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天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話 [資産]

ギャンブルや投資で財を成した数学者たちと、その協力者たち、そしてそれを取り締まる側の話も交えた内容だった。

クロード・シャノンは情報理論を打ち立てた人で、複雑なものから簡潔な答えを導きだすのがうまかった。その論文は多方面にわたり、早くから天才といわれた。しかし興味はいろいろなところに移り、晩年になるほど論文は少なっている。ギャンブルや株に関する興味があり、実際に自分でも投資して利益をあげた。
2進数を考えた人。またメッセージを符号化することによって通信回線のほとんど全容量が使える。符号化でメッセージの誤りを最小にするという理論をうちたてた。ベル研にいてその後MITに移った。のちに語った投資の方法から裁定取引ではなくファンダメンタル手法といえるだろうこと。テクニカル分析は否定していたことがうかがえる。

ジョン・ケリー・2世はベル研でシャノンの次に頭がいいと言われたが、若くしてくも膜下出血でなくなった。ケリー基準を唱えた。

エド・ソープはシャノンとともにブラックジャックやルーレットの必勝法を考えて、実際に実行した。
しかし、カジノで儲ける限界も感じ、債権や株式の世界に転じた。のちにファンドを作った。そのパフォーマンスは驚異的で、その後も香港の競馬必勝法などを考えた。
のちにブラック=ショールズが考えたオプションの適正価格を求める方法とほぼ同じものを考え、さらにそのリスクをなくすために同じ価値のものを同時に空売りと買いをするという手法を考えた。市場はそれほど効率的ではないと考え、裁定取引で儲けられるとした。「相場に勝つ」という著書もある。効率的市場仮説マフィアによれば、ソープのような裁定取引をするひとがいるから市場は効率的になるというのだが・・


ハイテクとギャンブル
電信がインサイダーに利用されていたことがある。競馬の結果をのみ屋に教えるなど。
ルーレットやブラックジャックの記憶補助装置(作ったのはソープやシャノンの数学者たちだけど)
究極ギャンブルの株式市場では、価格の確率分布や、ワラントやオプションの適正価格計算をコンピュータでやるようになった。

でも、インサイダー情報はいつまであるかわからないし、違法になる可能性がある。
ルーレットやブラックジャックはカジノに損させることになるので、あまりやるとルール変更されたりカジノから追い出されたりする。
その点、株式市場は胴元のないギャンブルで、証券会社は手数料で儲けるから取引さえあればよい。ここでのもうけは基本的に負けた投資家から勝った投資家にうつるわけだ。ただし、法律で市場を混乱させる取引だとされれば禁止されることもあるわけだ。また税制の影響も受ける。


ポール・サミュエルソンが効率的市場仮説を唱えてから、市場に勝とは市場の平均リターンより上回ることで、それは知能ではなく運であるといわれるようになった。だって市場はすべての情報を織り込んでいて、しかも株式の価格の予想は不可能だから。

しかし、一貫して利益を上げている少数の例外がある。
中でもエド・ソープは、最初に立ち上げたファンドからずっと、市場平均を上回り、さらには市場とは無関係なリターンをたたき出す。例1987年ブラックマンデーのあったとし市場のリターンはマイナスだったが、ソープのプリンストン・ニューポートは34%の利回りをたたき出した。
また、ウォーレン・バフェットや、クロード・シャノン(ファンドではなく個人)も市場の平均リターンを上回っている。

それらの投資法に使われているなかで、重要なのが「ケリー基準」。
ケリー基準は不確実な情報を基に賭ける場合の基準で、簡単にいうと信じる度合い(オッズ)を分散して賭ける。
勝つ確率が高いものほどたくさん賭けるが、他にも分散して賭けるので、資産が0になることがない。
また、信じるに足る情報(エッジ)がないときは賭けない。
これとほぼ同じことを言っているのが幾何平均。幾何平均は結果N個すべてを掛け算して、それをN乗根したもので、特徴としては結果に0があれば、0になるということがある。
ケリー基準で賭けるというのは結果の期待値の幾何平均を最大にすることと同じらしい。
資金を複利で運用する場合、幾何平均を最大にすることが、長期的に見るともっとも資産を早く増やす方法となる。(サミュエルソンが指摘するように幾何平均だけだは短期的にはおおきく減らすこともある。リスクが大きくなるから)
シャノンやソープがギャンブルで儲けようとしていたころから必勝法の他に重視していたのが資金管理。
どんな必勝法でも、残高が0になると退場になってしまう。ケリー基準(幾何平均)は資金管理にとっても重要だったわけだ。本には4つの資金管理方法のグラフがのっていた。全額投入、マーチンゲール、固定、ケリー
期間が長ければケリーが勝が、その線はギザギザである。
著者はバフェットや、シャノンは自分のエッジのある分野(よく知っている分野)で、信じる度合いを賭けることで資産を爆発的にふやしと分析していた。しかし、彼らと同じエッジを他の投資家は持てないので反復不可能であろうといっていた。
また、エド・ソープはリスクを回避する方法が完璧であると考える場合は、レバレッジをかけてさえいたらしい。つまり信じる度合いが100%だったわけだ。でもこれでは元金をすることがあるので本来のケリー基準ではない。

ちなみに複利を使わず、一回ずつの結果を積み重ねる場合は期待値が算術平均に近づくはずなので、算術平均が最大にするようにする。そして算術平均は常に幾何平均より大きい。

シャノンの魔物
シャノンが考えた効率的市場から利益を生み出す方法。
株と現金を同じ比率でもち、毎日その比率を調整していくと、計算上はランダムに上下動する市場でも利益をだせるのだそう。もっともシャノンは手数料の分で負けるといっている。

マクスウェルの魔物
速い分子と遅い分子を見分ける魔物がいて、速い分子がきたらドアをあけ、それ以外は閉めておく。これをくりかえすと扉の向こうとこちらで熱の差ができてエネルギーがただで生み出される。この話はどこか上に似ている。
でも、のちに魔物が戸を開けるかどうかの情報の分のエントロピーが、生み出されるエネルギーになると説明された。情報を書き換えるとエントロピーは増大すると証明されているらしい。

シャノンの魔物が儲かるのは他の投資家のお金を自分のところに移しているからと説明していた。


期待値と効用をわけて考えたのは、ダニエル・ベルヌーイでその説明は「サンクトペテルブルグの賭け」として知られている。コインをトスして裏がでたら裏が出るまでの回数のコインがもらえるとする。計算するとこの期待値は無限大なので、ゲームの参加代がいくらでも参加する方が合理的なのだが、実際にはやる人はいないだろう。
得られる金額とその効用は違うということ。
著者は富の増加の最適化と効用は違う例として、隣り合う2件の家の例を使っていた。
ジョーンズ家は必要なものを買うために投資する。車や入学資金だ。算術平均
ケリー家は富を増大させるために投資する。他は考えない。結果としてケリー家の方が富が大きくなる。ただし、期間が十分にながければだが。


ソープのリスクを減らす方法
ランダムウォークの確率分布(ふり幅)を計算する。
相関関係のあるものについて空売りと買いを同時に行う。
ケリー基準で賭ける資金を調整する。
ワラントやオプションの最適価格を計算する方法。(適正価格はだれもそれを使って儲けられない価格)

適正価格の計算方法はブラック・ショールズ・マートンも求めていて、ソープは特にマートンが信用を変数にいれとことを褒めていたらしい。

マーコウィッツによるリスク管理
リターンが同じでもそのばらつきは違う。ばらつきが少ないものがリスクの少ないもの。
平均分散分析と統計学を使い。最適なポートフォリオを求める方法を考案。
ただし、リターンは平均的で、複利的投資は行わないのが前提。
ケリー方式との違いを1年後の株価の確率にあわせて作ったルーレットで説明していた。

LTCM破たん
ショールズやマートンが経営者として名前を連ねたファンド。
たくさんの資金をあつめたが、ロシア国債のディフォルトのとき破たん。
破たんの原因
太いしっぽ、傲慢、分散不足
ケリー基準は使っていなかった。確率の低い事象が起こった時、レバレッジをかけていたので一気に破たんした。

指標プロジェクト
統計学的裁定取引。上がった株を売り、下がった株を買うというのが基本。
これに因子分析(業界別にして多様化をはかったりする)を加えたり、経済ニュースによる取引停止リストを使ったりして利益を出す。
ソープのプリンストン=ニューポートで検討されたが他の手法ほどの成果がなかったので採用されなかった。
のちにリッジラインパートナーズとして、コンピュータによる自動売買として採用され、ロシア国債が破たんした1998年でも47%のリターンを達成。
一つ一つの取引は利益が小さいため、大量の売買が必要だったらしい。
のちに同じようなファンドが設立されるにつれ、そのエッジがなくなって、中止された。

著者によれば執筆時点でサミュエルソンが異端視しているのは対数的効用とそこから導かれる誤った命題だそう。
また、トレンドとしては効率的市場仮説は一部の成功したファンドによって否定されつつあって、やはり市場から利益を生む方法は運以外にあるという方向らしい。

効率的市場仮説マフィアによれば、成功したファンドは運のいい例外
またケリー基準は期間が長ければ確かに利益を最大にするが、リスクも永遠にとるので、いつの時点でも資産を0にしないまでも大幅に減らす可能性があるという指摘がある。



天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話

天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話

  • 作者: ウィリアム パウンドストーン
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本



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