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生物と無生物のあいだ [自然科学]

著者は分子生物学者。「生命とは何か」という問題について考え続けているそうだ。
生命とは「自己を複製するもの」という定義があるが、それだけではなく、つねに入れ替わり動的な秩序をもつものであると結論付けている。
複製の主体であるDNAの話、それからシュレーディンガーの「原子はなぜこんなにも小さいのか?」から始まる
ランダムに運動する原子からなるわれわれの生命がなぜこの体を維持することができるのか、それは原子に比べてあまりに大きな体ゆえに、個別の原子の動きはランダムでも集合としての原子の動きからは秩序が生まれえること。また生命は常に原子を入れ換えるゆえに、動的平衝状態を保ち、生命を維持できるのではないか

細菌とウィルスは大きさがかなり違う。ウィルスは電子顕微鏡でみないと捕らえられないくらい大きく、細胞をもたない。ウィルスは他の細胞にとりつき、自分のDNAを他の細胞につくらせるのだそうだ。

DNAが生物の設計図であり、それがコピーされて細胞がつくられること。
DNAはお互いがポジとネガになっている2重螺旋の構造になっていて、片方が失われても容易に修復が可能になっていること。
このことが発見されるまでの過程を、あまりスポットのあたらない研究者の業績とからめて紹介している。

最初細胞の中にある核酸(DNA)はさほど重要とおもわれていなかった。しかし、オズワルド・エイブリーの研究から生物の設計図がDNAにあることがほぼ証明された。
DNAはたった4つの分子(ATCG)からできていて、そのAT、CGの数は等しいことを発見したのはシャガルフ
そして、DNAにX線を照射して、その散乱をしらべたのは、ロザリンド・フランクリンで、DNAの2重螺旋の発見者とされるジェームズ・ワトソン、フランシス・クリック。モーリス・ウィルキンスは彼女のデータを元に正解にたどりついた。
また、PCRという、特定の遺伝子を探すための装置を考え付いたのは、キャリー・マリスという、ポスドク(研究者の助手のような職業)だったこと。仕掛けとしては、探す遺伝子の先頭のコードで検索をかけたあとに、終わりのコードでもう一度検索をかけるというもの。そして、目的の遺伝子をみつけたらそれを切り取り増やす。

シュレーディンガーはアインシュタインと並ぶ物理学者で量子物理学の波動方程式で有名な人。かれが「生命と何か?」という講演をおこなったときの本があり、DNA発見者たちはそれに非常に触発されたという。
シュレーディンガーの問いは「なぜ原子はこんなにも小さいのか?」
量子物理学では個々の分子の動きはランダムで予測できないが、全体としての分子の運動は予測計算可能(秩序がある)と証明されている。われわれの体がこんなにも大きいのは構成する原子から一定の秩序を引き出すためではないか?
また、原子や分子は放っておくとランダムにひろがり均質になろうとする性質がある。しかし、われわれのからだは空気中に溶けない、これはわれわれが常に原子を取り込み、体を再構成し続けているからと考えられる。
実際、放射性同位元素を使ったラットの実験では、体中に取り込まれたたんぱく質が使われている様が観察できるという。

最後に著者がおこなった、特定の遺伝子をなくした生命を誕生させ、その生命にどんな不具合がうまれるか観察した際の様子が書かれている。意外なことになんの不具合もおきなかったのだそうで、これは生命にはいろんなバックアップシステムがあり、ある遺伝子がなければ別の経路でその遺伝子の役割を補うからだと考えられるのだそうだ。そしてバックアップがうまくいかない場合はそもそも誕生することもできない。
しかし、遺伝子の一部を傷つけた場合は別で、生命はそのフォローはできないらしい。

生命は巨大な動的平衝であり、時間の上を環境との一回性の関係で移動している。人間の力で生命のシステムをコントロールできるなどと考えるのは無理で、われわれはその一回性を観察し、記述する以外ないのではないか?



生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

  • 作者: 福岡 伸一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/18
  • メディア: 新書



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