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サラバ! [小説]

このブログは要約なので、かなりネタバレです。
読もうかなって思っている人は、この先はよまないことをおすすめします。














37歳の主人公、今橋歩(あゆむ 男性)が語る自分の半生という形式。
両親の離婚。エキセントリックな姉。イラン生まれでエジプトで小学生時代を過ごしたという華々しい?生い立ちを持つ。主人公の目線で語られる家族史でもある。

歩は美人で自己中心的な母親と、ハンサムで(多分仕事ができるというかなんでもできる優秀な人)静かな父親との間に長男として生まれた。

姉がいるが、美人な母ではなく、父に似ていて、自己顕示欲が異常に強い。小さいころから反抗的で、常に自分をみてくれないと気がすまないタイプと歩はみていた。
小さいうちは泣きわめいて暴れて注目を集めようとするので、歩は自然と嵐が過ぎ去るのをまつ受動的ないい子になった。
小学校の高学年くらいになると、部屋に引きこもって母親の食事を拒否。ヨーグルトやプリンしか食べないのでがりがりに痩せていて、クラスメイトから「ご神木」と呼ばれ傷ついていた。

姉がどうであろうと、母もまた女であることをやめない人で、自分磨きや凝った料理、家を飾ることなどに夢中で、二人の相性は最悪。
後に両親は離婚するが、歩は父を「逃げた」と表現している。

父は海外駐在員で、歩はイランで生まれた。1歳半でイラン革命がおきて帰国。その後小1まで日本で過ごし、再び海外駐在になった父親について一家でエジプトに住むことになる。
エジプト滞在中に、両親は離婚。
日本に帰り母親の姓になって、小6から公立の小学校に編入した。

歩はつねに周りに溶け込もうとするタイプで、姉が目立つだけにその影響をうけないよう、友達関係や習い事に気をつかい、目立たないようにするのが上手になった。
本人はかなりの美少年で海外育ちという経歴だが、それをひけらかしたりしているととられないように一生けん命である。

姉は注目を浴びたがるので日本に帰ったときも「やらかして」登校拒否になり、その後高校へもいかなかった。歩は帰国子女の多い私立にいれれば少しはよかったかもと回想していたが、母親は自分のことしか考えていなかった。

離婚しても、歩たちの生活は父からの仕送りでまかなわれており、母親は働く必要がなかった。そこで彼女がしたのは恋人をつくることだった。

歩が素晴らしい人として、好きになったのはエジプト時代の友人ヤコブ(コプト教徒であった)と、高校のときの同級生須玖(すぐ)のこと。彼らは決して恵まれた環境にいなかったが、自分をもち自分らしく生きていた。ちなみに両方とも男の子。
歩は、容姿がよく、それなりにもてたし女の子ともつきあったが、実際彼女たちより男友達の方が大事だった。

一方で、母の実家がある町内に矢田のおばちゃんという人がいて、歩たちの祖母と親しかった。イランから帰ったとき、一時矢田のおばちゃんのマンション(かなりのボロアパート)にいたこともあり、姉も歩も矢田のおばちゃんになついていた。矢田のおばちゃんは背中に入れ墨のある人で、なぜか近所の人たちからいろんな相談事をうけるような人格者とみられていた。
歩たちがエジプトにいっている間に、この矢田のおばちゃんの家にサトラコヲモンサマという祭壇ができていて、多くの人がお参りに来ていろんなものを置いていくようになった。おばちゃんは放っておいただけだが、お参りをする人は多くなり、古くからのおばちゃんの知り合いがそれを使ってお祈りをする場所をたてた。信者?は増え続け、お参りをする建物はどんどん大きくなった。矢田のおばちゃんは祭壇のなくなった矢田マンションで相変わらずの暮らしをしており、お祈りに来た人たちが置いたものはすべてサトラコヲモンサマの建物などになっているらしかった。
歩の姉もこのサトラコヲモンサマにお祈りするようになり、矢田のおばちゃんの直接の知り合いであることから尊敬すらうけるようになっていた。なぜかサトラコヲモンサマでは矢田のおばちゃんに直接声をかけたりしてはいけないことになっているが、姉は昔からの知り合いとして付き合っていたからだ。

歩の母親は三姉妹だったが、長女は羽振りのよい自営業者と結婚。息子ふたりと娘がいる。次女は結婚せず母親と暮らしており、夏枝という。本や音楽といった芸術的なものを愛し、自分からなにか意見をいったりしたりする人ではないが、辛抱強く誠実な人である。歩や姉にも、自分の気分でなく、そういう意味でよりそってくれていて、二人とも夏枝おばさんになついている。
歩の母は末っ子である。
祖母は小町といわれた美人で、祖父と結婚したのは「顔で選んで失敗した」といっていた。貧乏はしたが3人の娘を小さな店をしながら育て(なぜか夏枝だけが手伝った)、今は娘たちの結婚相手の仕送りで暮らしている。
この夏枝おばと、須玖は、芸術を愛するという一点でとても気があっていた。

歩の親友須玖は阪神大震災で傷つき、不登校になってしまう。
また、オウム真理教の事件でサトラコヲモンサマは不審な団体とみられて閉鎖。
姉はこころのよりどころを失って部屋からでてこなくなった。
矢田のおばちゃんの説得で姉は再び海外駐在員になった父とともにドバイに旅立つ。このとき引きこもっていたときの髪があまりにひどいので坊主にしたのだが、彼女はしばらく坊主頭のままだった。
歩は逃げるように受験勉強をして東京にでた。

一人暮らしをするようになり、歩は女の子と遊びまわった、1年ほどでおちついて、大学の映画研究会に入る。そこにはオタクな男の子たちばかりで、居心地がよかった。しかし、のちに後輩の鴻上という女性がはいってきて、部内の複数の男性と関係をもち、居心地のよかった部は失われてしまう。
鴻上と歩はなぜか気があって飲み友達になる。
のちに気が付くのだが、歩は鴻上に好意をもっていたのだ。
しかし、ビッチと呼ばれた鴻上を好きになる自分を許せず、気持ちに気が付かないふりをした。歩が選んだ恋人はいつも美人で年上の仕事のできるタイプだった。でも最後はいつも別れていた。

不況だったせいもあり、歩は就職しなかった。バイト先のポップを書くことからはじめて、ライターになった。20代はくる仕事をこなしている間に売れっ子ライターとして過ぎていった。
姉は父とともに日本に帰り、アーティスト・ウズマキとして活動していた。しかし、歩の恋人がウズマキの写真をとって公開したところ、容姿について中傷され、そのなかに「ご神木」という言葉をみて姉は傷ついて活動をやめた。
歩の父は日本に帰ってしばらくしてから会社を退職し、山奥の寺に出家した。退職金はすべて歩たちにわけられた。父は離婚してからほとんど食べず修行のような暮らしをしていたのだ。

そのころ姉の取材をしたくない歩は「母が病気だ」といって帰省していた。
すると、祖母がなくなり、続いて矢田のおばちゃんが亡くなった。母は祖母が亡くなってすぐ再婚した。そしてまた離婚した。
矢田のおばちゃんは姉に遺骨を散骨するようにと遺言しており、姉はおばちゃんの骨と遺品をもって旅立つ。

歩は30歳を超え、仕事はいきづまっていた。専門分野ももたず、情熱もないため、若いほかのライターに仕事はいっていた。さらに自信をもっていた容姿も、髪が抜けるという事態におちいり、歩は帽子を手放さなり、外にもいかなくなる。
そのころ取材で須玖と再会する。須玖はニューヨークの同時多発テロのあと、死のうとして富士山をめざし、最後に食べたティラミスで思いとどまり、今は「てぃらみす」という名前で芸人をしていた。二人はまた話をするようになり、そこに偶然であった鴻上が加わり、歩は二人とつきあうことで、自分が輝いている時代に浸って慰められた。

そんななか、姉が夫ともに帰国した。
チベットであったというユダヤ教徒の夫はポーランドの血がはいったアメリカ人だった。姉はサンフランシスコで夫暮らし、ヨガを教え、安定していた。矢田のおばちゃんの遺言「信じるものをみつける」ができていたのだ。37歳の姉は少し肉がついて(ベジタリアンなのでそれほどでもないが)、落ち着いていてそれはアジアンビューティーといえるほどだった。母とも屈託なく話、二人はいっしょにヨガをやったりするのだ。
そして歩に、歩がいつもほかの人に注目して生きていることを指摘し、「信じるものを、誰かに決めさせてはいけない」という。歩は逃げた。

しかし、東京に戻ると鴻上と須玖はは結婚し、歩はますます追い詰められる。
このときはじめて自分が鴻上を好きだったが、鴻上がビッチと呼ばれているから自分の彼女としてふさわしくないと決めつけて心を偽っていたことを思い知る。そして鴻上の過去を冗談めかして須玖に告げたりして自己嫌悪してしまう。
歩は一人で仕事もせず、父と矢田のおばちゃんの遺産を食いつぶしながら図書館で小説を読み始める。

姉の手紙を読んで歩は父に会いにいくことにする。
そこで語られたのは、父にはもともと婚約者がいて、母はその後輩だったこと。でも父と母は恋におち、婚約者にあやまり会社をやめて一緒になったこと。エジプトに来た手紙の主は婚約者で、父とわかれてから一人で同じ会社に勤めがんで亡くなる寸前だったこと
。父が罪の意識から幸せになることを放棄したこと、犠牲にした先輩の分も自分が幸せになろうとしていたこと、二人がすれちがってしまったことを知った。もともとから歩の家族は不安定で、それを感じていたのは姉だったのだ。
父は、今では死んだ婚約者を不幸だと思うことが不遜だったと思うようになり、解放されていた。幸せになることから遠ざかろうとして幸せになり、母は幸せになろうとしてかえって幸せから遠ざかっているようだった。

歩があいかわらず図書館通いの日々を送っていると姉から連絡がきた。アラブの春だった。
エジプトでコプト教徒の教会がもやされたときいた歩は、おもわずエジプトに飛んでいた。
奇跡的にヤコブのおじさんと再会し(歩たちのフラットも近所のホテルもそのままあった)ヤコブと再会する。ヤコブは3人の子どもの父親になり旅行代理店の支店長をしていた。英語が使えるようになっていた。ヤコブと彼の両親は歩を歓迎してくれる。
しかし、歩はあのときの一体感から遠ざかった自分たちも感じていた。

ナイル河の近くまで二人はいって、別れた日と同じように座った。そして、そのころ使っていた言葉「サラバ」をヤコブが口にすると、二人は涙を流す。
歩は信じるものをみつけた。
そして小説を書くと姉に宣言する。
書くのは家族のことだ、姉や母、父に話をきき、それをもとに話を再構成して3年かけて完成した。それがこの小説ということになるらしい。

物語の終わりは、歩がイランに行ったところで終わる。プリントアウトした物語をイランで読むためだ。
歩は物語には創作があって、実は自分は女かもといっている。実際作者は女性でイラン生まれだそうだ。
そして、この物語から「あなたの信じるもの」をみつけてほしいと結ぶ。
タイトルは「サラバ」


サラバ! 上

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  • 作者: 西 加奈子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/10/29
  • メディア: 単行本



サラバ! 下

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