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資本主義の未来 [ビジネス]

1996年出版。その時点での資本主義社会の未来について述べたもの

資本主義はその表面は「所得と富」で表現できる。今日ひろがっているのは所得の格差の拡大である。
それは表面の下でうごく5つのプレートが大きく関係している。
今は生物学でいう「平衡断絶」にあたる、経済のルールが大きく変わろうとしているのだ。

5つのプレート
①共産主義の崩壊・・・資本主義に参加する19億人
②人間主体の頭脳産業の時代・・・技術が富を生み出す
③人口の増加、移動、高齢化(とくに高齢化)
④グローバル経済・・・国が経済を規制できない
⑤覇権なき世界・・・アメリカは国際主義から孤立主義へ、そしていまのところ代わりの国はない

いままで、共産主義と闘うために、アメリカは他の国をそだて、輸出相手国になることで世界の経済成長をひっぱってきたが、そのシステムが崩壊しつつある。アメリカという機関車を失って世界の成長は鈍化するだろう。だから中央銀行はインフレの亡霊を監視する必要はない

これまでのシステムのために、アメリカには巨大な貿易赤字が日本には貿易黒字ができており、それは今後徐徐に改善していかないと、いずれ大地震を引き起こすだろう。(ドル暴落など)

グローバル経済のため、世界の金融は結びつきを強める。それはどこかでおきた倒産や不払いが世界規模で拡大する可能性をもつということでもある。

第1世界の未熟練労働者、中熟練労働者は、第3世界と共産圏だった国の労働者に仕事を奪われるだろう。企業は今や世界中で資本を調達し、もっともコストの安いところに工場をたてることができるようになったからだ。
技術集約産業は、たくさんの人を必要としない。熟練労働者でも職にあぶれれば賃金を落とすか、未熟練労働者の仕事をするしかなく、その結果大卒者の間でも賃金格差が広まっていく。

資本主義は価値観をもたない。ただ利益を求める。それも短期的利益を優先しやすい。
かつては共産主義とう敵がいたため、公共性を優先させることに納得がいきやすかったのが、それがなくなってしまい、資本主義が唯一の万能なものと勘違いされたため、すべてを市場にまかせ、公共部門は縮小するという流れになってきている。しかし、資本主義は平等という民主主義の概念はない。資本主義では富の集中がおこり、公共部門がなければ富の分配は行われず、富をもつものはますます有利になっていくばかりである。

かつてローマ時代は公共部門の力が大きく、社会的には奴隷もいる平等な社会ではなかったが、道路や水道など生活水準は高かった。しかし、すべてが民間になった中世では人々の生活水準は低下し、中世の農民はローマの奴隷より生活水準は低かった。

われわれ人間は社会にいるからこそ、個人でいる面をもてるのであり、自由な個人が集まって公共の利益を得るために自由の一部を売り渡したわけではない。

これからの資本は人的資本になる。それは個人が所有できない資本であり、教育によって育てるものだ。
しかし、公共部門が縮小し高等教育は個人の負担になりつつある。しかも所得はさがっており、個人は教育投資を回収することすらできなくなるかもしれない。企業も短期的利益を追求するあまり、人に投資しなくなっている。これでは長期的利益は得られない。
グローバル経済は「ただ乗り」が得意なので、基礎研究は他の国や企業にさせて、「応用」のみやって利益をだす国や企業があったりする。しかしこれではやがて基礎研究などだれもやらなくなってしまう。
高齢者は自分たちへの補償を守るために、公共部門の予算を圧迫し、必要な投資(教育など)を奪ってしまう。

われわれはみな、短期的利益に目をやるあまり長期的利益を忘れている。資本が投下されなければやがて資本主義も滅びるだろう。

平衡断絶はピンチでもありチャンスでもある。新しい経済のルールが生まれるのである。


資本主義の未来

資本主義の未来

  • 作者: レスター・C. サロー
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 1996/10
  • メディア: 単行本



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