゆでるのは温度が低下しないようにするため。
180度のオーブンに手をいれてもなんとかすぐにだせば大丈夫でも、100度のお湯にてをつっこんだら大やけど。
同じ35度でも気温とお風呂の温度では違う。これは空気と水の比熱の違いになるもの。
体温より低い大量の水は大量の熱を身体かうばってしまうのです。
○鍋の科学・・・カガク的調理のために
さっと熱が伝わるという熱伝導度の高さは金属の特徴。
これを生み出しているのが自由電子。
金属でないものは原子のなかでひとつの電子は決まった場所におさまっているのに、金属には特定の位置に収まらない自由電子がある。
アルミニウムは原子番号13番(番号が小さいほど軽い)。金属の中でも熱伝導度が高い。ただしアルカリに弱いのと、強度がないので、へこむことがある。アルツハイマー病との関係は現在否定されている。
銅は、原子番号29番で重い。熱伝導度が金属の中でも群をぬいて高い。手入れをきちんとしないと緑青と呼ばれる緑の錆ができる。ただし無害であることが研究でわかっている。
鉄は原子番号26、銅ほどではないが重い。湿気があると簡単に錆びる。しかし、融点が高いので高温調理ができる、強火で一気に調理したいときに便利。ほとんどが純鉄でなく炭素をふくむ、純鉄はもろいので、炭素量の少ないのを鋼、多いのを鋳鉄という。銅やアルミに比べると熱伝導は小さいが、熱容量はおおきいので鋳鉄の熱いフライパンはあたたまりやすく冷めにくいなべになる。これは土鍋と同じ。ホーローは鋳鉄にエナメル質の表面仕上げをしたもの。茹で者にはむかない。
ステンレスは合金(鉄にクロム、ニッケル、銅などをまぜる)。一般的に合金は熱伝導は悪くなるが、固さは増す。使い勝手がいまいちなので、間にアルミを挟んだ多層鍋というものがあって、熱伝導のよさと、丈夫さ保温性をかねそなえている。ただし重くて高い。
○カガク語の謎・・・柱)声は控えめに
化学反応は物質の間でメンバー交代すること。
AB+CD→AC+BD
化学反応は一段階のものもあれば2段階のものもある、このときどちらかにかかる時間が一方より極端に短い場合は無視できる。全体の中で時間を支配している反応を律速段階という。
というわけで、パスタをつくるときにはお湯をわかしてパスタをゆでるが律速なんです。
全体の中の一部なのに全体を支配してしまうんですねえ。
反応がX→Yと進むのを正反応、X←Yを逆反応と呼ぶ。
どちらの方向にも進むのを可逆反応、片方にしか変化しないのを不可逆反応という。
厳密にいうと、わずかながらでも「逆反応」は発生しているので、不可逆反応はないけど、逆反応のスピードが正反応に比べて無視できるくらい遅いと「不可逆反応」に見える。
これを研究員B・C(息子たち)が部屋を散らかすを正反応、研究員Aが部屋を片付けるを逆反応とすると、一見不可逆反応に見えるといっていた。
もし研究員Aの片付ける速度をあげて、何もおきていないようにみえたら、それは科学平衡になったということ。
でも、散らかるのはエントロピー増大の法則のせいなの。
さらには片付けるやる気について、反応には活性化状態があって、この状態になるために必要な活性化エネルギーが研究員Aの場合は大きい、そこで活性化エネルギーを小さくする「触媒」として掃除機ミーレを投入。でもミーレは思いから負触媒になるかも・・・・
○マイナスイオン・・・エセか?科学か?
マイナスイオンは科学用語ではない。
イオンについて、電気の力→原子のしくみ→イオンで説明。
電気の力は重力と比較にならないくらい大きい。そして重力と違うのは+とマイナスがあること。
プラスの最小単位は陽子、マイナスの最小単位は電子。
原子は中心に陽子が固まった核、まわりを電子がまわっている構造をしている。
原子の中の電気のものすごいちからはプラスとマイナスのバランスをとっている状態。→中性
電子の居場所には定員がきまっている。原子は電子の数を定員ピッタリにしたがる。
中性の状態で電子の定員が多いと、追い出す、するとプラスの力が勝つので陽イオンになる。
陰イオンはこの逆。
普通気体の中ではイオンは存在しない。気体の中では中性でいたほうが楽だから。
何かのエネルギーが加わると、ある程度の正の電荷と負の電荷を帯びた分子に分かれる→電離
つまり「無理なこと」をしないと電離はおきないし、その量はわずか。
この電離した分子が微粒子や水分子の集団(クラスター)などと結合したものをマイナスイオンとかプラスイオンとか呼んでいるらしい。
マイナスイオンの実態についても、メーカーのいうことはまちまち。
製造方法は水破方式(滝壺のまわりにマイナスイオンが多い、しかし水が病原菌におかされるとそれもふりまいてしまう)、コロナ放電式(不達の導体の間に高電圧をかけるとマイナスイオンとオゾンが発生する)、放射線式(繊維に放射物質を織り込んでいるマイナスイオン発生させる服)などが提唱されているが、どれもちょっと危ないような・・・
トルマリンを使ってマイナスイオンを発生させるのはインチキなのがわかったようだ。
そもそもマイナスイオンは測定法も確率されていない。
ただマイナスイオンでストレス抑制などの研究結果はあって、でもどのようにきいているか不明なんだって。
○永久機関・・・夫とエネルギーは大切に!
熱力学第一法則・・・自然界におけるエネルギーの総量は一定不変に保たれる。
永久機関(第一種永久機関)は外部からエネルギーを与えられないから、最初に与えられたエネルギーで仕事をしたらとまってしまう。
夫に燃料を補給しないで家事や育児をおしつけたら倒れるとたとえていた。
第二種永久機関・・・エネルギー源である熱を「すべて」仕事に変える機関。熱力学第一法則を満たしているから間違いを見抜くのは難しい。
どんなにがんばっても7割の効率が理論上の限界といわれている。
カソウケンの1年として、季節にひとつのトピックをとりあげていた。
○宝石の美しさ
結晶・・・ひおつひとうの原子などが規則正しくならんでいるもの。金属や食塩も結晶。宝石も大部分は結晶。
多結晶体・・・ひとかたまりが多くの結晶粒があつまってできている。粒の間の不純物で光が散乱。不透明にみえる。
単結晶・・・全部が一つの結晶からできている。光がまっすぐに進んで透明にみえる。宝石はこちら。
ダイヤモンドは炭素でできているが共有結合しているので硬い、なめらかな表面をつくるこおtができる、でも燃えやすい。
また、屈折率が高いので広い範囲の光をとりこんで、内部で反射してより多くの光を再び外にはなつことができる。分散率が高いので光を七色にわけて外に出す。ただしカットしていないとダメですよ。
ルビーとサファイアは主成分は同じ酸化アルミニウム(Al2O3)、ここに不純物がふくまれて色がつくのだが、酸化クロムが入るとルビー、酸化鉄と酸化チタンが入るとサファイアになる。
酸化アルミニウムということは錆びたアルミニウム。すでに錆びているのでそれ以上変質しないで安定している。
ちなみに真珠の成分は卵の殻といっしょ。
○遷移・・・分子にだって機嫌はある
分子たちがご機嫌になる条件はエネルギー。
光だったり熱だったり、電気だったりする。
分子たちはエネルギーをうけるとテンションあがるけど、さめやすいのですぐもとに戻る。このとき受けたエネルギーを返す→緩和過程。
光を光で返す分子(少数派)、蛍光分子は光を吸収して、光を放出しているので光っているように見える、蛍光ペンやバスクリンがこのしくみ。蛍光灯も。
光を熱で返す分子(多数派)は、光で温まるものが多いのでわかる。
夜店のリングは2種類の液体の化学反応で光る。蛍も同じ。
○高分子・・・手をつなぐと大変身
分子はいくつかの原子の組み合わせて作られている(塩=Na+Cl)
組み合わせる分子が多いのを高分子=ポリマーという。プラスチックや化学繊維は一つの分子の中にたくさんの原子がある巨大分子。基本ユニット(低分子)がくみあわさっている。
低分子ではアリ状態だったのが、くみあわさって、針金になるといろんな形がつくれるようなものです。
一本のまっすぐな状態の場合は引っ張る方向に強く自由に曲がれるので繊維。
枝分かれして上下左右に伸びている場合は形がかえられないプラスチック。
くみあわさって高分子は個性を発揮している。
成熟ホルモン、エチレンガスのエチレンは高分子になるとポリエチレン。
高分子にはポリがつく。家の中で探してみよう。
天然の高分子、絹や綿、麻。体の中の高分子アミノ酸、DNAの核酸、デンプンも糖がたくさんつながった高分子。
ちなみに消化酵素はこの高分子を切る役目をしています。
こうしたいろいろな個性を発揮できることから、分解できるプラスチックの開発などが行われている。
○泡立て・・・これでもう失敗しらず?
泡立ての条件は、泡を立てることと、泡を持続すること。
泡をたてるためには液体のなかに空気を抱え込むコロイドにすること。
液体の表面張力をおさえる界面活性剤が活躍。
泡を持続させるには粘性が必要。
生クリームの場合、乳脂肪を拡販すると衝突して集合して粘性が発生する。これが網目構造をとって安定する。
メレンゲの場合は卵白中のたんぱく質の持つ気泡性と空気変性で泡立つ。
卵白には表面張力を小さくするたんぱくが含まれているので気泡性がある。
卵白のなかには空気にふれると変性をおこして膜状に固くなる成分があるので、気泡が安定する。
メレンゲの場合油分はタンパク質の膜をこわしてしまうので厳禁。
卵はアルカリ性なので酸性であるレモンを少しいれると中性になって安定する。
クレーム・タータという添加物もこれと同じ作用をする。
砂糖をいれると水をひきつけるので気泡の安定性をたかめてくれる。ただ、卵白が空気変性を起こすのを妨げる性質があるので、途中から少しずついれる。ハンドミキサーは撹拌する力が強いので、きにしなくていい。
カソウケンの研究レポート
01 つわり つわりは胎児による胎児のための防御反応?
つわりの原因ははっきりしていないが、
・つわりの時期は胎児の手足、内臓、神経の形成期と重なる
・妊婦が吐き気を覚える食べ物は胎児の発育を妨げる可能性が高いといわれている。
・つわりがあったほうが流産しにくい。
などが研究として報告されている。
また、妊娠中の食生活が胎児に伝わるという説もあり、研究員Aも、子どもの好物を見てそう思うそうだ。
02 母乳 母乳のメカニズムは超高機能
母乳じゃなきゃダメというつもりはないと前置きしていた。
母乳は妊娠末期に準備され、胎盤を排出するのがゴーサインとなる。そして胎児がすうことでホルモン(プロラクチン、オキシトシン)が分泌されてでてくる。
量も赤ちゃんが吸う頻度で調節される(数日かかる)、味や成分も出始めとしばらくたってからでかえている(お腹が空いている場合は腹持ちのよい成分がのめる)、成長に合わせて成分がかわる。完全オーダーメードなのだ。
授乳中はオキシントンがでるので海馬の記憶力があがるという研究がある。
授乳中は記憶力が悪くなるという説もあるがこちらは根拠がみつからなかったそうだ。
プロラクチン・オキシントンは保護本能と関係しているという研究がある。
オキシントンは赤ちゃんが吸うという刺激で分泌されるので生みの母でなくても分泌される。
世話をしたり、触ったりでもオキシントンは分泌される。
03 「触る」の効用 スキンシップでキレない子が育つ!?
生まれてすぐの子ネズミを母ネズミから引き離して接触させないと成長ホルモンの分泌がさがり、注射で補っても死んでしまうという。接触はそこまで大切。
触るに関係する脳の部位は大きい。
タッチケアでもマッサージでも、触るはいいことなんじゃないかな。
04 臨界期 教育にタイムリミットはあるのか?
臨界期(最近は感受性期)は視覚や聴覚にはあるが、学習についてはよくわからない。
むしろ脳の可塑性がわかっており、いくつになっても学習は可能ではないかといわれはじめている。
あまり早期教育に踊らされる必要はないのでは?
楽しんでかかわるならアリだけど。
05 バイリンガル教育 バイリンガル教育にはワナがある
言語を習得するとき感受性期は10代はじめといわれているが、仮説である。
それよりも、考えるときに使う言語が未熟なままの状態になる方が怖い。
外国語が上達する人は母語の能力が高い人。
音の聞きわけは幼児の方がいいのは確かだが、大人になっても思考力が低い方が問題なのでは。
もっとも思考力に影響するほど英語を与えるには、相当英語漬けにしないといけないので、週1回のレッスンくらいなら毒にも薬にもならないといわれているらしい。
06 神経細胞の数 教育は出産前が勝負?
脳が働く仕組みは、神経細胞ニューロンが軸索と樹状突起で周りのニューロンとやりとりすること。
神経細胞自体はうまれた時がピークなのだが、使えるかどうかはニューロンのつながり多さできまるので、
出産前教育の根拠はないんじゃないかな。
コミュニケーションとして楽しむならいいけど、
ちなみにネットワークをつくるのは30歳までといわれ、以降はネットワークを密にする時期にはいるという説がある。
07 刺激と脳の発達 刺激が多いほど脳が発達する?
この根拠となっているのは、刺激があったラットの方が脳が発達したから。
しかし「シナプスの過形成と刈込み」が発見されてからは、一概にそうとはいえなくなった。
過形成とは必要以上につくること。シナプスはニューロンのつなぎ目で生後2-8か月で増え続け、以降無駄なものは削られて3歳ごろには成人と同じくらいになるというもの。過剰な刺激はこの刈込がうまくいかない、混線した脳になるのではないかという指摘がある。
勉強だけが脳への刺激ではなく、あらゆる経験がすべて立派な脳への刺激。
つまり普通にしていればいいんじゃない。
08 頭でっかち=天才か? 6歳以降の教育はムダ?
研究員Cが転んで頭を研究員Aの足にぶつけたら足の小指にひびがはいってしまった。
幼児の頭は5歳までに大人と同じおおきさになってしまうので頭が多き野は普通のこと。
生まれたときは400gの脳が半年で2倍になるのです。
ところで脳が重い方が頭が良いという証明はありません。
赤ちゃんの脳が重くなるのは細胞数よりもネットワークができるせい。あと神経細胞の髄鞘化のせい。
神経細胞の髄鞘化はニューロンの軸索が髄鞘というさやで覆われること。
これができて初めて配線ができた状態になる。髄鞘はいわば絶縁体、ショートしたり漏電したりするのをふせぎ、伝達速度を高速化する。これは3歳ごろ8割が完成するという。
髄鞘化の時期は脳の場所によって違い、運動(1歳ごろまで)→感覚→思考(10歳でも完了しない)の部位で進む。
配線の済んでいない脳に学習の効率がいいのかも。
09 赤ちゃんは「学習」できる 記憶の工場、3歳までは未完成
幼児記憶喪失・・・4-5歳ころまでの記憶はほとんどない。
海馬と前頭前野が4-5歳までは十分に育っていないためと思われる。
無意識の記憶をつくる扁桃体は生まれた時から機能がほぼととのっているが、海馬ほどディテールのあることを系統だてて覚えられない。幼児期の感情を伴った記憶はここで記憶され、しかも一度記憶されると消すことができないトラウマnなると考えられている。
海馬は記憶するべきか判断し長期記憶にうつす場所だが、ここが完成するのは5-6歳。それ以前に正確な知識を定着させようとしても無理があるらしい。
10 男女の脳 男の子の発達が遅いのはなぜ?
人体の初期設定は女性、Y染色体をもっていると、妊娠2か月ごろ男性ホルモンを出すよう指令がでて、それを浴びることで男の子の身体と脳になる。脳の場合は真っ二つになっていなくて、男性ホルモンをたくさん浴びたかで男女割合が決まる。
一人の脳に男っぽさと女っぽさが同居しているのだ。
男の子の場合は女の子より左脳の発達が少し遅れる。それで女の子の方が言葉が早い。
男の子はその分右脳が発達するチャンスが多く、空間認知や図形処理は優れていることが多い。
男女の脳でもう一つ大きく違うのは脳梁とう左右脳をつなぐ神経の束。女性の方が太い。
このため女性の脳はバランスがとりやすく、男性の脳は特殊能力が高くなる可能性が高い。
男女の脳はそれぞれ特色があるのだ。
また、女性でも男性型の脳をしているひともいるし、逆もいる。
脳の特徴として、どこかの発達がおさえられると別のところが発達するということがいえる。
11 学習障害 「できない」ことは「できる」ことのメッセージ
アインシュタインとレオナルド・ダ・ヴィンチは脳の障害があり、そのために天才になったという説がある。
アインシュタインの脳は頭頂部に障害があったことがわかっており、ここはワーキングメモリになっており、音を一時的に覚える音韻ループ、画像を一時的に覚える視空間メモがある。
アインシュタインは「暗記できない」「言葉の発達が遅い」「自分で口にしたことを繰り返しつぶやく」などから、音韻ループに障害があったと思われ、ダ・ヴィンチも方言程度の外国語もしゃべれるようにならなかったということから同じ障害があったと思われる。そしてふたりとも暗算が出来なかった。
しかし音韻ループがきのうしなかったからこそ、視空間メモが異常に発達し、相対性理論や写実的デッサンを残せたのだと思われる。
せこせこ計算しても相対性理論にはたどりつきそうもないもんね。
最近話題の学習障害は文部科学省の定義によると「基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す様々な障害をさす」とされる。
「能力があるのにテストや勉強ができない」 「読み書きが苦手」「落ち着きがない」「注意力が低い」などがあてはまるといわれている。
本人や育て方の問題ではなく、脳を含めた中枢神経系に何らかの問題があると考えられている。
この場合、障害がある箇所以外が発達している可能性が極めて高くなる。
思考方法にはざっくり「言語的思考」と「非言語的思考」があり、ほとんどの人は言語的に音声で考えます。
しかし学習障害のあるひとは非言語的思考が得意なことが多いそう。
学校教育では言語的思考で評価されるので知能が低いとされかねず、もったいないこと。
研究員Aの好きな物理学者ファインマンもこの傾向があったらしく、いきなり図をかいて、この公式で計算すると答えがわかっている場合には、常にそれが正しくでてくる」とかいっていて、でもどうしてその公式になるかはわからなかったらしい。方程式の答えが見えるけど、途中の過程がわからないというタイプだったみたいです。
日常生活を科学の目でみることで毎日を楽しくしようと思い立ち、その過程をHPにした。
そのことが縁でほぼ日刊イトイ新聞で連載をするようになったそうだ。
この本はHPの記事をまとめたもの。
自宅を家庭科学総合研究所=カソウケンとよんで、
夫が所長、自分を研究員A、長男を研究員B、次男を研究員Cとよんでいる。
シャレで研究員募集とか、実験結果を論文にして学術誌「nature"n"(ネーチャン)」に投稿したといして、
英語でタイトルつけた論文がはいったりしていた。
イラストやギャク漫画がはいっているので、ボリュームの割に読みやすい。
カソウケンの1週間として、曜日ごとに4-6個のトピックをとりあげていた。
○シミ抜き・・・極性の大原則
プラスチックの下敷きをこすって帯電させた状態で水に近づけると水が曲がる。これは電気の力がはたらいているから。
液体には電気の力の影響をうけやすいものと受けにくいものがある。
受けやすいもの=極性が大きいという=水
中間のもの=アルコールなど
受けないもの=無極性=油
という風に分類できて、極性の大原則として、極性の近いもの同士は溶けやすいということがある。
簡単位いうと、醤油やコーヒーの汚れは水溶性だから水でいいし、
ファンデーションやチョコレートは油性なんで、無色のオイルがよい。
赤ワインの場合は白ワインがよいということになる。
○寝かせる科学・・・一晩寝かせたあの旨さ
香辛料の熟成効果・・・ブレンドしたばかりだと風味が荒くばらばらに感じるのが、時間がたつと風味がまろやかな方に変化する。ただし新鮮さは失われる。
さめるときに味がしみる・・・一度うまみが煮汁にとけだし、冷ますとうま味と調味料が材料にしみこむ。浸透圧の原理。
ただし、加熱中でも浸透圧の原理は働くはずなのに、なぜ溶け出すのか?これははっきりわからなかったが
研究員Aの予想として、細胞壁がこわれているから、単純な浸透圧で説明できない。加熱されて分子の熱運動が活発になっている、あたりではないかと予測していた。
ただし、魚の煮つけは再加熱すると、色が黒く、味も香りもなくなり、身もしまってまずくなるそうです。
○色の変わる科・・・おうちでお手軽実験
光の色は光の波長。
ハーブティーのマローブルーはアントシアニンという色素がはいっていて、酸性なら赤、中性は紫、アルカリは青になる。
pHが変わると分子構造に4つのバリエーションがあって、それぞれ違う色の光を吸収する。
だから、いろんなものを入れると色が変わってカメレオン実験ができる。
○マヨネーズ・・・コロイドの科学
極性の法則で混じらない水と油。
液体にはみな表面張力(界面張力)があって、表面になりたがらず、仲間とくっつきたがる。
2種類の液体をいれたとき2層にわかれるのはこのため。
表面張力を弱くしてくれるのが界面活性剤。
さらに油の周りに膜をつくって水の中に安定していられるようにしてくれる。
構造としては一方の手が親水基で水とくっつき、他方の手は親油基で油とくっつくようになっている。
マヨネーズの場合は卵黄がカギになる。
○エントロピー増大の法則
エントロピー増大の法則は熱力学第二法則ともよばれる。ざっくりいうと宇宙の乱雑さは絶えず増大しているということ。
だから、散らかっている→片付くがひとりでにおきることは絶対にありえない。
他にコーヒー+砂糖→甘いコーヒーはあるけど、逆の甘いコーヒー→コーヒーと砂糖にならないのは、
コーヒー&砂糖のエントロピーが、甘いコーヒーのエントロピーより小さいからと説明していた。
○漂白剤・・・あの活性酸素が大活躍
普通の汚れは生地の繊維にからんでいるだけなので、洗剤=界面活性剤で落とすことができる。
時間の経過などで「化学的に結合」してしまうと洗剤をつかっても落とせない汚れ=シミになる。
漂白剤はこの汚れ物質そのものを分解する。(洗剤は分解しない)
家庭でよく使われる酸化型漂白剤は活性酸素で汚れを分解する。
酸化型にも塩素系と酸素系がある。
塩素系に活性酸素は次亜塩素酸ナトリウム、脱色するちからが強く、色柄ものに使えない。除菌・防臭効果がある。使っているとき塩素が発生しているので換気に注意。
酸素系で過炭酸ナトリウム、水の中で過酸化水素という活性酸素になるが、これはオキシドールと同じもの。
この過酸化水素の状態でうられているものあり、それは液体状態。弱酸性なのでタンパク質である毛や絹にも使えます。
○コロイド・・・ニセモノ溶液を探せ!
エマルジョン・・・マヨネーズのように水分の中に油分が分散した状態
これらもエマルジョン・・・牛乳・生クリーム
エマルジョンができる過程を乳化という。だからこの目的で使われる界面活性剤のことを乳化剤と呼ぶ。
コロイド・・・何かの中に何かが分散して溶けたように見える状態
溶液は分子が一つ一つばらばらになっている(砂糖水や食塩水)・・・透明
コロイドはいくつかの分子が一塊になって分散した状態・・・不透明
コロイドは溶けているフリをしているニセモノ溶液。
気体の中に液体が分散→霧、個体の中に気体が分散・・・小麦粉、 液体の中に個体が分散→味噌汁、液体の中に気体が分散→ビールの泡
○砂糖・・・お菓子作りの立役者
グラニュー糖、上白糖、三温糖は原料と製法は同じだが、精製度が違う。
糖液を結晶させるとき最初に結晶させたものがグラニュー糖、次が上白糖、最後が三温糖。
砂糖の主成分は「ショ糖」=ブドウ糖+果糖が一つずつ結合した状態。さっぱりした甘みを感じる。
ショ糖が多いほど精製度が高いといわれる。
上白糖には結晶にしたあとに転化糖(ブドウ糖と果糖がばらばらになった構造をしている)を点かしている。
転化糖は濃厚な甘みを感じる。
ケーキやクッキーの焼き上がりにできるこんがりしたキツネ色はメイラード反応で、糖とアミノ酸の反応でできる。
メイラード反応がおきやすいのは転化糖。
カラメルをつくる場合はショ糖を使う。
砂糖は保水性が高い=砂糖が水分を惹きつけて離さない。
食品の中に自由に動き回る自由水を少なくして、腐敗菌が水分を使えないようにする。
他にもお菓子の乾燥を防いでしっとりさせたり、ゼリーの離水を防いだり、メレンゲの泡を安定させたり働き者。
単に甘みを加えるだけではないのだ。
○とろみの科学・・・水溶き小麦粉であんかけを作る!?
とろみのつく現象はデンプンのα化(糊化)という。
デンプンに水を加えて加熱すると、水を吸収して糊のような液体になること。
とろみをつけることとご飯を炊くことはどちらもデンプンのα化。
台所でよく使われる3種類のデンプンの特徴
■ジャガイモデンプン(片栗粉)
粘度がよくでるので、とろみをつけるのにつかわれる。
デンプンのαかは酸・塩分・糖分によって粘度が影響されやすいデリケートなもの。
でも水を吸って膨れたデンプン粒子は少々のことでは動じない。
よって水溶き片栗粉は先につくって十分水分をすわせたほうがいい。
■こむぎデンプン(小麦粉)
とろってしてほしいけど、粘ってほしくないホワイトソースやカレールーに使われる。
最初に小麦をバターでいためるのはデンプンを油で覆って、ミスとの接触をさまたげることで、必要以上に粘らないようにしたり、加熱しすぎで粘りがうしなわれる=ブレークダウンを防ぐため。小麦粉は粒子が細かくてダマになりやすいのだが、油でおおうことでダマになりにくくなる。
■とうもろこしデンプン(コーンスターチ)
ブラマンジェやカスタードクリームにつかわれる。
とうもろこしデンプンはアミロースというデンプンが多い。
冷えた時アミロースの年度は高くなる。
と、いうわけで小麦粉はあんかけになりません。(研究員Aの失敗を科学してみたのでした)
○水の不思議1・・・水って異常だったの!
周期表を発見したのはメンデレーエフ。化学の教科書を執筆しようとカードに元素をかいて、原子量順にならべたら、法則性があったらしい。当時発見されていない元素をいれてしまったのが、彼の凄いところ。
周期表に建てに並んだ元素同氏はよく似た性質を持つ。
これに従うと、水=H2Oは硫化水素=H2S(温泉のにおい)と似た性質をなるはずだが、匂いも常温で液体と気体になるところも違う。
さらに周期表に従えば、水の沸点と凝固点は-80度と-100度のはずが、100度で沸騰、0度で凍る。
常温にまたがる幅広い温度帯で液体になる水は扱いやすい。
○水の不思議2・・・その正体は水素結合
1のような不思議な性質は水素結合によるもの。
水素結合の力は大きいので、水分子を動き回らせるにはたくさんのパワーが必要になる。
氷を圧縮すると氷がとける→スキーやスケートの原理=水は氷ると膨張する。これも水素結合のため。
氷が水に浮くのもこのためで、他のものはなかなかそうならない。
もし氷がしずむと夏になっても海の底で解けなくなって地球は寒くなってしまう。
水は気化熱=液体が蒸発するときに必要な熱量が大きいので、気温があがったとき生物の温度が上がるのを防ぐ働きをする。
比熱=液体が1度上昇するのに必要な熱量が大きいので、周りの温度が上昇しても水温が変かしにくく、生物の体温をたもつことができる。
○塩もみの科学・・・ナメクジに塩と同じ
一つの水溶液の中で場所によって濃度に差があると、溶液内に全体を同じ濃度にしようとする変化が起こる。
これはエントロピー増大の法則と同じ。
きゅうりの表面に塩を振ると表面と内側の濃度を同じにしようと水分がでてくる。
炒め物に先に塩を振ると同じ原理で水っぽくなってしまう。
豆を煮るときに砂糖を少しずつ加えるもの同じ、水分が一気に抜けるとシワになってしまうから。
○ご飯の科学・・・主食はさすがの高機能
デンプンは水を加えて加熱するとα化しておいしく食べやすくなる。
放置するとβ化してカチカチパサパサで保存しやすくなる。
β化したデンプンを加熱するとα化する。ご飯を炊くことはデンプンをβ化からα化させること。
デンプンの老化温度は0度布巾で最大になるので冷蔵庫よりも冷凍庫がよい。パンも同じ。
水分がないときのαデンプンはなかなかβデンプンに戻らないという性質を利用したのが熱湯を注ぐインスタント食品。
水分を減らすとデンプンの老化をおさえることができるので、すし飯はこの原理で砂糖の保水力をつかって覚めてもおいしくしている。
○小麦粉の科学・・・グルテンを操ってお料理上手!
主食となる食物は主成分が「デンプン」だが、小麦粉はタンパク質「グルテン」が一定量含まれている。
この量が多い順に強力粉、中力粉、薄力粉になる。
グルテンは、小麦粉に水を加えてよくこねるとできる。(そのままではない)
グルテンを活かすには、よくこねること→パン・うどん、食塩は粘りをまし、かん水は延びをよくする。
グルテンを殺すには、さっとまぜる、低温にする、短時間にする、砂糖で水分を奪う、油脂で水とグルテンの間を邪魔する、アルコールもグルテンの生成を妨げる→天ぷらやお菓子。
○肉の赤身の科学・・・色でわかる鮮度
肉の色が赤いのは「赤い色素=ミオグロビン」が入っているから。これは酸素を蓄える役割をする。
白身魚はあまり運動をしないのでミオグロビンをあまり必要としない。
鶏も飛ばないので普通の鳥よりミオグロビンが少ない。
筋肉だと速筋より遅筋の方がミオグロビンを必要とする。
クジラはミオグロビンがダントツ多いので、あんなに長時間潜っていられる。
ミオグロビンの形はポルフィリンと呼ばれるわっか上の化合物の真ん中に金属である鉄がすぽっと入っている形。
ヘモグロビンも似た構造をしている。ポルフィリン・ファミリーの解説。へもしア人やクロロフィル。
ミオグロビンは空気に触れて赤くなるので、変色した肉でも空気にふれさせておくと赤くなるはず、
でも戻らなかったら水と結合して腐っているのでダメです。
○洗剤・・・天然素材で汚れ落とし
洗剤の基本石けんは界面活性剤。
汚れ落としは、水にぬれやすくする→汚れを包み込む(この構造をミセルという)→汚れを水の中に分解(乳化)
他にも天然の石けんとして、パスタの茹で汁=サポニン(シャボンの語源で界面活性剤)、レモンやオレンジの皮のリモネン(油)、コメのとぎ汁(アルカリ、重層と仕組みは同じ)
○膨らむ科学・・・お菓子作りは実験なり
膨らむには、物理的、化学的、生物的がある。
■物理的・・・水分や空気が膨らんだもの、そのものは変わらず状態が変化した。→スポンジやシフォンは泡立てた気泡で膨らむ。シュークリームの記事は水分の蒸発で、パイ生地も水分の蒸発で膨らむ。
■化学的・・・化学反応が関係する膨張、重そうは加熱すると炭酸ガスがでて膨らむが、色がついたり、匂いと味が悪くなる。そこで重そうに酸性剤を加えたベーキングパウダーを使う。
■生物的・・・酵母などを使ってパンを焼く。ベーキングパウダーでも作れるが味わい深くないパンができる。
酵母からは炭酸ガスだkでなく、アルコールを含めいろんな成分ができるので、奥の深い味ができる。
酵母は砂糖が好物。酵母によってすきの度合いが違うので、フランスパンなど砂糖のないパンと砂糖の多いパンでは使う酵母を変える。
○メイラード反応・・・おいしい匂いの源
おいしい匂いの源メイラード反応とは、アミの化合物と糖(カルボニル化合物)が過熱されるとおこる反応。
炭水化物も糖がならんでいるのでカルボニル化合物。
タンパク質や炭水化物はそのままでは巨大な分子で風味はないが、加熱で文かいしてアミノ酸や糖になりメイラード反応して匂いを生む分子になる。
メイラード反応は焦げ色も生む。
照り焼きも砂糖と醤油のメイラード反応。
他に、小麦粉と卵でクッキーに焼き色をつける
醤油そのもの
○焦げの科学・・・二つの鉄則を攻略
ちょうどよい焦げはメイラード反応が生み出す歓迎すべきもの。
焦げ付きはタンパク質と金属の化学反応。対策は間に膜をひくこと。
フライパンに油をひいたり、クッキングシートをひく、バターを塗って小麦粉をはたくなど。
フッ素樹脂はタンパク質と反応しない上にくっつきにくく、熱に強く、酸やアルカリでも溶けないプラスチックの一種。
空焚きするとフッ素樹脂が熱分解されて有害物質ができるので注意。
はがれたフッ素樹脂が体内位入っても、消化されず排出されるので大丈夫。
タンパク質を別物にする方法→魚を空くアミを加熱しておくと、乗せた時一気にタンパク質が別タンパクにかわって焦げ付きにくい。タンパク質に酢をぬって表面のたんぱくを別物にする方法もある。
○重曹・・・マルチな働き者
ナチュラルクリーニング・・・重曹やお酢(クエン酸)など口に入れてもそれほど害のない材料でお掃除すること。
酸性の汚れにはアルカリ性の重曹、アルカリ性の汚れには酸性のクエン酸を使う。
重曹は炭酸水素ナトリウム=HaHCO3のことで弱アルカリ性。胃薬から料理まで昔からよく使われている。
ガス台の油にふりかけておいくと、するすると汚れがおちるのは、脂とアルカリ性の水酸化ナトリウムが反応して石けんをなっているから。コメのとぎ汁の汚れ落としも原理は同じ。ちなみに小麦粉も油は吸い取るが石けんの反応はないので、するするとはとれなかったそうです。研究員Aが実験済み。
重曹は加熱すると炭酸ガスと炭酸ナトリウムになる。炭酸ナトリウムは重曹よりも少し強いアルカリ性の物質で、炭酸ガスが浮かびあがらせた汚れと反応して石けんをつくっている(のではないか)と思われます。そして焦げ付きと鍋の間に水が入りやすくなり、焦げ付きが落ちやすくなります。お鍋を焦がしたら重曹をいれて加熱してしばらくおきましょう。さっと落ちますよ。
他にも消臭剤やふくらし粉としても役立つ働き者です。
○ダシ・・・おいしさの決め手の科学物質
ダシは旨みそのもので、発見者は旧東京帝大教授、池田菊苗博士。湯豆腐にヒントを得て、夫人が買ってきた昆布から発見した。
国際的には味覚は「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」の4種類とされてきたが、1980年代にいろいろ説明つかないことが多くなり、「旨み」が5種類目の味覚として認定された。学術用語としてもUMAMIである。
西洋・中華のだしは野菜や鳥をいれて長時間煮込むものが多いが、日本のだしは短時間で引き上げるのが特徴。
旨みのいろいろ
アミノ酸系はグルタミン酸、最初に発見されたのはこれ、昆布、チーズ、しょうゆ、みそ、トマト、白菜に含まれる
核酸系はイノシン酸とグアニル酸、イノシン酸は煮干し、鰹節、畜肉類、魚肉類、イカ・タコに含まれる。
グアニル酸は干しシイタケ、マツタケ、えのきだけに含まれる。
アミノ酸系と核酸系を混合すると単独で感じる旨みの数十倍になる。1+1=たくさんが旨みの方程式。
和食ならカツオと昆布ですが、中華なら鶏と長ネギ、イタリアンならイカとトマトなどがそう。
旨みが美味しく感じるのは生きる為に必要な物質だからという説がある。
酸味と苦みは毒物の危険信号なので一般的に嫌われるということになる。
人間の母乳にはしきい値(旨みを感じるギリギリの量)の2倍のグルタミン酸が含まれていて、糖分もある。「旨み」+「甘味」なのだ。
○分子の利き手・・・右と左でその差は大違い
分子を模式化したときに、鏡で映したように逆の構造になるものがある。似ているけど回転させても決して同じにならない、このような関係の分子のことを光学異性体と呼ぶ。一方をR体、もう片方をL体と呼ぶが、著者はわかりやすく、右利き左利きと呼ぶ。
リモネンという物質は片方はオレンジの香りだが、光学異性体はレモンの香り。
カルボンという分子は、片方はミント、片方はキャラウェイ
鎮静剤サリドマイドの悲劇もこの原理でおこった、右利きなら鎮静剤だが、左利きは妊婦が服用すると胎児が奇形になったのである。
通常光学異性体を人工的に合成しようとすると右利きと左利きがまざってしまう。しかしほしい利き手だけ選んで合成する方法を野依良治博士が発明しノーベル化学賞をうけている。
人体に含まれるアミノ酸はすべて左利き。グルタミン酸も旨みを感じるのは左利きだけ。
糖はほとんどが右利き、糖は両方甘みを感じるので、人工甘味料が人体に吸収されないのはこれを使っているから。
どうして片方なのかはまだわかっていない。
○脂肪・・・主婦の敵を攻略する
油・・・室温で液体
脂・・・室温で固体
でもどちらも脂肪であることには変わりなく、その構造は、グリセリンに脂肪酸という酸が三つつながった形をしている。
このくっついている酸が長いと分子間力が大きくなって常温で固体になる。
長さの他に酸のつなぎ目が二重結合を含むかも大きい。
二重結合が入るとまがるので、分子同士がぎっしり寄り集まるのは難しくなる。→固体になりにくい。
二重結合がある脂肪酸を不飽和脂肪酸、一つもないものが飽和脂肪酸という、
常温で固体の牛脂やチョコは飽和脂肪酸が多い、 植物油などは不飽和脂肪酸が多い、でもこれはあくまで傾向だという。
不飽和脂肪酸のように二重結合があると酸素と結合しやすいので臭くなりやすい。魚の脂がくさいのはこのせい。
マーガリンは二重結合を減らすため水素を添加して常温で固体の油にしている。
○ドライアイス・・・これぞ優秀実験材料
ドライアイスの不思議さは「固体が直接気体になること」消えてなくなってしまう感。
煙の正体は二酸化炭素ではない。二酸化炭素は無色。
白く見えるのは空気中の水蒸気を一気に凍らせるから。つまり雲のしくみといっしょ。
二酸化炭素は重いので、白いモクモクは下に流れていく、気体の重さが観察できる。
ドライアイスを溶かした水は弱い酸性のピリピリした味になる。
気体は圧力をかけるほど、液体にとけるので、密閉した容器で溶かすとたくさんとけるけど、二酸化炭素は気化すると容積が700倍から1000倍になり破裂する危険な実験なのでおこなわないでね。
○キッチン・・・熱まわりの科学
熱伝導度・・・熱の伝わりやすさ、大きいと伝わりやすい(金属など)、小さいと伝わりにくい(陶器など)、伝えるスピード
熱容量・・・その物質を1度上げるのに必要な熱量のこと、豆腐は熱容量が大きいので、たくさん熱を与えないといけないが、さめにくい。抱える熱の量。
ちなみになめると身の回りの熱伝導が手で触るより精度よくわかります。
単位体積当たりの熱容量を比熱という。重いものほど熱容量は大きい。比熱×重さ=熱容量
水は比熱が大きい、油の倍。
油は小さいのですぐあたたまるが、温度管理はしにくい。
たっぷりお湯を使ってゆでるのは温度が低下しないようにするため。
180度のオーブンに手をいれてもなんとかすぐにだせば大丈夫でも、100度のお湯にてをつっこんだら大やけど。
同じ35度でも気温とお風呂の温度では違う。これは空気と水の比熱の違いになるもの。
体温より低い大量の水は大量の熱を身体かうばってしまうのです。
○鍋の科学・・・カガク的調理のために
さっと熱が伝わるという熱伝導度の高さは金属の特徴。
これを生み出しているのが自由電子。
金属でないものは原子のなかでひとつの電子は決まった場所におさまっているのに、金属には特定の位置に収まらない自由電子がある。
アルミニウムは原子番号13番(番号が小さいほど軽い)。金属の中でも熱伝導度が高い。ただしアルカリに弱いのと、強度がないので、へこむことがある。アルツハイマー病との関係は現在否定されている。
銅は、原子番号29番で重い。熱伝導度が金属の中でも群をぬいて高い。手入れをきちんとしないと緑青と呼ばれる緑の錆ができる。ただし無害であることが研究でわかっている。
鉄は原子番号26、銅ほどではないが重い。湿気があると簡単に錆びる。しかし、融点が高いので高温調理ができる、強火で一気に調理したいときに便利。ほとんどが純鉄でなく炭素をふくむ、純鉄はもろいので、炭素量の少ないのを鋼、多いのを鋳鉄という。銅やアルミに比べると熱伝導は小さいが、熱容量はおおきいので鋳鉄の熱いフライパンはあたたまりやすく冷めにくいなべになる。これは土鍋と同じ。ホーローは鋳鉄にエナメル質の表面仕上げをしたもの。茹で者にはむかない。
ステンレスは合金(鉄にクロム、ニッケル、銅などをまぜる)。一般的に合金は熱伝導は悪くなるが、固さは増す。使い勝手がいまいちなので、間にアルミを挟んだ多層鍋というものがあって、熱伝導のよさと、丈夫さ保温性をかねそなえている。ただし重くて高い。
○カガク語の謎・・・柱)声は控えめに
化学反応は物質の間でメンバー交代すること。
AB+CD→AC+BD
化学反応は一段階のものもあれば2段階のものもある、このときどちらかにかかる時間が一方より極端に短い場合は無視できる。全体の中で時間を支配している反応を律速段階という。
というわけで、パスタをつくるときにはお湯をわかしてパスタをゆでるが律速なんです。
全体の中の一部なのに全体を支配してしまうんですねえ。
反応がX→Yと進むのを正反応、X←Yを逆反応と呼ぶ。
どちらの方向にも進むのを可逆反応、片方にしか変化しないのを不可逆反応という。
厳密にいうと、わずかながらでも「逆反応」は発生しているので、不可逆反応はないけど、逆反応のスピードが正反応に比べて無視できるくらい遅いと「不可逆反応」に見える。
これを研究員B・C(息子たち)が部屋を散らかすを正反応、研究員Aが部屋を片付けるを逆反応とすると、一見不可逆反応に見えるといっていた。
もし研究員Aの片付ける速度をあげて、何もおきていないようにみえたら、それは科学平衡になったということ。
でも、散らかるのはエントロピー増大の法則のせいなの。
さらには片付けるやる気について、反応には活性化状態があって、この状態になるために必要な活性化エネルギーが研究員Aの場合は大きい、そこで活性化エネルギーを小さくする「触媒」として掃除機ミーレを投入。でもミーレは思いから負触媒になるかも・・・・
○マイナスイオン・・・エセか?科学か?
マイナスイオンは科学用語ではない。
イオンについて、電気の力→原子のしくみ→イオンで説明。
電気の力は重力と比較にならないくらい大きい。そして重力と違うのは+とマイナスがあること。
プラスの最小単位は陽子、マイナスの最小単位は電子。
原子は中心に陽子が固まった核、まわりを電子がまわっている構造をしている。
原子の中の電気のものすごいちからはプラスとマイナスのバランスをとっている状態。→中性
電子の居場所には定員がきまっている。原子は電子の数を定員ピッタリにしたがる。
中性の状態で電子の定員が多いと、追い出す、するとプラスの力が勝つので陽イオンになる。
陰イオンはこの逆。
普通気体の中ではイオンは存在しない。気体の中では中性でいたほうが楽だから。
何かのエネルギーが加わると、ある程度の正の電荷と負の電荷を帯びた分子に分かれる→電離
つまり「無理なこと」をしないと電離はおきないし、その量はわずか。
この電離した分子が微粒子や水分子の集団(クラスター)などと結合したものをマイナスイオンとかプラスイオンとか呼んでいるらしい。
マイナスイオンの実態についても、メーカーのいうことはまちまち。
製造方法は水破方式(滝壺のまわりにマイナスイオンが多い、しかし水が病原菌におかされるとそれもふりまいてしまう)、コロナ放電式(不達の導体の間に高電圧をかけるとマイナスイオンとオゾンが発生する)、放射線式(繊維に放射物質を織り込んでいるマイナスイオン発生させる服)などが提唱されているが、どれもちょっと危ないような・・・
トルマリンを使ってマイナスイオンを発生させるのはインチキなのがわかったようだ。
そもそもマイナスイオンは測定法も確率されていない。
ただマイナスイオンでストレス抑制などの研究結果はあって、でもどのようにきいているか不明なんだって。
○永久機関・・・夫とエネルギーは大切に!
熱力学第一法則・・・自然界におけるエネルギーの総量は一定不変に保たれる。
永久機関(第一種永久機関)は外部からエネルギーを与えられないから、最初に与えられたエネルギーで仕事をしたらとまってしまう。
夫に燃料を補給しないで家事や育児をおしつけたら倒れるとたとえていた。
第二種永久機関・・・エネルギー源である熱を「すべて」仕事に変える機関。熱力学第一法則を満たしているから間違いを見抜くのは難しい。
どんなにがんばっても7割の効率が理論上の限界といわれている。
カソウケンの1年として、季節にひとつのトピックをとりあげていた。
○宝石の美しさ
結晶・・・ひおつひとうの原子などが規則正しくならんでいるもの。金属や食塩も結晶。宝石も大部分は結晶。
多結晶体・・・ひとかたまりが多くの結晶粒があつまってできている。粒の間の不純物で光が散乱。不透明にみえる。
単結晶・・・全部が一つの結晶からできている。光がまっすぐに進んで透明にみえる。宝石はこちら。
ダイヤモンドは炭素でできているが共有結合しているので硬い、なめらかな表面をつくるこおtができる、でも燃えやすい。
また、屈折率が高いので広い範囲の光をとりこんで、内部で反射してより多くの光を再び外にはなつことができる。分散率が高いので光を七色にわけて外に出す。ただしカットしていないとダメですよ。
ルビーとサファイアは主成分は同じ酸化アルミニウム(Al2O3)、ここに不純物がふくまれて色がつくのだが、酸化クロムが入るとルビー、酸化鉄と酸化チタンが入るとサファイアになる。
酸化アルミニウムということは錆びたアルミニウム。すでに錆びているのでそれ以上変質しないで安定している。
ちなみに真珠の成分は卵の殻といっしょ。
○遷移・・・分子にだって機嫌はある
分子たちがご機嫌になる条件はエネルギー。
光だったり熱だったり、電気だったりする。
分子たちはエネルギーをうけるとテンションあがるけど、さめやすいのですぐもとに戻る。このとき受けたエネルギーを返す→緩和過程。
光を光で返す分子(少数派)、蛍光分子は光を吸収して、光を放出しているので光っているように見える、蛍光ペンやバスクリンがこのしくみ。蛍光灯も。
光を熱で返す分子(多数派)は、光で温まるものが多いのでわかる。
夜店のリングは2種類の液体の化学反応で光る。蛍も同じ。
○高分子・・・手をつなぐと大変身
分子はいくつかの原子の組み合わせて作られている(塩=Na+Cl)
組み合わせる分子が多いのを高分子=ポリマーという。プラスチックや化学繊維は一つの分子の中にたくさんの原子がある巨大分子。基本ユニット(低分子)がくみあわさっている。
低分子ではアリ状態だったのが、くみあわさって、針金になるといろんな形がつくれるようなものです。
一本のまっすぐな状態の場合は引っ張る方向に強く自由に曲がれるので繊維。
枝分かれして上下左右に伸びている場合は形がかえられないプラスチック。
くみあわさって高分子は個性を発揮している。
成熟ホルモン、エチレンガスのエチレンは高分子になるとポリエチレン。
高分子にはポリがつく。家の中で探してみよう。
天然の高分子、絹や綿、麻。体の中の高分子アミノ酸、DNAの核酸、デンプンも糖がたくさんつながった高分子。
ちなみに消化酵素はこの高分子を切る役目をしています。
こうしたいろいろな個性を発揮できることから、分解できるプラスチックの開発などが行われている。
○泡立て・・・これでもう失敗しらず?
泡立ての条件は、泡を立てることと、泡を持続すること。
泡をたてるためには液体のなかに空気を抱え込むコロイドにすること。
液体の表面張力をおさえる界面活性剤が活躍。
泡を持続させるには粘性が必要。
生クリームの場合、乳脂肪を拡販すると衝突して集合して粘性が発生する。これが網目構造をとって安定する。
メレンゲの場合は卵白中のたんぱく質の持つ気泡性と空気変性で泡立つ。
卵白には表面張力を小さくするたんぱくが含まれているので気泡性がある。
卵白のなかには空気にふれると変性をおこして膜状に固くなる成分があるので、気泡が安定する。
メレンゲの場合油分はタンパク質の膜をこわしてしまうので厳禁。
卵はアルカリ性なので酸性であるレモンを少しいれると中性になって安定する。
クレーム・タータという添加物もこれと同じ作用をする。
砂糖をいれると水をひきつけるので気泡の安定性をたかめてくれる。ただ、卵白が空気変性を起こすのを妨げる性質があるので、途中から少しずついれる。ハンドミキサーは撹拌する力が強いので、きにしなくていい。
カソウケンの研究レポート
01 つわり つわりは胎児による胎児のための防御反応?
つわりの原因ははっきりしていないが、
・つわりの時期は胎児の手足、内臓、神経の形成期と重なる
・妊婦が吐き気を覚える食べ物は胎児の発育を妨げる可能性が高いといわれている。
・つわりがあったほうが流産しにくい。
などが研究として報告されている。
また、妊娠中の食生活が胎児に伝わるという説もあり、研究員Aも、子どもの好物を見てそう思うそうだ。
02 母乳 母乳のメカニズムは超高機能
母乳じゃなきゃダメというつもりはないと前置きしていた。
母乳は妊娠末期に準備され、胎盤を排出するのがゴーサインとなる。そして胎児がすうことでホルモン(プロラクチン、オキシトシン)が分泌されてでてくる。
量も赤ちゃんが吸う頻度で調節される(数日かかる)、味や成分も出始めとしばらくたってからでかえている(お腹が空いている場合は腹持ちのよい成分がのめる)、成長に合わせて成分がかわる。完全オーダーメードなのだ。
授乳中はオキシントンがでるので海馬の記憶力があがるという研究がある。
授乳中は記憶力が悪くなるという説もあるがこちらは根拠がみつからなかったそうだ。
プロラクチン・オキシントンは保護本能と関係しているという研究がある。
オキシントンは赤ちゃんが吸うという刺激で分泌されるので生みの母でなくても分泌される。
世話をしたり、触ったりでもオキシントンは分泌される。
03 「触る」の効用 スキンシップでキレない子が育つ!?
生まれてすぐの子ネズミを母ネズミから引き離して接触させないと成長ホルモンの分泌がさがり、注射で補っても死んでしまうという。接触はそこまで大切。
触るに関係する脳の部位は大きい。
タッチケアでもマッサージでも、触るはいいことなんじゃないかな。
04 臨界期 教育にタイムリミットはあるのか?
臨界期(最近は感受性期)は視覚や聴覚にはあるが、学習についてはよくわからない。
むしろ脳の可塑性がわかっており、いくつになっても学習は可能ではないかといわれはじめている。
あまり早期教育に踊らされる必要はないのでは?
楽しんでかかわるならアリだけど。
05 バイリンガル教育 バイリンガル教育にはワナがある
言語を習得するとき感受性期は10代はじめといわれているが、仮説である。
それよりも、考えるときに使う言語が未熟なままの状態になる方が怖い。
外国語が上達する人は母語の能力が高い人。
音の聞きわけは幼児の方がいいのは確かだが、大人になっても思考力が低い方が問題なのでは。
もっとも思考力に影響するほど英語を与えるには、相当英語漬けにしないといけないので、週1回のレッスンくらいなら毒にも薬にもならないといわれているらしい。
06 神経細胞の数 教育は出産前が勝負?
脳が働く仕組みは、神経細胞ニューロンが軸索と樹状突起で周りのニューロンとやりとりすること。
神経細胞自体はうまれた時がピークなのだが、使えるかどうかはニューロンのつながり多さできまるので、
出産前教育の根拠はないんじゃないかな。
コミュニケーションとして楽しむならいいけど、
ちなみにネットワークをつくるのは30歳までといわれ、以降はネットワークを密にする時期にはいるという説がある。
07 刺激と脳の発達 刺激が多いほど脳が発達する?
この根拠となっているのは、刺激があったラットの方が脳が発達したから。
しかし「シナプスの過形成と刈込み」が発見されてからは、一概にそうとはいえなくなった。
過形成とは必要以上につくること。シナプスはニューロンのつなぎ目で生後2-8か月で増え続け、以降無駄なものは削られて3歳ごろには成人と同じくらいになるというもの。過剰な刺激はこの刈込がうまくいかない、混線した脳になるのではないかという指摘がある。
勉強だけが脳への刺激ではなく、あらゆる経験がすべて立派な脳への刺激。
つまり普通にしていればいいんじゃない。
08 頭でっかち=天才か? 6歳以降の教育はムダ?
研究員Cが転んで頭を研究員Aの足にぶつけたら足の小指にひびがはいってしまった。
幼児の頭は5歳までに大人と同じおおきさになってしまうので頭が多き野は普通のこと。
生まれたときは400gの脳が半年で2倍になるのです。
ところで脳が重い方が頭が良いという証明はありません。
赤ちゃんの脳が重くなるのは細胞数よりもネットワークができるせい。あと神経細胞の髄鞘化のせい。
神経細胞の髄鞘化はニューロンの軸索が髄鞘というさやで覆われること。
これができて初めて配線ができた状態になる。髄鞘はいわば絶縁体、ショートしたり漏電したりするのをふせぎ、伝達速度を高速化する。これは3歳ごろ8割が完成するという。
髄鞘化の時期は脳の場所によって違い、運動(1歳ごろまで)→感覚→思考(10歳でも完了しない)の部位で進む。
配線の済んでいない脳に学習の効率がいいのかも。
09 赤ちゃんは「学習」できる 記憶の工場、3歳までは未完成
幼児記憶喪失・・・4-5歳ころまでの記憶はほとんどない。
海馬と前頭前野が4-5歳までは十分に育っていないためと思われる。
無意識の記憶をつくる扁桃体は生まれた時から機能がほぼととのっているが、海馬ほどディテールのあることを系統だてて覚えられない。幼児期の感情を伴った記憶はここで記憶され、しかも一度記憶されると消すことができないトラウマnなると考えられている。
海馬は記憶するべきか判断し長期記憶にうつす場所だが、ここが完成するのは5-6歳。それ以前に正確な知識を定着させようとしても無理があるらしい。
10 男女の脳 男の子の発達が遅いのはなぜ?
人体の初期設定は女性、Y染色体をもっていると、妊娠2か月ごろ男性ホルモンを出すよう指令がでて、それを浴びることで男の子の身体と脳になる。脳の場合は真っ二つになっていなくて、男性ホルモンをたくさん浴びたかで男女割合が決まる。
一人の脳に男っぽさと女っぽさが同居しているのだ。
男の子の場合は女の子より左脳の発達が少し遅れる。それで女の子の方が言葉が早い。
男の子はその分右脳が発達するチャンスが多く、空間認知や図形処理は優れていることが多い。
男女の脳でもう一つ大きく違うのは脳梁とう左右脳をつなぐ神経の束。女性の方が太い。
このため女性の脳はバランスがとりやすく、男性の脳は特殊能力が高くなる可能性が高い。
男女の脳はそれぞれ特色があるのだ。
また、女性でも男性型の脳をしているひともいるし、逆もいる。
脳の特徴として、どこかの発達がおさえられると別のところが発達するということがいえる。
11 学習障害 「できない」ことは「できる」ことのメッセージ
アインシュタインとレオナルド・ダ・ヴィンチは脳の障害があり、そのために天才になったという説がある。
アインシュタインの脳は頭頂部に障害があったことがわかっており、ここはワーキングメモリになっており、音を一時的に覚える音韻ループ、画像を一時的に覚える視空間メモがある。
アインシュタインは「暗記できない」「言葉の発達が遅い」「自分で口にしたことを繰り返しつぶやく」などから、音韻ループに障害があったと思われ、ダ・ヴィンチも方言程度の外国語もしゃべれるようにならなかったということから同じ障害があったと思われる。そしてふたりとも暗算が出来なかった。
しかし音韻ループがきのうしなかったからこそ、視空間メモが異常に発達し、相対性理論や写実的デッサンを残せたのだと思われる。
せこせこ計算しても相対性理論にはたどりつきそうもないもんね。
最近話題の学習障害は文部科学省の定義によると「基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す様々な障害をさす」とされる。
「能力があるのにテストや勉強ができない」 「読み書きが苦手」「落ち着きがない」「注意力が低い」などがあてはまるといわれている。
本人や育て方の問題ではなく、脳を含めた中枢神経系に何らかの問題があると考えられている。
この場合、障害がある箇所以外が発達している可能性が極めて高くなる。
思考方法にはざっくり「言語的思考」と「非言語的思考」があり、ほとんどの人は言語的に音声で考えます。
しかし学習障害のあるひとは非言語的思考が得意なことが多いそう。
学校教育では言語的思考で評価されるので知能が低いとされかねず、もったいないこと。
研究員Aの好きな物理学者ファインマンもこの傾向があったらしく、いきなり図をかいて、この公式で計算すると答えがわかっている場合には、常にそれが正しくでてくる」とかいっていて、でもどうしてその公式になるかはわからなかったらしい。方程式の答えが見えるけど、途中の過程がわからないというタイプだったみたいです。
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