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子どもは判ってくれない [雑学]

著者は大学教授でフランス現代思想、映画論、武道論が専門らしい。
ブログを書いているらしく、2001年から2003年くらいまでに書かれたものを中心に、論文や他の媒体に発表したものを織り交ぜて本にしたもの。

今の世の中は世代の細分化がすすんでいて、他の世代とは通じない話でもりあがったり、読む者がまったくちがったりする。最初は若者にガツンと言ってやる本をといわれたのだが、そういう本はたくさんあるし、そういう本を読むのは若者ではなくて、若者にガツンといいたい世代だから、自分は若者向けに「大人はこういう風に考える」というのを示す本を書いたつもりだといっていた。

また、時事ネタは古くなるが、ネタ自体が古くなるに従ってよまれなくなるようなものではなくて、もっと長い期間読むに堪えるものを書きたいといっていた。

世の中複雑なんだから議論も解決法も複雑になってあたりまえで、むしろそのほうが話が早い。最近の時評は話を簡単にしすぎている気がする。
何かを分かった気になって起こる災厄は何かがわからないと申告してもたらされる災厄より有害であることが多い。

正論を信じない理由
正論を述べる人はだれに向かっていっているのかはっきりしない。正論にはだれもが賛成するだろうがその先は具体的にどうするのかになると、みな意見がわかれるものだし、それを取りまとめて合意にもっていくのが「結論を出す」ということだし、役にたつこと。
正論を振り回す人に限って、各論で自分に賛成しない人を「間違っている」と切りやすい。しかし、そこを調整するのが民主主義というもので、哲学者オルテガ=イ=ガセーは民主主義は「多数派が少数派の意見をきき、弱い敵と共存すること」といっていて、これこそが折り合いをつけながら結論をだすということだ。

著者の本の読み方は、「本が読む」なのだそうで、いつも必要なら本の方から呼ばれるので、「まだ、あの本読んでないの?」の雑音は気にしないのだそうだ。著者が師とあおぐフランスの哲学者エマニュエル・レヴィナスの本にもそうして出合ったそうで、読んだときはさっぱりわからなかったけれど、これは理解できたら役に立つ、面白いという確信だけはあったそうだ。
また、本は騙されないために読むといっていた。

有事法案とか憲法改正について
戦争を熱く語ってはいけない。
有事の危機を語る人は実は有事が起こることを望んでいるんじゃないだろうか?実際に敵が攻めてくれば自説の正しさが証明されるわけだし。人間というものは「主観的願望」「客観的情勢判断」を取り違えるもの。そういうものだと割り切って頭をクールに保って考える必要がある。
今の日本の有事はアメリカの保護の元の有事。たぶん誰も日本が戦場になったり、我が家が燃え上がったりする状態を想像して「有事」とはいっていないだろう。
戦争をあおれば若者がしゃきっとして、日本が立ち直るという考えもあるだろう。実際そうなるかもしれない。
でも、野生のシマウマが闊歩する厳しい社会よりも、動物園のどんよりしたシマウマが寄り集まって餌を食べている世の中の方がハッピーなのではないか?
本当に戦争がおきたら、平和ボケから脱出する利益より、払うコストの方が多くなる。

家父長制(社会)と売春について論理的に考えると起きる矛盾について考察していた。
売春婦自体から、自らの仕事を合法的セックスワークとして認めてもらおうという運動があるらしい。

日本という国は、やくざの二人組みたいにアジアの国々にはみえているのではないか?
つまり、強面のお兄さんがさんざん脅してものを売りつけたあとに、柔和な顔したお兄さんが防犯ベルを売りにくるのだが、実は二人は共犯みたいな。
侵略してすまなかったといいながら、援助金の一部が自分の国の企業にもどるようなことをする。どうも困った国である。著者としては戦争は済まなかったと思っており、責められたら「すまない」と謝るといっている。
昨今では新しい未来志向のコミュニケーションのために、そのことは忘れようという風潮もあるが、そういっていいのは被害国の人間だけなのではないか。

村上龍の作品はメッセージを物語に載せて届けるという最近はめずらしいもの。彼のフリーターに未来はないというメッセージについて賛同し、「なにが嫌いか」「何ができないか」言語化することを怠った人間の自己責任といっていた。
同じく村上龍の「タナトス」から
才能は引き出した快楽の総量で測る。
欲望は模倣、結果
快楽は個人的なもの、プロセス
そして、日本人は模倣(モデル)を求める傾向がある。
自分にとって「快楽はなにか」を知っていてそれをためらわずに選びとる人間が才能ある人間



子どもは判ってくれない (文春文庫)

子どもは判ってくれない (文春文庫)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 文庫



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