SSブログ
[PR]本のベストセラー

アベルの島 [小説]


ネズミ版、ロビンソン・クルーソー。

1907年の8月はじめ、新婚ほやほやのアベルとアマンダはピクニックにでかけた。
突然の嵐に他の動物たちと一緒にほら穴に避難していたが、
アマンダのスカーフが風にとばされてしまい、それを追いかけてアベルは流されてしまう。
運よくクギの刺さった板にしがみついて、滝を越え、川の中州の島にあるおおきなカバの木にひっかかる。
しかし、川の水量が元通りになって、地面に降りてはみたが、川をわたることができない。

アベルは街のネズミで、それもお金持ちの家の生まれで、結婚しても生活費はお母さんがだしてくれるような暮らしをしていた。
働いたことはなく、いつもよい身なりをして立派な居心地のいい家にすんで、なんの苦労もしたことがなかった。

しかし、本で食べられる植物がわかっていたしので、島の植物を食べることができた。
知識の他にも、人の仕事を見たのを参考に、火を起こしたり、ロープをつくったりした。
ポケットに入っていた小刀が役にたった。
あとでは、地面に落ちた木のうろに自分の家をつくったりした。

そして、島からいろんな脱出方法を試みる。
舵付きのボートをつくったり、帆船、筏をつくったりしましたが、流れが早く舵がおれてしまい役に立たない。
飛び石や投げ縄もやってみたが、うまくいかない。
捜索隊がやってこないかと、木の上でシャツを振ったり、たき火で煙をあげてみたが反応がない。
メモに手紙を書いて流したが、メモがなくなるまでやっても何の助けもあらわれなかった。
最後を自分をパチンコの玉にすることも考えたが、実験するととても向こう岸まで届かないことがわかる。

くじけそうな心をささえてくれたのは、小さいころばあやが選んでくれた「自分の星」や
アマンダや家族への思いだった。
アベルは夢のなかでアマンダに会い。ときどき心の通信をおくり、確かにアマンダが返信してくれると感じるのだった。

島を隅々まで探検すると、人間がピクニックに来て置き忘れたと思われる本と時計をみつける。
アベルは時計に街の雰囲気を感じ、家にもちかえりネジをまいてはカチコチいう音を聴き続けた。
本は大きすぎて持ち帰れないので、木の葉でかくして通いながら読むことにした。
文明社会へつながるよりどころとなったのだ。
また、本を置き忘れた人が来た時のために、自分の住居の方角への矢印をつけた粘土板をやいて島のあちこちにたてた。
家の庭には粘土でアマンダや家族の像をつくった。

本を読んだり、シャツを振ったり、時計のネジをまいたり、像をつくったり、仕事はいっぱいあるが、
あせらずのんびりやったほうがうまくいくことを、アベルは経験からわかるようになった。
そんな11月のある日、一匹の梟がアベルの前にあらわれる。
とっさに岩の割れ目に隠れたアベルはすきをみて逃げ出すが、つかまってしまう。
空中に持ち上げられたが小刀で反撃し、地面に落ちると家に駆けこんで出入り口に石(最初に蛇がきたときのために用意して寝るとき積んでいた)をつみあげて防除する。
それからしばらくアベルは昼間でも用心するようになった。
この梟とはもう一度遭遇したとき、小刀を先につけた棒で自分から襲い掛かり、うまく撃退した。
燃えるような闘争心が芽生えていた。

12月にはいり、アベルは冬にそなえてマントをつくったり、食べ物を集めたりしました。
1,2,3月と猛烈な吹雪のなか、ほとんど家のなかで耐え忍びました。家の中で火を使えるようになってなかったから。
一度は病気になり気弱になりましたが、なんとかありったけの布や綿毛にくるまってやりすごした。
3月になるとクロッカスが咲き始め、アベルも植物たちと一緒に元気を取り戻す。
梟はみかけなくなっていた。

5月にはいろんな花が咲き始め、すっかりうれしくなったアベルは大声でうたったり駆け回ったりした。
街にいたころのアベルには到底考えられなかったことだ。
そんなとき1匹のカエルが流されてやってくる。彼も町からきたのですが、アベルの町のことは知らない。
カエルはゴーワと名乗り奥さんと子供と孫がたくさんいるという。
久々のはなしあいてにアベルは喜ぶ。
ゴーワの像をつくると、芸術品だとすごく褒めてくれる。そこでアベルは自分が芸術品をうみだせることを知る。

6月の半ば、ゴーワは川の流れがゆるくなったからと島をでていってしまう。
アベルは捜索隊をつれてきてくれと頼む。
ゴーワを見送るとアベルは泣きながら家にもどる。星にはなしかけながら。

ゴーワの連れてきてくれる救助隊を待っている間、食べ物をあつめたり作品をつくったり夢中になれることならなんでもやった。
何週間たっても救助隊はこない。
アベルはゴーワが忘れてしまんだと考えた。だって毎日のいろんなこともわすれてしまっていたから。家族のこと以外は。

7月はとても暑く、アベルは泳いだり、たき火をしたりして過ごした。
そしてある日川の水が少なくなっていることに気が付いたのだ。
日照りは長く続き、川の水はますます少なくなっていく、アベルは期待しながらも、期待しすぎないように自分にいいきかせながら見守った。

8月のある日、空に雲がひろがり雨がふりだしました。
アベルは庭のアマンダの像に「うちに帰るよ!」と声をかけると、カバの木にわかれをつげて泳ぎだす。
そのとき島がお母さんのように自分に食べ物をくれてまもってくれたことに気が付き「帰ってくるよ」と声をかける。

流されながら泳いでいると、岩にたどりつき、そこで休憩しながらなんとか川をわたりきる。
ようやく向こう岸にたどりついて喜びが胸にこみ上げる。
とうとう自由なネズミになったのです。

歩いて家に向かいますが、1年間留守にした不安も胸をよぎる。
アマンダが別のネズミと結婚していたらどうしましょう?

あるいていると島の全体がみえてきて、アベルは島を愛していると気が付く。
雨のなかを歩き続け、ようやく雨宿りできるところを見つけると眠り込んでしまう。

目を覚ますと猫がいて、アベルはくわえられ連れ去られる。
自分が一生懸命働いてきた結果がこれなのかと思ったが、猫がアベルをもてあそぼうと放したときに細い枝に昇る。
追いかけてきた猫は細い枝で自分を支えられず落っこちて逃げていく。
アベルは大急ぎで木からおりるとわが家めざして出発した。

最初にピクニックに来た森を通り抜け、街についたのは次の日の夜でした。
一年間大自然の中で過ごしたアベルには街の景色は素晴らしいものにみえました。
アベルはひどい格好をアマンダ以外のだれにもみられたくなかったので、こっそり家に戻りました。
途中アマンダをみかけたのですが、声をかけなかったのです。
ずっともっていた家の鍵で家に戻ると、これもずっと持っていたアマンダのスカーフを玄関ホールの低い台に置きました。
アマンダがかえってきたら、すぐにわかるようにです。
そして風呂にはいると、いちばん上等な服に着替えて長椅子に寝転ぶと胸をどきどきさせながら待っていました。

帰ってきたアマンダはアベルの腕に飛び込んでキスの雨をふらせます。
やっと口がきけるようになったアベルは「君のスカーフ、とりもどしてきたよ」というのでした。



アベルの島 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

アベルの島 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

  • 作者: ウィリアム・スタイグ
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 1980/05/20
  • メディア: 単行本



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

[PR]Kindle ストア ベストセラー

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。