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学校の失敗―誰が子供を救うのか [子育て]

1999年に、1998年の学習指導要領がだされたあとに書かれた本。
誤解を恐れずにいえば、戦後50数年にわたある学校教育の多くは明快な方法論をもたず、あるいは間違えた方法論で「失敗」した。
終戦後に滅私奉公をへの過度の反省から、個人主義をとりいれようとして、実際には個人化主義におちいっている。
なんでも、自分で考えてみましょう、話し合ってみましょうとやっても、子どもの学力は育たないし、自立した人間にもならない。基本的学力や社会的な基盤が教えられて初めて、個人の個性や能力を育てることができる。小学校では全員に教科書の内容を身につけさせてる=基礎学力をつけることが大切だし。子供というものは成長したい、学びたいとおもっているのだから、魅力的な授業で理解させれば、おもしろがるし、やる気もでる、成長する。

学級崩壊という言葉がマスコミを騒がすようになったころのはなし。
著者は教える内容より、教師の授業する力が低いことが学級崩壊の本当の原因だという。
教育課程で授業の仕方を学ばないので、子どもが授業に集中しない、だから「子どもを押さえこむ」ことになるという。
知的で面白い授業をすれば子供たちは集中し、成長しようとするものだ。

クラスの先生の力をしりたければ「算数」のノートをみるといい。
きれいに位取りができて、計算と計算の間が十分空間がある美しいノートならその先生には教える力がある。
プリントをもちこんだり、何時間も丁寧に説明する先生は教える力が弱いとおもっていい。
または、漢字を空中に指書きさせて確かめるのもいい。描き順や画数をいわせてみるのもいい。
漢字の学習は一番やさしいのに、それも満点を取らせる指導ができないなら、他はもっとひどいに決まっている。

「福祉、ボランティア、環境、エネルギー、国際理解、オーラル・イングリッシュ、情報・コンピュータ」などを扱う総合的学習が新設された。
これらについては、TOSS(著者が立ち上げた教え方の標準化研究サークル)で、試行錯誤して教えてきた内容の紹介がのっていた。
TOSSは素晴らしい授業や教材を用意して、それを追試=まねることで、教師全体の教える能力の向上をめざすもので、現在もHPで会員が考案した教材や進め方の情報を提供し、検証=実際に子供に学力がついたかみる活動を続けている。この時点の規約では21世になったら活動をやめるとあったので、そこはどうなっているのかよくわからない。


学級崩壊を防ぐためには
学級崩壊の原因は教師にあるが、その人ではなく「教育行為」に問題があるのだ。
クラスの統率者は教師であるという覚悟と責任がいる。
子どもに「どんなふうにやるか」きくのは間違い、それではクラスは荒れる。
指示は一回に一つ、全員に徹底させる。
ただし、自分の指示がブレないようにする。「どういう感じがするかかきなさい」のあとに「どこが楽しかったのですかかきなさい」と指示が変わっていたりしてはいけない。全員に伝わるまで指示は一つ。指示は100回しても同じになるようにすべき。
低学年では、聞く姿勢も大切、教師におへそをむけさせて、手をもっているものから離させる。
その上で、指示を与え、全員に徹底させる。
荒れる前兆は必ず現れる、それを見逃さず、早めに対策する。
著者は「アドバルーン」と呼んでいるが、子どもはどこまで教師が妥協するのかを見極めているという。
「赤鉛筆で○をつけなさい」といっているとき、「青鉛筆ではだめですか」ときいてくる生徒が必ずいる。
このようなのが、アドバルーンで「だめです、なければ貸してあげます」などと対応するようにといっていた。
指示を全員に徹底させることがとにかく大切だと力説していた。

リーダー=統率者は教師である。
指示は一度だけで明確にする。そして指示はよほどのことがない限りやりとげる。
「教科書52ページを開きなさい」
「題をノートに写しなさい」→「題をノートに書きなさい」では何のことかわからない。
「勉強が始まったよ、なにをする?」「前の時間なにをした?」などとの質問が子どもの自主性を伸ばすという人がいるが、こんなことをしていたらクラスは3日でガチャガチャになる。集団にはなかなか指示がいきわたらない。しーんとした中で、短くきっぱり3回言ってやっと伝わると思った方がいい。

「練習問題をやりなさい」といったとたん「先生、どれをやるんですか?」と聞く子供がいる、そんなときは「賢い子は一回でわかったけど、まだわからない人のためにもう一度言います。練習問題をやりなさい。
そして、こういったすじを通したあとに、あたたかく接する。逆はいけない。
教師の技量は経験年数とは関係ない、真剣な修行をどれだけ積み重ねたかで決まる。だからベテランのクラスでも荒れる。

クラスが荒れてしまったら教師のできることはただ一つ、荒れと戦う。
敵を少なくし、味方を多くするべきだ。
だから、叱るときは一点に絞る。たった一つの明確なことを叱る

「太郎君、席につきなさい」
「授業中、席につかなくてもいいと思う人、手を挙げなさい」
太郎の仲間の何人かが手をあげるだろうから
「わかりました、学級通信にのせますから、授業中に席をたちあるいていいという作文をすぐ書きなさい。クラスのお母さん方にみせて意見をききます」とたたみかける。
一つの勝利がつぎの勝利を呼ぶ、クラス全員を敵にまわす事態をさけつつ、戦いには十分な覚悟と準備が必要だ。
誠実な教師は必ず勝つ。

学級崩壊から立ち直った教師たちの実践レポートがのっていた。
万引きや、具体的な器物破損は指導のチャンスととらえていた。
魅力的な授業がなにより大切といっていた。




向山型算数学習法
算数ほど、できるできないがはっきりする教科はない。
だから算数の点数があがれば、子どものやる気はあがり、他の教科もあがっていくもの。
向山型算数なら、全員が90点以上とれるのが普通。
あくまで現場で問題を解決しながら開発されたので、理論のみでなく再現性が高い。

向山型算数の特徴
・教師の説明はながくなるほどわからない、説明は30秒まで。長いときは分けて教える。
・授業にスピードがあり、テンポが早い
・難しいところはシンプルに分解している
・くどくど説明しない
一人一人の子どもをよくみれば、どこがわからないのかわからない。だめな責任を子どもに転嫁しない。
分からないのは教師の教え方が悪いのである。

上の4つができて、はじめて教科書どおりに教えることができる。


まわりの長さが18センチの長方形で、たての長さと横の長さの関係を式にしましょう。を教える
1 まわりの長さが4センチの正方形を書きなさい。解答をしめい説明なしでできた子に手をあげさせる
2 まわりの長さが8センチの正方形を書きなさい。ほぼ全員がわかる、テンポよくすすめる
3 まわりの長さが6センチの長方形を書きなさい。できた子8人に板書させる
4 周りの長さが10センチの長方形を書きなさい。早くできた子8人に板書させる。
そして最初の問題にもダル。
クラス全員に理解させたければ、つまずくところをシンプルに分解する工夫が必要

さらに実践として
・ミニ定規を使って線を引く・・・位取りがそろうから
・間違えたら×をつけて新しく書き直す・・・消しゴムより早い。どこを間違えたかも残る。
・補助計算を書く・・・補助計算を書けば、ミスが少なく正確に計算できる。

実践例レポートがのっていた。



エネルギー教育は近未来への架け橋
原子力発電が国家の大事であり、現実的なエネルギーであるのにもかかわらず、
ただ危険性をとき、自然エネルギーがいいみたいな授業をしている先生が多い。
自然エネルギーがどのくらい有望なのか、原発はどのくらい危険なのかきちんと調べて、事実に基づいて教えなければならない。事実に基づくとは日付、数値、根拠がきちんとしていることである。
特にエネルギー問題は国家の大事で、時には戦争になる
この本では石油に代わる現在代替エネルギーとして現実的なのは原子力であり、自然エネルギーがどんなに頑張ってもそsれだけで石油に代わることはできないと、資料をもとに解説していた。また放射能漏れといっても、レントゲンをとるより少ないくらいのもので、世の中が大騒ぎしているのは風評被害であり、原子力発電所はスペースシャトルがおちても大丈夫なくらい頑丈につくってあるので安全だという主張がのっていた。
エネルギー教育全国協議会をつくって活動しているそうだ。

実践レポートがのっていた。
賛否両論あるが、実践し事例を蓄積することを続けるとあった。



ボランティア教育の実践
日本の子どもの学習時間は、すべて自分自身のための学習である。人に役立つ学習は、1時間もない。
外国では、人に役立つ学習が行われ、それが誇りとなっている。

著者の提案
1 1年間に3時間(1ユニット)の人のための学習時間を設定する。
2 3時間を1ユニットとして一つの事柄の学習内容を行う
3 学習ユニットは数十種・数百種用意する
4 学校・塾・社会団体など、定期的に子供を集め一定期間教育活動・社会活動をしている団体は学習を設定できる。
5 学習修了者には、認定証・バッジ・テキストの3点セットが授与される。
6 以上の資金は広く社会の寄付によってまかなわれる。
これを1千万人の子どもに行う。

学習には「自分に役立つ学習」と「人に役立つ学習」がある。
ボランティア教育は、人に役立つ学習だからやる意味がある。
単なる援助する人になるのとは違う。

TOSSでは点字学習用の教材をだしており、これを使った実践レポートもあった。
ここでも、テンポよく学習する。長々と話し合わせたり意見を言わせたりしない。

実践レポート




道徳教育の実践
著者は道徳の授業は「白々しい」と感じており「いらない」と思っていた。
また、正しいことは正しいと教えず、長々と話し合いをさせたり、ダラダラ反省ごっこをする帰りの会は意味がないと思っていた。
しかし、善悪(社会規範)を教えない教育の報いがあちこちにあらわれている。
日本には今、明確な社会規範がない。逆にルールは多すぎる。
そこで、TOSS道徳として、次の提唱をした人がいる
1 相手のことを心から考えよう。
2 弱いものを庇おう
3 世のため、人の為になることをしよう
4 まず、じぶんにできることをしよう
5 先人に学ぼう

TOSS道徳の授業では、資料を示し感想をいわせ、長々と話し合わせるような授業は行わない。

必要なのは
1 力のある資料・・・一人の教師が必死に探して1年間に1つか2つしか探せない。だから共有化しよう。
2 力のある授業・・・やり方を一人10種類作り出そう。(ここからいいものをのこしていく意味)
3 体験・知見に支えられた語り・・・説教ではない

実践例や資料
朝日作文コンクールから選ばれた「きらら」
杉原智畝さんのはなし
イジメ体験談などと、脳の持つ機能(人、猫、動物にわけて説明)で、いじめられると弱るのは蛇の部分なので、いじめをするというのは相手を殺そうとしているのと同じと解説するなど


学校の失敗―誰が子供を救うのか (扶桑社文庫)

学校の失敗―誰が子供を救うのか (扶桑社文庫)

  • 作者: 向山 洋一
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2001/10
  • メディア: 文庫



タグ:向山 洋一
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