SSブログ
[PR]本のベストセラー

頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か [子育て]

著者はミシガン大学の心理学の教授。

◎知能というものは何か、どうやって測るのか

リンダ・ゴットフレッドソンの定義
 一般的な精神的能力で、推論・計画をたてる、問題を解く、抽象的に考える、複雑な考えを理解する。素早く学ぶ、経験から学ぶといった能力を含む。物事を「把握」し「納得」し、何をすべきか「見だす」より広い深い能力をさす。

IQテスト・・・将来の学力の程度を予測するために考えられたテスト。いくつかの下位検査を含み、おおまかには以下の二つの知性を測る。同じ年齢の平均を100として、標準偏差で表す。現在では知能をはかる一般的方法と認められている。

流動性知性・・・新しい抽象的な問題を解く能力。それまでの経験や現実世界の情報があまり役にたたないような知的操作を必要とする。30歳くらいをピークに衰える。

結晶性知性・・・この世界の性質とそれを推論するうえで役にたつ学問的手続きに関して、頭の中に蓄えている情報。年齢とともに増す。

IQと学業のでき、職業の成功には、シングルマザーになる確率(社会的成功)に相関がみとめられている。しかし、IQだけでは説明できない違いもある。

IQは分析的知能を測るが、他にも実践的知能とか、創造的知能などがありそれが学業ののできなどに影響しているという説もある。


◎知能を決めるのは遺伝か環境か

以前は知能を決めるのは遺伝だといわれていて、調査報告からもそのような結果が導かれていた。

著者は一つ一つの実験の条件などを検討すると、どれも検証に耐えないか、統計処理が間違っていると指摘。
遺伝が知能に与える影響は極めて少ないとしている。
著者の結果報告には、標準偏差の○○倍という表現が使われている。

実験に使われたのは、貧しい家庭に生まれ、中流階級の養子になった子供や双子の研究だが、著者は同じ実験からでも、環境による影響の方が知能に影響を与える度合いは大きいと検証していた。

IQの遺伝性の程度が、可変性の程度に制限を課すことはない。

環境は明らかに知性を伸ばす。

実験結果から、学校の1年分の教育は年齢1年分の2倍の価値がある。

学校での教育効果をさらに高めるための方法が考えられ、実行されてきた。
しかし、どれも実験というには条件がそろっておらず、測定方法もあいまいである。
わかっていることは、お金をかければ知能が伸びるというわけではないこと。
教師の質が重要で、1年目の教師はあまりよい結果がないこと。(2年目以降はばらつきがなくなる)特に1年生のときの教師は重要。
コンピュータプログラムは算数と理科に効果的である。
協同学習とう生徒が小さなグループで協力して一緒に取り組み学ぶ方法は有効。
検証が十分ではないが、教科をこえた問題解決の基本概念を教えると知能があがったという方法がある。

優秀な教師が重視する5つのC
control・・・課題をうまくこなしていると考えさせる
challenge・・・レベルのあわせた難易度
confidence・・・自信をもたせる。誤答はなるべくよいように評価、細かいミスをさがしてまわるようなことはしない
curiosity・・・ソクラテスの誘導尋問や、表面的に違っている問題を結びつけて生徒の好奇心を刺激する。
contextualize・・・現実世界、映画、テレビなどを関連させて文脈を与えて意味づける。

◎貧富の差は知能におおきな影響を及ぼす

生まれてからの飢餓状態、有害な毒物にさらされる、妊娠中に母親からアルコールや喫煙の害をうけるなど、貧困層の子どもは生物学的要因でも、知能的に不利。

さらに親のSES(知的刺激や好ましい刺激で知能の発達を促す能力)が低いという環境に置かれる。SESの高い家庭の子どもと低い家庭の子どもでは、3歳までの語彙で倍の開きがあるという研究結果がある。

環境も、引っ越しなどのストレスや学業の中断が加わる。
学校の教師の質、友達の影響などでさらに悪い影響が重なる。

貧しい家庭がお金持ちになれば、IQは上向くことが予想されるが、その第一世代は、同じくらい裕福な家庭よりIQは低いままにとどまるだろう。

認知文化(心の中に持っている考え方)の差が、IQに影響を及ぼす。

一生懸命勉強することで知能が向上すると考える東洋人の学業成績は、IQの結果より高い。IQは就学前は白人より高いが、就学中に白人が追い付く、しかし学業の結果は東洋人の方がよい。

一生懸命勉強しても、認められない、むしろ白人の真似をするのは格好悪いとう認識をもつ黒人の特に男性は、IQも低い傾向がある。運動能力や音楽的才能がIQのかわりになるというサブカルチャーをもっている。
黒人の社会は二分化しており、中産階級の黒人も増えているが、貧困層の黒人も増えている。ただし、全体としてIQのスコアは上がっている。特に女性は上がっている。


◎SESと認知文化の差を埋める。

貧しく、親のIQが低い、SESの低い家庭の子どもを支援するプログラムの実験が何回か行われ、結果をみると、IQスコアには即上昇がみられ、プログラム終了後は徐々に下がっていくが、追跡調査によると、高校中退や、逮捕歴などで、明らかに改善しているという。
著書はこのような幼児期の教育支援(ほとんどは就学前プログラム)は、費用以上の社会的コスト削減に役立つはずといっていた。

学校介入ではKIPPが、一定の成果があるとしていた。

また能力は懸命に勉強することであげられると考えることを教えるだけでも効果があるという。

一般的には学校教育が長い方が、知能が高くなる。
高校での白人と黒人のIQの差は、大学では縮まる。

アジア人、ユダヤ人(アシュケナージ系)は職業的成功を収めているひとが多いが、
著者は、自己向上の伝統。家族間の結びつきの強さ。を上げている。
特に教育熱心で、勉強することで知能があがると考えていることが大きいという。

ついでに、東洋人は関係性重視、包括的見方は得意だが、論理を使うのは苦手
西洋人は論理的だが、ものの見方が局所的と書いてあった。
東洋人は技術者、西洋人は科学者。しかし遺伝によるものではなく認知文化の差なので、訓練で埋めることができるといっていた。


◎知能を高める方法はあるのか

影響があるとわかっていること
・子供に対し、高いレベルの語彙をつかって、話す。大人の会話に参加させる。
・なるべく叱らない
・身の回りの環境の探求を促すような言葉を多くかける
・過度の重圧をかけない→記憶力低下につながる
・モノや出来事の分類比較の仕方を教え、世の中の興味深い面を解析評価するよう促す。
・放課後や夏休みに、知的活動を促す
・知的興味を促してくれるような友達とつきあうよう仕向ける

・運動はしている母親から生まれた子供のほうが大きく、知能も高い。
・母乳で育った子どもの方が知能が高い

・流動性知能を高める訓練をする
・自制心が高い方が知能が高い
知能は勉強で変えられることを教える
能力ではなく勉強したことを褒める。能力を褒められると、失敗をおそれて難しい課題に挑戦しなくなる。
・学校で特に1年生ではよい先生にあたるようにする。効果の高いコンピュータプログラムなどの導入をはたらきかける。教師に必要なのは学位より、指導スキル。すぐれた結果を残した学校を報償するよう教育委員会に働きかける。

付録に統計用語と検証した実験の詳細あり

頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か

頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か

  • 作者: リチャード E ニスベット
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2010/03/12
  • メディア: 単行本



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

トラックバック 0

[PR]Kindle ストア ベストセラー

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。