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オレ様化する子どもたち (中公新書ラクレ) [子育て]

著者は高校教師。プロ教師の会代表。
80年代から子どもが変わってきているとして、その原因を考察した著書多数。
プロ教師の会は宝島から何冊か本をだしていて、部数は書いてなかったが売れたらしい。

日本の戦後を3つのスパンに区切り。「農業社会的1945-60」「産業社会的1960-75」「消費社会的1976-現在」90年代からは次の段階にはいっているという見方もある。

日本では子供批判はタブー視される。子供はいつも「聖なる存在」として論じることは避けられている風潮がある。
もともとある子供の長所を伸ばしてやるのが、いい教育とされている。
しかし、共同体的教育以前の個性(長所)などというものは、「この私」=自我=弱い自己=客観視できない自己であり、そのまま伸ばしても幼児的全能感を残したままの「オレ様」な子供ができるだけである。こういった子どもは教えられる知識より、「オレ様」の感覚を優先するので、人間は死んでも生き返るか?とテストできかれれば「しない」なのに、アンケートなら「する」と答えたりする。事実よりも主観が重視されるので、自分の死を拒んでいるのである。
農業社会であった昔とちがって、近代では若者は近代にふさわしく教育されて市民的な個をもたないといけない。そうでないと幼稚なオレ様感覚の大人が増えるだけである。

自分を客観視して、批判や攻撃にさらされながら自己を守り育てたあとに生まれてくる自己が、近代社会がめざす「自立した個人」=市民である。
そういった市民を育てるには、まず、共同体的教育=厳しいがあって、そのあとでなければ「のびのび教育」は無意味であるばかりか弊害がある。


子どもを教育するのは教師だけではない。生まれた時から家庭、地域、情報メディアに教育されているのが現代の子どもであり、学校に来る前に消費の主体としての自己を確立させている。
すでに消費主体となっている子どもにとって、学校で客体となり学ぶことは困難である、すでに生徒ではないのである。人が生きることは単に経済的な自立を意味するわけではないことを教えることができない家庭の子どもは経済に翻弄されるだけである。

もともと教育は国家からの「贈与」であり、共同体的なものである。しかし、消費社会の理論は対等なもの同士の「等価交換、商品交換」である。つまり生徒は教師と対等だと思っており、贈与だと思っている教師とぶつかる、あるいは理解不能になるのは当然である。

では、商品交換としての授業だけがあればいいのかというと、市民的に自立した個人であるならそれでいいだろうが、そもそもそのレベルまで上げるのが教育であるとするなら、無理がある。しかし、この「授業のみに立ち返れ」という意見では、もともと子どもが個人として自立しているとう前提を無視しているものが多い。

現代の教育現場におきている問題は、好奇心を抑圧し、管理主義を強め、偏差値一辺倒な教育をする学校にあるという論調が強い。そしてそれは日本が本当の近代になっていないからとされる。しかし、共同体的要素がうすれ、個人が自由に選択できるようになった日本は十分近代である。しかし、近代を支える市民=自立した個人のありようが、誤解されている。

親の教育力の低下を指摘する論者も多いが、親たちは一度きりの親を生きており、すでに近代の消費社会でそだっている。昔の共同体的教育が担っていたものを担えなくなっても無理はなく、失われたものも意識されないでいる。

子どもや親、教師の変容は、グローバルな経済システムの浸透による「個」の自立であり、経済による人間観や生活認識の変化であろう。それは国民国家的な枠内の親や子供人間的あり方の類型を破壊しつつある。グローバリズムの恩恵をうけている日本では反対運動はでていないが、若者の近代的な個からの逃避は、グローバリズムが人間の内実として現れた結果かもしれない。

普通教育で重視されるのは、個性化より社会化で、教育がそうした2重構造をもつのが近代社会の教育の傾向である。
ノーマルな大人は自分が「外部」の力によって坐絶繰り返しながら現在に到達していることを知っている。象徴的父が必要で、あまりよいものではなくても無いよりはあった方がいい。
人は市民社会的な「個」になる前に。共同体的な「個」を通過する必要がある。
そうして確立された「個性」がどのような自己実現をするかは「個」にまかせられるべき。
公教育(普通教育)は近代的な市民(国民)形成にかかわるものとして自己限定すべき。


オレ様化する子どもたち (中公新書ラクレ)

オレ様化する子どもたち (中公新書ラクレ)

  • 作者: 諏訪 哲二
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 新書



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