SSブログ
[PR]本のベストセラー

一瞬の風になれ 第三部 -ドン- [小説]

小説なのでネタバレです。自分で読みたい人は読まないでください。







サッカー一家に育ち、兄が優秀なサッカープレイヤーである神谷新二は、中学までサッカーをやっていたが、常に兄にはかなわないというコンプレックスを抱いていた。高校ではサッカーをやらず、幼馴染の連と同じ公立の春野台高校に入学する。
一之瀬連は小さいころ新二の近所にいたが、転居して東京の中学に通っていた。中2のとき陸上の100mで全国7位になる天才型スプリンターとして注目されたが、その後部活をやめてしまっている。母親が恋人とミラノに住むことになり、連は一人で祖母のいる新二の近所に戻り、春野台高校へ進学する。新二いわく宇宙人で、あまり周りのことは考えないタイプ。部活も練習や縛りがいやでやめてしまったらしい。

ふたりは連の転居後も連絡をとりあっていた。サッカーの試合で東京にいったときなどに会っていて、連は「新二はボールがなければもっと速い」といっていた。体育の50mで勝負した二人はそろって陸上部に入部することを決める。陸上部顧問の三輪は、連はもちろん、新二も連と同じレベルまで速くなれると断言し、新二をおどろかす。

3年間かけて、フォームの矯正や走るための筋力強化、レース展開、決勝のプレッシャーなどを経て、新二は3年の大会では10秒台をマーク。個人種目の100m、200mで南関東大会進出をきめるまでに成長する。部長をまかされた2年の秋に兄の健一が事故で利き足を負傷。医者からは復帰は無理との宣告をおうける。新二はショックで走ることができなくなるが、部活の仲間たちや、部活仲間で新二の想い人の谷口若菜の走りをみて、走る心を取り戻す。

連は1年の間は、故障はするわ、練習はサボるは、合宿は逃げ出すわと周りに迷惑をかけまくる。夏休みは母親のところにいって、恋愛していて大会もサボる始末。しかし、部活仲間への愛着。新二との競争を通して走ることへの情熱をかきたれられること、三輪の指導もあって、次第に真面目に練習するようになる。およそ順位に頓着しなくみえた連も、1年の時から勝てない鷲谷高校のの仙波に対するライバル心を燃やすようになる。

話の中心は新二の成長とリレーで、入部してすぐから始めた400mリレーはついに陸上強豪校鷲谷にせまるまでに成長。仲間との絆で走るリレーは連を大きく変え、新二を成長させる。

最後の県の大会で新二たちは南関東大会をめざし、仲間とともに力をつくすが、あと一歩で及ばない仲間たちをたくさんみる。そんななか、新二は100m、200m、リレーで南関東大会を決める。
特に200mでは連を初めて破る。同日一人400mを走るリレー通称マイルリレーがあり、1年から部活仲間であり、400mであと一歩およばなかった根岸を何とか南関東大会に連れて行きたい連と新二は、必死の思いで望む。しかし、一日で200mの予選から決勝まで全力で走った新二は三輪の指示が守れず、チームは新記録を出すも7位で南関東進出を逃す。そのとき新二は体力のない連が200mの走りをおさえてマイルの決勝に合わせていたのを理解したのだった。

スプリンターには、ショート(100、200)とロング(400)があり、連と新二はショート、根岸はロングになる。2年には大阪弁で筋肉大好き人間桃内がショートでいて、1年には期待の新人鍵山が加入。本来400継リレーはこのメンバーで行う予定だったが、鍵山が故障。県の大会は根岸が走ることになった。根岸は自分の不利を跳ね返すため、得意のコーナーワークに磨きをかけようと朝だれよりも早くいって、グラウンドにこーなを引いて練習を繰り返した。そんな根岸の想いに新二は感動する。一方鍵山は最初から桃内と性格があわず、自信過剰ぎみなときとものすごくビビっていることがある不安定なところがあり、特にバトンに不安があった。しかし10秒台を狙えるスプリンターであり、調整が間に合う南関東大会では400継リレーに復帰することが決まっていた。
県で根岸はすべての種目でのこれなかったこと、だれよりも熱心に練習しており、400mのメンバーとして雰囲気も最高でバトンワークもうまくいっていたことから、新二と桃内は南関東でも根岸でいきたいというが、連は「俺は根岸からバトンもらう方が楽だけど、それでは南関東を抜けるだけが目標のチームになって、それ以上はない。いいのか」と問う。根岸も「鍵山なら優勝をねらえるんだ、夢をみよう」といい、新二と桃内も心を決める。
みなで鍵山をもりたて、課題のバトンワークも欠点を指摘する方法をやめ、肯定的表現でどうしたらいいか伝えるという根岸の作戦で克服。チームは南関東大会に臨む。

南関東大会に残ったのは、連と新二の100m、200m、同学年女子1500mの鳥沢、そして400継リレーだけだった。初日一番手の鳥沢は県とのレベルの違いをみせつけられ予選敗退。夕方からの400継リレー予選があり、新二たちは大失敗をする。スタートでフライングがあり、焦った鍵山がいつもの走りができず、連はほとんど加速なしでスタート、桃内には詰まるようにわたり、焦った新二が飛び出して、桃内がおいつけず「マッテ」と声をかけられる始末。2位以内にはいれず予選落ちかと思われたが、タイムですくわれた。
ホテルでは三輪が、最悪なのにバトンを落とさずのこれたのはすごいといい、全員明日はきっとましと結論して眠る。
翌日100mの予選を抜けた新二だが、準決勝で異様な緊張を感じる。そのとき足元をみると兄の健一がプロ入りして家をでるときに買ってくれたシューズが目にはいる。兄は手術をうけ、リハビリに向けて必死にがんばっていた。兄の新二ケガすんなよの言葉を思い出す。自分の体が走れる喜びをかみしめた新二は平常心を取り戻し、鷲谷高校の仙波に迫る走りをみせて、準決勝を突破。決勝では卑怯な選手のわざとらしいフライングがあるが、これでかえって闘志を書きたれられたスタート先行逃げ切りの連は、素晴らしいスタートをみせ、初めて仙波に勝つ。新二も仙波と同着でインターハイを決める。

400継リレーでは先輩たちが鉢巻をもって応援にきてくれる。新二たちは攻めるレースをすることを誓う。
春野台は高校は最高の走りとバトンワークをみせ、新二はトップで走り出す。前にだれもいない快感。しかしライバル鷲谷の仙波は100mを連に負けた悔しさをぶつけ、もともと後半型の走りで新二に追いすがる。両チームの絶叫の応援のなかほぼ同時にゴールするが、判定は春野台高校の勝ち。新二たち陸上部は大きな喜びにつつまれるのだった。

その夜、新二は三輪に「200mでの県での勝負まぐれでないとこみせてくれ」と言われる。連も「今日で燃え尽きるなよ」といわれる。
新二は、勝っただけじゃなく、速く走れただけでなく、言葉にならない大きなものを手に入れた忘れられない一日を手に入れたことを知る。そして連といっしょに走り続けると考える。
眠りかけた新二の目に赤い走路が目にうかぶ、自分だけの赤い走路は最高に気持ちがいい。


一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

  • 作者: 佐藤 多佳子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/10/25
  • メディア: 単行本



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

[PR]Kindle ストア ベストセラー

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。