著者は古生物学者で、とくケイソウ(珪藻)の分類を研究する学者で本の執筆時点では名古屋大学の環境研究科助教授。自分の研究のこと、生い立ち、研究生活などを子供向けに書いた本

化石といっても恐竜などの大きいものから、著者が研究するような微生物のものまであるそうで、小さいのは微化石とよばれているそうだ。0.1ミリのタイムマシンとは、これら微化石のことを指す。
ケイソウは光合成で酸素を出す単細胞生物で現在でもたくさん生息しているが、外側に殻をもっており、この殻がしばしば地層のなかに化石として残る。そして土を顕微鏡でのぞくと、それらの化石が見られるのだそうだ。
著者の研究テーマはケイソウのなかでもお休みケイソウと著者がいうもので、ケイソウは増えすぎるなどして養分がすくなくなると休眠胞子という状態になり、海の底に沈むそして養分の豊富な水が海底からわきあがってくるのにのって再び海面にあがってきて光を浴びると、活動を開始するのだそうだ。

著者がやっているのはこのお休みケイソウの分類。ひたすら光学顕微鏡や電子顕微鏡でのぞき違いをみわけていく、最初はなかなかわからなかったが、みていくうちに分類できるようになったそうだ。分類というのは地味な作業ではあるが、分類することで研究の役にたつ。
ちなみに見開きページ左側の左上隅に著者が書いたケイソウのスケッチがずっとのっているのだが実にさまざまなものがあった。

著者はパイプオルガンの職人の家に生まれ、小さいときから絵をかくことが好きだった。テレビで見たシーラカンスにひかれて古生物学を始め、卒業研究に選んだのがケイソウの分類でそれを続けているうちに研究者になったらしい。

その分類の成果を発表したとろ、北極で地層調査があることを聴き、参加に応募したところ、選ばれて砕氷船で北極海にいったこと。外国の研究者と英語でコミュニケーションするのに四苦八苦したことなど。
その航海の様子を縁あった日本未来科学館の方に送ったところ、HPで紹介され、その後本の出版の話になったことなど、偶然の縁がかさなっていったことが述べられていた。

結局北極では目指す地層からのケイソウの化石がなく、ケイソウの化石自体が少なかったりと、なかなか思ったようにはいかなかったが、なんでも体験してみることが大切とかかれていた。
北極は大陸がないので海の上に浮かんで掘削作業をすること、作業中の船を氷からまもるため、2つの砕氷船が絶えず周りの氷を割って回っていたこと。船員さんやコックさん、掘削作業をするひとたちの苦労のようすと感謝などが書かれていた。


0.1ミリのタイムマシン―地球の過去と未来が化石から見えてくる (くもんジュニアサイエンス)

  • 作者: 須藤 斎
  • 出版社/メーカー: くもん出版
  • 発売日: 2008/11/01
  • メディア: 単行本