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歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 [自然科学]

砂山に砂を一粒ずつおとしていくと、ある日砂山は崩れ落ちる。その崩壊の規模は大きいこともあるし、小さいこともある。コンピュータシュミレーションの進歩により、これらの実験はたやすく何回もできるようになった。この砂山のモデルを考えた物理学者たちは、砂山にランダムに砂粒を落とすことで砂山は自己臨界状態に簡単に達するということを発見した。臨海状態とはある構造が別の構造にかわる平衝状態のことで、水が蒸気になるぎりぎりの状態などのことである。臨界状態に達しているところに一粒の砂粒が落ちると、それは容易におおきな崩落を引き起こす。しかし、外からみていると同じ一粒の砂が落ちただけでいつもと変わったことは起きていないように見える。

地震予知も似たメカニズムでおきるという研究がある。かつて地震学者はおおきな地震を予知しようと、地震がおきるメカニズムについて詳細に研究したが、予知はできなかった。それは大きな地震の前にはなにか特別な現象があるはずだという予測によるが、実際には砂粒と同じで起きていることはいつも一緒でそれがどのくらいの規模になるかは決してわからないのではないか。ただ、地震の規模と回数の間には「べき乗則」が存在し、地震の規模が倍大きくなると頻度は4分の1になるそうである。

世界というものは見た目ほど複雑ではなく、重要な要素さえはずさなければ、モデル化できて、そこには「べき乗則」があらわれるということが、いろいろなところで確かめられている。
自然公園の山火事。結晶の成長モデル、河川の流域面積。生物ネットワーク、金融市場
それは規模と頻度の間にべき乗則をもち、詳細な部分を拡大してもまったく同じに見えるフラクタルの特徴をもつのだそうである。

また、臨界状態は思ったより頻繁におきているらしい、生物の大量絶滅や、金融市場の大暴落が臨界状態で砂粒が落ちた状態だと考えられる。もしかしたら、歴史とうものはいろいろなものを臨界状態に組織化するのかもしれない。物理学者はモデルを使ってこれを確かめようとしている。その際、モデルでどの部分を省いてどの部分を残すかという選択が大切になるらしい。おおまかには省いたり無視したりしても結果に影響をおよぼさない部分は重要ではないということになる。

歴史もまた起こった一つ一つの出来事が砂粒だとすれば、砂山の崩壊のようにおおきな事件がおこるとうような歴史物理学が発生するかもしれない。


歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

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  • 作者: マーク・ブキャナン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/08/30
  • メディア: 文庫



タグ:複雑系
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