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シャーロック=ホームズの冒険 上 シャーロック=ホームズ全集 (5) [小説]

BBCのドラマ「SHERLOCK」を見たら、すっごくおもしろかったので、原作を読んでみました。
今回も、ドラマの元ネタがいっぱい。

6個の短編からなっていて、ホームズの話でも有名なものが多い。




短編 ボヘミアの醜聞には、アイリーン・アドラーが登場。
SHERLOCKでは「女王様」だけど、本編では頭のいい魅力的な女性。変装もするよ。
あと、結婚で太ったとワトスンが指摘されるシーンもある。
彼女が隠した大切なものを探し出す方法も同じ。

ワトスンが妻の友人の頼みでアヘン屈にのりこんで、その息子(原作は夫)を助け出すところ。
そして、そこにホームズがいるのは同じ。





1 ボヘミアの醜聞

結婚以来しばらく疎遠になっていたホームズの下宿の前を通ったワトスンは
懐かしさのあまりホームズを訪問する。

ホームズは相変わらずの推理力でワトソンが天気の悪い日に外にでたこと、
そして家にいるメイドが不器用でうっかりものだということなどを当てて見せる。
驚くワトソンに、下宿の階段の段数を尋ね、観察眼が大事だというのだ。

そして配達されたばかりだとう依頼人の手紙をみせる。
ふたりが紙の手がかりからボヘミアのドイツ人が書いた手紙だと結論付ける。

そこにマスクをした依頼人があらわれる、ホームズは一目でボヘミア王であることを見抜く。
王によると、5年前ワルシャワでかかわりを持ったオペラ歌手のアイリーン・アドラーという女に
一緒に撮った写真のことで脅されているというのだ。

買い戻そうとしても売ってくれず、
どろぼうをやとって5回、家探しや、荷物、待ち伏せなどで探したがすべて失敗したという。
アドラーは婚約発表の日に、結婚相手の王家に写真を送りつけるといっているという。

そうして1000ポンドの金とアドラーの住所を残して帰って行った。
ワトスンは翌日午後3時にきてくれるように言われる。

翌日ワトスンが待っていると、馬丁に変装したホームズが帰ってくる。
アドラーの家を調べていたのだ。
そして、地上でもっともうるわしい女性として近所の男たちに名高く、
しょっちゅうたずねてくる弁護士ゴドフリ=ノートンがいることを聞きだす。
すると当の弁護士がやってきて、急いで出て行った。
そのあとアドラーも外出、ホームズも追いかけた。
着いたところはセント=モニカ教会で、ホームズは二人の結婚の立会人になったというのだ。
そしてワトスンに今夜手伝ってくれという。

ホームズの作戦は暴漢に襲われたふりをして(暴漢も見物人も彼の手配した人)アドラーの屋敷に入り込み、
ワトスンが発煙筒をなげこんで火事を装うというもの。
仕事はうまくいって、二人は一度ベーカー街に戻るが、家に入るところで外套を着た青年に挨拶される。
ホームズは聞いた声だと思うが、思い出せない。

実はこれがアドラーの変装で、火事騒ぎが写真を取り返す陰謀と気が付いて、
ホームズの後をつけてきたのだ。

翌日王とともにアドラーの家に行ってみると、
写真の隠し場所にはアドラーの別の写真と手紙があり、アドラーは夫ともに国をでた後だった。
そして、今はもっと良い方と愛し愛されているので陛下の邪魔はしないが、
自分の安全のため写真は持っていくとかかれていた。

その写真をホームズは王からもらいうけた。
そして、女の浅知恵を嘲笑うようなことはしなくなった。



2 赤毛連盟

秋のあるワトスンがホームズの下宿をたずねると、赤毛の依頼人がきていた。

依頼人はジェイベズ=ウィルスンと名乗った。
例によってホームズの観察眼で、昔手仕事で身を起こし、かぎたばこが好きで、
中国にいたことがあり、リーメースンの一員で、最近多くの書き物をしたことが指摘される。
依頼人はびっくりする。

彼はロンドンのシティにあるコーバーグ広場で小さな質屋をやっていて、
昔は店員も二人いたが、今は仕事を覚えられればいいと半額で働いている店員が一人きりだという。
この店員はビンセント=スポールディングという青年で、
カメラが趣味でよく地下で現像をしているのが欠点だが、全体としてよく働いてくれるという。
彼が、もってきた新聞広告に「赤毛連盟」の広告がのっており、
会に欠員ができたので、新しい会員を募ること、資格は赤毛であること、
会のために簡単な仕事をすると報酬が支払われることと書いてあった。

ウィルスンは見事な赤毛の持ち主だったので、応募するようにいわれでかけていった。
そこにはすごい数の赤毛の男があつまっていたという。
そしてウィルスンが合格。
ダンカン=ロスと名乗る赤毛連盟の男が、10時から2時まで、ここの事務所にきて
百科事典を写す仕事をすれば、週に4ポンドくれるという。
しかし、8週間がすぎたとき、いきなり事務所がしまってしまったというのだ。
扉には「赤毛連盟は解散した 1890年10月9日」と書いてあるきりであったという。

ホームズとワトスンは思わず吹き出してしまう。
ウィルソンは怒って帰ろうとするが、ホームズは押しとどめて話の続きをうながした。
事務所を貸していた人に聞くと、ウィリアム=モリスという弁護士が借りていたと言って
住所を教えてくれたが、そこには誰も知った人がいないし、
広告をもってきたスポールディングに相談してもそのうち手紙でもくるだろうというばかりだという。
しかしウィルソンはこの働き口をなくしたくないといい、ホームズに相談しにきたのだという。

ホームズはスポールディングが広告の1か月前にやとわれたこと、身体的特徴を確かめた。
そしてウィルソンの店にいってスポールディングの膝が汚れていること、
店の前の敷石の下が空洞であることをたたいて確かめる。
そして10時にピストルを持ってベーカー街にくるようにいって別れる。

その晩、ホームズとワトスン、警視庁のジョーンズ警部は銀行の重役メリーウェザー氏と
氏の銀行の地下室にはりこんだ。
実は3万枚のナポレオン金貨がそこに保管されており、スポールディングたちは
ウィルソンの店から地下道を掘ってそれをぬすみだそうとしていたのだった。

実は、スポールディングとダンカンは有名な犯罪者であったのだ。
二人はつかまり事件は一件落着。
銀行がお礼をするというが、ホームズは事件がおもしろかったので経費だけでいいという。



3 花むこ失踪事件

ホームズとワトスンが二人でベーカー街の下宿にいるとき、
ホームズが毎日の生活でおこる平凡なことほど不思議なことはないというので
ワトスンは新聞の記事で反論を試みるがあっけなく撃破されてしまう。
そして今手がけている事件の話などをしていると、
ホームズが道路の向こうに立っている依頼人がおもしろい事件をもってきそうだという。

依頼人は大柄な女性で、ホームズの狙いどおり恋愛問題だった。
メアリ=サザーランドという女性がはいってくると、
ホームズは彼女が近眼でタイプライターの仕事をしていることをいいあてる。

女性によると、タイプライターで稼ぐお金の他に毎年100ポンドの遺産をうけとっているという。
そして遺産のほうは結婚するまでは家にいれているという。
父親は亡くなり、母親はワインの注文取りをしている15歳年下のウィンディバングという男と再婚。
今は3人で暮らしている。
義理の父は、娘が出かけるのを好まなかったが、娘は反対をおしきってガス工事人たちの舞踏会に
母親とでかけ、ホズマ=エンジェル氏にであう。
義理の父がフランスにでかけている間に二人は婚約し、
再びフランスにいっているときに結婚してしまおうとするが、
教会についてみると馬車にのっていた花婿がいなくなっていたのだという。

それまで、とても優しくて自分を大切にしてくれたホズマが消えたのが信じられない女性は、
なにか事件があったのだろうと、ホズマからの連絡をまっているが、なにもないのだという。
母親は怒ってしまっているが、自分をだましてもホズマにお金を貸しているわけでもないので
意味はないはずだといういう。

ホームズはホズマの人相と、手紙を受け取ると、
ホズマにはもう会えないだろうが、事件は解決するからまかせておけといって女性を帰す。
そして、義理の父親ウィンディバンクを呼び出す。

実はホズマの正体は変装したウィンディバンクで、
娘が結婚して家をでてしまうと遺産がはいらなくなるので
一芝居うったのだ。馬車から消えたのも、乗った扉と反対から降りただけのことだった。
会社のタイプライターから打った手紙の特徴が、ホームズ宛に出された手紙の特徴と一致したことなどから
ホームズが真実を暴露して威すとウィンディバンクは逃げ出すが、
法律で彼を罰することはできないし、女の幻想をこわすのは恐ろしいし、
サザーランドは信じないだろうというのだった。


4 ボスコム谷の謎

ワトスンが妻と朝食をとっているとホームズから事件の謎解きに同行してくれないかと電報がとどく。
妻のすすめで、ワトスンはパディントン駅に向かい、二人は西部イングランドのボスコム谷に向かう。

ボスコム谷の大地主、ターナー氏がもっている農場のうちハザリ農場は氏の友人チャールズ=マカーシーが借りていた。
二人はオーストラリアでの知り合いだという。
ターナーには娘、マカーシーには息子がいた。
マカーシーは森で死んでいるのがみつかったのだが、ボスコム沼で人に会うといっていて、
道中を人にみられていた。その後を猟銃をもって息子がついていき、森の入り口で口論していた。
死体の発見者は息子で、近くには血がべっとりついた息子の銃が残されていた。
息子が逮捕されたのは当然のなりゆきであった。

息子の証言によると、三日ほどブリストルにいっていて、戻ったばかりだった。
猟銃をもってノウサギの繁殖地に向かっていたので、父の後をつけたのではない。
沼のちかくで「クーイー!」という父親との合図をきいたのでいってみると、父が驚いていた。
そしてケンカになり、引き返すと父の叫び声が聞こえた。
戻ると父は「ア・ラット」という言葉を残して死んでしまった。
近くにグレーの外套かショールのようなものがあったのに、父親から離れたときには無かった。
そして、父親との口論の内容は話せないという。

駅ではレストレードが待っていて、二人を旅館につれていってくれた。
ターナーの娘がやってきて、逮捕されたジェームズは潔白だと言い張る。
そして、マカーシーが二人を結婚させようとしていたが、ジェームズにはまだその気がなく、
ターナーも反対していたと教えてくれる。
二人が知り合ったのはオーストラリアのビクトリア州の鉱山だったことも。

ホームズはジェームズに会って、ミス・ターナーが寄宿舎に入っている間に
ブリストルの酒場女と結婚してしまったこと。
だから結婚を渋っていたが、今度の事件で相手の女が驚いて、自分はすでに結婚しているから
ジェームズとの結婚は無効だといってきたことをきいてくる。

ホームズは駅についたときからしきりに気圧計を気にしていたが、雨が犯罪の痕跡を消してしまうからだった。
ハザリ農場で、殺されたマカーシーがはいていた靴と、息子の靴をしらべ、
現場を綿密に調べ(警察の捜査で荒らされたのをぶつぶついいながら)ホームズのだした結論は、
まかー氏は背の高い左利きの右足が悪い狩猟靴をはいて、グレーの外套をきて、パイプを使ってインドの葉巻をすって、
ポケットによく切れないペンナイフをいれている男に、現場におちていた石で殴られたと結論した。

宿に戻るとホームズは、ワトソンを相手に謎解きをする。
「クーイー!」というのはオーストラリアの呼びかけの合図だし、ラットはオーストラリアビクトリア植民地のバララットのこと
他にも葉巻や足のことなどを話していると、
ジョン=ターナー氏があらわれる。
ホームズの手紙でやってきたのだ。
そしてマカーシーを殺したのは自分であること。でも娘のために真実が告げられずにいること。
自分の寿命は1か月というところだから、真実を警察には告げないことをうちあける。
ホームズはジェームズの無罪を証明してやるため、彼から自白をとりサインをしてもらうにとどめる。
ターナー氏によると、自分は昔オーストラリアでバララット・ギャング団にはいり、荒稼ぎをしていた。
マカーシーはそのとき襲った金塊輸送車の御者で、命を助けてやった。
イギリスにもどり、心をいれかえて生活していたところにあらわれて、自分を脅し、
農場ばかりか娘まで手にいれようとするのに怒って殺したのだという。

この自白でジェームズは無罪になった。
ターナーの娘と結婚して、過去のしがらみのない楽しい共同生活をおくることだろう。


5 5つぶのオレンジの種

ワトスンの妻がおばのところにいっているので、ワトソンが古巣にもどっていた酷い雨の晩
若い身なりのきちんとした男がやってきた。

男は南西部のホーシャムからやってきたジョン=オープンショーとなのった。
叔父のイライアスは若いときアメリカにわたり、フロリダで農場を経営。
南北戦争では南軍の大佐をつとめたが、その後農場にもどった。
その後ヨーロッパに帰り、ホーシャムの近くにおちついたという。
気性が激しく、気が短く、人と付き合おうとしなかった。何週間も自分の部屋からでないこともあった。
叔父はジョンをひきとり、16のときにはジョンはひきこもった叔父の代理といs手家を取り仕切っていた。
家にはたったひとつ屋根裏の物置部屋の一つだけは自由に入れなかった。
叔父がイギリスにもどったのが1878年、1883年3月インドのオインディシェリーの消印の手紙が一通とどき、
中には干からびたオレンジの種が5粒はいっていた。
それをみた叔父は「KKK(キュー・クラックス・クラン)だ!」「とうとう罪のむくいがきた!」「死だ」といって
部屋にひっこんでしまった。
そのあとフォーダム弁護士をよんで遺言状をつくり、財産をジョンの父親に残すので、そのあとはジョンについでくれ、
しかし、できないとわかったら、敵にくれてやれといって、ジョンにサインをさせた。
そのとき暖炉でしんちゅうの箱のなかのなにかをすべて焼いていた。箱のふたにもKKKとあった。
それから、たいては部屋に引きこもっていて、ときどき拳銃をもって庭をかけずりまわったりしていたが、
また部屋に引きこもるを繰り返し、手紙がきてから7週間後に酒乱状態で家を飛び出して、
庭の隅にある青海泥のういた小さな池にうつぶせに浮いていた。
暴行のあとはなく、陪審員は事故死とした。
ジョンは屋根裏を調べてみたがアメリカ生活に関係ある書類やノートがちらばっているだけだった。
それによると北部からきた政治家に叔父は反対していたらしい。
1884年にジョンの父がホーシャムに住むようになり、1885年の1月4日、父宛にダンディから
5粒のオレンジの種の手紙がダンディから届く、中には「書類を日時計の上に置け」とあった。
父親は何の手紙かわからなかったが、
ジョンは叔父が燃やしてしまった手紙を庭の日時計の上に置けといわれているのだと解釈した。
警察にとどけるようにすすめたが、父親はばかげていると相手にしなかった。
父は手紙が来てから3日目に外出し、
二日目にふかい白亜抗の一つに落ちて頭蓋骨をくだき、意識不明になったと知らせがきた。
ジョンは駆けつけたが、意識を回復しないまま父親は亡くなり過失死とされた。

それから二年8か月がすぎ、とうとう自分のところにも同じ手紙がとどいたのだといって見せる。
消印はロンドン東部局区で、内容は父親がうけとったものと同じだった。
警察にいっても笑われるだけだったといい、もうどうしようもないというのだ。
ただ巡査が一人に家にきてくれて、家にいるようにといわれたという。
今日、知り合いにホームズのことを聞いて思い切って相談にきたのだという。
また、屋根裏部屋を調べとき、燃やしていた紙と同じ紙がおちていたので、抜け落ちたものだと思うと見せてくれた。
それによると、マコーリ、パラモア、スウェインに種をおくり、マコーリとスウェインは去った。パラモアをたずねて、万事よしとある。

ホームズはこの紙と、他はすべて叔父さんが焼いたと書いて日時計の上に置くようにアドバイスした。
青年は希望がわいてきた、必ずいうとおりにするといって去って行った。
ホームズは気をつけていくようにといって送り出す。

青年が帰ってからホームズはワトスン相手に謎解きをする、
消印の場所がすべて海港であることから、手紙を書いた男が船乗りで、手紙が届いてから殺されるまでの期間は
犯人がのっているのが帆船だと推理できる。
検視の陪審団の目をあざむくほどたくみな方法で2つも殺人をやってのけているので、
おそらく複数。KKKというのはキュー・クラックス・クランという結社で、南北戦争後南部の軍人だった男たちで結成され
政治今日の目的で、おもに黒人有権者をおびやかし、殺害したり国外へ追い出したりしていた。
結社が暴行をくわえるときには、前もっていっぱんによく知られた方法で警告を行う。オレンジの種を送る方法もあった。
この結社がアメリカで突如くずれさったころ、オープンショー大佐が書類をもってイギリスにもどってきた。
だから書類は南部の有力者たちに関係があって、そのため大佐は狙われたのだろうというのだ。

翌朝、二人が捜査を開始しようとしているとき、
ワトスンはジョンが夕べ駅に向かう途中にウォータル橋で川に落ちて亡くなったことを知る。
ホームズは後悔とともに、きっと犯人を捕まえるといって飛び出していく。
そして船の記録を調べて犯人をつきとめると、そのリーダー格に5粒のオレンジの種を送った。

しかし、手紙はとどかなかった。
その船は手紙を出した先につく前に海に沈んだのである。


6 唇のねじれた男

ワトスンの家に夫がアヘンを吸いにいって帰ってこないとホイットニー夫人がやってくる。
ワトスンはアヘン窟へでかけ、ホイットニー氏をさがしだすが、そこでホームズに会う。
ホイットニー氏を馬車で家に帰すと、二人はケント州リー市のセントークレア夫人の家に向かう。

馬車の中でホームズが話した事件のあらましは、
セントークレア氏は数年前リー市にやってきて地所を買い、近所の造り酒屋の娘と結婚して子供も二人ある。
仕事はいくつかの会社に関係しており、毎朝ロンドンにでかけ、夕方同じ列車で家に戻る生活をしていた。
お金にも困っていなかった。
この月曜日、セントークレア氏はいつもより早くロンドンへでかけた、大切な用件が二つあるといっていたのと
子どもに約束した積み木を買ってくるといっていた。
たまたま夫人も小包をうけとりにロンドンにでた。そして辻馬車を拾おうと歩いていると、
夫の叫び声が聞こえ、見上げると、さきほどのアヘン窟の3階の窓に夫のすがたがみえ、
手をふりまわしたかと思うと奥に引き戻されたかのように消えてしまった。
夫人はそこにいこうとしたが、インド人の水夫と、デンマーク人の二人に追い出されてしまう。
警官をともなって戻り、3階の部屋に入ると、そこにはみにくい乞食がいるだけだった。
しかし、テーブルの上にはセントークレア氏が子どもに約束した積み木がのっていた。
寝室の窓敷居に血が付いていて、床にも点々としていた。
上着を除くセントークレア氏の衣類がカーテンの陰におしこんであった。
乞食はヒュー=ブーンという不気味な醜い顔の男で、その容姿と受け答えがうまいことから
それなりのもらいがある、常連の乞食だった。彼が唇のれじれた男である。
インド人の水夫と乞食はセントークレア氏の衣類があるのはわけがわからないといっており、
乞食はシャツの袖に血がついていたが、自分の傷から出血したので、窓敷居の血もそうだといった。
そのときは満潮だったが、干潮になると、窓の下からセントークレア氏の上着がでてきた。
ポケットには1ペンスと半ペンスの銅貨がぎっしりつまっていた。
死体は川に落とされ流されたのかもしれない。

セントークレア夫人の家につくと、夫人が今日届いたといって、夫からの手紙を見せる。
グレーブズエンドの消印があり、前日のものだった。
封筒のあて名の筆跡はちがうが、中身は夫の筆跡で、夫の認印つきの指輪も入っているという。
ホームズは希望はでてきたが、月曜に書かれたものなので、今も無事か確信はないと告げる。
二人はその晩、セントークレア夫人の家に泊まり、
ホームズは一晩考えたすえ、事件解決のかぎを浴室でつかんだといって、
二人で留置場にはいっているヒュー・ブーンの元にむかう。

ホームズは眠っているヒューの顔を浴室から持ち出しだスポンジで洗ってみせると
「ご紹介します、ケント州リー市のネビル=セントークレア氏です」といってみせた。

正体がばれた乞食はすべてを話す。
元は教育をうけたあと、役者になったりしていたが、最後はロンドンで記者になった。
そのとき記事を書くために乞食の格好をすることがあり、
役者の経験をいかしてヒュ-=ブーンの変装をしたところ思いのほかうまくいった。
その後友人の手形の裏書きをしたことでお金が必要になり、そのとき乞食になることを思いついたのである。
そして、1週間2ポンドの新聞社の仕事をやめて、一日2ポンド稼げる乞食に転職してしまった。
秘密を知っていたのは、下宿につかっていたアヘン窟の主人だけだった。
蓄えもできたので、田舎に家を買い、結婚もしたが、ロンドンに仕事にでかけるふりをして、
実は毎日乞食をしていたのだった。
しかし、妻に見られて動転し、すぐに乞食の扮装にもどったが、衣類がみつかるとまずいと
上着をすてた。しかし他の服は捨てる暇がなかった。
手紙は拘留された後、インド人水夫にだしてもらったものだった。
子どもに父親の仕事をしられるより、刑務所に入った方がましだと思い、
乞食で通すつもりでいたのだという。

セントークレア氏は二度とヒュー=ブーンにならないと約束して釈放されて事件は解決したのだった。



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