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新装版 日本語の作文技術 [語学]

元新聞記者の著者が実践のなかから選りすぐった作文において役に立つ技術。
初版は1976年。加筆・訂正をいれて文庫化したのが1982年。そのご新装版として1996年に出版されたロングセラー。実践例も多い。

作文の技術は学校では教えない。世の中の作文論といえば、創作論や心構え、文体論で技術ではない。作文をするときの基本原則はあまりよくわからない。
ここで目指すのは名文ではなく、実用的で読む側にとってわかりやすい文章をかくことである。

日本語の文法は、全く違う言語であるアングル語(英語がその代表)の文法論を輸入してあてはめているため混乱している。

日本語があいまいで論理的ではないという批判は見当違いで、日本語でも論理的でわかりやすい文章を書くことは十分に可能である。

・修飾する側とされる側
かかる言葉と受ける言葉はできるだけ直結させる。著者の他にも指摘しているひとは多いらしい。

私は 小林が 中村が 鈴木が 死んだ現場に いたと 証言したのか と思った。
修飾関係は
私は→思った
小林が→証言したのか
中村が→いたと
鈴木が→死んだ現場
直結で書くと
鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのかと私は思った。


・修飾の順序
1節を先に、句をあとに。
 節はアングル語文法でいうクローズ。1個以上の述語を含む複文、句は同じくフレーズにほぼ相当する。述語を含まない文節。
 例
   一枚の紙を修飾する言葉に「白い紙」「横線のひかれた紙」「厚手の紙」とあるなら、誤解が少ないのは、「横線のひかれた白い厚手の紙」または「横線のひかれた厚手の白い紙」であり、「白い厚手の横線のひかれた紙」では横線が白い厚手のようであるし、「厚手の白い横線のひかれた紙」も同じである。

2長い修飾語ほど先に、短いほどあとに。
 同じ分の中で節が続く場合、長い修飾語を先にした方がわかりやすいことを例をあがて説明していた。
 例 AがBにCを紹介した。ここでB・Cを「私がふるえるほど大嫌いなB」、「私の親友のC」とする。するといちばん誤解がないのは、「私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCにAが紹介した」となる。いれかわると誰が誰を嫌っているかわかりにくい。

3大状況・重要内容ほど先に。
 例 初夏の雨が燃える若葉に豊かな潤いを与えた。
 これは
 初夏の雨が→与えた
 もえる若葉に→与えた
 豊かな潤いを→与えた
 で3つとも平等な句であるが、状況でいうと、初夏の雨→もえるわか葉→豊かな潤いとなるのでこの淳がよく、反対にすると「豊かな潤いをもえる若葉に初夏の雨が与えた。」ではよくわからなくなってしまう。

4親和度(なじみ)の強弱による配置転換。
 心理的なものではあるが、文法上なりたっても、実際に在りえない表現というものがある。また、それぞれの言葉に他の言葉との親和度がある。
 例 みどりと若葉は親和度が高い。みどりともえるは、それより低いが親和度はある。三角と若葉は親和度0である。
 電池のように直列に並べる=単語が直列的にかかっていくときは親和度の強さに従う、並列にならべる=並列的にかかるときは親和度が高いほど引き離す。

1・2は特に重要。

修飾の実践編として例文。


・句読点の打ち方
テンの二大原則
第一原則 長い修飾語が二つ以上あるとき、その境目に点をうつ。
 例 病名が心筋梗塞だと、自分自身そんな生活をしながらも、元気にまかせて過労をかさねたのではないかと思う。

第二原則 語順が逆順のときテンをうつ
 例 私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCにAが紹介した。ならば
    Aが、私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。

その他常識化しているテンの用法
1重文の境目→第1原則に吸収される
  ケネディー大統領をダラスのパレード中に暗殺し、山下国鉄総裁を自殺とみせかけて暗殺する、これがCIA(米中央情報局)のやりかただ。

2述語が先に来る場合→第二原則に吸収される
 やはりあいつか、山下総裁を殺した奴は。

3呼びかけ、応答→原則ではなく、マルとか感嘆符でもよい。
 あっ、山下総裁の替玉も殺された。

4挿入句の前後または前だけに。→第二原則に吸収される
 独占資本、特にアメリカのそれがどんなものかは・・・
     
構文上必要なテンの原則は二つだけ。
分かち書きの点は、基本的には必要ないので避けたほうがいい。
また、筆者の考えをテンに託す場合として思想の最小単位を示す自由なテンが考えられる。

マル(句点)は文の終わりに「必ず」つける。次の文とくっついてとんでもないことになることがあるから。
マルであるべきところにテンを使う人もいるが真似しないほうがいい。


・漢字とカナの心理
 漢字とカナはローマ字表記場合の「分かち書き」にあたる役割を果たしているのであって、それ以上ではない。そういう意味では当用漢字以外をひらがなにするのは、むしろ読みにくい。
 そういう意味でもテンを分かち書きの意味に使うのは極力避けたほうがいい。
 送り仮名は趣味の問題で、ひとつの文章で一つの漢字でいろんな送り仮名が混ざるのは裂けるようにすればそれでよい。
 
 外国語をカナ表記するときに抑えておきたい条件
 1 どんなに努力しても実際といっちすることは不可能である。
 2 実際にそのカナを発音してみて、どれが原語に「より」近いかを考える。
 3 どうせ不可能なら、むしろ日本人にとって発音しやすい(視覚的にもわかりやすい)方をとる。


・助詞の使い方
 日本語の文法はアングル語からの輸入文法で混乱しているので、たちいりたくないが、著者としては見上章という文法家の日本語には主語はなく主格だけがある。という説が、現状の文章を書く上で納得できて役にたったといっていた。
 主語のない原語は別にめずらしくないそうだ。

変形生成文法・・・文章には「表層構造」と「深層構造」があり、深層構造を理解しないと翻訳はできない。N・チョムスキーがとなえた。

1 題目を表す系助詞「ハ」 像は鼻が長い。
アングル語との構造の違い
The man gave the boy the money.
The man gave→the boy
The man gave→the money

オトナガ子供ニ銭ヲ与エタ。
オトナガ(主格)→与エタ
子供ニ(方向格)→与エタ
銭ヲ(対格)→与エタ

つまりアングル語は主語によって他がへんかする言語で、なんとしても主語を必要とするがゆえに「It rains.」なんて表現まである。
一方日本語には主格しかなく、それが一番重要な述語に対して他の格と対等である。
系助詞「ハ」とは、格助詞ガノニヲを兼務するもの、文の題目を示すもの。


2 対照(限定)の系助詞「ハ」 蛙は腹にはヘソはない。
蛙は鳴く
深層構造が「蛙というものは鳴くものである」なら題目、「蛙は鳴くがミミズは鳴かない」なら対照。
「ハ」が2個あるとどちらが題目でどちらが対照かわからないという問題があるが、見上氏は先にあるのが題目、あとが対照としている。
著者として例をあげながらフランス語と比較しながら前後が必要な場合もあるなど詳細に解説していた。
論理的に正確に対照の「ハ」を使うことで文章がわかりやすくなる。

また、対照(限定)のハは否定のセットは重大な意味のあやまりを招きやすい。
例 「いつも速くは食べない」 と 「いつもは速く食べない」

ややこしくなるので一つの文または節で3つ以上のハはなるべく使わない方がいい。


3 来週までに掃除せよ マデとマデニ
例 来週までに掃除せよ。 1週間の余裕があってその間に1度掃除すればよい
   来週まで掃除せよ。 刑罰のように1週間掃除し続けること。

4 接続助詞の「ガ」
 例 「すこし脱線するが、」の「ガ」は逆接ではなく無色透明な「そして」程度の「ガ」
まざるとわかりにくいので、なるべく使わないようにしているそうだ。


5 並列の助詞
 英語の並列接続詞andは、そのあとにくる要素と続けて発音されるが、日本語の並列接続詞はその前にくる要素と続けて発音される。
 また、日本語がSOV言語で目的語が動詞の前に現れることも関係していると考える
 例 出席したのは山田と中村・鈴木・高橋の4人だった。 英語でandが後にくるのと対照的。


・段落
 段落は一つの思想の提示。それ以外の理由で改行してはならい。それは関節でないところで曲げるようなものである。
 それなのに、編集者が勝手に長すぎるからと段落をわけたりするので、著者が怒っていた。
 段落の条件。行が途中で改行されている。冒頭の一文字が下がっていること。でも改行がちょうど終わっているときには植字で間違えられることがあるそうだ。


新装版 日本語の作文技術

新装版 日本語の作文技術

  • 作者: 本多 勝一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/09/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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