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成り立ちで知る漢字のおもしろ世界―道具・家・まち編 [雑学]

故白川静博士は、「字統」「字通」の著者であり、漢字研究の大家であった。その弟子である著者が、両辞典に準拠して書いた漢字の本。
現代の風潮としていちいち文字の意味まで考えていたら命がすりきれてしまうという考えもあろうが、2・3千程度の漢字の意味と使い方にこだわってみるチャンスをもつのも日本語を所持して生きる人に無駄ではなかろう。

漢字のもともとの形(図だからかきあらわせないが)と、その意味が解説してある。
シリーズが6冊あって、そのうちの道具・家・まち編。

今一般に通用している解説でも間違っているものがあるとして、例として「名」をあげていた。
名は「夕」+「口」で夕暮れの薄暗がりのなかで自分であることを確認してもらうため自分の名をいうことと解説されているものが多い。
本当は、「夕」は肉のことであり、一族の中に子供がうまれると、さっそくその子を先祖の霊を祭る祖廟に参り、祖霊に会わせる、それが「字」(あざな)の意味で、祖廟の屋根と子どもを表す字である。そして、数か月の養育を重ね一族の子である確認と成長のめどが立った時、再び祖廟に参り本名をつける、それをあらわすのが「名」。「夕」は祖廟に備える際肉の形、口は神への告げ文を収める器の形である「サイ」をくみあわせたもので、生まれた子どもに本名をつける儀礼を表すのである。

基本となる漢字の由来について述べ、それを使った漢字の解説をする。
もともとの象形文字の形がのっていて、それが何を指すか解説して、さらに文字に使われた理由をのべるという形式。「字統」「字通」に準拠しているが、一部に著者の考えもあり、そこは明記してある。

例 衣
古代文字は和服形式の衣服の襟元の形であり、衣服を表す。衣服は人がその裸身を守り、あるいは隠すためにみにまとうものだが、古代では「衣」とは人の命を包み守るもの。あるいは人間の霊魂の宿るところであるという考えがあった。

例 依
人に「衣」を寄り添わせる形。衣は霊魂が憑依するものと考えられていたから、依は二兎に霊魂をよりつかせるという意味の字、あるいは損ぞからの生命・霊魂を受け継ぐための儀礼をも表す字。

このような解説が以下のような分類でされている
第一部道具
糸・・・糸束の形からできた。古来は二個並べて書いた。著者の考えでは、ひらひらするものを神のよりつくものとものとされたのでひらひらするものを左右に分けて飾った形だろうとしていた。

巾・・・布きれに使われるが、元の意味は腰に帯びる儀礼用の布のこと。
冉(ぜん)・・・麻の組みひもの形。弔意を表す喪章に用いた。
冓(こう)・・・冉を上下に組み合わせた形
彡(さん)・・・いろいろのものの美しさ
角箆と縄巻の漢字・・・乙は角箆のかたち。互は縄を巻き取る道具の形。
工具・・・己は糸を巻き取っておく糸巻きの形。糸を巻き取るのが「紀」まきとって順序良く続いていることがわかるので紀は順序良く続いているもの、きちんと整理してかきしるすのは「記」
農具・・・以は農具である鋤の一種「已」とも表す。他に鋤を表す「力」がある。
斗・・・穀物を量る枡の形
東(ふくろ)・・・中にものをいれてくくった形の袋。方角の東に用いるのは意味をすてて使い方。
午(きね)・・・コメをつくきぬを表す漢字。
早(さじ)・・・スプーンを表す、是、卓も同じ。早はものをすくう部分をあらわす。全体は是、大きいのは卓
甚(ジン)・・・かまどの上に鍋をかけている形で、十分に煮たきすることから「はなはだしい」という意味につかわれる。
缶(かめ)・・・「フ」とよんで陶器を表す文字
匚・曲・・・匚は道具箱、曲は竹を細く削ったものや蔓などで編んだカゴの形。竹や蔓をまげてつるるので曲げるの意味。また歌のメロディーにも使われる。
酉(さかだる)・・・消毒のための酒を表す。
皀(きゅう)・・・盛り飯を表す。館は軍が戦地に携える祭肉
皿・・・浅く平たい皿。漢字の部分としては器一般を表す。
凡(はん)・・・神や天子にささげるものを入れる入れ物の形。盤も同じ。
豆(トウ)・・・儀礼の際、塩物や飲み物を入れて供える食器。頭ににている。
几(キ)・・・両端に足がある机の形で、腰掛や肘掛として使われたりした。
辛(しん)・余(よ)・・・辛は入れ墨用の針の形、余は取っ手のついた大きな針の形、これで腫物の膿を取り除いたり、突き刺して悪霊を払う。
髪飾り・・・斉は同じ長さのかんざしを3本平行にさした形で、神前の祭事に奉仕する女性。斎は放射状に髪に3本のかんざしを挿した女性の姿、祭事に奉仕する姿を現すために「示」=祭卓の形がついている。
丵(サク)・・・上部が鋸歯状の土などを撃って固めるための道具。
車・・・古代文字では二輪であわらしたが、現在は一つになっている。
舟・・・もとは大木をくりぬいて作った丸木舟。同じような形の水や食べ物を入れるための盤(さらやたらい)を表すこともある。
冊・・・祭祀に用いる生贄を飼っておく柵の形。
など(変換できないのもあるので)

第2部 家の漢字
宀・・・両屋根のある建物で祖霊を祀る宗廟、普通一般の住居を表すものではない。
广・・・片屋根、断崖にかけられた片屋根住居。古くは聖地だった。
穴・・・断崖に掘った横穴の住居の入りぐち
厂・・・山の崖や水辺の岸の形、その崖に横穴を掘って、そこに穴住宅をつくる。
門・戸・・・神棚の扉、あるいは祖霊を祀る廟屋の門。門は両開き、戸は片開き。
冂・・・冂は窓を表す。向は窓(明かりとともに神の訪れるところ)と祈りのことばの器を表す口(さい)の組み合わせ。
入・・・家屋の入り口の形。


第3部 まちの漢字
舎・・・舎の意味は祈りのことばを収めた器を取ってのついて大きな針でつきさし、祈りの効果を無効にすること。
甘・・・扉などに錠をかけ、鍵をかけた形。刑罰の道具である手錠や首枷の形。それが根の甘いくさ「カン」という字を使ったために甘いを使うようになった。
呂・・・青銅器などをつくる材料である銅塊の形。宮などの部分になったときは大きな寺社の堂や建物の並ぶ平面図の意味となる。あるいはおおきな建物内の部屋部屋の図面でもある。
倉・・・穀物が地べたに直接ふれないように、台状のものの上に梱包した穀物を置き、その上に雨よけのふたをかけた形である。
廴(イン)・・・廷のつくりは礼装をして立つ人の姿、廷は代の上の土地神の上に人が酒を注ぐ姿。そこは壁や幕などの障壁に囲まれた儀礼のとりおこなわれる庭。
京・・・中国の城壁都市の正門の形。みやこの意味。京は下の馬車の通るところはアーチ型の門でその上は高層の望楼になっている。
墳墓の漢字・・・亜は古代中国の王や貴族の地下の墓室の形。正方形の四隅をくりとってあるのは、そこには悪霊の潜む恐れがあったからだろう。亜は葬儀の執行をする職務をあらわし、それは王に次ぐ高いくらいであったので、二番目の亜流などと使う。音記号の「莫」は西の草原に沈みゆく形。それを土で覆い隠すのが墓、布でかくすのが幕、心を隠して思うのが慕。
尸(し)・・・死者の横たわる形で死んだ人をあらわす、他にはお尻や屋根のおおいをあらわしたりする。
版(かたいた)と瓦・・・片は城壁などの工事をする場合のあて木。それを左右べつべつにするときには「爿と片というがいっしょの時は版となる。瓦は屋根瓦のそりのある形。粘土をこねて型にあわせて作り、乾かし、それを焼きがまで焼いて固める。そのようにしてできたもの。
邑・・・城壁に取り囲まれた都市を表す口とひざまずく人を表す巴を合わせた形。城壁都市に人の住むことをあらわす。
行・・・十字路の形で都市を表す。十字路は多くの人ものの行きかうところである。
彳(てき)・・・行の左半分。普通一般の道の意味でつかわれる。
囗(い)・・・口(さい)ではなく囲む形の字。都市を取り囲む城壁・城郭の形。
など(変換できないのもあるので)


成り立ちで知る漢字のおもしろ世界―道具・家・まち編

成り立ちで知る漢字のおもしろ世界―道具・家・まち編

  • 作者: 伊東 信夫
  • 出版社/メーカー: スリーエーネットワーク
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 単行本



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