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影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか [ビジネス]

社会心理学者である著者が、自身の体験、知識、実験室及びインターンとしていろんなところに潜入してしらべた、承諾を得る(相手にYesといわせる)技術についてまとめた本。

第1章 影響力の武器
カチッ・サー・・・動物や昆虫でよくみられる、なにかトリガとなることがおこると、それに応じて起こる一連の固定した反応のこと。人間も昆虫や動物より複雑ではあるがこれをもっている。たとえば、高いモノ=いいモノ。アリゾナの宝石店で値札を1/2にしようとして、指示がまちがって伝えられ2倍になったら、すべて売り切れたようなもの。

このようなヒューリスティック=心理的な簡便法はだれもがもっていて、使っており、煩雑で複雑で大量の判断を必要とする世の中をいきていくために必要であるが、ときに利用されてしまうこともある。

カチッ・サーのもう一つの例、コントラストの原理
高い車を買った後ではオプションは子細な金額にみえるので、あとで進める
不動産は最初のぼろ物件をみせて、あとで売りたい物件をみせる、スーツとセーターを買いに来た客には最初にスーツをみせる。するとセーターも高いものをすすめても買っていくなどなど。


第2章 返報性
 返報性のルールは、人間社会の中で、広く基本的なものとして広まっており、その縛りは強力である。
 人に何かをしてもらったら、その恩義を返さなくてはならないというルールは、社会に対する自分の行動が無駄にならにことから、人々に分業しそれぞれが社会に対して恩義を施すという方法を取らせ、結果として社会を進歩させるというすばらしい循環を生み出した。
 しかし、このルールが搾取者に利用されると、必要ないプレゼントを与えられて、その見返り(多くは寄付や商品の購入)をせまられるとことになる。しかも返報性のルールは「好意を持った人に親切にする」よりも強力であることが実験でわかっている。相手に嫌われても恩を売ることができれば、相手から何か引き出せる可能性があるわけだ。
 また、返報性のルールを利用した変形として、「要請してから譲歩」という手段もよくとられる。一度何か買ってくれと頼んで、断られたらだれか買いそうな人を教えてくれというわけだ。しかもこの方法で譲歩した人は、無理やりプレゼントを贈られて寄付した人たちが、次は同じことがおこりそうなことを避けるのに対して、そのようなことはなく、また要請に応じる傾向があることがわかった。それは譲歩されて要求をのんだ側の満足感が高いためと思われる。
 普段からこのルールを拒否してしまうと、社会的な不都合も多い。このルールが悪用されることがあることをよく覚えておいて、搾取者の手段に気が付いたときは、搾取には搾取で対抗しよう。つまり恩をうけて、相手を手ぶらで返す(搾取する)のである。


第3章 コミットメントと一貫性-心に住む小鬼
 ほとんどの人は自分の、言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたい、あるいは他の人にそうみられたいという欲求がある。その理由は、
 ・一貫性を保つことで社会の他のメンバーから高い評価をうける
 ・一般的に一貫性を保つことは日常生活で有益である。立場が決まっていればとる行動はきまっていますから
 ・一貫性を志向することで、複雑な現代生活をうまくすり抜ける貴重な簡便方法が得られる。将来類似した状況に直面したら、以前の決定を重いだして、それに一貫するように反応すればよくなる。
 最初のコミットメントがあると、人はそのコミットメントに合致した要請に同意しやすくなる。だから承諾誘導の専門家は後で要請しようとする行動にあった立場をとらせるようにする。小さなものから買わせるとか、公共的な署名(街を美しくしようとか)に署名させてから募金を募るなど。そして効果的には自分が努力したり、行動したり、それが公にされる行動である。集団にはいる通過儀礼がしばしばばかばかしいほどに厳しいものであると、苦労して入会したのだから価値があるはずだという一貫性が働く、また、自分が思っていないことでも丸写しにさせると、それがコミットメントになるなど。
 そして一度コミットメントすると、それを守ろうと正当化したり、固執したりする。その結果コミットを生み出した状況が変化しても、そのコミットメントの効力は持続する。ローボール・テクニックはこれを利用したもので、一度有利な条件で契約しておいて、後からミスなどで有利な条件を取り除いても、相手は契約を翻意しないという性質を利用したものである。
 防御法は、承諾の決定に対して一貫性への圧力が過度に影響することを認識し、それに抵抗するには体の中のサイン、胃と心の奥底からのシグナルを見逃さないこと。やりたくないと思っている要請に同意させられそうになったとき、そういったサインがでるものだ。ばかげた要請にかかわりたくないというこを要請者に告げよう。また、最初のコミットメントが間違っているか心配なときには「今知っていることはそのままにして、時間を遡ることができたら、同じコミットメントをするだろうか」と質問してみるとよい。そのとき最初に湧き上がってきた感情が役に立つ答えをもたらしてくれるものである。


第4章 社会的証明 -真実は私たちに
人がある状況でどのようにふるまうべきかを決めるのは、他の人たちの行動をみて決める。他人を模倣することはたいていの場面で有効だしうまくいく方法である。うまく使うと恐怖の低減などに使えるが、悪用すると承諾誘導で強力な武器となる。
 つまり、あなたの友人の名前をだして、その人も気に入っている、使っているといったり、一般人のインタビューを装って、製品のいいところをいわせたり、あるいは賞品をだして、製品のいいところをかかせるなど、これらは我々が「他の人がいいといっているのだからいいにちがいない」と思い込ませるためになされるのである。
 この社会的証明が最も強い影響力をもつのは、不確かさがあるとき=自分の判断に自信が持てないとき、と、類似性=模倣しようとしている人と自分が似ている場合である。
 この例として、ガイアナのジョーンズ・タウンでの集団自殺。それから社会学者デイビッド・フィリップスが収集した自殺統計=自殺の記事が新聞に大きくでたあとは、同じ年代の自殺が増える、また事故が増えるという研究をあげていた。著者は一面に自殺の記事がでたときには、運転に気をつけるそうである。他者の模倣はこんなことろにも表れる。
 私たちは社会的証明があることに防衛体制をとりたがらない。たいていの証拠は正しく価値があるし、自動操縦を提供してくれるから。でも、情報があやまっている場合があることを忘れてはならない。情報が誤るのは、社会的証拠が意図的にゆがめられている場合と、悪意のない自然な過ちが雪だるま式に多くの社会的証明をうみだし、私たちがまずい方向に一様に導かれてしまう場合=事故の目撃者が多く、だれかが通報するだろう、救急車を呼ぶだろうとみなが行動しないなどの例。データが誤っていると気が付いたら自動操縦を切る。また、困っているときに助けが必要なら、誰かを名指しにしないと、間違った社会的証明の犠牲者になる可能性を知っておこう。


第5章 好意 -やさしい泥棒
人は好意を持った相手にはYesといいやすい。
 好意が形成される要因は、
  ・身体的魅力(これは強力な上に意識されにくいという特徴がある)
  ・類似性=自分に似ている部分、歳、出身地、部活、趣味なんでもいいがあると好意をもちやすい。だから承諾誘導の専門家はあらゆる類似性を探そうとする。
  ・称賛、あまり露骨だと反感を買うが、一般的にお世辞は好意を高める。なお、一度けなしてから称賛する方が、ただ称賛するより効果が高いことがわかっている
  ・快適な環境での接触の繰り返し、特に効果があるのは協同でなにかやって成功した場合、相手に好意をもちやすい。
  ・連合、よいイメージのもの、有名人、スポーツ選手、アポロ計画あらゆるものと自分の商品を結びつけるのは、連合の力を利用しようというもの。また好ましくないものから遠ざかろうとする行動もわかっている。スポーツチームが勝った時は「我々が勝った」というサポーターが多いが、負けた場合は「彼らは負けた」と表現するなど。
 好意を利用しようとする承諾誘導の要請者に対する防御は、自分が相手に好意を抱いていることを意識して、それが過度のものであると感じるときは用心することである。相手が好意を利用しようとしていることは確実だ。だからといって、要請のすべてを断っては買い物もできないし、本当に有利な取引もなくしてしまうことも考えられる。そのためには相手の要請と好意を切り離して考えるべきである。


第6章 権威 -導かれる服従
 われわれが権威にいかに服従してしまうかを示すミルグラムの実験がある。これは記憶実験と称して被験者を集め、その人を教師役にする。研究者が指示して、被験者(実は実験協力者)に一定のリストを覚えさせ、教師役が質問、答えが間違っているときには一定の電流がながされ、回答がまちがうまたびにその電圧は高くなるという実験を行う。この実験で被験者は電流が痛くてもう無理だというのだが、研究者は教師に続けるように指示する、このとき95%以上の教師が研究者の指示に従って最後まで実験を行ったという。このあと、教師役の人たちについて調べられたが、特に攻撃的だとか、精神疾患があるわけでもなく、性別も関係がなかった。そして、驚くべきことにこの結果は大半の予想とちがっていたのだ、実際に実験がおこなわれるまで、学生も研究者たちも、教師は研究者の要請を拒否するはずだと予想していたのである。
 このように権威からの要請はわれわれを服従させる強い力をもっている、しかも我々はそれを過小評価しているのである。大抵の社会生活では権威(学校、上司)に従うことは利益をもたらすのだら、いつもはこれでいいのだが、自動操縦になると承諾誘導者の餌食になるかもしれない。
 権威への服従は、実体でなくシンボルにも起こることに注意したい、シンボルは肩書、服装、そして装飾品(宝石や車)である。人に要請するとき警備員の格好をすると承諾してもらえる確率が高いことがわかっている。そしてこの実験でも服従した人は、制服が自分の行動に及ぼす影響力を過小ひょうかしていた。
 二つの質問が権威者からの有害な影響を退けることができる、「この権威者は本当に専門家なのか」そして「この専門家はどの程度誠実だと考えられるか」である。本物の専門家でも知識をわれわれの為に使ってくれる保証はない。そして専門家がしばしば使う方法に、一度自分に不利益な情報を伝えておいてから、それを打ち消すくらい有利な情報を与えるという方法がある。つまり誠実さを示して相手に信頼させるという方法をとるのである。


第7章 希少性 -わずかなものについての法則
 「数量限定」「期間限定」は少額誘導者の常套手段である。確かに普通は手に入れることが難しいものはそれだけ貴重であることが多いし、ある品や経験が入手できる可能性がその質を反転する手っ取り早い手がかりになる。しかし悪用されることもあるのだ。事実が違っても数量も期間も要請者の自由だからである。
 また、手に入りにくくなるということは、私たちは自由を失うことになる。心理的リアクタンス理論によると、この場合以前よりも自由を欲するという形で自由の喪失に対して反応する。つまり一度手に入れたものがなくなる、たくさんあったものを皆が争って手に入れたらなくなったというのが、我々の情動をつきうごかすのだ。
 心理的リアクタンスが最も顕著にあらわれるのは二歳児とティーンエイジャーである。
 希少性の原理は商品だけでなく情報にもある。制限された情報があると、人は欲しがり、それが説得力をもつと考えるのだ。
 希少性が最も効力をはっきするのは、すでに制限されているものよりも、新たに制限されるようになったもの。それから他人と争って求めているときである。
 希少性の圧力に理性で対抗するのは困難。すでに興奮状態であるので、防御としては興奮事態をシグナルとしてうけとめて、欲しいのは「手に入れる」ためではなく「使うため」であることを思い出すといい。手に入れる為の多大な支出は、使うためならするものだろうか?


第8章 手っ取り早い影響力 -自動化された時代の原始的な承諾
 原始的な自動性は、昆虫や動物に観察されるものであるが、現代の複雑で情報が多い社会では人間もこの方法。もっとも信頼性の高い特徴に着目して反応を決めるという方法=返報性、一貫性、希少性、好意に頼らざる得ない。
 承諾誘導を行う人すべてがわるいわけではなく、彼らが提供してくれる情報は有益で、我々の判断を助けてくれるものも多い。問題は、歪んだ情報、ねつ造した証拠で我々を搾取しようとするものがいるということである。このような人々が我々の役に立つべき簡便法を悪用してくるときには、我々は断固として要請を拒否し、他の人々に警告して搾取を防ぐべきである。


影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

  • 作者: ロバート・B・チャルディーニ
  • 出版社/メーカー: 誠信書房
  • 発売日: 1991/09/01
  • メディア: 単行本



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