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ドラッカーの実践経営哲学―ビジネスの基本がすべてわかる! [ビジネス]

ドラッガーの著作は、本質をとらえていて、活用すれば大変な力になるが、外国の著作であり理解に時間がかかるのが難点。
著者はドラッガーの著作から「お客を作る」に焦点をあてて、忙しいビジネスマンが本質をつかみやすい本を作った。

第1章 間違いだらけのマネジメント
株式会社の仕組みを作った原点は「リスクは小さく、分け前は大きく」であると、オランダの東インド会社の例で解説。

日本の問題
「生産性に比べて、乗組員(社員)の分け前が大きすぎること」
アメリカの問題
「持ち主(株主)がすぐに分け前をよこせということ」

日本はそれまでの社員にやる気をださせる経営が成長の鈍化でうまくいかなくなって、アメリカ流をとりいれようとしているが、本質をとらえないで仕組みだけ導入してもうまくはいかない。
アメリカの経営がすぐれているのは、起業を評価するモノサシである。それでも粉飾決済などもある。アメリカ流をすべて鵜呑みにしてはいけない。

ドラッガーは上場企業のトップはオーケストラの指揮者と同じで、経営という専門的な仕事をする専門職であるにすぎない、だから年収の差はせいぜい20倍以内にすべきで、それ以上になると社員のやる気を失わせるといっている。

現代社会には個人の資本家はいない。
あまりに投資に必要な金は膨大になり、一人の資本家では所有できなくなった。アメリカの符号上位1000人の財産すべてでも、アメリカの主要産業の一つの資金需要を賄えるのは数か月。今のアメリカの資本家は年金基金。
オーナー経営で出発しても、上場するということは、自分の持ち株を売って金持ちになったということである。
ただし経営はしていることがある。

創業者一族も相続でその資本がそがれるので、今は資本家のいない資本主義社会、あえていえば経営者も資金運用者もサラリーマンなので、「サラリーマン資本主義社会」なのである。

サラリーマン社会の企業統治では、トップを監督するシステムがないことが問題。
そもそもここまで大きく複雑化した経営をトップひとりで行うのは無理で、ドラッガーはチーム制を推奨している。
また意思決定=経営を行う専門家を養成する機関も方法もないと指摘している。

このような状況のなか、一つだけ確かなのは「共存共栄のしくみをつくること」=努力すれば報われる仕組みを作って大勢の人間をやる気にさせることが会社を大きくし、長く続く強い体質をつくる。こと。
企業は人間の集団であり、人間をやる気にさせなければ企業は発展しない。

組織の3つの側面
人的な面・・・社員をやる気にさせる。従来の日本型経営が重視したが、いきずまった
社会的な面・・・雇用を安定させる。ドイツで採用されたが社会は安定しなかった
株主重視で経済的な面・・・株価と配当をあげる。アメリカで行われ、好調なときはよいが、不況に弱いとわかった。
ドラッガーは人間の知恵により、これらでないもっと良いシステムがうまれるはずだという。


第2章 お客軽視が不況をまねいた
いま起きているのは不況ではなく、工業社会から知識社会への転換。
30年前に供給力が需要を越えてしまったので、常識がかわったのだ。
モノが足りない(供給力不足)間は売り手重視、製造業が強かったが、
これからはモノがいきわたった(供給過剰)になるので、買い手重視、流通が強くなる。

製造ではなく流通が大事になるのに、原価や経費の削減に奔走する企業は生き残れない。
利益は常にお客(社外)からもたらされるのであり、会社のなかにはない。
トップみずから一人でお客の声をきく努力がいるといっていた。アサヒビールの樋口社長の例
マネジメントの根幹は会社をつぶさないことであり、自らお客をつくる活動を行うことである。

企業を成長させるのはイノベーションとマーケティング。
新しい市場をつくれなければ既存の市場でシェアあらそいをすることになり、価格競争にまきこまれる。
イノベーションだけでなく、マーケティングもなければ新しい市場は作り出せない。

基本はお客の立場(お客の満足)に立って考えること


第3章 ビジネスの基本
ビジネスの目的は、人、金、モノなどの経営資源を投入して、投入した以上の価値を生む製品やサービスを算出すること。
ドラッガーは、これが社会的責任であるといっている。
新しく生まれた価値=付加価値
付加価値が増えることによって経済が成長し、社会が発展している。

付加価値は企業内のコトバでは「粗利益」「粗利益」「付加高」などとよばれる。
気をつけないといけないのは、ゼロサムゲームでも利益はあがるので、利益に計上されるものでも付加価値でないものがあること。談合やねずみ講、ディリバティブも全体のパイは増やさず、誰かを負かして得るので付加価値を生み出していないという。

銀行はイノベーションをしてこなかったので衰退した。
また、付加価値が下がっているのに、労働配分率がさがらないので、不況なのである。
日本の労働配分率は85%、これでは企業は投資(イノベーション)を行うことができず、衰退してしまう。
リストラはそのため起きているのだ。労使で賃金を下げる交渉が必要なくらいである。

付加価値を生み出しているのは民間企業だけ。そこが粗利益をふやすことが付加価値をあげる=経済をよくすること。
付加価値を増やす方法
1 生産性をあげる
2 外部に払う費用を減らす
3 回転率を高める
4 在庫を減らす
1-4はお客が存在することが前提。
5 イノベーションとマーケティングによって、新製品を開発して売り上げを上げること。
開発だけではなく、販売があって初めて粗利益になる。5を行うのは企業の責任である。
これによって、みんなが豊かになれるのである。
「作ったものを売る」のではなく「売れるものを開発して、買ってもらうしくみを作ってから販売活動を行う」のが順序。販売の現場に目がいっている企業は強い。

ケインズ理論
需要と供給が一致したとき価格がきまるという理論をもとに、政府が発行するカネの量を調節したり、公共事業でカネを使うことで景気をコントロールできる。
政府に都合がいいこともあって、採用されてきた。

シュムペーターの理論
経済が発展するのは起業家が時代遅れになった古い製品やサービスを破壊して、新しい生産性の高い製品やサービスへ入れかえるから。景気を上向かせることができるのは、政府の経済政策でなく、新しい事業をおこそうとする起業家のエネルギー。創造的破壊である。
ケインズ理論では、政府や官僚が力をもちすぎて企業との癒着がおこると予言していた。
また、均衡理論では売り手(供給)と買い手(需要)が同じ情報をもっていることが前提であるが、そのはありえないので成立しないとも指摘しており、それは証明されて、スティグリッツ、アカロフ、スペンスがノーベル賞を受賞した。

ドラッガーも「経済は個々の企業が業績を積み重ねた結果である」「21世紀はシュムペーターの正しさが証明される」といっている。

ドラッガーによる「イノベーション」概念
「ものの考え方や仕事の方法を変えることによってお客(得意先)の価値観を変えさせて、お客を満足させて自分も儲けること」
「時代遅れになったり、生産性が低いため儲からなくなった活動を、儲かる活動につくりかえること」
新しい付加価値を生み出すためにすべての部門が取り組むべき根本的活動

イノベーションを生み出すものは「新結合」=すでにあるものの組み合わせを変えたり、新しくむすびつけるである。
モノが売れないのは、楽しく買い物ができないから。
既存の知識を有効に活用する知識がマネジメント。マクドナルド→本部と店舗の分離、ウォルマート→安く売るしくみ
新しく誕生した物流会社「第三者物流」→複数の企業をくみあわせて、総合的な解決策を考えて、さらに効率的な物流戦略を考える。荷主でも運送業者でも倉庫業者でもない。

第4章 販売前のマーケティング
マーケティングはアメリカでさえ、セールスと混同されていることが多い
販売する前にお客に買ってもらう仕組みをつくることがマーケティング。
コトラーによるマーケティングの手順
1 狙うお客つまり市場をきめる
2 何を売り物にするか、高級品を売り物にするのか、安全性を売り物にするのか決める
3 売り物に見合った価格をつける
4 お客がかわなければならない意味を考える
5 どこで買えるか、品切れを起こさないようにするか、流通戦略を決める
6 もっとも安いコストでお客に届ける方法を決める。

あらゆる仕事の中でモノを売るほど難しい仕事はない。モノづくりの何倍も何十倍も手間もカネもかかり豊富なノウハウも必要である。
売れ行きは製品のチカラだけでなく、問屋や代理店、小売店のチカラによっても大きく左右されている。
問屋にマージンを払えば問屋がうってくれるわけではない。マージンは販売網をつかわせてもらう手数料である。
たとえ問屋を介していても、問屋が売りやすいように営業が必要なのである。
ひとつの顧客、一つの販売チャネルだけが大きいのは危険である。仕入れも同様である。
販売は今日の利益を稼ぎ出す企業の生命線であり、人任せにできるところではない。

また販売網は網羅していればいいのではなく、小数の店でたくさん売るがよい。
メーカーにとって最大のお客は問屋と小売店。訪問して変化する要望をすいあげることが大事。日用品を扱う企業はわかっているが製造業では認識していないところが多い。

社外活動は管理しにくいため、マネジメントは社内に対して行うとの認識がまかりとおってきたが、企業はお客に見放され売り上げの伸びが止まれば終わりである。今日のお客が明日のお客である保証はない。

販売活動と流通活動には複雑すぎて合理的理論がない。
人、モノ、カネを投入しても出力されるのはサービスだからである。
顧客獲得は投資であるが、現実ではコストになってしまっている。

ドラッガーはインターネット時代には製造会社は販売会社の調達先の一つとなり地位は逆転するといっている。

営業マンに必要な知識はお客に買ってもらうしくみをつくるマーケティングの方法論と手順。取引先が破たんしたときに必要な回収の方法論と手順。


第5章 お客は満足していない
顧客満足度の高い企業は株価が高い。お客を満足させることを追求するれば売れる。

パレートの法則
売上の8割は2割の顧客から得られる。固定客が大切。

お客が一種類ということはありえない
カネを払う人と、買うことを進める人
買う人と使う人が別
日用品メーカーはドラッグストアと女性
コピー機メーカーは、現場の使う人と、購買部門両方に好かれないといけない

お客が買っているのはモノではなく効用。
何をかっているかはお客でないとわからない。
ある建具メーカーはコストを下げて価格をさげようとしていたが、工務店がほしいのは組み立てやすくて人件費をおさえられる建具だったなど。

売上が頭打ちになったら「わが社のお客は何を買っているか」を考えるとき
セールスマンのアドバイスを買っているのかも。

お客がかっているのは品質ではない、この製品が自分のためになるのかならないのかである。

企業は現在のお客だけでなく市場(みえないお客、わが社のお客になっていないお客)をみなければならない。市場は常にかわっている。注意をはらって、手をうっておくことが大切。

ライバルは同じ業界とは限らない。お客が買っているのは効用だからである。
ベンツの敵は「高級感」であるから別荘やダイヤモンドかもしれない。
既存の業界に安穏としていると変化の激しい時代には潜在的ライバルにシェアをうばわれることがある。

最高のお客はビジネスのヒントをくれるお客である。

日本能率協会の調べでは満足レベルは最高で53%で乗用車だった。お客は満足していないのだ。


第6章 お客本位へ
売上が下がるというのは、お客からの信頼を失ったということである。だから対策は「会社全体をお客第一につくりかえる」ことである。
売上をあげている製品に絞り込む
どんなに優れたアイデアでもお客の嫌がることをしない
お客をよくみる→わが社のお客でないひとは何をかっているか、何に満足しているのか
分けて対応する→アメリカのドラッグストア最大手芋折るグリーンは、お年寄り=安売りで他にいったりしない。のために店舗を入りやすく、駐車場と店舗を近く、POPを大きく照明をあかるくしている。女性のために陳列棚の高さをかえている。将来の顧客であるティーンエイジャー向けの化粧法アドバイスコーナーをつくっている
お客の立場になって考える、わが社の都合をおしつけない
買っている場所と理由を考える
リピート客をつくる→新規顧客よりコストが安く売り上げに貢献しやすい
お客を好きになる。

第7章 お客軽視の犯人
サラリーマン社会の登場、上役のために働く、わが社を中心に世界が動いているという考え
責任をとりたくないことなかれ主義、縦割りによる全社的視点の欠如。
大企業であればつぶれないという安心感のもと内部ルールで動き出す。

グローバル化の時代、大企業は必要なのに、日本の大企業は大企業病になっている。
日本の大企業は、中小企業から出発したものより、政府主導で最初から大企業として設立されたものが多い。
一貫生産、大量生産のためである。これはいまでは儲からないビジネスモデルとなっている。

ドラッガーのあげる大企業病の病状
管理職の階層が多い
調整のための会議や打ち合わせが多い
機能別部門が細分化されている
人間が多すぎて人間関係に気を使いあっている
役員の年齢層が偏っている

著者は最大の病原菌は縦割り組織といってる。他の病原菌として、本社スタッフ、コンピュータ、共同体の論理、愛社精神、業界協調主義をあげている。


第8章 棄てる決断・やめる勇気
著者が考える日本的経営のおかしなところ
1政官業のもたれあい
2株と土地の値上がり前提の含み益経営
3企業と銀行の株式の持ち合い。チェック機能ははたらかない
4官僚は常にただしい。悪いのは業者

創造的な破壊のために最初に必要なのは棄てること。
それまでの投入をおしんで、息絶えるのをまってはいけない。
まだ数年寿命があるうちに撤退し、あたらしい粗利益を産む活動に集中するのだ。
変化の激しい市場にあわせて生き残るために、撤退のしくみをもたなければなない。
創造的破壊を実践した経営者としてジャック・ウェルチがあげられていた。


第9章 選手交代の時代の主役はあなただ
経済政策では景気は回復しない。必要なのは企業が変化にあわせて儲かるように体質を変えて、業績を回復し、雇用不安をなくし、株価を高める以外にない。
いままでの経済活動をささえてきた「鉄のトライアングル」、政官業のもたれあい、含み益経営、株の持ち合い、官僚の無謬神話はくずれた。
会計ビッグバンは、これまでモノを動かすだけで見かけ上の利益をだしていた行為を禁止した。
採算の透明性がまし、審判はお客にゆだねられるようになった。
秩序が崩れている今は若者にはチャンス
競争をおそれず、情報をうのみにせず、日本のよいところはとりいれつつ、デフレにあわせた戦略で、固定観念にとらわれず、チャンスをつかんでほしい。


ドラッカーの実践経営哲学―ビジネスの基本がすべてわかる!

ドラッカーの実践経営哲学―ビジネスの基本がすべてわかる!

  • 作者: 望月 護
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 単行本



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