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深紅の帆 [小説]

作者のアレクサンドル・グリーンという人はソビエトの作家としてはめずらしく社会主義的でないらしい。
しかし幻想的でロマンチックな作風が青少年の間で人気らしい。

この作品も、かなりロマンチック。
偏屈な父親に育てられ、ほとんど人と交流しないで育った少女は、
いつか真紅の帆をはった船にのった人が自分を迎えにくるという夢というか、信念をもっていた。
一方一人の水夫が船長にまで出世し、航海中に偶然野原で眠っている少女をみて一目で恋におち
彼女のことを探らせて夢の船の話を聞きだし(村で知らないものはいなかった)、
夢のとおりの船をつくって少女を迎えにいくのだ。


1予言
船乗りのロングレンが家に戻ると、妻は赤ん坊を残してなくなっていた。
3か月赤ん坊の面倒をみていたという未亡人によると、
お産が難産だったのと、赤ん坊の面倒をみるのにロングンレンが残していったお金が足りなかったので、
村のメンネルスに借りようとおもったが、愛人になるようにいわれて断った。
しかたなく婚約指輪を質にいれようとリッスの町へいってきた翌日、雨の中をあるいたせいで熱をだし
そのまま亡くなった。
ロングレンは船乗りをやめてアッソーリと名付けた娘と二人で暮らす。
もともと愛想がよくなかったが、村のひとたちが妻を見殺しにしたことを恨んでいたためか、
ほとんど近所づきあいをしなかった。
仕事はおもちゃの船をつくることで、品物をリッスの町に売りに行って必要なものを買ってくるので
メンネルスの世話にはならなかった。
ある嵐の日、メンネルスは海岸にとめてあったボートをひきあげようといって、流されてしまう。
ロングレンはそれを目撃しながら見殺しにして、妻の恨みだといった。
メンネルスは漂流のあげく戻ってきて、このことを話したので、村ではロングレンとつきあうものはいなくなった。
アッソーリも仲間外れにされて、父親の船乗り時代の話をききながら育った。
娘が大きくなるとロングレンはおもちゃを売りにいかせるようになった。
ある日アッソーリは、町に行く途中の森で売り物の真紅の帆をはった船を小川に浮かべて流されてしまう。
おいかけていくと民話の収集をしている有名人ユグリに出会う。
ユグリはアッソーリにインスピレーションを感じ、いつか真紅の帆をはった船で王子様がお前を迎えにくるよと予言する。
アッソーリは大喜びで父親のところにいって、それを話す。
この話を通りすがりの乞食がきいていて、ロングレンがたばこをくれなかったのを恨んで、
村の人たちにおとぎ話をはなしたので、アッソーリは村の子ども達に「赤い帆がくるぞ」とからかわれるようになった。

2グレイ
アーサー・グレイは何代も続く家系のお城に生まれた。
いきいきしたたましいの持ち主で、生命力にあふれていた。
彼は家系をつぐことや、勉強などにまるで興味がなかった。
かれのやんちゃエピソードがいろいろ語られた後、図書室で船のことを知り、
15歳で家をでてアンセルム号の見習い水夫になった。
船長は、グレイのぼちゃんらしい格好をみて、すぐに泣きついてくるだろうと思っていたが
グレイは必死になって水夫の生活になじみ、やがて船長から航海術や、実地訓練、
造船技術、海上法、水先案内の技術、簿記を習った。
そして20歳の時故郷に帰ると、父親はなく、母親は彼を溺愛していたので、そのままうけいれた。
でも母親にはグレイの話はおもちゃのようにしか感じられなかった。
グレイは大金をもちだすと、アンセルム号の船長にわかれをつげ、自分の船シークレット号をつくった。
それは60トンの三本マストの帆船で、リッスへ向かう前にこれで4年間の航海をした。
家には1年に二度ほどかえっていたが、母親はかれのはなしをきいても、おもちゃをいじっているようにしか感じないのは相変わらずだった。

3夜明け
運命の日は近づいていた。
グレイはなんとなくリッスの町のちかくにいた。
気持ちがおちつかず、水夫のレチカをつれて竿をもってボートででかけた。
カベルナの村(アッソーリの暮らす村)をすぎて、上陸するとたき火を焚いた。
レチカは釣りにいったが、グレイは眠ってしまった。
目を覚ますと真昼で、丘の斜面の林にはいっていくと、アッソーリが眠っていた。
そのときグレイは彼女を目でみたのではなく、まったくべつなふうに見た。
全身がふるえ、すっかり満足した気分になっていた。
レチカが「キャプテン、どちらにおいでですか?」と呼ぶ声がする。
グレイは指輪をはずして少女の小指にはめると、そっとそこを離れた。
レチカはその光景をみて、いっぷくの絵のようだといった。
二人はメンネルスの息子(父親は流されたあと、戻ってすぐ亡くなった)の酒場で、
アッソーリのことを聞く、息子はロングレン親子を憎んでいたので、頭がおかしい親子で
自分の父親は殺されたと話す。
その話を聞いていた酔っ払いの炭屋は「あれは頭のいい子だ」といって、
メンネルスの父親の仕打ちを話、アッソーリを何度も町から乗せたが、普通にしゃべるが
内容は自分たちとはちがう、特別ななにかがあるという。
グレイはレチカにもっと情報を収集するようにいうと酒場をあとにして船に戻った。

4前の日
グレイがアッソーリに出会う前の日、
アッソーリはリッスのおもちゃ屋で、もう父親の作るおもちゃは買わないといわれた。
今は外国のそういう品が多くて売れなくなったのだと。
店主は他の店を紹介してくれたが、どこもおもちゃを買ってくれなかった。
アッソーリは家に戻り、父親に話すと、父親は船乗りに戻ることを考え始めた。
アッソーリは自分も行くといったが、父親は自分が生きている間はお前を働かせないといい、
娘にキスすると海岸にでていった。
アッソーリは落ち着かない気分で家事や縫物をすませて、眠りについた。
朝早くに目がさめてしまい、父親はもどっていなかったが支度して外にでた。
娘がカベルナの村のだれからも恋愛対象にされず、でも何かをもっているのではという疑いをだかれていることなどがかかれる。
アッソーリは周囲の植物や生き物に話しかけながら絶壁のはずれにやってきて、
海底から真紅の帆の帆船がくる幻をみる、そしてそのまま寝てしまう。
そして、起きた時、あのグレイの指輪が小指にはまっていたのだった。

5船出の準備
グレイは、シークレット号をリリアナ河口にうつして修理するといった。
そして町にいって上等な絹の真紅の布を2千メートル買い込んで帆をつくらせた。
楽師たちも集めた。
船員たちはなにがなんだかわからず従う。
レチカが戻ってきたが、最初にわかった以上のことはわからなかった。
グレイは、妻を迎えにいくといって船出する。
船長補佐のバンテンは密輸の方法なのかとおもいこんでる。
グレイ自身も、少女に何も伝えていないのに、自分がこうしているのをときどき不思議におもうのだった。

6アッソーリひとりとなる
海で一夜を過ごしたロングレンは戻ってくると、娘が落ち着かないのに気が付いた。
しかしアッソーリは指輪のことはいわなかった。
ロングレンはカセットとリッスを往復する郵便船にのせてもらうといってでていった。
自分のいない間10日ほどの間はは小銃をそばにおいて家にじっとしているようにいうといってしまった。
アッソーリはじっとしていられず、自分でもよくわからないままリッスに向かい、
炭屋に「もうすぐどこかにいくが、それは何時で、どこにいくかもわからない、でもきっと行ったきりになる」という
炭屋は「今日はあの娘おかしいよ」と受け流した。

7真紅のシークレット号
運命の日、真紅の帆を張ったシークレット号は川をすすんでいた。
甲板では楽師たちが音楽をかなでていた。
グレイは、バンテンに妻になる女性ををむかえにいくのだが、この方法でしか結婚できないし、結婚してはいけないのだ。
わたしだけの運命、奇跡をてにいれるのだ」と話す。
その幸せな気分は伝染し、バンテンはゆうべ冷たくした水夫にあやまりにいく。
速攻性にグレイも驚いた。
途中であった巡洋艦も船の様子に驚いて停船を求めてきたが、事情をしると祝福してくれた。
そして巡洋艦の中もおとぎ話の成就に幸せな気分になった。
カルベナではアッソーリが窓際で読書していたが、船をみると走り出した。
カルベナでは大きな騒ぎになっていて、アッソーリが現れるとみな恐怖のあまり遠巻きにした。
船からボートがおりてくるとアッソーリも恐ろしくなり、おもわず水にはいると
「私は、ここです、ここにいます。わたしです。」と叫んでいた。
アッソーリはボートのグレイの腰にしがみつき、水からひきあげられた。
娘が「そっくり、あのとおりだわ」というと、グレイは「きみもだよ、かわいい人、さあ、私は来たよ。見て、わたしだとわかったかね」と返した。
アッソーリは父親をつれていってくれるか聞くと、グレイは「いいとも」と答えて強くキスをした。
恐怖に凍るカルベナを後に、シークレット号ではグレイの家にクロムウェルの時代から伝わる酒樽があけられ、
音楽を奏でながら、幸せな航海をつづけるのだった。


少年少女世界の文学〈22〉金星探検・深紅の帆 (昭和42年)

少年少女世界の文学〈22〉金星探検・深紅の帆 (昭和42年)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 河出書房
  • 発売日: 1967
  • メディア: -



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