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警察対テロ部隊テクニック―人質交渉から強行突入まで [雑学]

著者は、暴力の予測・危険度の分析、対処を専門とする有限会社モリ・インターナショナル代表。警察対テロ部隊で教えたり、企業や警備会社に助言などをしている方らしい。

序章として2002年9月に起きた福岡県二丈町の立てこもり事件をとりあげ、犯人の心理を分析しつつ、おいつめず、人質交渉や強行突入をするノウハウが必要だといっていた。

第1章 警察対テロ部隊とは?

人間は生存要求と、承認要求が基本であり、これがかなえられない不満が爆発した一つの形として外部に間違ったエネルギーが放出されたのがテロや暴力犯罪と定義。

警察対テロ部隊の分類
フルタイムで活動する部隊・・・ドイツGSG9、日本の警視庁直属SAT特殊急襲部隊
パートタイムで活動する部隊もある。

警察対テロ部隊の役割分担
人質交渉、狙撃、情報収集、突入
SASの突入班編成の解説

人質事件解決までの手順
ソフトオプション・・・心理的アプローチを駆使する人質交渉(正義より、一緒に問題を解決する人というスタンス)
ハードオプション・・・武力を用いた作戦(緊急の保険)
著者は正しいソフトオプションが使われれば80%は事件は犠牲無く解決するとのべている。

実際の事件で投入された警察対テロ部隊の例
西ドイツGSG9、1970年代のテロ事件、特に1972年のオリンピック選手村襲撃事件を教訓に設立、11977年モガジシオ事件で犠牲者をださずにテロリストを制圧した。現在はSEKが政治的理由が考慮されない人質救出作戦や立てこもりに出勤している。

アメリカSWATは、1873年銀行強盗やギャング抗争に備えて警察内に編成された特別部隊が起源。アメリカ警察は独立した地方行政機関なので最初は装備や武器、指揮系統もまちまちだった。1966年テキサス州オースティンで元海兵隊員がテキサス大学時計塔に立てこもり通行人に発砲14名が殺害された。これを契機に無差別事件に対処できる警察対テロ部隊SWATが設立された。一番早い設立はロサンゼルス市警

日本のSATは、1970年代におきた日本赤軍による一連の事件に対して、要求をのんだことから「テロに屈服する日本」と批判され、警視庁が設立、FBIのちにはヨーロッパで訓練をうけた、2000年5月の西部高速バスのっとりで強行突入して犯人を逮捕に成功している。他に警視庁や大阪府警の捜査一課特殊班m海上保安庁には特殊警備隊がある。関西国際空港警備とプルトニウム海上輸送時に限り活動。
著者は日本では人質交渉より強行突入に比重があるのは問題だといっていた。

警察対テロ部隊の構成員
志願者から心理テストなどのテストで選ぶ。
トレーニングなどを経て選抜される。ストレスがかかることから、身体が強健なだけでなく、精神的安定性が要求される。

CQB接近戦闘術・・・射撃により反撃させる時間を与えることなく制圧しすみやかに人質をつれだす。
CQC接近格闘術・・・瞬時に相手を無力化しその場に倒して制圧する、銃器だけでなく素手やナイフも使う。
CQCについては詳細に解説されていた。


第2章 警察対テロ部隊の火器
致死性火器の種類とその特製と具体的製品、各国の採用状況について解説

拳銃・・・対テロ部隊では信頼性が最優先される。リボルバーとシリンダーがあり、シリンダーが主力だが、リボルバーも信頼性からつかわれている。シグP226、ベレッタ92シリーズ、グロッグ(プラで軽い)、コルトM1991の解説有。

短機関銃・・・塹壕掃討用の火器。初期は重かったが改良され、突撃銃より秘匿しやすく、オプションを使うと装備を装着しやすい利点がある。ヘッケラー&コッホMP5、コルト短機関銃、ウージの解説。

自動小銃・・・単発式手動装てん式小銃(ボルトアクション方式ライフル)からはじまって、状況に応じたものが作られた一部は突撃銃ともよばれた。突入班から狙撃班までいろんなものを使っている。HKシリーズ、M16シリーズ

散弾銃・・・狩猟用に開発されたが、今では弾丸を変えればもっとも用途の広い万能火器。ポンプアクション方式が主流。れ眠トンM870、ベネリ・スーパー90、

狙撃銃・・・軍用とちがい、対テロ部隊では相手が人質でないと確認できる距離から、窓を貫通して犯人に命中させるなどの性能が要求される。どちらかというとボルトアクションのほうが命中精度が高いので採用されている。そして改造により性能を確かめながら命中精度をあげることがおこなわれている。レミントンM700、12.7ミリの大型狙撃銃バーレット(ジャンボの風防もうちぬく)



第3章 警察対テロ部隊の装備
SOP(Standard Operation Proedure)・・通常作戦規定、混乱を最小限にとどめる為に出金から事件を解決し、撤収するまでの作戦手順をチャート化したもの。
情報収集、犯人との疑似的依存関係を築くため第三者に邪魔されない犯人との通信ラインの確保、突入班や狙撃班の準備(突入ルート検討など)。しかし人質交渉が主流で突入は最終手段。

突入装備の詳細
火器・・・CQBなら火器をもちいるので装備も重い。あとは、場所の広さや材質で装備を準備。
ベストは・・・手の武装と人数による
CQCならナイフ・・・使用は非致死的に使うのが中心。ブレードの種類などを解説。人体解剖学の講義うけるそうだ。
ホルスター・・・短機関銃や自動小銃があっても拳銃ももつ、狭いところで使えるから。ホルスターは犯人に拳銃をうばわれないように設計を工夫している。
通信機材・・携帯はしても、制圧作戦ではほぼ使用しない。時間が短いのと、人間はもっていると使いたくなり、必要ない情報が通信回線を占領する事態があったから。
弾薬・・武装と人数、人質の数と位置で使い分ける。人体を貫通する場合、犯人の後ろの人質を傷つけるおそれがある。
小型ライトと光学照準器・・・ライトは利点もあるが、自分の位置をしらせてしまうけってんもある。光学照準器ドットサイト解説。
射撃スコープ・・・レティクルがディブレックスや十字線タイプがある。低光量下対応タイプもあるが、軍用なので射程が600メートルであまりむかない、市街地で人質救出作戦につかうには10倍がベスト。
暗視装置と熱源探知装置・・・光量を増幅するタイプは余分な光をひろったり、両目でつかうと周辺の警戒ができないなど不利な点も多い。街中ではむかない。熱源も人質と犯人を区別できないのであまり実用的でない。それよりも周辺一帯を照らして明るくした方が、犯人を心理的にもおいつめず人質交渉にはよいとかいてあった。
非致死性装弾と特殊閃光音響弾・・・ゴム弾や木製バトン弾(直接あてず、跳弾で弱めてつかう)、催涙ガス弾解説。特殊閃光音響弾は投げ返されたことがあり、強化プラスチックになったそうだ。
強行突入用装備・・・ハンマー、ラム、プライバー、12口径散弾銃用特殊装弾。突入ポイントでブリーチャーと呼ばれる破壊係がドアの開閉方向を確認して破壊手段を決定。爆破することもあるが、人質に危害がおよぶ可能性があるので、安全が確認できる場合に限る。また制圧まで時間をかけてはいけないので、破壊後にすみやかに突入できる方法が最優先される。


第4章 人質交渉

人質事件では犯人の真理を読み、危険度を分析し、どの程度の相手なのか見極めるのが重要
動機の解明も必要。原因はほとんど抑圧された個人的感情にある。刺激しないことが大切。自殺衝動のものもいる。
犯人の心理を理解し、相手を追いつめないように行動する。

人質事件を起こす犯人の多くは男性でなにかの問題をかかえている。テロリストや犯罪者が逃走のため人質をとるのとは異なる。

他人の心理を理解するのに必要なのは直感と客観的な視点。先入観にとらわれず現場の状況を冷静に分析して判断できる能力。
これを学ぶため交渉班は刑務所でさまざまなタイプの犯人と面接を行う。
ケース会議で客観的な判断をとりいれてチームワークで心理をときあかしていく。

実際に犯人と接触する交渉は優秀な1名にしぼり、犯人との間に信頼関係を築く、あとは支援班として情報収集と分析にあたる。交渉は直感を信じ「虫の知らせ」を感じ取ることを大切にする。「そんなことはありえない」と常識で判断せず、本能に従うことが大切。

犯人を支配している思考と感情を理解するために、まずは逆らわず聞き役に徹する。犯人の心理状態が緊迫し、高ぶっているときに刺激すると犠牲者がでやすい。精神の緊張状態は長くても30分。
聴くときにも面と向かって刺激せず、電話などを使う、口頭でのよびかけや拡張機は刺激するので好ましくない。一方的な圧迫感を与えないように気を付ける。圧力をかければ投降するだろうという考えは甘い。

交渉でも第一印象が大切。人質のことだけを気にかけているそぶりを少しでもみせると敵意をもたれる。
自分の情報はなるべく相手に教えないこと、自分の存在が取引材料にされるので。
素直な気持ちで犯人に向き合い人間として接することが基本だが、常に客観的に状況を判断できる第三者が必要。
最初から人質交渉に合意する犯人はいない、拒絶は当然だし、罵声や暴言をあびせられることもあるが、予測できることで、その発言から相手の真意を探ることができる。犯人と接触を続け、会話を継続させること、そのためによい聴き手に徹することが重要。

犯人が要求を提示すると人質交渉は新たな局面を迎える。
シーソーゲームのように、相手の交渉に柔軟な姿勢で臨み、なんらかの譲歩(水・タバコ・報道機関との接触など)を示し、相手からの見返りをもとめる。これを繰り返し安全に状況を軟化する。
犯人との信頼関係を築き、犯人と協力しながら事件を解決することが重要。そのためには守れない約束はしないこと。要求が物理的に無理ならそれを犯人に納得させ、譲歩を引き出す。
ただし、武器弾薬など二次的被害をもたらすものは渡してはいけないし、小説のように警察官が身代わりになるのは、殺傷の危険がありやってはいけない。

犯人を理解しても感情移入してはいけない。
ストックホルム症候群で、人質交渉人が犯人に同一化しても、投降してくるとはかぎらない。
とはいえ、人質と犯人の間でおきるときには人質の安全が増すという利点もある。

人質交渉の目的は、説き伏せるのではなく、人質を解放し、自身が投降するのがもっともよいと犯人に考えさせて納得させることである。
しかし、あからさまに人質を解放するようにいうめに、安全確保(人質も犯人も)の交渉からはじめ信頼関係を気付くようにする。
アメリカの統計では人質交渉班の活躍により10時間以内に大半の事件が解決している。
もっとも犯人がグループの場合は長引く傾向にある。

犯人はプライドをすてて投降してくるので、一人の人間として扱うべき、二度と立てこもる意思をもたせないような雰囲気作りが大切。逮捕後も公衆の面前にさらさないこと・
人質の安全確保、そしてお互いの安全確保という考えを犯人と共有して投降をうけいれる。
多くのケースでは、人質釈放、人質交渉班への投降という形をとる、念のため突入・狙撃の援護を待機する。

人質の安全だけを優先して事件の解決を急ぐと必ず誤算が生じる。
善悪の定義で判断すると、犯人の感情の流れに注意がいかなくなるので。
犯人の要求を一切拒絶して、強制的に投降させようとすると、人質が危険にさらされる。
本当に人質を殺すのであれば警告はない、犯人をおいつめないように深層心理を探り、コミュニケーションをとり続け、緊張が緩和され、犯人が理性的に考えられるようにする。

そして、いよいようまくいかないと判断した場合狙撃や強行突入作戦に移る。


第5章 強行突入
強行突入はタイミングがすべて
ただし、おいつめると犠牲者がでる(あさま山荘事件のように)ので、あからさまな完全包囲はせず、犯人にわからないように突入ルートや配置をきめて人員を配置する。
突入班の心理的ストレスを軽減するため「射殺ではなく、暴力行為をやめさせるために突入する」と訓練する。

突入作戦では二秒ルールで反撃を断つ。それ以上かかると反撃され犠牲者がでることがある。
ただし、急ぎすぎると誤射の原因になる。

突入訓練は90年代まで訓練を積むことに主眼がおかれたが、それではうまくいかないことがわかり、メンタルケアの充実と「自分で制御できる範囲で行う」が教えられるようになった。フォームもバランスさえとれれば矯正はされない。
恐怖も克服するのではなく飼いならすようにと教わる。
力を抜くために適切な呼吸法と正しい姿勢=バランスのとれた姿勢の訓練をする。リラックスした姿勢からの射撃は命中精度を上げる。
「暴力行為をとめるため、相手の動きを停止させる」という目標を徹底させる。任務は射殺ではなく逮捕である。

精神的に緊張が高まった状態で心理的にマイナス思考が先行して、ネガティブな発想しかうかばなくなり、イフファクター状態になることがある。つまり最悪の状態を考えてばかりいるようになるのである。
現実に即したものなら議論の対象になるが、「もし」ばかり論じるのは時間の無駄であり悪影響もある。
そのためポジティブファクターを考えられる人かどうかは志願者の面接でも採用されている。
質問
「4名編成の偵察チームのリーダーとして活動中に10歳の現地の子どもと遭遇した、チームになんと命令する?」ポジティブな答えはのっていなかった。

二秒以内に制圧しなければいけないのに、弾倉を交換する事態の検討などは作戦失敗をいみする。
それでも、交換を余儀なくされたときの交換方法
スピードローリー(なくなってから交換)、タクティカルリロード(残った状態で交換)
また、動作不良(不発、装填不良、俳きょう不良)による交換は考えられる。

強行突入は犯人の虚を突き、先手をとりつづけるが基本
トレーニングでは接近に多くの時間を費やす。隠ぺい物と遮蔽物を使い分け、音をだすものにビニールテープをまきつけ消音、反射するものには光沢を消す。光の方向と影を考える。首から顔はペイントでカモフラージュする。

幽霊のように音を立てずに歩く訓練
接近には資格確認・聴覚確認・移動・停止のサイクルを繰り返す、一回の移動は4秒以内。
注意をひきつける急激な動きは厳禁で静かに空気のようにうごくこと。これをゴーストまたはステルスと呼ぶ。
歩き方はアメリカ先住民の得意とするストーキングを使う。遮蔽物がなければほふく前進を使う。人間は胸から顔を高さを中心に見てしまう生き物なので。またはラッシュという素早く駆け抜ける方法を使う。
これでFEP(突入ポイント)まで移動する。この間、人質交渉班が犯人の注意をひきつけ、狙撃犯が援護する。

人間は恐怖や不安にかられると混乱し喉が渇き、声がだせなくなるので、ボディランゲージでコミュニケーションをとる方法なども使われている。

強行突入が始まると中止命令はきかない。
途中でやめれば状況が悪化するから。

突入の二つの戦術
ダイナミックエントリー・・・自分でコントロールできる最大限の動きを使って次々に室内を制圧する
ゴーストエントリー・・・気配を消して動きを悟らせないように接近する。
ダイナミックは奇襲効果があるが、広い場所では徐々にゴーストに切り替えるなど、状況に応じて直感を働かせきりかえる。

突入班は閃光弾を投げ込みながら、または閃光弾がさく裂してから突入。
室内にいるものはすべて制圧が基本。犯人が人質に紛れて脱出しようとしたことがあるので。

KISSの法則・・・すべてを馬鹿みたいに簡単にしておくこと。
ダイナミックエントリーまたはスネークエントリーで制圧する解説。

乗っ取り犯を制圧するには、自然な流れで乗り物を停止させることが安全につながる。
公共交通機関への突入は、建物よりも犯人の逃走経路がなく、人質の居場所がつかめて安全といえる。
複数犯で突入する方法が描かれていた。

公共交通機関で狙撃を使うのは、一撃で犯人を無力化できる保証はないので、危険。

突入するときには挟み撃ちは誤射の原因。また完全包囲の印象を犯人にあたえると無用な犠牲が出やすい。
ただし旅客機は別。そのため旅客機は保安要員などをのせるところもある。


警察対テロ部隊テクニック―人質交渉から強行突入まで

警察対テロ部隊テクニック―人質交渉から強行突入まで

  • 作者: 毛利 元貞
  • 出版社/メーカー: 並木書房
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 単行本



タグ:毛利 元貞
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