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空想科学読本〈2〉 (空想科学文庫) [雑学]

著者の柳田理科雄さんは、物理学者になりたかったんだそうで、名前は本名なんだって。

ウルトラマンや仮面ライダーといった空想科学の世界を科学的に考えてみようという本。
第2弾

第一部 これが空想科学の真実だ!

・長すぎる寿命

ウルトラマンの年齢は2万歳。
ちなみにウルトラ兄弟の長男ゾフィーは2万5千歳、末っ子のタロウは1万2千歳。
父は16万歳、母は14万歳。
母がタロウを生んだのは11万歳のとき。
これらの年齢差を地球人の尺度で考えてみると、タロウを大卒1年目の23歳とすると父は307歳、母は268歳。
母がタロウを生んだのは245歳。ちなみにウルトラの星の大長老ウルトラキングは383歳になる。
では、ウルトラキングを人間の長寿120歳と仮定すると、タロウは7歳、ゾフィーは15歳、父は96歳、母は84歳。
父と母が生殖適齢期の28歳、32歳と仮定すると、タロウは2歳5か月でゾフィーは5歳。
どーして変。ウルトラの星は高齢者と幼児しかいないのか?
ザッハーという生物学者が多くの哺乳類を調べて体重と寿命の関係をしらべて導き出した式、ザッハー方程式でウルトラ一族の寿命を計算すると、38万3千歳。だいたい納得がいくが、それは脳が人間と同じ体重比とした場合。
ただし、ウルトラ怪獣第図解の大伴昌司氏によるとウルトラマンの脳は濃縮脳で重さは10gだそうで、これで導きだした寿命は72日なる。


・速すぎる走り
体重3万5千トンで時速450kmで走るウルトラマン。
新幹線でさえ、騒音対策振動対策をして時速270kmでレールの上を走るのに、彼はこの体重で普通に走る。
走るたびに高さ40メートルから3万5千トンの物体がおちてくる衝撃が1秒間に2・6回起こる。
10秒走るとマグニチュード4・5の地震が1250mの間に集中しておこる。
彼の走ったあとは東京は砂漠と化しているだろう。
ところで、ウルトラマンをカール・ルイスと同じ大きさにしてみると、100mのタイムは17秒02になる。これは小学生より遅い。
ちなみにウルトラ兄弟の中でも最も遅く、ウルトラの母より遅い。
カール・ルイスより速いのは、セブン、タロウ、キングだけである。

エイトマンは具体的に速度がはっきりしていないので、ライフル弾の速さは秒速800m、マッハ2.4だから、
これより速いとして、秒速1km、マッハ3としてみよう。
エイトマンのテーマソング、「ゆこう、無限の地平線」にあわせ、彼が地平線の向こうに走り去るまでの速さを計算すると、
エイトマンの目線を1m70㎝とすると、4.7km向こうなら地球の丸みにかくれてしまう。
秒速1秒なら、所要時間は4.7秒で歌っている間に消えられる。

ウルトラセブンのピット星人はマッハ5。
普段は身長1m55㎝の少女だが、宇宙人のすがたでも2m。
これでマッハ5は驚異的。フルマラソンでも24秒8である。
しかし、こんな速度で走れば衝撃波で観戦している人も記録を取る人も絶命してしまうだろう。
こんな速度で地球の大気中を移動するには空気抵抗に対抗する怪力が必要だ。
空気抵抗は速度の2乗に比例する。ピット星人には大型ブルドーザー2台分にほぼ匹敵する力がかかるはずなのだ。
走法も普通の陸上選手とちがうはずだ、あのフォームで走れば体が浮かんでしまう。また摩擦がなければ滑ってしまう。
理想的なフォームは尻をあげ、上半身を頭の方へ傾斜させ、すり足で走るのがもっとも空気抵抗をうけず、地面にむけた力をうけやすいが、おそろしくかっこ悪い。
生物が運動するには、外に現れるエネルギーの4倍のエネルギーを体内で消費しなければならない。
ピット成人は91万馬力のパワーが必要になるが、身長1m55㎝で1秒間に戦艦大和26隻分のエネルギーが駆け巡る必要がある。これは炭水化物なら180㎏。
走りながら食べ、食ったそばから排出する、ちなみに計算では大便の直径を3㎝とすると噴出速度は秒速40m、この力で垂直上昇できるくらいだ。
もっともマッハ5で走り回るピット星人には同じ速度の仲間しか見えないし、小石にでもつまずこうならすさまじいダメージをうける。自分や仲間の衝撃波でも被害はおおきい。いろいろ不便である。


・宇宙での戦闘
宇宙戦艦ヤマトでスターシャの妹サーシャの宇宙船が冥王星付近で攻撃され、十数分で火星に不時着。
しかしスペースシャトルでも13年、光の速度でも4時間かかるはず。
また、天王星軌道から、地球に「これで交信を絶つ」とやっていたが、電波ならとどくまで2時間はかかる。
返事がくるまで4時間だ。
ヤマトが大マゼラン星雲内に入るとイスカンダル星はあなた方の位置から0.8光年とメッセージが届くが、
光の速度で電波をうっても打ったのは9か月と18日前。これはヤマトが地球を出発する前になる。
宇宙は広いので、速度も桁違い。地球侵略する宇宙人は少なくとも太陽の公転速度より速くないと地球には来られない。
だいたい秒速300km。
現実の世界で人類が出せる最高速度はスペースシャトルのマッハ30だが、これは多段式だから。
しかし、空想科学ではみな1段式。
これでは船全部燃料を積んでも、相手の23分の1の速度しかでない。ガミラスが来たら則降伏すべし。
そして裏でこっそり高速宇宙船をつくるしかないだろう。
波動エンジンは光速の99%まで加速できる、これなら秒速300kmに勝てるが、これは原理的に不可能。
なぜなら通常の速度では与えたエネルギーの平方根に比例して速度はあがるものの、光速に近づくと質量に代わってしまうので。
秒速300kmを出すなら核融合で十分。これなら全重量の26%ですむし、85%くらいまで積めば、加速・減速・回旋ができるはず。
宇宙戦艦ヤマトの艦載機コスモゼロは相手を目視して戦っていたが、秒速300kmではこれは無理。
遭遇してから衝突するまで5秒程度ほしいが、そうなると3千キロ先あたりで敵がわからないといけない。これは東京ー北京より少しはなれたあたりで、そこまで肉眼で見えないだろう。
また、秒速300kmで半径100mの円軌道をかくと遠心力は重力の9千万倍で操縦者は死んでしまう。
重力の10倍で回旋するなら半径は92万km、地球の半径の140倍である。反転するのに2時間40分かかる。
一度うちもらしたら2時間40分かかるなら、ゲームやビデオが必要だろう。
宇宙海賊キャプテンハーロックでは、レーザービームらしきものが見えてから「よけろ!」とやっていたが、これも無理。
光は物体より速いのだが、レーザーなら光は同時なので、見えた時には命中している。
また不用意に相手を爆破すれば破片が飛んでくるかもしれない。
相手は秒速300kmで飛んでいる宇宙船だから破片も四方八方へ秒速300kmで打ち出され。自分の速度も加算されて1gの破片でも120㎏のTNT爆薬と同じ破壊力を持つ。
これを考えたらお互いに一発もうてなくなるだろう。
安全に相手を攻撃するには、ひたすら我慢して近づいてから、すれ違いざま後ろに撃つしかないだろう。そして逃げるのである。


・怪獣退治の方法
怪獣がでてくると、ウルトラマンでは科学特捜隊やウルトラ警備隊。ゴジラなら自衛隊が出勤。いきなり攻撃しているが、相手は未知の生物だ。いきなり攻撃して血がでたら未知の細菌がまきちらされて大変なことになるかも。いきなり攻撃するのは頭が弱いといえよう。
 ここでは、怪獣への攻撃の有効性を検証。
 
 スーパーガンは光線銃で、レーザーを照射すると思われる。これだと怪獣の体を切断して、しかも切断面が焼けるので血がとびちらなくて、実に有効だ。メーサー殺獣光線砲はゴジラにでてくるマイクロ波を使った攻撃で、電子レンジのように怪獣の体を加熱して爆発させる。これも有効だ。しかし、テレビで見ると光がジグザグにとんでいる、これでは空中放電がおきているので、電流がもっとも近い物質である隊員にあたってしまうと思われる。それはともかく有効な武器なのに怪獣が倒せないのは出力不足と思われるが、現場の声は司令部にとどかないのだろうか?ウルトラマンの出番がなくなるから?

 新型兵器ととしてはゴジラに登場した抗核バクテリアという核物質を食べる細菌がある。しかし鉄を食べる鉄細菌も実際は炭酸鉄を水酸化鉄に変える酵素で細々と暮らしているので、バリバリ鉄を食ってしまうわけではなく。核物質を食べる細菌もそんなところではないだろうか。ゴジラと共存共栄してしまうかも。また、本当に核物質をたべて増殖するなら、ゴジラの体重の1%が核物質だとすると、それをエネルギーにした場合、15億トンの抗核バクテリアが残ることになり、海は赤潮におおわれるだろう。
 初代ゴジラを倒したオキシジェンデストロイヤーは化学物質と思われるが、原子を破壊するには核反応が必要で化学反応では弱すぎる。仮に化学反応で酸素を破壊するとなると、1gの酸素原子核を破壊するために300億Jのエネルギーが必要なので、ゴジラを破壊するにはオキシジェンデストロイヤーは8億トン。ただし使えば水爆の8千倍の被害がひろがることになる。

 怪獣の口と鼻にコンクリートを流し混んで窒息させる方法だと、怪獣があばれて被害がひろがるだろう。
 暴れる暇を与えないほど大量出血させるのが正しい。これはウルトラセブンのアイ・スラッガーがそうだが、エレキングの場合流れ出した血液がサッカーコート11面分になるだろう。この始末はだれがするのか?
 ここはヤマタノオロチ作戦で、排水漕におびきよせたキングギドラに酒を飲ませて酔いつぶれたところを後ろから鋭利な刃物で首を落とし、血は排水漕にためるのが正しいだろう。しかし怪獣と酒を飲むのはヒーローにやってもらわないといけない。よっぱらって空を飛んで帰るとき嘔吐袋がいるかも。
 
 キングギドラをやっつけても、最後は死体処理の問題がある。 未知の細菌がいるかもしれない怪獣の死体をどうするか?
焼くとわけのわからない物質がまきちらされるかもしれない。南極に埋めるにもゴミを増やすことになってNG。
 宇宙空間に捨てるのがいいが、最新国産ロケットH2でも一回で運べるのは2t。切り分けて運ぶとキングギドラは1万5千のロケットが必要で、一機160億円とすると240兆円。ウルトラマンとキングギドラの酒代とあわせて300兆円を集めるために消費税は86%にはねあがるだろう。



第2部 必殺技に威力はあるのか?

・スぺシウム光線
 生物の腕から光線がでて、それで怪獣が爆発する。よく考えると不可解だ。
 スペシウム光線の特徴は、「スペシウム」の「光線」である。腕を十字に組むと発射される。切れ切れの青い光線、怪獣にあたると爆発してたいていは死ぬ。となる。
 解説本には右手にプラスのエネルギー、左手にマイナスのエネルギーを蓄えスパークさせると書いてあるが、こんなことをするとまず自分がやけどをするだろう。プラス極とマイナス極につながった電線を接触させると火花が散るが、飛んではいかないからスペシウム光線は電気ではないだろう。
 「ウルトラ怪獣大図解」によると、ウルトラマンの肘と手首の間には、スペシウムマイナスエネルギーぶくろとスペシウムプラスエネルギーぶくろがあるらしい。片方に物質、片方に反物質をいれておけば、合わせた時膨大な破壊力が生まれるだろう。ただし、威力がすごい。物質と反物質が1gずつでも発生するエネルギーは180兆Jで広島の原爆の4倍。怪獣どころか都市が跡形もなくなり、もちろん本人も跡形もなくなると思われる。
 画面でみるとスペシウム光線は切れ切れの光の集まりだ。これは陽子やヘリウム原子核を空気中に飛ばした際にみられる現象だ。オーロラと同じである。スペシウム光線では、スペシウムという高速粒子が飛んでいて、それが光っており、怪獣の体に衝突すると核融合や核分裂を引き起こすとするのがよさそうだ。
 スペシウムとは何か?元素である可能性が極めて高い。未知の原子だとすると極めて重い原子ということになるだろう。こうなると不安定で寿命が短いから、ウルトラマンは3分しか戦えないもの説明がつく。
 原子核を加速するには、原子の周囲の電子を弾き飛ばし、スペシウムをプラス電気を持ったイオン状態にして、これを電極板に挟まれた空間にいれてやる。加速器である。これがウルトラマンの体内にあればいい。長い射程をもつには加速器が大きくなる。テレビで見るとスペシウム光線は200mくらい飛んでいるから射程を1kmとすると加速器の大きさは100m。ウルトラマンがどら焼き体型になってしまう。
 さらにスペシウムが発射されると、空気の原子核に衝突して放射線シャワーが発生して付近の住民は被ばくする。また命中すると核爆発がおきる。迷惑だ。
 もし、ウルトラマンの体型にあわせた射程にするとスペシウム光線の射程は60㎝、うしろからこっそり近づかないといけない。
 最後に残った問題は、どうしたらスペシウムが発射されるかということだ。手を組んだだけで出るのでは、なにかの拍子にでてしまうかもしれないから、ここは入念な型の調整が必要だろう。入念すぎて、怪獣の前でなかなかでないかも。
 いろいろ考えたが、結局あたれば核爆発がおきるので、街も自然も破壊されることは間違いない。なによりもウルトラマンが被爆するわけで、大丈夫か?とつっこむべきか、責任感があると褒めるべきか・・・。


・ライダーキック
 仮面ライダー1号と2号はショッカーで再改造手術をうけて、ジャンプ力は25m、怪人を10m蹴り飛ばす力が与えられたという。
 ライダーキックは空中高くジャンプして回転し、斜め45度に落下しながら足をのばしたまま相手を蹴り、着地する。相手は10m飛んでいく、爆発は自爆としておかないとややこしいので、そうしておこう。はたして可能なのか?
 普通垂直に上昇したものはそのまま落下する。これを45度の角度に変えるには他から力を加えるしかない。もし風車の力でそれを起こすとすると、風車に与えるために仮面ライダーが噴き出す空気の体積は常人の2千倍。直径2m20㎝のフーセン玉になってしまう。
 では、仲間に手伝ってもらったらどうか?1号と2号が同時にジャンプして空中でお互いに蹴り合って方向を変えるのである。もっとも片方はただ地面におりるだけだけど。
 普通キックでもパンチでも、足や腕が伸びきる直前に相手に当たるのが最も威力がある。しかし、ライダーは足を伸ばしたままだ。計算してみるとジャンプと蹴り合いによって得られたエネルギーは4万J。時速110km。これなら400㎏の岩の塊をぶちぬけるので、伸ばしたままで十分なのかも。ヘタにこれ以上威力をつけると、自分の方にもダメージがきてバッタのように足がもげるかもしれないしね。
 最後の難問は怪人が放物線を描いてとんでいくことだ。普通棒状の物体に斜め上から力をくわえても、そうはならない。脚にあてると、怪人は自分のほうへ飛んでくる。怪人を飛ばすために弾力パンツをはかせてみることも考えたが、戦うのは赤土のやわらかいところなんで却下。全身ゴムで覆うとライダーキックの威力もなくなってしまう。
 というわけで、「油地獄奈落の底作戦」である。断面が円の4分お1になった溝をほる、なるべく大きな半径が必要なのでライダーのジャンプと同じ25mとする。深さ10m幅35mの谷をつくり油を塗っておく。怪人をこの縁におびきよせてライダーキックをぶちかますと、怪人は半円の中をすべって反対側から放物線をえがいてとんでいく。ただい蹴ったライダーも怪人より速く同じ方向にとんでいってしまう。静止した物体に別物体がぶつかると速度の合計は変化しないのだ。この場合怪人は時速36kmで飛ぶが、仮面ライダーは時速77kmで飛んでいく。仮面ライダーの足は怪人の腹につきささっているに違いない。
 実用的に考えるなら25mもジャンプできる力を走る方に使ったほうが効率がいい。この脚力で助走をつけてできるだけ低い弾道で怪人につっこむ。これで時速200kmで80㎏がつっこむ威力が得られる。しかし、威力がライダーキックの3倍になるので確実に足はもげ、自分も砂煙をあげて転がっていくことになるだろう。
 キックのたびにライダーが死んではまずいので、時速500km重量220㎏のサイクロン号に足の模型をつけて突っ込んだらどうだろう?


・ロケットパンチ
筆者が考える空想科学世界における戦闘ロボットの最高傑作はマジンガーZ、なかでもロケットパンチのインパクトは強い。
 しかし、現実世界でロケットパンチが実用化されたという話はきかない、では検証してみよう。

 ロケットパンチの定義は「スーパロボ大図鑑」によると、「光子力ロケットで飛ぶ、マッハ2で飛行する、2km先まで誘導できる、無傷でもどってくる」となっている。
 まずは推進力だが、光子力エネルギーの場合、光子力の大きさは出力を光速で割り、さらに9.8で割ればもとめられるが、出力65万馬力のマジンガーZの場合、その推進力は160g。片手の重さを1tと見積もると飛距離1.6㎝。短い。
 ではロケットエンジンで飛ばしたらどうか?これは推進力は十分だが衝撃に弱い。こんなもの積んでいたらとても戦えない。固体燃料ならこの点をクリアできるが、相手にあたったら爆発して戻ってはこないだろう。はずれて戻ってきても火を吹き続けているに違いない。
 カタパルト方式だとどうか?光子力ロボットが蒸気機関と長いシリンダーを持ち運んで戦うことになる。腕の長さは数十メートルになるのにマジンガーZの隊長は18m。これでは戦えないだろう。
 超合金のマネをしてバネではどうか?現在の材料ではとても1tのものをマッハ2で打ち出すのは無理だが、マジンガーZの体に使っているという、新元素ジャパニウムを使った超合金Zでバネをつくったと仮定すれば、不可能ではない。ただし、打ち出すときの反動が自重の750倍かかるのと、装着のとき果汁力2万トンのプレス機がいる。ただし、戦闘中に一度発射してしまったら自力で再装着するしかない。自重20トンをすべてかけても装着できず、壁に走りながら押し付けたら壁が壊れる、最悪中途半端に縮んだバネでマジンガーZは空を飛ぶことになるだろう。
 ではアフロダイAに協力してもらおう。このロボットと背中合わせでマジンガーZはロケットパンチ、アフロダイAは胸からミサイルを同時に発射。反動を打ち消し合う。装着は、お互いに飛び道具を発射場所に押し付けた状態で衝突しあう。ただしマジンガーZの手とアフロダイAの胸が密着して子ども向けアニメとしてはどうかという絵になるだろうけど。
 しかし、バネでは誘導は不可能である、あれ、マッハ2で飛んでいくということは2kmは3秒で通過してしまうんだから誘導意味ない?とにかく一度発射したらマジンガーZが自ら拾いに行かないといけない。こんな使えないものは敵の機械獣に装着して混乱させるのが一番だろう。


・消える魔球
 「巨人の星」の原作者、梶原一騎による消える魔球の理論。「ボールは打者の魔で一度大きく沈んだ後、ホームベース上で再びホップする。投球動作中、勢いよく蹴り上げた飛雄馬の足からマウンドの土がこぼれおちてボールの縫い目に付着する。激しく回転するボールは遠心力によって付着した土を弾き飛ばしながら飛んでいき、地面の土をまきあげて、煙幕を張る。」

 軌道変化の可能性。一度投手の手を離れたボールには慣性がはたらき、ボール時代にぜんまいやロケットエンジンでもしこまないと回転方向を変えることはできない。
 さらに、消える魔球では1mの間に高低差50㎝で浮き沈みがある、必要な力はボールの180倍27㎏、時速110kmのカーブでは必要な力は自重の23%、34gである。回転数も普通のカーブは毎秒40回。発生する力は回転数の平方根に比例するので、790倍の力を生み出すには毎秒100回という猛回転をかける必要がある。ボールにこれだけの回転をあたえるのに84㎏の力が必要で、これは大男を指先にのせて持ち上げるトレーニングをするということで、即引退だろう。
 軌道変化のことはひとまずおいといて、保護色を検討。蹴り上げた足やホームベースを舞う土は微量だし、あまり土埃がたっていればタイムをかけられて水をまかれてしまうだろう。球場の土は龍角散ではない。そもそもボールの回転数は手を離れた時が一番おおきく、土が遠心力で飛ばされるのもこのとき。しかも、消える魔球のウルトラ回転なら、普通のストレートの17万倍の猛烈な遠心力がかかる。この状態で付着していられる土はウィルス並みの超微粒子だけである。
 というわけで、梶原理論では、ボールは一度しか変化せず、トレーニングの段階で手首を怖し、飛雄馬は投球直後に顔面つちだらけ。打者には純白のボールがとんでいくことになる。
 
 これでは気の毒なので、科学で軌道変化の問題をクリアする。まず1塁と3塁のフェンスに磁石を仕込み、ホームベース上を3塁側から1塁側へ流れる磁場を発生させる。マウンドにはパンでグラフ起電機をおき、ゴム手袋をしてボールを帯電させる。こうしてフォームボールを投げると、マウンドの前でフォークなので沈み、その後磁場の力でボールが浮き上がる。これなら猛烈な回転もいらない。
 ただし、空気中では1mにつき100万ボルト以上の電場が発生すると放電が始まる。なるべくたくさん電気をボールに貯めたいが、欲張るとまず自分に雷がおちてくる。水分量が多いと電流が流れやすいので汗や涙は厳禁である。投げる時もなるべく肘をのばして顔をそむけないといけない。
 いっそゴム手袋をはずして、自分自身が電気人間になる方法もある、一気に電気が流れると危険だが、徐々に貯める分にはしびれないからだ。ただし、地面との電圧で股間に落雷してしまうので、高さ数十センチのゴムの高下駄が必要だ。そしてゲームセット後に伴宙太と抱き合うのも安全のためには厳禁である。
 こうして魔球がなげなれることになったが、危ないのはバッターと観客である。ボールを曲げるほどの磁場が発生しているのだから、ペースメーカーのある人はもちろん。中継機器も球場にはいれない。むろんバッターは落雷の危険があるのでゴム手袋ゴム長靴で体は乾かしておかなければならない。
 さらに磁場の中を電気をもった物体が移動すると電磁波が発生する。飛雄馬がなげるために身体各部の細胞はダメージをうけ、とくに細胞分裂の盛んな骨髄や生殖腺、胎児がダメージにさらされる。もはや野球なんかみている場合ではないが、これも消える魔球のためである。




第3部 そんな怪獣が実在できるか?

・空飛ぶ怪獣
 なんの説明もなく空を飛んでいるヒーローに比べて、怪獣の皆さんの飛び方は一見現実的だ。しかし本当に有効か?

 翼で飛ぶ怪獣としてラドンとギャオスをとりあげる。ラドンはマッハ1.5、ギャオスはマッハ3.5で飛ぶという。翼で音速が超えられるのか?
 自然界の生物が飛ぶ方法は、羽ばたきと滑空である。
 恐竜のプラテノドンを参考にしたいが、化石しか残っていない。しかし骨格からほとんど滑空であったろうと思われる。
 自然界の飛行生物は大型になればなるほど滑空によって飛ぶ傾向がある。
 滑空は、グライダーのように固定した翼の形状と角度によって前方からうける空気抵抗を上向きの揚力に変えて飛ぶ。滑空で音速をこえたいとき、問題になるのは推進力である。前方からくる空気抵抗すべてが揚力になるわけではなく、大部分はブレーキになるので、これに対抗する推進力が必要で、それは重力である。重力を推進力とする以上、自由落下より速く飛ぶことはできない。そしてスピードが必要なほど、高いところから降下する必要がある。空気抵抗がなくてもラドンは上空1万3千m、ギャオスは7万2千mから降下開始である。アホウドリやトンビは上昇気流にのって高度を稼ぐが、ラドンやギャオスをもちあげてくれる上昇気流なんてない。羽ばたいて高度をとるにしても、高度1万mでは空気は地上の3分の1ではたくべき空気もなくなってしまう。なんとか上がったとしても空気抵抗をいれると、どんな上空から降りても速度には限界がある。ラドンは体長50m、翼長120m、体重1万5千トン、これでマッハ1.5を出すには角度49度をつけなければならず、飛ぶというより墜落に近い。ギャオスは体長65m、翼長175m、体重は25トン。軽すぎるのでまっさかさまでも時速は70kmしかでない。もしグライダーと同じくらいの5度の角度で滑空すると時速は21kmで原付バイクより遅い。
 ここで怪獣図鑑をみるとラドンは足の裏からジェット気流を吹きだすらしい。しかし足の裏からでる空気では体重1万5千トンをもちあげることはできないので、しばらく地面を走らないといけない。計算によるとマッハ0.6まで加速してから翼で飛びたつとマッハ1.5に到達できる。なんと足の速い怪獣ではないか!

 羽ばたく怪獣モスラ。こちらは飛行速度マッハ3である。しかし、マッハ3で飛行するには、翼をマッハ3以上で動かす必要がある。そんなことをすると翼の動きに空気がついていけず、真空状態が発生して空回りを起こす。これでは身もふたもないので、一時棚上げして考える。
 羽ばたくとき、打ち下ろすときはよいが、いったん振り上げないと打ち下ろせない。これでは上がって下がってで永久に上昇しない。
 鳥は打ち下ろすときは翼を伸ばし、振り上げるときは関節をまげて翼を縮めているので飛べるのである。また鳥の羽根は上からの風は通すが下からの風は通さない。
 昆虫の場合は、打ち下ろすときと振り上げるときでは翅の角度と速度をかえている。
 しかし空飛ぶ怪獣達にはそういった気配はなく、ただスイングするばかり。
 さらにモスラの飛び方は、胴体が水面を滑るように水平に動き、翼だけ上下にうごいている。チョウをみればわかれが、体に対してあれだけ大きな翼をはばたけば、反動で胴体も上下するはずである。だいたい離陸できないだろう。その上背中に小美人と呼ばれる体長30cm女性二人をのせているのだ。彼女たちの命も危ない。
 体長250mであることから考えてモスラのスイングの支点は胴体から50m程度の位置にあるとみられる。映画モスラでは上下合わせて60度、1秒に1往復のペースで羽ばたいでいた。小美人は50mの落差を片道0.5秒で往復する揺れにみまわれる。しかも激しい加速と減速がある。モスラが翼を振り下ろして空中で翅が一直線になった瞬間、胴体の最高速度は秒速160m、マッハ0.46である。このとき小美人がふきとばされると到達高度は1300m。東京タワーより高い。これをしがみついてしのいでも、今度は胴体は下がり始める、このとき体重の100倍の力がかかるが、それでもしがみつかないといけない。腰に199人の人間をぶら下げてロッククライミングする腕力が要求されることになる。そして最下降点から上昇するが、このとき体重の102倍の力がかかる。小美人はモスラの背中でひしゃげてしまうだろう。

 以外にもガメラの飛行方法は有効である。ガメラの太ももと腕はそれぞれ一ダース程度のパイプにぐるっと取り囲まれている。ここから高温ガスを噴射してマッハ3.5で飛ぶという。ガメラはジェット噴射で前進すると甲羅の下の面に風をうけ、揚力でとびあがるのだ。筆者は模型で確認した。体重を持ち上げるのに必要な速度はわずか時速31km。マッハ3.4なら時速4300kmなので、ものすごいおつりがくる。体重の2万倍の荷物をもって飛べるのだ。
 ところが前述のは足をひっこめたジェット噴射だが、もう一つの飛行形態、手足も首もひっこめて甲羅を円盤のように回転させながら回転ジェット飛行はいただけない。まっすぐ飛んだ方が有効なのに、回転するからエネルギーの大半は無駄になり、遠心力が発生する。回転して垂直上昇するとすると体重の2倍の推進力が必要でこんな回転をすると甲羅先端の回転速度はマッハ7。渦状の衝撃波は竜巻となって地上を押そうが、本人も遠心力で骨が砕け脳がつぶれるだろう。高温ジェットガスの燃焼をコントロールすることはできなくなり、巨大な亀の焼肉となってしまうだろう。


・透明怪獣
 透明人間になれても食べたものは透明にならないから消化がまるみえになる。
 また血液は赤くないと酸素をはこべないので、血液だけは残すとすると血管標本だ。
 どちらもなりたい人はいないだろう。
 
 透明怪獣たちはどうか?忍者怪獣サターンは体が中性子でできているので透明なのだという。中性子がくっつくには万有引力の法則しかないので、相当な密度が必要である。中性子星の密度は1平方センチメントールあたり20億トンで、サターンもこれくらいの密度があると思われる。サターンの身長は45mあるので、重さは500京トン以上。100m離れた地点にはたらくサターンの引力は地球の重力の300万倍。地上の物体はウルトラマンも含めてみなサターンにひきよせられてしまうだろう。透明の意味があるのか?
 ネロンガの細胞はガラス繊維でできているという。しかし透明なガラスも細かい繊維になって集まるとひび割れたフロントガラスのように真っ白になるし、動くたびにこすれてキィコキィコという不快な音がするに違いない。
 どうしようもないので、ネロンガは一体化したガラスでできていると仮定してみよう。しかし透明な水が入った透明なコップをみなみることができる。それは屈折のおかげである。真空中の高速を物質中の速度で割った値をその物質の屈折率とよぶ。ガラスの屈折率は空気の1.5倍、水の1.1倍。よって水のなかのコップのほうが見えにくい。空気中で見えないなら、空気と同じ屈折率でないといけないが、候補はガスばかりである。ガスではタンパク質はつくれないし、そもそもガスの体では現れたとたん周りの空気に溶け込んで消えてしまうだろう。
 屈折率をおいておくとして、空気と同じ屈折率の固体や液体でネロンガの体ができているとしよう。これでも問題はある。まず目が見えない。像を結ぶ網膜も光を通すし、レンズも空気と同じ屈折率だからである。視力を残すと空中に眼だけが浮いていることになる。また運動すると、熱で筋肉周辺の分子が変化して屈折率がかわり、体の周辺部が光ったり、向こう側の景色がゆらぐので、微動だにできない。当然心臓もうごかせないので、透明になったら即死である。
 無理そうなので透明はあきらめて姿を隠すことにする。背中のカメラで捉えた画像を腹側のスクリーンに映すと何もないように見えるに違いない。ヒラメやカメレオンの細胞を進化させれば、景色を映し出す細胞だってできるかも。しかしネロンガの体には大きさがあるので、地面に腹ばいになると身体の分盛り上がって見えて、狙い撃ちになる。また遠近感というものがあるので、見る人の距離に合わせた画像にしないといけない。複数の人がいたらパニックである。ネロンガが消えられるのは誰もいないときだけということになってしまう。


・水中怪獣
 ゲスラはマッハ2で水中を泳ぎ、ガマクジラはマッハ5で泳ぐという。実は水中では音速は秒速1500m、空気中の4.4倍である。だからはゲスラは空気中でマッハ8.8、ガマクジラはマッハ22でウルトラマンより速いのだ。相手は水中なのに追いつかないという事態である。
 水中をマッハ2で泳ぐには水の抵抗が最大の障害だ。水の抵抗は、水にぶつかる部分の面積と速度の2乗に比例するので、ゲスラの体が直径20mのラグビーボールだと仮定すると水の抵抗は3億トン。直径800mの岩塊の重さである。ゲスラは怪力なのである。怪力怪獣といえばブラックキングだが、30万トンのタンカーを持ち上げる程度、ゲスラはその千倍だ。
 3億トンの力を出しながらマッハ2(時速1万km)で進むには1秒間に8千兆Jのエネルギーが必要だ。これは20万トンタンカーいっぱいの石油が爆発したときに発生する熱エネルギーに等しい。なのにゲスラの主食はチョコレートなのだ!8千兆Jのエネルギーを得るには72万トンのチョコレートが必要で、世界で生産されるカカオ豆は年間200トン、3秒で地球上のチョコは消滅する。72万トンのチョコを食べるゲスラも大変だ。食いだめできないので泳ぎながら食って消化するしかない。チョコレートの比重を水の2倍とすると要求される口の面積は120平方メートル、楕円なら縦8m、横20mでウルトラ兄弟を3にんまとめて丸のみできる。
 さらに呼吸も必要だ、ゲスラを両生類の幼体、オタマジャクシみたいなものと仮定してエラ呼吸するとしよう。生物が食物から8千兆Jのエネルギーを取り出すには8億立方メートルの酸素が必要だ。海水には酸素は33分の1しかふくまれていないので、1秒間に8億立方メートルの酸素をとりいれるには1秒間に海水260億トンの海水を口から飲み込んで排出しなければならない。東京湾の海水が300億トンなので1秒で東京湾を飲み干す勢いである。これをいれるための口は880ヘクタール必要で、楕円なら縦2km、横6kmで体の大きさをゆうに上回っている。さらに排水の問題もある、えらが確認できないことからトゲに隠れているとみられるが、楯10m横2mの大きさと仮定すると毎秒8億トンの海水を排水するならその速度は毎秒2万km。地球の重力をふりきって宇宙に到達できる速度である。しかもこんなことをするなら、泳ぐためのエネルギーの6千億倍のエネルギーが必要になってしまう。これはダメだ。エラ呼吸は捨てよう。電気分解で酸素をつくっているではどうか?海水を電気分解すると、マイナス極から水素がプラス極からは塩素が発生する。さらに電気分解すると水酸化ナトリウムという生物の皮膚を溶かす液体になっていき、もっと分解するとやっとプラスから酸素が発生する。1秒当たり130万トンの海水から呼吸に必要な酸素が取り出せる。エラに比べれば少なくて済むが、水素やら塩素やらをまき散らす毒ガス怪獣になってしまった。
 チョコレートがレール上に施設してあるうところを耳まで裂けた口をあけてマッハ2で泳ぐゲスラ。しかしこのとき衝撃波で、津波と熱が発生する。1秒に8千兆Jのエネルギーが発生するとして計算すると、まず衝撃波でゲスラから1000km離れた海岸線が陸地に1m削りこまれ、直径1km程度の小島は木端微塵である。改訂は4.4kmの深さまでえぐりとられる。次は津波である。波頭の高さは太平洋の真ん中で150m、水深が浅くなるほど高さはまして太平洋全沿岸が襲われる。そして熱。顔面と海水との衝突による熱1秒に2800兆Jプラスチョコを消化するエネルギーの半分が熱になるとして合計1千兆J、これは1秒間に3400万トンの水を沸騰させてしまう熱量である。ゲスラの進路にそって幅170mの水域が煮えたぎる。この熱は瞬間的に伝わるわけではないので、ゲスラに接している海水は次々と蒸発体積が2千倍に膨れ上がり、衝撃波と津波の威力を増す。アジアは全滅。行方不明数十億、生態系は根こそぎ破壊され、世界地図が大幅にかきかえられるだろう。

 ガマクジラはさらに速いマッハ5で泳ぐ、このとき力と破壊はゲスラの6.8倍、エネルギーは16倍。決定的にヤバイのは衝撃波で28kmまで海底がえぐられること。これによって地殻が弾き飛ばされ、プレートの厚い部分でさえ半分は吹き飛ばす、薄いところは真っ二つだ。これは地球が危ない。もし、太平洋側のプレートが割れてしまったらいきなりつっかい棒を失った日本列島は沈没。大陸移動がはじまってしまう。
 そして、ガマクジラの主食は真珠。これは炭酸カルシウムだが、これは化学反応で熱を吸収してしまう。ゴミ袋によく使われているのはこのためである。いったいガマクジラはどうなっているの?


・地底怪獣
 怪獣が潜んでいるとしたら海か地底しかない。ウルトラ怪獣入門でも地底怪獣に分類されているのは35匹。
 これらが本当に地底怪獣の資格を有しているのか検証する。

 前述の35匹に加え、筆者水栓の冷凍怪獣ガンダーと磁力怪獣マグネドンをいれて37匹を検討。
 そもそも地底は海底とちがって地下数十センチまでしか生態系はない。1万メートルを超える深海でも火山がある海底とはちがうのである。土壌生物の食物連鎖は、枯葉や落ち葉、動物の死骸や糞をつかっているので、それほど深くでは活動できないのだ。
 というわけで、草や牛、人間を食う怪獣はアウトである。地底で暮らすなら粗食で、みつけたエサはすばしこく食う必要があるのだ。というわけで、食うとうまいというツインテールもエサになってしまうという点で脱落である。
 地下数十メートルでは地盤が固くなり、土の粒子に含まれる空気が少なくなるので、自分の掘った穴で空気交換が必要だ。毒ガス怪獣はここで脱落だ。空気が毒ガスにおされれば酸欠死だ。
 テレスドンは血か4万mまで潜るというが、4万メートルもぐると温度は1300度、冷凍怪獣はここでアウト。圧力は10mで5気圧高くなるので、1万気圧。1㎠あたり10トン。体がやわらかいジュガロンやピグモンも脱落だ。ゴルゴスは10万トンの体重があるが、のしかかると660トン(人間1万人分)というから、きっと脂肪でぽよんぽよんしているだろうからアウト。
 残り25匹。地底で生きるにはモグラのように土をほれなければいけない、モグラとかけはなれた体型の角のある怪獣などはアウト。
 モグラはシャベルのような手で土を掘るが、手がムチやら握りこぶしな怪獣はアウト。
 モグラの眼は退化している。光が届かないから見えないのだ。それなのに透明怪獣とか、保護色怪獣、レントゲン目の怪獣なんかはアウトだろ。
 残るは11匹。地下の岩盤は硬い。これを掘れる怪獣はいるか?ゴーガは殻のドリルで後ろ向きに掘り進むらしいが、岩盤に殻が刺さった状態で自分が逆回転して動けなくなると思われる。千トンの岩を握りつぶすアーストロンだが、時速200kmで直径30mの穴を掘るにはい秒間に8回握力運動が必要で無理だろう。だいたい残土がでるので穴を掘るのはきびしい。
 岩を溶かしてマグマ化してその中を泳ぐギラドラスは斬新だ。しかしギラドラスの体重は16万トン。これではマグマの海を沈むばかりだろう。10万度の熱をだすザンボラーも岩を溶かすどころかプラズマ化してしまい、沈んでいくだろう。
 残り7匹。怪獣が地底を進む方法として現実的に思えるのは岩を引きさき断層を起こして空間をつくり進む方法。これを繰り出すと大変な力とエネルギーが必要だが、騒音もすごい、音に敏感なゴーストロンは脱落。地震をもとに断層をつくる力を導き出すとマグニチュード8.7、80京Jのエネルギーと20兆トンの力が必要だ、これではデットン、テレスドン、レッドキングも脱落。がボラは1日1トンのウランを食う。これで放出されるエネルギーは8京Jでまだたありない。パゴスはウラン摂取量がかいていないので、10トンにしてしまえば80京Jになるけど、核分裂で発生するのは熱エネルギーだけで、そのすべてを力学エネルギーにはできない。熱で溶けたなかをパゴスも沈んでいくことになる。
 こうして残ったのは黄金怪獣ゴルドン。ゴルドンは体に150トンもの純金をためており、時速150キロのスピードで地中をほりすすみ、1日に10兆円もの金をたべたことがある、ゴルドンの汗がかわくと砂金になると書いてある。体は流線型だし、歯も金が食べれるくらい丈夫だから地底生活にむいていそうだが、手が短い。となると頭の角で岩盤に杭を打ち込むように進んでいるのか?1秒に1回角をぶつけると、時速150kmで進むには1回に42mすすまないといけない。ゴルドンの銅の直径は目測10m、頭突きでこの穴を掘り進むのは大変だが、必要なエネルギーは断層をずらすのの19万分の1であり、意外と現実的である。しかしゴルドンの体重は6万トンで、これで必要なエネルギーを出すには速度マッハ1.1で岩盤にぶつかる必要がある。これはちょっと無理か。
 10兆円の金を食うという設定の方から考えてみよう。金は岩に含まれているが、それは岩の10万分の1。10兆円の金7千トンを食べるなら、食べなければいけない岩の量は一日7億トン、体重の1万2千倍。とても掘っては食べしていては間に合わないので、チューブ型で前から岩を食い、後ろから出す一直線なゴルドンを考える。これで7億トンの岩を押し込むには時速149kmで進めばよくて設定とぴったりあうではないか!
 もっとも調子にのったゴルドンが毎日10兆円の金を食べるとすると、金の鉱床でもないかぎり、そのへんの岩に含まれる金は10億分の1。食べる岩の量は7兆トン。マッハ1200で地球を890周しながら岩をたべることになり、地球はずたずたになるが、それよりはやく遠心力で飛び去ってしまう。地球は丸のでまっすぐ進んでいるつもりでも円運動になっているので、一定の速度を超えたゴルドンは衝撃波を残して宇宙へ飛び去るであろう。
 

・最強は誰だ?
 ブラックキングは30万トンのタンカーを持ち上げ(力)、鉄腕アトム10万馬力(仕事率)、ボスタングのヒレの力は野球選手13万人がホームランを打つのと同じ1100万J(エネルギー)これでは比べようがない。統一する単位を考えよう。
 原色怪獣怪人百科に「ゴジラの尾っぽはジャイアント馬場の5万倍」「ラドンのチョップはジャイアント馬場の2万倍」とあるので、ジャイアント馬場を基準に考える。
 全盛期の馬場は120㎏のバーベルをリフトアップした。身長2m9㎝の馬場なら2m80㎝持ち上げたろう。その時間を2秒として、力=120㎏重、エネルギー3300J、仕事率2.2馬力、これを1ジャイアント馬場と仮定。単位名を「ジャバ」とする。
 これでヒーローや怪獣の強さを換算して比べると、ゴジラは5万ジャバで怪獣としては最弱である。レッドキングは91億ジャバで、これなら全人類がジャイアント馬場になっても適わない。鉄腕アトムなら4万5千ジャバで世界中のレスラーを集めても適わない。
 レッドキングは広島におとされた原爆の3分の2の破壊力をもつ。殴られたら体が瞬間的に蒸発してキノコ雲があがるだろう。肩をたたかれただけでも窓際どころか三途の川である。
 ウルトラマンは45万ジャバしかないが、マッハ5で飛べる150億ジャバの飛行能力でレッドキングに対抗できる。もっとも衝突したときの反動は半分くらうけど。
 仮面ライダーは6ジャバ。全日本プロレスのレスラー20人全員が戦ったほうが世界の平和を守れることだろう。
 そして最強はガマクジラ。水中速度マッハ5は850億ジャバに相当する。
 以上は肉弾戦の話。火を吹いたり光線を出したりした場合はどうなるか?ゴジラの放射能の炎は2500億ジャバだが、ペギラの冷凍光線は5秒で東京を凍らせるので960兆ジャバ。マグネチュードンはマグニチュード20の地震を起こすので、1900万×1兆×1兆ジャバ。2500億年間阪神大震災をおこすことになり、地球が1億回われてしまう。
 優勝はゼットンで1兆度の火の玉を吐くので140兆×1兆×1兆ジャバ、1秒間に地球を400兆個破壊してしまう。
 
 さらにジャイアント馬場はステーキを一度に6枚食べるから2枚しか食べられない人は0.3ジャバとか拡張していたが、わけがわからなくなって
怪獣の強さ比べられたからまあいっかで終わりになっていた。


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