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ポジティブ心理学入門 幸せを呼ぶ生き方 [雑学]

2009年出版のポジティブ心理学の本。
心理学というのは、ネガティブな方面の研究はさかんにおこなわれてきたが、ポジティブな方面はあまり研究されてこなかったそうで、この本の時点で新しい分野だといっていた。

ポジティブ心理学の層的構造は次の2つがある。
個人の体験から社会へ・・・自分についての自身が、他者への信頼につながり、仲間を形成する。
過去から未来へ・・・過去のポジティブな経験から生み出される働きから、現在のポジティブな経験のもつ働き、そして未来に向かってポジティブなこころの働きという時間的な広がりがある。
ただし、必ずしも、例のように発展していく必要はない。

第1章ポジティブ心理学とは何か

心理学がポジティブなこころの働きを解明しようとし始めたのは最近のこと。
ポジティブという言葉は、積極的で、肯定的で、前向きで、建設的という意味。

幸福な人を研究したほうが、人を幸福にする方法を見つけるのに適している。
こころの傷ができるメカニズムを解明しても、幸福にはできないのではないか。

ポジティブ心理学は魔法のようにどんなことでも実現するわけではないが、弱点に注目するより強いところを伸ばす方が、将来の改善に役立つと思われる。

研究としては、科学的方法を重視し、実証的な証拠を集める。また、結論を導くときは厳密に行う。
ポジティブ心理学はあなたの人生を実りある充実した楽しい人生にするために、大きく役立つ。
もっている才能に気づく、着目する、将来に目をむけるものであるから。

ネガティブな感情は、危険を避け、安全や生命を確保するために発達した。
それに対してポジティブな感情は、実に多様性があり、その応用は広い。


第2章 幸せの心理学のはじまり

幸福との相関関係
お金と幸せの関係。GDPと幸福度の相関表を見ると、経済的な豊かさはそのまま幸福につながらない。
学歴、友人、身体的魅力もそれほど相関はない。

幸福感への注目は世界的傾向。先進国では物質的要求が満たされ、精神的なものに向かっているためと考えられる。物質的豊かさより人生の充実を求めるようになってきている。

これは昔と比べて物質的豊かさのありがたみが薄まっている現象で、ヘドニック・トレッドミル現象と呼ばれる。私たちは、慣れるので現状では幸せでなくなっていく。だから同じような幸福のレベルを維持するためには常に走り続けなければならないことを意味する。最もお金を重視する傾向は低くなっているので、ひたすら富を求め続ける人は少数なのかもしれない。

ウェルビーイング=広い意味では幸福感。身体的、社会的、心理的に良好な状態。
これを判断するには主観がはいるので、だれの判断かでかなり違ってくると予想される。

現在の幸福を測る方法の模索。
直接、主観的幸福感を質問する。幸福感が感情要因と認知要因からなるとすると認知要因に重きをおいている。
同じ幸福感を測定するのに複数の質問用紙があるなど、測定方法も研究されている。

ポジティブ感情を測る。顔の表情、ポジティブ語をどのくらい使うか、などから幸福度を測る。
卒業アルバムの写真や、修道女の本人の書いた経歴文などの研究から、ポジティブ感情のある人は、長生きで将来、幸福感を持つ人生を送る可能性が高いという研究結果があるが、まだ確実とはいえない。

単なる幸福とは部分的に対立する、自己現実、自己成長による幸福。
自尊心とは、幼少期において受容されてきたこと、周囲からポジティブな評価を受けてきたこと、他者や自分の理想像と比較して、自分を良いと考えられること。自分には何かを行う能力があると考えること。
自尊心の高さと幸福感は個人主義的な国では顕著である。
集団との関係で自尊心を考えれば、受け入れられていることが自尊心になるかもしれない。

オプティミズム=楽観性。
これからおきることが自分にとって素晴らしいものとして期待する態度。それによって新しいことへの挑戦が生まれる。

現在のポジティブ感情、自尊心、オプティミズムは相互に作用するといえる。


第3章 ポジティブ感情の働き
感情というものは論理的な頭の働きを鈍らせるものと考えられてきた。
感情のかかわった選択には緊急避難的な合理性はあるが、論理的知性の働きに及ばないと考えられてきた。

人間とコンピュータを比較すると情報処理に関して感情が関わっていることこそが、人間的という考えがうまれてきた。
人間の持つ柔軟な判断や温かい態度は、感情から生まれると評価されている。

感情と認知の相互作用の研究では、覚えたときの気分の方が、覚えたことを思い出しやすいという「気分一致効果」が有名。情報を選択的に記銘し想起するとき、感情が選択性に影響を与えている。
気分一致効果の気分とは、広い意味での感情である。感情の弱い一時的な状態を表す気分から、比較的強く表情はもちろん外的な行動にまであらわれる情動が含まれる。

感情はさまざまな認知機能と関係をもちながら、人間的なこころの働きの一部分を形成している。
基本感情
・怒り、嫌悪、恐怖、悲しみ、驚き、喜び
ここから多くの派生的感情が生まれると考えられている。
他の説もあるが、基本的にネガティブ感情の方が多いというのは一致している。

ネガティブ感情は「逃走か、攻撃か」という危機的状態に対応するというはっきりした役割を持っている。
自動的に生じる。

ポジティブ感情は社会的であり、他の感情と異なる特徴があまり明確でなく、刺激に自動的に発生するより、文脈などの影響を多くうけているという特徴がある。
喜びなどの一部を除くとポジティブ感情の種類や分類はあまり進んでいない。

認知心理学の分野では感情や気分をポジティブとネガティブに分けて考えることが多い。
気分一致効果と類似したものに「状態依存記憶」があり、気分に限らず記憶したときと検索して思い出すときの状態がいっちしているときによく思い出すことができるという現象がある。
気分が大きく変動する人は、前のときと違うと思い出してもらいにくい。
記憶が一貫していることがその人の人格とのつながりを支えるものと考えられるので、別人のように感じることもありえる。

ポジティブな感情状態にある人は簡便な意志認定プロセスであるヒューリスティックを用いて、より単純な情報処理を行うとされる。
ネガティブなな人はより分析的で、バイアスの少ない認知処理をする傾向があるといわれ、抑うつ現実主義と呼ばれる。

ポジティブ感情と感覚的快感はどちらも外界の刺激によって引き起こされ、主観的には心地よくうれしい経験であるということがあげられる。
感覚的快感には、おおもとに身体的ニーズ(おなかが空いた、喉がかわいたなど)が必要。
ポジティブ感情の場合は感情状態と刺激の関係はそれほど固定的でなく、刺激変化を知った本人がどうとらえるかが重要になる。ポジティブ感情が生じるためには身体感覚は必ずしも不可欠ではない。
また引き起こされる行動も、それほど固定的でない。ここはネガティブ感情と大きく違う。

ポジティブ感情を意図的に引き起こし(コメディ映画をみせたり、ポジティブな言葉から連想をしてもらう、プレゼントを渡すなど)、それが社会的行動と認知機能にどう影響したかの実験では、ポジティブ感情状態では、多くの人たちが他人に対して援助行動を行うことが報告されている。また交渉での対立を緩和しすることも報告されている。また創造性が高まる。

これらの実験から、ポジティブ感情は思考も行動もレパートリーが拡張されていくという。
レパートリーが拡張されていくことで、さまざまな活動をすることで将来に役立つ資源を形成する、創造的で知的で持久力があり、社会的に成熟した健康な人間へと自分を変えていくことができる。そういう状態の人は、自分が納得する仕事をし、周囲と良い関係が築け、援助行動をするのでポジティブな出来事がおこりやすくなり、それがポジティブ感情を生み出すという螺旋的成長になるという説が唱えられている。

これはポジティブ感情がさまざまな意味で建設的であるという提案である。
このようなポジティブなフィードバックループは私たちが新しくスポーツを始めたり楽器を始めたりするときに体験する。


第4章 夢中になる経験
スポーツやクラブ活動などの活動、あるいは危険運転、コンピュータゲームなどでも最適経験が起きる。
最適経験とは、自分が自分の行動のすべてをコントロールし、自分の運命を支配しているという感覚であり、気分は高揚し、幸せな時間を味わう。

仕事でこの体験を得るには、適度に複雑な作業であることが必要なようである。
スポーツのようにある程度の身体活動やその習熟は必要でない。
仕事に熱中して昼食も忘れるような状態を、チクセントミハイは「フロー」と名付けた。

フローがおきるには条件がある。
・自分の能力に挑戦する経験であること
・すぐに直接的なフィードバックがあること。あるいは自分へのフィードバックが予測されていること。

フロー経験はそこで行っていることに意識が集中していることが中核にある。
意識は普通自分をモニターしているが、それがあんくなる、そして時間感覚がなくなる。

フローを経験しやすい人は、良い結果や成果のためよりも、活動自体を楽しむ傾向にある。
そして、人生をより楽しむ傾向があり、内的報酬に強く動機づけられている。
幅広い好奇心や関心があり、粘り強く、自己中心性が低い。
結果がうまくいくか気にせず、ある意味結果がうまくいくと確信しているかのような行動をとる。
この人たちは低い結果を求められると幸福でない。
フローが起きにくい人は、低い結果を求められると楽できると幸福になる。

フローは主観的で現象的で研究対象とみなされない傾向があったが、ポジティブ心理学の中で見直されている。
フロー体験はウェルビーングや充実した人生と深い関係をもっているからである。
日常の体験を想起するというバイアスをはずすために、被験者にポケベルやアラームをもたせ、その場での行動や感情、考えをサンプリングするとう研究方法が開発され調査されている。

フローが起こるためには、その課題をするために自分の中で普段より努力するという場合に、それが課題の難易度とつりあっている必要がある、努力が報われる必要がある。そして活動が継続し、成長する。
フローはポジティブな発達の基礎を形作る。
アメリカの高校生に関する報告では13歳で、その領域でフローを経験すると17歳までは没頭するという。
教育場面では内的報酬を重視して生徒自身が自分の興味にしたがって課題を選択するという試みがおこなわれている。
また、挑戦せず高い能力が要求されていない活動を減少させ、難しく挑戦するという状態で過ごす割合が増加することによって、生活の質がポジティブに変化することが報告されている。

新しい課題に挑戦することでストレス状況になる人がいる。それは成長のチャンスなのである。
ストレスをネガティブにとらえ、その状態を改善しようとしても、生活の質は向上しない。挑戦しやり遂げるというポジティブな状態にはならないからである。
仕事においては外的な報酬(給料や昇進)だけが働く動機であると考えることは、特に知的労働者に対してはまいなすであり、挑戦が仕事の楽しみ、やりがいを生むという効果が指摘されている。
現代は仕事が細分化されていて、仕事をコントロールしている満足感を味わえる人たちは少なくなっているで、ポジティブになりいくい。

ジャンク・フローとは、テレビゲームや、暴走行為など、社会にあまり受け入れられない活動のこと。
こうしたフローは、長期的なフローの質を高めていくことができない。

余暇活動では、テレビ視聴などのリラックスレジャーではフローを感じることは少なく、積極的レジャーがフローをもたらすことが報告されている。

ただし、ウェルビーングの指標となる生活満足度、人生の目標尺度、セルフエスティームに対する重要度は低く、生活や人生全体の質の向上という側面からはフローになればいいとうわけではないらしい。
これは女性に対する調査だが、家事が仕事に比べてフローを起こしにくいことも分かっている。


第5章 オプティミズムと希望
オプティミズムはポジティブ心理学の中核にあるといってもよい。
ポジティブ心理学の考え方自体が、人間はみなウェルビーングに到達できるというオプティミズムであるといえる。
人間を楽観的悲観的にわけるのは生産性のない議論。どちらにもなることがあるからである。

オプティミズムの3つの側面
・すべての人間がもっている楽観的傾向
・性格としてのオプティミズム(個人差)
・経験によって学習したり身に着けたりするもの
どのオプティミズムを議論しているのか決めないと議論がずれる。

オプティミストは自分い良いことが起こると考えている。
ペシミストは自分に悪いことがおこると予測している。
いつまでもぼんやりまっているのはどっちでもないナマケモノ。
オプティミストは将来に向かって挑戦することが多くなる。
これは二極化してはおらず、両者の中間の山が高い傾向になる。

オプティミストは行動の対するモチベーションが高くなり、挑戦する。
これは客観的に十分な根拠や実力をもっていないにも関わらず自信を持っている状態ともいえる。
しかし、準備なしというわけではなく、ちょっとした経験や訓練をすることはオプティミストが目標を実現しするとき行う道筋である。かれらは目標を大きな価値をもつものと考える。
オプティミズムを測る調査では日本もアメリカも4分の3が楽観的だった。

ポジティブシンキングについては心理学者は嫌うが、意味のない反発である。
ポジティブ心理学とは違うかもしれないが、善い結果を生み出すという意味ではポジティブシンキングも役にたつと認めたほうがいい。
でもポジティブ心理学とポジティブシンキングは違う。
無理やり思い込めばすべてが変わるわけではない。

経験によって、ある場面では何をしてもだめだとまなぶことがある。それが違う場面でも発揮されるのは驚くべきことである。これは学習でおきるが、オプティミズムも学習でおきる。うまくいく経験をすれば挑戦できるようになるのだ。
この違いは説明スタイルの違いと考えられる、何を原因と考えるかで悲観的にも楽観的にもなる。
例 試験の結果が悪い 自分は頭が悪い or 準備不足だった

説明スタイルには、「永続的・一時的」「普遍的・特殊的」「内的・外的」という三種類の区別がある。
楽観的な人は、不幸な出来事を、一時的・特殊的・外的に考えやすいといえる。
これは経験(学習)からと考えられてきたが、遺伝的要因もいわれるようになってきている。

オプティミズムへの批判としてリスクを過小に評価するポジティブ・イリュージョンがあげられる。運を信じて賭け事にはまるなどの原因になるというものだ。
三振しても相手のピッチャーの調子がよかったのだとしていたら、いつまでも撃てるようにならない。
分析的論理的な部分をオプティミストは無視しているというのだ。
ただ調査ではオプティミストはポジティブな言葉に注意をむけるが、ネガティブな言葉にまったく注意をむけないわけではないので、良い面だけをみているという批判はあたっていないかも。

希望のある状態
・その目標にどのように到達するかという見通しや計画をもち
・かつ、それを実現しようとする能力やモチベーションがあること
希望論はオプティミズムと違い見通しがある。そして目標という方向性がある。
目標に到達する方法を考え抜いている。

説明スタイルでは計画や見通しはあまり含まれず、いかにして無力感やペシミズムを形成しないかという予防が重視されているように思われる。

第6章 感情のある知性-情動知能
人間の持つこころの働きの中で知性は特にすばらしいものの一つと考えられている。
知能=IQは社会的にパワーをもっているようだ。
IQは人間のもっている知的な能力というものには単一の共通の基盤があるという考え方にたっている。
この考えは無理があるといのが最近の心理学の考え方。
知能だけでは社会的な活躍が十分予測できないという疑問がある。

社会的知能という考え方は、社会生活の中で発揮される知能があるという考え方に基づいたもの。
類似概念、社会的コンピテンスや社会的スキル。
かつては社会的関係が重視されたが、行動科学と認知科学の台頭で、行動や認知が強調されるようになった。

情動知能=EQ
EQの流行を支えたのは、経済的な豊かさや高い社会的地位後天的にに結びつく社会的成功を非常に価値の高いものと考える時代の価値観。
情動知能は後天的に習得できるとされたのも流行になった理由。
心理学としては情動知能は性格につながる側面があり、生まれつき決まっている側面があると考えらえる。
しかし、それが発揮されるかは、人間関係を含んだその人の経験によるものが多い。つまり相対的には生まれつきの天才がいる数学や音楽よりは成長や経験による側面があるといえる。
情動知能では知能と感情を対立しているとはみない。
情動知能の主張は、知能の対称となるものを従来より拡大する傾向の一つとみたほうがいい。

情動知能の構造
3種類の対象、自己、対人、状況
3種類の働き 情動の知覚、情動の理解と活用、情動のコントロール
これを尺度とした自己記入式の情動知能尺度(EQS)を開発したそうだ。
自己対応能力は、自己洞察、自己動機づけ、自己コントロール
対人対応能力は、共感性、愛他心、対人コントロール
状況対応能力は、状況洞察、リーダーシップ、状況コントロール
これでEQSの高い女子大生は就職率が高かったそうだ。

情動知能はポジティブ心理学のなかでどのような役割をしめているか?
情動知能が高いと、自分自身についてのより高い評価につながると同時に良好な人間関係づくりに貢献することは間違いないので個人のウェルビーングを向上させるだろう。
また、職場のリーダーシップに果たす役割は大きい。
職場のメンタルヘルス問題を解決するのに役立つと思われる。


第7章 自己のポジティブなあり方と愛情
オプティミズムの自分ならなんとかできるだろうという見込みには自分自身へのポジティブな評価であるセルフエスティームの重要性がいわれている。
しかし不相応に高いセルフエスティームは攻撃性につながると指摘されていて、それだけを高める働きかけには疑問がある。
ポジティブであれネガティブであれ自己が大きな役割をもっていることは確かである。

自分で決めた決めた目標に向かって自分から取り組んでいる場合=内発的動機づけはモティベーションが高い。
そして、外から賞を与えると、かえって内発的動機づけの仕組みは阻害されることがわかっている。
ちなみに、思っていなかった賞賛などは、内発的動機づけの仕組みは壊さない。
大学生にパズルを解かせる実験では、金銭より言葉のほうがやる気がでることが示されている。
金銭は他者にコントロールされたモチベーションと感じるらしい。
自分の意志で選択しているという感覚が大事。
自己決定に必要な心理的欲求
・コンピテンス(環境を効果的に取り扱うことができるという熟達した経験をしたい)
・自律性(自分にとって重要である人生や生活の場面で独立した意思決定をしたいという欲求)
・関係性(相互に支えあう人間関係を形成したい)
3つは、成長と統合のための自然な傾向としての最適な機能を促進するために不可欠。
建設的な社会的発達や個人のウェルビーングのためにも不可欠
文化を超えて共通。
自律性を高めることの効果は、さまざまな年齢層や場面でも共通。
学校でも家庭でも、自律的であるほうが、満足度やセルフエスティームが高い。

自己決定理論は、内発的動機づけを高めるという観点で研究されて来た。
現在は重点がウェルビーング、幸福感にある。
自己の重要性とその選択が優先されるが、他者からの適切な働きかけも重要であり、選択の意味があることを保証するのも他社との相互関係である。

結婚は幸福感やウェルビーングに良い影響を及ぼす。
男性のほうがその効果が大きいとされてきたが、独身でも家庭生活で得られる利益はサービスとうけられるようになり、両者の幸福感の差は縮まってきているといわれる。また役割分担の差がなくなり男女差も小さくなっているといわれる。
また結婚の内容によってウェルビーングは大きく異なる。

人間関係の基盤を作るものとして愛着が取り上げられることが増えている。
幼児期の愛着が大人の愛着スタイルに影響を与えているという研究がある。
愛着は、親密なつながりを形成する愛着型と、つながりを拒否する回避型、不安定に大別される。
これは大人の恋愛にも影響があるというのだ。
大人にとっても親密な関係は重要な意味をもっており、幸福や健康をもたらす要因のひとつであることは間違いない。
これまでの愛着研究は欠けた現象を理解するためにおこなわれたが、今後はポジティブな特性の形成の観点から研究が進むのを期待する。

スタンバーグの愛情モデル。
情熱・・・相手への熱くて強い感情的な反応
親密性・・・より温かい接近であり自己の共有
コミットメント・・・関係を維持していく決意
三要素が三角形に配置され、真ん中に至上の愛が配置され、ロマンティックな愛は情熱と親密性の間とかあらわされる。
人生の段階において、はじめは情熱が強いが次第に親密性が高くなりなどとスタインバーグは主張しているが、時代によるかもしれない。

パートナーの身体的魅力とウェルビーングは関係がない。
最も影響を与えるのは「健康的パーソナリティ」で、自己に関する健全な傾向が安定した愛情関係の形成に重要である。また、関係を保証するものが安定的であることが求められるので、パートナーのポジティブな行動を生まれつきのもので安定的なものと帰属すると満足感が高い。
愛情は二人の世界だが、より広い肌をもち、同時に親密な関係を形成するのが友情。

公平理論とは、安定した愛情や友情では両者が自分が与えているのと同じくらい与えられていると感じる必要があるとするもの。そして関係をもつとき槍とするものを対人資源として分類し、相互にやり取り可能であるものがあるとする。
対人資源(品物、情報、愛情、お金、サービス、地位)の分類は社会的サポートの種類としてあげられる。
サポートをうけるだけで済むものでないと考えることは建設的な対人関係を築くには重要である。
一方で無私の愛情というものある。
ポジティブな自己観によって支えられているのは、短期的な観点から自分の損に見えることを選択することではないか?逆に短絡的な公平さを追求する行動は、ポジティブな自己観に欠ける部分があるといえる。


第8章 ポジティブな特性ー品性・徳目
品性の研究は人間の特性の研究といえる。
特性とはある程度の時間にわたって維持される、その人の行動の特徴であるとされる。
オプティミズムや情動知性、自尊心や愛情などは、品性・徳目研究の一部ともいえる。

品性とは文部科学省の教育改革の「人間力」に対応する言葉だといえる。しかしまったく重なっているとはいえないかもしれないが、人間力が人間の持つポジティブなこころの力に焦点をあてていることは間違いない。ここで述べるポジティブな特性も社会で役立つという視点が重要である。
このテーマはポジティブ心理学の中核であるだけでなく、現在の日本の教育を考えていくうえでも重要な役割をもっている。

学校教育は弱点を指摘し克服することに重点をおいてきたが、それでは結果は芳しくない。
弱点を克服すればうまくいくという考えでは、せいぜい平均転移なるだけである。
得意な領域でこそ人はもっとも成長するのだ。
失敗を分析して、間違いをただせば成功するのではない。間違いやすいところを教えて克服させても数学の得意な子供を育成することはできない。
失敗の穴埋めはそのまま成功につながるとは限らない。
弱点をみつけることで、それにとらわれる危険もある。

アメリカ精神医学会の精神障害のための診断マニュアルDSMは、精神医学と臨床心理学の専門家の共通マニュアルであり、相互に共有できる基準を提供している。
このDSMのポジティブ版を作ろうという試みがなされている。
特性を網羅するための方法があげられていた。
6つのコア、知恵と知識、勇気、人間性と愛、正義、節度、超越性の下に24の品性・徳目が整理されたている、今はその分類なども議論されている状態。
議論の内容なども一部のっていた。

そのリストに対する質問紙も開発されている。VIA-ISという。
ネットで公開されている。
これを行うと強みのトップ5があげられ、強みを使ってみたい課題について、どのように新しいやり方で適用すればいいか考えてもらう。自分で選択することに意義がある。

品性・徳目が文化によって違うかの研究もある。
日本の青年とアメリカの青年を比較した研究では、ほとんどの項目が同じような位置を占めていた。他の国との比較も興味深いだろう。


第9章 生きる意味ー働き甲斐と生きがい
ポジティブ心理学は精神性や宗教性と結びつく領域をもつ。
しかし、その前に生きる意味について取り扱う。

生きる意味と仕事との関係
20世紀の社会科学では、労働に与えられた役割はいかに良い条件で金銭と交換するかというもの。
社会主義はでkるだけ多くの人がその労働を金銭とよい条件で交換できるようにするという社会システムを目指したが、金銭に上限がある場合は労働の質を悪くすることで交換条件をよくすることも起きたようだ。
資本主義では、高額で交換できることが労働の質の良いものであるという証明になった、会社の目指すものや事業内容にかかわらず、利益を生み出すことが価値の高い労働になった。
心理学者からみると、労働と金銭との交換という観点から見るだけという意味で同じである。
しかし、人間の生き方として幸福なのだろうか?

かなり多くの仕事は金銭に換算できない部分をもっているし、金銭だけではないので仕事は人生にとって重要なのである。仕事が生活を支えるために必要な対価をもたらすのは社会的に保障されるべきだが。
ウェルビーングを支える仕事の特徴は、仕事をどのような意味があると考えているかという認知に基づいて、その仕事に対するモチベーションが高い状態といえる。

成長している企業絵は特定の商品やサービスではなく、人間の持つ最高の能力を発揮する活動が目指されていること、その対象がきわめて広いのではないか?
そしてこれらの企業のミッションは収益をあげることではなく、利益は社会貢献の結果と考えられている。

成果主義はウェルビーングを低下される可能性が指摘されている。
仕事をコントロールしているのが、本人ではなく上司や組織であることがあまりに明確になるからである。
よい仕事をしたいというポジティブな経験のもとになる要因が失われてしまう。

ポジティブ心理学では仕事をするという経験を再構成することが提案されている。
仕事をする人間がより熱心に仕事に取り組むようになる要因は、自律性、仕事への挑戦、仕事を通じて社会的交流の機会が与えられることであり、これらを通じて、仕事をしている人間は自分自身で選択をして自分の能力を発揮していると感じるのである。
カラセクモデルでは、仕事からの要求(デマンド)の度合いと、仕事についてのコントロールという二つの側面から職場が評価されると考え、最もストレスなのは、高い要求と低いコントロールとされる。
また低要求低コントロールでは、期待されていないとしてやる気がなくなると考えられる。
低い要求と高コントロールではだらけた状態。
高要求高コントロールはそれなりのストレスはあるが、やりがいのある状態とされる。
高コントロールであるので、ある意味仕事の要求を高くしているのは自分であり、内発的動機づけが高まる。
また、この状態で社会的サポートがあることも重要である。上司や同僚との信頼関係があることが、職場のアイディンティティを増加させ、グループの団結と個人の良いウェルビーングをもたらすとされる。

変革型リーダーシップ
1 理念的な影響力
2 鼓舞するモチベーション
3 知的な刺激
4 個別的配置
これらの行動がフォロワーのウェルビーングをオズ化する可能性があることが指摘されている。
デマンドコントロールモデルからみても、変革型リーダーシップはフォロワーの要求水準を適切に高め、同時にフォロワーのコントロール間を高めて、その仕事のミッションや意義を明確にしながら配慮的なサポート提供するものである。
ポジティブ心理学からみたリーダーシップの在り方の重要な方向性を示している。

働き甲斐は域外の一部で、それを支えるものである。
より一般的に、仕事をしていない人にも重要であるのが生きがいである。
どのような人間も共通な根源的な要求として生きる意味を見出し、それによってQOLや幸福感が向上することを望んでいる。
生きる意味のテストをつくりデータを集めている。人生の意味を保有している人は幸福であると感じることがわかっている。また日本では幸福を探求する人と幸福の意味の尺度を持っている人が同じであるが、アメリカでは違う。探求中は幸福ではないとする人が多い。幸福に向かう過程を不幸ではないとするのは集団主義的な文化かもしれない(乱暴ではあるが)。生きがいを追い求めるのは、大切なものの存在を認めていることであり、不幸ではないという考えは、我が国の文化にあっているのかもしれない。
強調したいのは域外に多様さがあること。

ポジティブ心理学はこれまでの心理学で取り扱った人間のこころのポジティブな側面い焦点をあて、私たちのこころに備えられている豊かな働きを十分に生かすことによって、ひとりひとりが人生の充実を実現することに貢献することである。
これは心理学そのものの目標でもある。
ポジティブなこころの働きは多様であり、自分の課題に何を活かしていくかは一人一人の選択にゆだねられている。その多様性に対応し援助する実証的な心理学として進もうとしているのがポジティブ心理学である。


ポジティブ心理学入門 幸せを呼ぶ生き方

ポジティブ心理学入門 幸せを呼ぶ生き方

  • 作者: 島井哲志
  • 出版社/メーカー: 星和書店
  • 発売日: 2009/07/24
  • メディア: 単行本



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